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辺境⑦

店内を見て回り思ったのは、傷薬なんかにもグァマの脂が使われいる。


(なるほど、ガマの油感覚なんかもしれんね)


そう考えれば肌荒れやニキビなんかにはいいのかもしれないし切り傷なんかにもよさそうだ。

どれどれと置いてあるサンプルに手を伸ばす。


(匂いはちょっと独特だけどすっと肌に馴染む感じではあるね)


確かにお貴族様は使う事が無いだろうと納得したマォである。

ではその他の化粧水やクリームはと手にしてみるもやたらと青臭い物やにおいがキツイ物もある。


(これが一般的なん?えぇぇ・・・)

「マォ様、こちらでございます」


微妙な顔をするマォにイザベルが声を掛ける。

イザベルが指示した場所にはちょっとお高めだけど庶民にも手が出ない額ではない物が並んでいた。


「こちら初回は瓶入りを買うのですが、次回からは使い終わった瓶を持ってくれば

 洗浄して入れて貰えるのでお手頃なんです」

「あー、なるほど。確かにコスパはよさそう」

「コスパ、でございますか?」

「ああ、気にせんで」


あまり向こうの用語を教えるのもよくないなと思いマォは適当に流した。

こちらもサンプルを試してみれば確かに匂いもほんのりとしていて使い心地も良かった。

だが苦手なムスク系の匂いがするのでマォは購入せずにいた。


(これならハーブで自作する方がいいかなぁ)


化粧水の購入は止めてお風呂用の石鹸とシャンプー、ヘアオイルを購入した。

どうせならついでにほかの店の化粧水や石鹸も見て回る事にした。

店ごとに使っているハーブの種類や配合の割合が違うので見て回るだけでも楽しい。

見ている内にエルフが営む店を見つけた。

マォ達が中へ入ってみると森の様な匂いが漂っている。


「うわぁ、いい匂い。これはヒノキじゃろうか」

「癒される香りでございますね」

「どこか懐かしい匂いがするであります」

「お気に召しましたか?」


声を掛けてきたのは店主であるエルフだった。


「そちらのお客様がおっしゃられたようにこれはヒノキの香りなんです。

 精製したヒノキのオイルをこのような器で香りを広げております」

「アロマオイルとディフューザーじゃん!

 儂これ欲しい! ほかにどんなアロマオイルがありますか」

「あら、お客様はこれの使い方をご存じなのですね。

 オイルは向こう側の棚に並べてありますのでゆっくりと見てみてください」


ニコリと微笑まれてマォも笑顔で答える。


(やべぇ、リアルエルフぶち綺麗じゃん。

 あれはもぉ精霊と言ってもええんじゃないん。眼福眼福)

「あの、マォ様・・・

 声が駄々洩れで店主が真っ赤になっておられます・・・」

「ふぇっ?! マジ?儂声出てた? うそぉー・・・

 あー。えっと。ごめんなさい・・・」

「いえ、お気になさらず。

 そのようにおっしゃっていただけて光栄です」


マォとしては心の中で思っただけのつもりであったのだが、口から洩れていたようだ。

マォは気持ちを切り替えて商品を見ていく。

アロマオイルの棚の横にはアロマウォーターまである。


(あれ、アロマウォーターがあるなら化粧水代わりにええじゃん。

 それにしてもサンダルウッドにユーカリ、ティーツリー。

 メリッサやジュニパーベリーまである。

 いやこれもぉ全種類欲しいんじゃけど・・・)


