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ゆっちゃん①

少しだけ暴力的なシーンが含まれます。

苦手な方は飛ばしてください。

食堂の中に入ればコルディがホットミルクを用意してくれていた。


「はい、ゆっちゃんどうぞ」

「ありがとう、コックのおねえちゃん!」

「どういたしまして」

(コックのおねえちゃん・・・おねえちゃんて呼ばれた)


料理人はほぼ男性しかおらず、当然の様に男だと思われる事が多かったコルディはおねえちゃんと呼ばれて感動している。


「ゆっちゃんは人を見る目があるな」

「いや、コルディはどっからどう見ても女性なんだから

 それが分からない奴等の目が節穴なだけじゃろ・・・」

「そ、そうか」


マォにそう言われても嬉しかったコルディはゆっちゃんの為にと張り切って夕食の準備に取り掛かった。


「それで?ママはどうしたん?」

「知らん」

「ちょ・・・

 どうやって此処に来たん?1人で来たん?

 ちゅうかよぉ来れたね・・・」

「んとねぇ、ゆっちゃん校庭で遊びよったん。

 それでぇ、悪い子が亀さん虐めよったけぇ助けちゃげたん。

 そんで気が付いたら亀さんに乗って空飛びよった!」

「そおなんじゃ・・・

 助けた亀に連れられて・・・ って、浦島かよ!」

「きゃははっ タイやヒラメのマヨネーズ!」

「ゆっちゃんやマヨネーズじゃなくて舞い踊りだね・・・

 ま、しか合っちょらんじゃん・・・」

「でへへ・・・」

「その笑い方止めんさいって」

「えぇー・・・」

「校庭で遊んでる最中に亀を助けたら亀と一緒に此処へ飛んできたと・・・

 これっていったい何なん・・・

 ママは当然知らんのよね?」

「ん~、たぶん知らんと思う~」

「だよねぇ・・・」


どうにかして娘に知らせなければと思うマォである。

だがどうすればいいのか。


「マォ、昼寝でもしてみたらどうだ。

 夢の中でならご息女に会えるのだろう?」

「あー、確かに。

 んでも眠れそうにないんじゃけど・・・」

「睡眠魔法でも掛けてみます?」

「ダルク出来るん?」

「いえ、私が出来る訳ないじゃないですか。

 でもマォ殿でしたら出来そうですよね」

「出来るんかな・・・」

「物は試しでやってみればよいではないか」


そうはいったもののどうすればいいのか。

考えた末にマォは定番の方法を取る事にした。


「ひつじがいっぴき ひつじがにひき ひつじがさんびき・・・

 ・・・ ひつじが56っぴき」

「「「 ぐぅ・・・ 」」」

「お前らが寝てどうするん!」

「きゃはははっ」


マォの変わるにルーク達が眠ってしまい高いびきである。


「こんな事なら皆にも千秋への伝言頼みゃあよかった」


このままでは延々と羊を数えて終わりそうである。

ならばと違う方法に変えてみる事にした。


「貴方は段々眠くなぁるぅ~、貴方は段々眠くなぁるぅ~」


鏡に向かって唱えていると段々と瞼が下がって来た。





見慣れた藁ぶき屋根が見え、元気に鶏が鳴いている。


(儂の家じゃん!来れた!)


マォは急いで千秋の姿を探す。

どのくらい夢の中に居られるのかが分からないからだ。


「千秋!千秋おらんのん?!」


叫びながら家の中を探すも姿は見当たらない。


(仕事の日なんじゃろか、それとも買い出しにでも行っちょんじゃろうか)


もしかしたら畑かもしれないと畑へ向かおうとした時、3台の車がやってくるのが見える。

千秋が戻って来たのだろうかと玄関で待ってみる。

車が庭先に止まり次々と人が降りてくる。


(あれ?千夏に冬依までおるし黒ずくめ? あ、喪服か。

 ん?なんで喪服? 法事かなんかじゃろうか)


よく見れば千秋が遺影を抱いている。


(は?! うそじゃろ・・・)


千秋が抱いていたのはゆっちゃんの遺影だった。


(いやいやいやいや、生きてるから!こっちに来てるから!

 行方不明で死亡扱いになったんじゃろか?

 それとも儂みたいに転移でこっちでは死んだ扱いになっちょんじゃろか?)


うろたえるマォの目が冬依の泣きはらした真っ赤な目と合った。


冬「うぉっ、おかんの幽霊がおる!」

 (失礼な!幽霊じゃないし!)

夏「あんた何いいよん、冗談も大概に・・・しぃ・・・ほんまじゃぁ」

 「見えるんかーいっ!」

秋「おかん・・・おかん・・・おかぁーんっ。ゆっ、ゆっちゃんが・・・」


ずっと泣いていたのか千秋は過呼吸を起こしそうな状態になってた。


 「落ち着んさい千秋。ゆっちゃん今こっちにおる」

秋「は?何言いよん。今火葬済ませて・・・は?ホンマに?」

 「は?火葬ってなんなん?どうゆうこと?」

夏「おかん、中で話そうや。こんまんま此処で話すのもちょっとね?」

 「そうじゃね、そうしようか・・・」


*** *** *** *** 


その日、ゆっちゃんは学童保育へと行っていた。

いつものように友達と校庭で遊んでいると校庭にある小さな池に男の子達が群がっていた。

何をしているのか気になったゆっちゃんが様子を見に行けば、石を投げたり棒で突いたりと池の中の生き物を虐めている。

おこったゆっちゃんは上級生である男の子達に注意をする。


「いきものいじめちゃらいけんのんよ!」

「なんだよちびすけ、うるさいなぁ!邪魔だどけよ!」

「ちびすけじゃないもん、ゆっちゃんだもん!

