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エルフィン③

ドッゴーン!ゴロゴロゴロ ピシャーッ! ドドーンッ!


場内に雷鳴が轟き渡り王妃を始め場内に居た者達は驚きのあまり内臓が浮き上がった気がした。





「よそ者に何が分かる!」


つい感情的になり口から出てしまった言葉だった。

マォ殿・護衛騎士のアルノー・宰相であり従兄でもあるルーク・その侍従であるダルク。

弟オーウェンまでもが立ち去ってしまった。


確かにマォ殿達から聞いた話は衝撃的な物であったが、亜人種に対する国民の態度も仕方がないではないかと思う。

なにせエルフィン自身も多少の苦手意識がある。

有翼人種などはまだ見目麗しいものが多いのでよいのだが魔人種ともなると見栄えがよろしくない者達も存在する。

だからといって表立って差別をしたり忌避感を出しているつもりも無かった。

この表立ってと言うのが問題なのだとエルフィンは思っていなかった。

そういった感情があるという事は無意識下でも態度に現れてしまう事がある。

王がそういった態度をにじませれば臣下も自ずとそうなって行く事に気付いていないのだ。

城下で亜人種、特に獣人族に対しての差別があるとは聞き及んでいた。

だがまさか迫害、しかも命を奪っているとは思ってもみなかった。


「父や祖父、曾祖父が尽力したはずなのに何故こうなった・・・」


その考えがまず違う。自分も尽力すればよかったのだ。

民の意識も改善され現状を維持するだけでよいだろうと甘い考えを持ったのが間違いである。

己を鑑みればわかるだろう、表立っては隠している感情がある事を。

奸臣や佞臣に囲まれている事にも気付かず、ルークやオーウェンの忠告にも耳を貸さず。

アムリタやエウリケの言葉ですら聞流す始末である。


「一体私の何がいけなかったのだ。何が悪かったのだ。どこで間違えたのだ」


父王が死去してエルフィンが王位に付いた当初はまだマシであった。

父王がエルフィンを心配し、手助けをし正しい道へと導いてくれるであろう好臣を準備しておいてくれたからだ。

ルークやオーウェンなどもその内だった。

だが年齢や体調不良を理由に退職するものも出て、臣下の入れ替わりが増えて行った。

やがで「このような事はわたくしめどもが致します」「そのような事は宰相に回せばよいのです」

「陛下はわたくしどもめが持ってまいりました書状に目を通すだけでよろしいのですよ」などと楽な仕事ばかりが回されるようになった。

ここで疑問を持てばまだ良かったのだ。


(そうだな。私は王なのだからどんと構えていればよいのだ)


事あるごとに「軍部の事はオーウェンへ任せる」「それについては宰相に任せる」と丸投げしほとんどの事について考える事を辞めてしまった。

見事なお飾り王の誕生である。

最初こそ諦めずに苦言を呈していた者達も、匙を投げて城を後にしていく。

それでもと最後まで見捨てずに頑張って来たのがオーウェンとルーク、そしてアルノーの部隊である。

だがそんな彼らもとうとう見限ってしまった。

エルフィンの迂闊な一言でマォの逆鱗に触れた為である。


しばらくの間、宰相の政務室でボーッと放心していたエルフィンだったが、のろりと立ち上がり自室へと向かう。

自室のベッドにまで辿り着くとそのまま倒れこみ、丸4日寝込んでしまった。


目覚めれば鬼の様な形相をしたアムリタが仁王立ちをして待ち構えていた。


「お目覚めですか?貴方はこの状況が何をもたらすかお分かりで?」

「何をもたらすかとは?・・・」

「宰相と騎士団長という最後の砦が無くなったのです。

 これまで以上にあの古狸達が幅を利かせて

 好き勝手に振る舞う事がわかりませんの?!」

「そうは言うがルークほどではないにしろ政に尽力してくれているではないか」

「こんの・・・愚か者!尽力しているのは己の保身と横領にだけでしょう!」

「何を言っておる。

 そもそも予算書や決済書など重要な書類は私が最終確認をしておるのだ。

 横領など出来るはずが」

「侍女長!アレをお渡しして!」


アムリタに言われ侍女長が分厚い書類の束をエルフィンに渡す。

怪訝な顔をしながらエルフィンは書類に目を通し、次第に顔色が悪くなる。


(なんだこの訳の分からぬ交際費や接待費は・・・

 品質維持費が減額? 待て、マォ殿の為の予算がこれだけだと?

 しかもなんだこの特別役職手当とかいうのは・・・

 民の税が跳ね上がり意味不明な税が増えているではないか)


自分に提出されていた書類とは明らかに違う事に衝撃を受ける。

だが自分の前にルークも目を通したはずではと疑問に思うのだが、国王が財務大臣に一任したので宰相が目を通す事はなかったのだと侍女長が言う。

モチロン一任する事に不安の声は上がっていたがそれを無視したのはエルフィンである。

信頼できる者を財務大臣に選んだつもりだったがいとも簡単に金に流されてしまっていた。

「だが・・・」「しかし・・・」となんとか言い返すもことごとく撃沈するエルフィン。


(人を見る目が無かったという事か、それとも人望がなかったという事か・・・)

「何故王妃はそれたに気付くことが出来たのだ・・・」

「貴方はお忘れなのかもしれませんが、私王妃ですわよ?

