辺境⑧
コッキョクウクウコーコォォォォ
ゴッギョグゥグゥルドゥーゥゥゥ
クォケクォッコォォォォォォォウ
ササミ・モモ・コケコ雄、 3匹の声で一同は毎朝起こされる。
来た当初は驚いていたコルディ達だが3日もすれば慣れていた。
基本的に食事は3食共コルディとカトルに任せている。
これは本人達が是非にと言うので任せる事にしたのだが気が向けばマォも一緒に腕を振るっている。
醤油の使い方は知っていたようだが他の調味料と合わせる事なくそのままで使った事が無いと言うし、みそは使い方がわからずにいて豆板醤やコチュジャンなんかも使い方が分からなかったそうだ。
なのでマォはそれらを使った料理を一緒に作りながら教えているのだ。
ひとえに醤油と言っても濃い口醤油・薄口醬油・溜醤油・甘露醤油・白醤油・甘口醤油とある。
何故こんなに種類豊富に揃っているのかと言えばすべてダンジョン産だからである。
味噌もしかり。
米味噌・麦味噌・大豆味噌・赤だし味噌・豆板醤・甜面醤・コチュジャン・テンジャンと揃っていて、当然これらもダンジョン産である。
味噌も醤油もこれだけ種類豊富なのに何故ケチャップとマヨネーズが無いのか不思議に思うマォだったりする。
考えても無いものは無いのだから作ればいいやとも思っている。
実際にはマヨネーズはたまにしか作られることが無かった。
マォがマヨネーズよりも塩胡椒を使ったドレッシングが好きだったからである。
そしてこの日は塩バターパンを作る事にした。
先日ジャック達がダンジョンへ潜りたっぷりとバターを持って帰って来たのだ。
パンについては教える事が出来ない。
カップを使いながらの目分量と感で作るからだ。
オルガたちの分も作ろうと思いかなり大きめのたらいを用意して材料を入れていく。
ダンジョン産のドライイーストがあって良かったと思うマォ。
マォは天然酵母のパンがあまり好きではないのだ。
ひたすらコネコネと捏ねているとコルディが手伝いを申し出てくれたのだがストレス発散にもなるからと断った。
実際は手の感覚で捏ねているので人任せにしてしまうと仕上がりが変わってくるのだ。
捏ね終わると寝かせて、また捏ねて。
出来上がった生地を切り分けて形を形成していく。
バターを巻き込むことも忘れずに。
形成が終われば再び少し寝かせた後に焼き窯で焼いていく。
この窯はパンやピザが焼けるようにとダルクに手伝ってもらい作り上げた。
何故ダルクなのか、地属性魔法で耐熱煉瓦を作って貰ったのである。
出来上がったパンは早速昼食に出すつもりだ。
「とても良い匂いですね」
「贅沢なバターの使い方だったな」
「そそ、たっぷり使ってるから高カロリーなんよ。
じゃけぇ食べ過ぎんようにね」
「こうかろりとは?」
「あー・・・
体を動かすためのエネルギー?
分かりやすく言うと焚火をするには薪が必要でしょ?
体を動かすためにも薪の様な感じで食べ物が必要なん」
「なるほど。竈の炎の調整は薪でするからそれと同じか」
「薪が多すぎると火が強すぎて焦げますからね」
「そそ、つまり食べ過ぎると消費できずに溜まって行くんよ」
「あー!わかりましたよ。あの禿きぞ・・・ゲフンゲフン。
彼らがブヨン・・・ゲフンゲフン。
あのような体系なのは食べ過ぎって事なんですね」
「そそ、カルトは飲み込みが早いね。
それに偏った食事もだめなん。
肉や野菜、果物穀類。バランスよく食べないとね」
「だからマォは色々な食材をふんだんに使うのか」
「そそ。でもアレルギーがある食材には気を付けないとじゃね」
「アレルギーとは?」
「えーっと・・・どう言えばええんじゃろ。
好き嫌いとかではなくてね、体に合わない、
体が拒否反応を起こす場合があるん。 儂でゆうたら甲殻類じゃね。
体に発心がでてかゆくなったり、目が腫れてかゆくなったり、
ひどいと喉が晴れて呼吸が出来なくなる人もおるね」
「つまりはその食べ物のせいで死ぬ事もあるという事か」
「うん、酷い症状になると発作が起きたり痙攣が出る場合もあるんよ。
それを抑える薬はこの世界には無さそうじゃし、気を付けんとじゃね」
「そうか。教えて貰って感謝する。
知らずに居たら知らず知らずに人を苦しめる事になっていたかも知れん」
「幸い此処の皆はそういった物はないみたいだけどね」
「でもマォさんはあるんですよね?」
「うん。甲殻類、エビやカニなんかだね。
海沿いとかじゃないからめったに食材になる事もないと思うし」
などと話したのだがまさかフラグになるとは思っても見ない3人だった。
昼食に出された塩バターパンは大好評だった。
「うぉっ、なんだこれはっ」
「外はカリッ、中のパンはふわっ」
