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辺境⑩

餅も食べた事だしスカイラーは帰るものだとばかり皆思っていたのだがそうではなかった。


「そろそろこの地の名前を決めてくれぬか。

 諸国から地名はまだ決まらぬのかと催促されておるのだ」

「へ?なんで諸国から?」

「マォ殿へ挨拶状を送りたいとの事と

 書面上でいつまでも辺境と呼ぶのも不便だとの事でな」

「確かにここ以外にも辺境と呼ばれる地は他国にもあるな」

「なるほど。そういわれても行き成りだと思いつかんよね」

「いや事前にルークには伝えておいたのだが。

 まさかルーク、皆に伝えておらぬのか」

「忘れておった・・・」

「 ・・・ 」

「ルーク・・・」

「オルガ達はここを魔の森って呼んじょるらしいからそれじゃ駄目なん?」

「魔の森と呼ばれる森も複数存在するからな・・・」

「そうなんじゃ。んじゃどうすっかね・・・」

「「「 うーむ・・・ 」」」


皆で悩む。

ちゃんとした独立自治区にするにはルークやオーウェンの名前が入るとマズイ。

ならばマォの名前を入れればという案も出たがよからぬ輩に目を付けられそうだ。


「ウォーカー、ウォール、ハーウェイ、ジェィ、コルディ・・・

 ほかは家名無いもんなぁ」

「家名から離れた方がよかろう。

 勝手に縁者だと名乗られてもな・・・」

「あ、そっか。うーん」


実はマォはひそかに浮かんだ案があった。

ルーク、スカイラー、ウォーカー。繋げればルークスカ〇ウォーカーとなりスターウォー〇ではないかと思ったのだ。

だが著作権とかどうなのだろうと思い言わないでいる。

だが1回そう考えてしまうとほかにも浮かぶのはそれ系の名前ばかりである。

他の映画からヒントでもと思うのだがあいにくマォはホラー系が好きだった。

S〇Wだのデッドコー〇ターだのとグロ系が浮かぶ。


(あかん、映画から離れよう・・・)


ならば好きなバンドの曲名とかはどうだろうかと考えてみる。


(V系とかヘビメタとかになる・・・)


「あかん、儂ろくなん浮かばんけぇ皆で考えて」

「そういわれてもだな、私もロクな物が浮かばぬのだ」

「すまない、俺も浮かばぬ」

「自分もであります、申し訳ありません」

「困ったな・・・」


皆で頭を悩ませているとドドン、ガラガラッと地震か土砂崩れのような音が響いた。


「なに?!」

「なんだなんだ」

「何事ですか」


慌てて外に出てみれば2頭のモファームに加えられた少女と少年が居た。

モファームも少女も少年も傷だらけである。


「ちょ、どうしたん?大丈夫なん?今手当するから」

「あれはアムリタのモファームではないか」

「もしかしてミランダとエウリケか?!」

『マォ、お城大変な事になってるって』

「大変な事ってなにさ」

『謀反とかってのが起きてるみたい』

「は?」

「あの、マォ殿。いったい何が?」


マォは皆に城で謀反が起きているらしいと伝える。

ルークはすぐに事実確認をする為に城に残しておいた部下へ連絡を入れようとする。


「待ってルーク。

 治療してからこの子達に聞くほうが早いと思う」

「それもそうか」


此処から城まではそれなりに距離もあるのでどうしても時間は掛かってしまう。

この子達がこんな怪我をしているのだから情報収集する余裕があるのかは分からない状態だ。

だからマォはさっさと治療して聞く方が良いと思ったのだ。


「ねぇ、第二王子の派閥のおっさんの名前教えて」

「筆頭はボンクラー侯爵だな。他にポンコッツ伯爵、ゴクッブシ伯爵。

 後はホイトー子爵に・・・」

「もぉええよ。2~3解かりゃええから」

「まさか()()()()でございますか・・・」

「ふふふ・・・

 痛いの痛いの王城に居るボンクラポンコツゴクツブシに飛んでいけー!」


マォが叫ぶとポワンとした淡い光がエウリケとミランダを包み込む。

シュワシュワとした音が収まれば2人の傷は癒えていた。

モソモソと体を動かした後にガバッと飛び起きるエウリケ。


「母上!母上はご無事か!

 ・・・

 ここは何処だ・・・ 」

「落ち着きなさい、エウリケ」

「あ、スカイラー伯父上? それにルーク伯父上も。

 よかった、戻って来てくれたのですね」

「いや、ここは城ではない。辺境だ」

「辺境? では私はいったい何日気を失っていたのですか!