 いきものはだいじにせんといけんのんよ!

 いじめちゃあいけんの!」

「どうせ亀とか鯉なんてよおけおるんじゃけぇ虐めてもええんじゃい!」

「そんなことないもん!いのちがだいじにでんにゃぁいけんの!

 なんでそんな事もわからんのん。ばかなんじゃないん」

「なんだと!」


どんっと男の子はゆっちゃんを池に突き落とす。

その様子を見ていたゆっちゃんの友達は急いで先生を呼びに行く。


「そんなに生き物が大事ならお前が代わりになれよちびすけ!」

「おい、さすがにそれはまずいんじゃないか」

「大丈夫だって、父さんは市長なんだから大丈夫だ」


なんだかとんでも勘違いをしている男の子である。

父親が市長だから虐めても良い、そんな訳あるはずもない。

男の子はゆっちゃんに向かって大きな石を投げつける。

ガツンと額に当たり血が流れる。


「いったぁーい!ぼうりょくはいけんのんよ!

 女の子にはやさしくしましょう!

 小さい子には優しくしましょう! 習わんかったん?」

「うっせぇ!そんなの関係あるか! 俺は楽しいからやってるんだ!」


ガツガツと棒でゆっちゃんとお腹や足を突く。

ゆっちゃんは亀や鯉に当たらない様に両手を広げて仁王立ちになる。


「あぁぁ!亀さんの甲羅われちょるじゃん!ひっどーい!

 なんでこねぇなことするん!可哀そうじゃろ!」

「うるさい!生意気だぞちびすけ!」


そういって大きな石を蹴飛ばした。

ゴンッと鈍い音がして、当たり所が悪かったのか気を失ったゆっちゃんは池へと沈んだ。

超学校の校庭にある池で水深は浅い。とは言え50cmはあるので溺れるには十分な深さだ。

通りかかった上級生の女の子たちが慌てて池へと入りゆっちゃんを助けようとするのだが、あの乱暴な男の子が邪魔をする。


「俺の邪魔をするな!父さんに言いつけてやる!」

「勝手にすれば?悪いのは自分じゃない!こんな小さな女の子を虐めるなんて最低!」


そう言われて顔を真っ赤にした男の子は助けに入った女の子までを突き始める。

他の子達は助けたいと思いつつも怖くて手を出せないでいる。

女の子がゆっちゃんをなんとか池から助け上げた時に、よくやく先生が駆け付けた。

救急車が呼ばれて病院に運ばれるも、ゆっちゃんが意識を取り戻す事は無かった。

15分以上も池に沈んでいたのである。

ゆっちゃんはそのまま帰らぬ人となった。

急いで千秋が駆け付けた時にはゆっちゃんは冷たくなって霊安室に寝かされていた。


「ゆっ・・・ゆっちゃ・・・ うそじゃろぉぉぉ目開けてよ。起きてよゆっちゃん。

 今日はゆっちゃんの好きなオムライス作るんじゃろ。ねぇ、ゆっちゃん」


千秋は泣き崩れ、駆け付けた千夏と冬依がなんとか宥めて連れ帰り葬儀の手配をした。

そして葬儀が終わり遺灰を持って帰宅してみればマォの幽霊が居たわけである。

(幽霊じゃないけどね!)


*** *** *** *** ***


夏「ニュースになってTVや新聞にも報じられたんよ」


見せて貰った新聞には大きく取り上げられていた。

息子の名前は伏せられているが市長の写真は大きく掲載されている。

しかも市長の不祥事までもが発覚している。

これまでも妻や息子のしでかした事を隠蔽していたようだ。

万引き常習犯、カツアゲにひったくり。挙句には暴力事件は今回だけではないそうだ。

小学5年でこれとは末恐ろしい・・・


「小学校で起きた悲劇。妃会社の少女は動物好きで正義感が溢れ・・・」

(本当に・・・ゆっちゃん死んだん?・・・ 

 嘘じゃ、嘘じゃ嘘じゃ。だって生きてこっちの世界に・・・)

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

(なんでゆっちゃんが死なんにゃいけんのん、ゆっちゃん何も悪くないじゃん。

代われるもんなら代わって・・・だめじゃん。儂こっちじゃ死んだ扱いじゃん!

ぬがぁぁぁぁ!

今の法律では未成年は殺人を犯しても死刑判決にはならない。なんで?

人の命奪っても未成年なら許されるん?おかしいじゃろぉー!)


マォは怒りと悲しみでとんでもない事を考える。


 「ねぇ、儂はさ。こっちの世界じゃもぉ死んだ事になっちょるんよね?」

夏「そうじゃけど、おかん? 何する気なん」

 「そのクソガキぶっころす」

夏「ちょ、おかん」

冬「待て待ておかん。物騒な事言うなや」

 「だって腹立つじゃん、なんでゆっちゃんが死なんにゃあいけんかったん。

  悪いのはあのガキじゃん!まぁ甘やかし躾が出来てない市長もじゃけど!

  ペットじゃろうが人じゃろうが命を奪ってええもんじゃないん!」

冬「そうじゃけど!

  じゃからっておかんが犯罪犯したらゆっちゃんが悲しむじゃろうがね」

 「儂もぉこの世の人間じゃないけぇ犯罪にもならんじゃろ」

冬「屁理屈言わんでええけぇ、落ち着いてくれよ」

 「じゃけどっ!」

秋「おかん、ゆっちゃんはそっちで元気なん?」

 「あ、そうじゃった。それがさ・・・」


千秋が流れを変える為にゆっちゃんの事を尋ねる。

マォがゆっちゃんの登場シーンを話してやれば皆爆笑だった。


読んで下さりありがとうございます。

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