「そしてじゅわっと溢れるこのバター!」
「「「「 うまぁぁぁぁ!! 」」」」
「まずいそこれは。つい食べ過ぎそうになる」
「食べすぎ注意ね!狸みたいになるよ?」
「「「 げっ 」」」
そうはいってもつい手が伸びてしまう一同である。
オルガやその子供も満足そうに食べている。
マォにとっても久々に食べるので大満足である。
そして午後になりまだ雪も降っていないからとアルノー・オーウェン・ジャック・バックリー・エディの5人はダンジョンへと出かけて行った。
夕刻になり戻って来た5人はホクホク顔をしている。
「今日は大当たりだったぞ」
「喜べ、海産物の山だ!」
「「「 おぉぉぉ! 」」」
海から遠く離れたこの国では海産物を食べれる事がめったにない。
たまにダンジョンで手に入れても潜った本人達が食べてしまう事が多いのだ。
皆期待に目を輝かせる。
「何があるんじゃろうか」
「食用なのはわかるが詳しくは俺も知らないな」
「私も分からない」
「まぁ見りゃ分かるじゃろう」
そう言って収納鞄から出して貰えば・・・
「うげぇぇぇぇ、蟹と海老ばっかじゃねぇか!!」
チーンッと久々に頭の中で音がした。
「もしかしてこれがマォの・・・」
「アレルギーってやつですか・・・」
「ちくしょー!海産物ってっもっと種類も豊富じゃろぉ。
なんで蟹と海老チョイスしたよ!ダンジョン管理誰がしちょるんよ。
せめて魚の1つや2つあっても良かっただろろろ!!!」
叫ぶマォの額にベチッと何かが当たった。
「いたっ。なにこれ。何が飛んで来たん」
飛んできたと言うよりは空から落ちて来た、である。
額に当たったまま動かないそれをマォは手で掴んでみる。
「 ・・・ 」
「どうしたおかん」
ぬっと掴んだ手を差し出す。
そこには『ごめーんねっ』と書いた紙が貼られた鯵が1匹いた。
「どっから来たこの鯵よぉ!んでこの紙は誰が書いたよ!」
一同呆然としている。
「マォ、もしかしたらダンジョンの管理者からかもしれませんよ」
「ダンジョンの管理者って誰さ」
「判かりませんが・・・」
「 ・・・ 」
「取り合えず調理してしまおうか。
海産物は鮮度が大事と聞いた事がある。
マォはこれ等の調理方法を知っているか?」
「あ、そうじゃね。
海老と蟹かぁ。蟹はボイルと焼きでいいんじゃないかな。
海老は割と大きいから殻剥いてフライがええと思う。
儂触ってもかゆくなるから手伝えんけど、頑張って。
付け合わせのサラダやスープとフライにつけるソーズは儂が作っとくよ」
蟹はそのままボイルや焼くからいいとして、エビの殻の剥き方を教えていく。
「1匹なら大丈夫じゃろうから、よーく見ててね」
此処からこうはがすと簡単だよと言いながらやって見せる。
「なるほど、先に足と撮ってから腹側から剥くのだな」
「背中に背ワタってのがあるからこうやって取ってね」
「分かった、ありがとうマォ」
マォはすぐに石鹸でゴシゴシと手を洗う。
が、やはりかゆくなってしまった。
(くぅー、1本くらい食べたかったぁ・・・)
しばらく水に手を浸しかゆみがマシになったところでスープやタルタルソースを作って行く。
(エビフライと言ったらやっぱタルタルじゃろ)
そして気付く、マヨネーズからじゃん!と・・・
卵にオイルと酢を少しづつ入れてシャカシャカ混ぜているとアルノーが代わってくれる。
蟹や海老の量が多いのでオーガ達も呼んだのだ。
当然タルタルソースの量も多い訳で腕が疲れる。
マヨネーズが出来上がれば次に具材をみじん切りにして混ぜ合わせれば完成だ。
そうしてスープを煮込んでいれば次第に揚げ物のいい匂いが漂ってくる。
大きな焚火の上に大きな金網を乗せてその上に蟹と海老を乗せていく。
焼き海老も食べてみたいらしい。
「よぉそねぇな大きい網があったね」
「イェスマム!ダンジョンで出たであります!」
「セットなんかぃ!」
だったらタルタルソースもくれよと思うマォであった。
焼きあがる頃にはスープも完成し、皆で運び食べ始める。
ガイアもエビフライに興味津々であったが一応1歳未満なので食べさせずにいた。
「ガイアは一緒におさかなさん食べようね~」
焼いた身をほぐして与えれば美味しそうにアムアムしている。
「ンマンマンマンマ」
ガイアは満足そうである。
大人たちも満足そうである。
「海産物とは旨いな!」
「私はこの焼き蟹が好きですかね」
「僕はこのエビフライだな」
「自分がこのボイルした蟹が好きであります!」
「おや?私のエビフライがないではないか!」
「早い者勝ちでございますよ」
今日も大賑わいであった。
読んで下さりありがとうございます。