 母上や父上はどうなりましたか!ご無事なのですか!」

「落ち着きなさい。

 まずは何があったのかを話してくれ」

「・・・ はい」


エウリケの話によれば、ルーク達が城を出た後しばらくは放心状態だったエルフィンだったがアムリタに叱咤され政務も積極的にこなすようになった。

だがこれまでルークがどれだけ多くの事をこなしていたのかが身に染みると同時に疑問も多く湧いたらしい。

エウリケと2人で疑問点を調べたり、実際にこの目で見なければとお忍びで城下にも繰り出した。

このままでは財政は勿論、人々、特に地方の国民たちの生活が逼迫してしまうと色々見直す事にしたのはいいが1人では無理だとルークに手紙を出した。

が、理由を描かずにただ助けてくれ戻ってきてくれとしか書かなかったがために返事は来ず。

それを聞いたエウリケは呆れてしまう。

出来る範囲の事から少しでも変えていこうと父であるエルフィンを説得し頑張ってはみるのだが、それを好ましく思わない者達が謀反を起こしエルフィンやエウリケの殺害を企てたという事だった。

母であるアムリタや妹のミランダにまで危険が迫り、守ろうと必死だった事までは覚えているが気が付けば此処に居たという訳だ。

ここでやっとミランダが目を覚ます。


「お兄様!ご無事でよかったですわ。

 お母様は?お父様は? 護衛の騎士達や侍女達は?」

「ミランダも無事でよかったよ。

 私も気が付けば此処に居たのでどうなっているのかがよく分からないのだ」

「そう、なのですか・・・」

「ミランダ、おおよその事情は理解した。

 今後の事はこちらで考えるからお前たちはまず体を休めなさい。

 いくら治療したとはいえ、疲れているだろう」

「スカイラー伯父様!ルーク伯父様も!

 という事は伯父様達が助けて下さったのですか?」

「お前達はモファームに咥え・・・」ベシッ

「ルーク、言葉は選びんさい。

 初めまして。私はマォ。

 妃殿下がお2人をモファームで逃がして下さったのだと思います」

「マォ様と言うと・・・愚弟の被害者の方であらせられますか!

 なんとも大変申し訳ない事を・・・」

「あー、お気遣い無く。その件はまた後程という事で。

 まずはゆっくりと休みましょう。

 陛下や妃殿下の事はこちらで考えますから」

「ですが・・・」

「あのね? 儂からすればミランダもエウリケもまだ子供なんよ。

 こうなったのも大人の責任だし子供が気を負う事じゃないんよ、本来は!

 だいたいエルフィンがのんでんくらりと阿呆の言いなりになってたのが悪いん。

 面倒な事はルークやオーウェンに丸投げしてさ。

 もっと積極的に関わりを持って政務に取り組んでりゃ

 こねぇな事にゃぁならんかったはずなん!

 だからね? 大人に任せて子供はまずゆっくりと休みんさい」

「マォ様・・・」

「ゆっくり休んだら色々と話そう。ね?」

「「 はい・・・」」

「イザベル、マリア。頼める?食堂の2階に空き部屋があったよね?」

「はい、お任せくださいませ」


エウリケとミランダを送り出した後で皆は渋い顔になる。

一切関わるまいと思っていたが傷だらけの2人を見てしまえば放っておけなくなる。

もしかしたらアムリタやエルフィンの命も危ないのかもしれない。


「ジャック、チョコ借りてもええかな?」

「マム、自分も一緒に行くでありますよ?」

「いや、儂1人で行く。じゃないと面倒な事になりそうじゃけぇ」

「だがマォ1人と言うのもな、私が一緒に」

「待てルーク。我々が動けばあやつらは嬉々として攻撃を仕掛けてくる」

「負ける訳がないだろう」ポカッ

「おばか。阿呆共に理由を与えるなとスカイラーは言いよるん。

 争いが始まりゃ勝とうがが負けようが被害は出るん。

 そのしわ寄せ喰らうんは住民なんよ、解る?」

「確かにそうだな、すまぬ。だがなにも叩くことはないだろう・・・」

「元宰相ともあろう者が馬鹿な事言うからじゃろ」

「・・・」

「儂ともっちゃんとチョコで行って来るよ」

『ササミとモモも行くって』

「マジか。ササミとモモも来るらしい」

『サブレとモルトも来るって』

「あ、そう。サブレとモルトも来るん。

 ん?騎獣全部じゃん。多すぎん?・・・」

『駄目?』

「いや駄目じゃぁないけど目立ちそうじゃん」

「おかん、別に目立っても良いのではないか?

 どうせ陛下や妃殿下を連れ出すのだろう?

 ならば残りはカスばかりだ、放置しておいても自滅するだろう」

「それにあの国はもはや塀の中で孤立しておるからな」

「それならば兄上、我らが行っても」

「よくないと言っているだろう。

 賠償金をよこせとかいわれてみろ、面倒臭い」

「確かに、訳の分からぬ言いがかりをつけられそうではあるが」

「大丈夫、儂だと分からんにゃええんじゃけぇこれ被って行く」


マォが取り出したのは先日完成したばかりの木彫りの般若面だった。


「ぶほっ、なんだそれは・・・」

「なんと恐ろしい形相を・・・」

「ん?魔除けの面だよ」

「魔除けと言うよりは魔物ではないか・・・」

「失礼な。これでも元は女性じゃったらしいのに」

「「「 女性となっ! 」」」

「まぁええわ、とにかく行って来る。もっちゃん最速で宜しくね」

『任せて、もっちゃん本気だす!』


マォが跨るともっちゃんはボフンッと音を立てて地中に潜って行った。

やはり地中を走るのかと思う一同なのだった。

読んで下さりありがとうございます。

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