 後宮や離宮の管理は私の役割です、気付かない方がおかしいでしょう?

 それに各国の妃殿下方との交流も私の役割です。

 マォ殿の動向をしらねば支障がでるやもと手の者を付けておりました。

 まさかあのような事を耳にするとは思いませんでしたわ!

 貴方は今まで何をしていたのですか!お義父様達の功績を無にするおつもりで?

 外交問題、ひいては国際問題にもなりかねませんのよ?お分かりですの?

 なのにどうして迫害を容認していたのですか?」

「容認などしておらぬ!」

「ですが対応をなさらなかったではないですか。

 何もしないのは容認と同意ですのよ?」

「知らなかったのだ!」

「いいえ、知ろうと思えばすることが出来たはずですわ。

 貴方は知ろうとなさらなかった。現実をみようとしなかったのです」

「ぐっ・・・」


その後も滾々とアムリタに諭され、途中から加わったエウリケにまで諭される。

もっと各所に足を運ぶべきだった。もっと人との会話をするべきだった。

もっとルークやオーウェンの言葉に耳を傾けるべきだった。

口煩いと煙たがらずに祖父や父に学べばよかった。

後悔しても今更である。


翌日からのエルフィンはがらりと変わった。

まずは顔付きが少し険しくなり目つきも鋭くなった。

書類も隅々まで目を通すようにもなり、少しでも違和感を覚えれば署名をしなくなった。

時折暇を見つけては各部署にも足を運ぶようになった。

そうして見えてくる違和感の正体。

やる気がある真面目な者達はこの数日の間に追い出されていたのである。

残っているのは古狸達に都合の良い者ばかり。

国の事や民の事を考える者は残っていなかった。

騎士や兵士にしても実力がある者はほんの一握りでお飾りの騎士や兵士ばかりである。

いくらこれまでの自分の行いが招いた結果とは言え情けなくなるエルフィンであった。


それでもなんとかせねばと歯を食いしばりながら書類や書簡と向き合う事2か月。

エルフィンが思うように動かなくなった事に痺れを切らした古狸達が謀反を起こした。


「これまでのように黙って署名だけしておればよいものを!」

「王などただの飾りでよいのだ!」

「これならば第二王子の方が扱いやすいのではないか!」

「ボンクラー侯爵が摂政となればよいのでは?」

「生かしておけば4公爵が動くやもしれぬ。病に倒れたという事にして・・・」

「どうせ4公爵共は壁を作り閉じこもっておる。今更動きはせぬだろう」

「なんともあわれな王よのぅ。頼るべき4公爵から見捨てられるとは」

「そうしむけたのはおぬしであろうに」

「「「 はっはっはっはっ 」」」


どうせ残っている騎士も兵士も見せかけだけの役立たず共である。

金さえ貰えればよいと考えているので自分達に歯向かう事もしないだろう。

そう古狸共は考えていた。

戦う事が出来ないのは自分達も同じだと少し考えればわかる事なのに。

だが自分達は魔法が使えるから無敵なのだと、とんでもない勘違いをしている。


皆が寝静まる頃に決行する事になる。

古狸共は自分達が囲う私兵を投入し一気に城内へと雪崩れ込んだ。

抗う者は皆無だと自信満々に突き進み、王族達の私室へと押し入れば・・・


「何故騎士が・・・」

「王族を守るが我等の使命だ!」


アルノーの部下達が待ち構えていた。

少数と言えどもオーウェンとアルノーが育て上げた精鋭達である。

力の差は歴然としているが相手は数の暴力で押し切ってきそうだった。

エルフィンも騎士達と共に必死に戦う。


(こんな事であればもっと体を鍛えておくべきだった。

 魔法にしてもルークのいう事を聞いて鍛錬すべきであったな)


まったくもって今更なのだが後悔が頭をよぎる。


(せめてアムリタや子供達だけでも逃がさねば。

 騎士たちの忠告を聞き入れて同じ部屋に寝かせたのは正解であったな)


そう思い子供達の元へと敵をかわしながら進む。


「エウリケ!ミランダ!無事か!」


ばたんと荒々しく扉をあければ子供達の姿は無く、床に開いた大きな穴と傷だらけのアムリタ達が立っていた。

穴の周りには古狸の私兵らしき物が幾つも転がっている。


「これは一体、何があった!子供達は無事なのか!」

「あら貴方、私の無事は聞いてくださらないの?」

「アムリタが強いのは知っているが、無事なようで安心した」

「ん~・・・60点!」

「は?! なんだその60点とは」

「お二方、今はそのような場合ではございません。

 まだ敵の数は多く残っております。

 我々もどこまでお守りする事が出来るか・・・

 今のうちにお逃げください!」

「逃げると言われても何処へ・・・」

「貴方、考えるのは後ですわ。まずは城から逃げなければなりません」

「だが・・・」


「いたぞ!あの部屋だ!逃がすな!殺せ!」


「陛下!妃殿下! その穴から逃げて下さい!」


騎士に言われ穴へと飛び込む2人だったのだが、ゴツンッという鈍い音と共に弾き返された。


読んで下さりありがとうございます。

ブックマークにリアクション、ありがとうございます(*'ω'*)

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