そうは思うのだが当然ながら無添加商品なので防腐剤なんかも入っていない。

アロマオイルならば2~3年はもつがアロマウォーターだと1~2か月だろう。

かといって寒期だと町に来るのも難しくなりそうだ。


「マム、自分は寒さに強いので来る事が出来るでありますよ」

「マジ!じゃぁその時は頼んでもええじゃろか」

「イェスマム!お任せください!」


安心したマォは取り合えずサンダルウッドとティーツリーのオイルを2本づつ、ローズとメリッサのウォーターを1本づつ購入する事にした。

他にもいくつかのハーブティーを購入し店を後にした。


「ありがとうございました、気に入っていただけて嬉しいです。

 季節限定の物もありますし是非またお越しくださいね」

「定期的にくると思います。良い物を購入出来て良かったです」


帰宅後にイザベルとアシーナにどんな効果があるのかと聞かれたマォは詳しく説明していく。

昔取ったなんちゃらら、リンパマッザージを習った時にアロマについても勉強した事があったのだ。

ただ収れん作用とかのさらに説明が必要そうな言葉は使わず「お肌が引き締まる」「お肌のテカリを押さえる」など判り易く説明した。

また抗菌抗ウィルスなども説明が難しいのでざっくり「病気になりにくくなる」と説明しておいた。

もっともマォは効果うんぬんもだが匂いが好きなのだ。


「次回は私も購入したいと思います」

「自分もであります!」


一瞬動物と相性が悪いのもあるのではと考えたマォだったがここは異世界でアシーナは獣人だ。

タマネギだって平気で食べているのだから大丈夫だろうと考えなおした。

まさか半年後にこの居住区でアロマブームが来るとはまったく思っていないマォである。


「あの化粧水をつけるようになって小皺が目立たなくなった気がする」

「あの化粧水のお陰か髪がフワッとするように」

「髪につけたんかーいっ!」

「目の下の隈も薄くなった気が」

「なにより肌艶がよくなりました」


人族男性陣が嬉々とする事になるのだった。



それから2週間、そろそろ雪が降り始める頃にコルディ達がやって来た。


「お久しぶりですマォ様。覚えておいででしょうか、コルディです」

「料理補助のカトルです」

「この度は受け入れを許可して頂きありがとう存じます。

 私はマリアと申します。

 こちらはクレアとエイダにございます。どうぞ宜しくお願い申し上げます」

「クレアにございます、宜しくお願いいたします」

「エイダにございます、宜しくお願いします」

「マォです、どうぞ宜しく。

 ここれで貴族だのなんだのと身分や種族は関係ありません。

 仲間であり家族であると思ってください。

 そして敬称も出来れば無しで、どうしてもなら「~さん」でお願いします。

 ちゅうか敬語もいらん、気兼ねなく楽しく仲良く頼むね」

「よろしいのでしょうか」

「変な気使っちょったら肩凝るし老けるよ?

 まぁ図々しすぎるのもどうかとは思うけど、適度に砕けんさい」

「砕ける・・・ですか?」

「肩の力抜けっちゅうこと」

「なるほど、承知いたしました」

「あの、配属先はどちらになりますでしょうか」

「人族の男性陣が掃除に洗濯まぁ料理もじゃけど

 とにかくそういった系統が壊滅的に出来んのよ」

「待てマォ。私は多少なりとも出来る」

「おかん、おれも一緒にしてほしくないぞ」

「ああ、この2人はまぁなんとか出来る」

「つまりは宰相様と補佐官様のお2人がという事でございましょうか」

「すまない、私も料理以外はちょっと・・・」

「あのマォ様私も洗濯はちょっと・・・」

「分かった、訂正する。

 ルーク・ダルク・イザベル・コルディ、この4人の世話を頼む。

 カトルは大丈夫か?」

「掃除と洗濯はできますが裁縫が苦手で・・・

 解れた時やボタンが獲れた時はお願いしても良いでしょうか」

「お安い御用です、お任せください」

「部屋は食堂の2階部分になっちょるけぇ、相談して決めてね。

 今日はまずはゆっくり休んで仕事は明日から宜しく。

 休みの日は交代で5日に1回。給料なんかの詳しい事はダルクと相談してね」

「ありがとうございます、では明日より宜しくお願い申し上げます」

「うん、硬いね。まぁそのうち慣れて?

 ちゅうかさ、今更なんじゃけどその姿はどうしたん?」


コルディ達は堅苦しい表情で真面目に会話をするものだからずっと突っ込めずにいたのだが、あちらこちらに泥汚れが付いているのである。


「秘密裏に移動するという事で妃殿下がモファームを貸して下さったのですが。

 途中から地中を走ってまいりまして・・・

 このような姿で申し訳ありません」

「「「 あ~・・・ 」」」


ルーク達から同情の目が向けられる。

これまでのモファームの行動からして馬車に乗ると思っていただろうに、モファーム自体に乗る事になった挙句に地中走行。

きっと何人かは気を失ったのではなかろうかと不憫に思う。


「夕飯までの間に汗流してさっぱりしておいで」

「そうさせていただきます」


イザベルが案内をかって出てくれたので任せる事にし、マォは夕飯づくりに取り掛かった。

夕飯はオムライスとサラダにスープを作る。

この世界にはケチャップが無いのでケチャップから作った力作である。

この日が初披露となるので皆の反応が楽しみだ。

勿論オルガ一家の分も一緒に作る予定だ。

オルガとオルガの母が手伝うと言ってくれたので外にある竈で一緒に作って行く。

風がないので焚火を囲めばそこまでの寒さは感じないだろう。

と言うか、これだけの人数が集まるのだから屋内には入りきらない、なにせオーガ達もいるのだから。

オルガの子供がガイアと仲良く遊んでいる。

木の棒を使って地面に絵を描いているようだ。

バックリーやオーガ達が見守ってくれているのでマォは安心して料理を作る事が出来る。


『マォ、この赤いソース。甘酸っぱくておいしそうな匂いする』

「それはトマトを煮込んで作るソースだよ」

『トマト!オルガ楽しみ。母も楽しみ。初めて食べる』

「儂以外は皆初めてなんじゃないかな」

『そうか。皆で一緒に初めて。楽しい』

「ふふ、そうだね」


和やかに夕食作くりは進んで行く。


大きな焚火を取り囲むようにテーブルが並べられ、それぞれが自分の皿を受け取り運んでいく。

皆で「いただきます」と声を上げ食べ始めると皆が目を見開く。


「なんだこのオレンジ色の米は」

「いやそれよりもこのとろっとした卵がなんとも」

「いやいや、上にかかっている赤いソースが旨すぎるだろ」

『父、今まで生きてきた中で一番旨いと言っている。

 母、一口で飲み込んでのどに詰まってる』

「ぶっ。ちょオーガママ大丈夫なん。水飲んで水!」

「おかん!大変だ、こっちでも喉を詰まらせているぞ」

「マム!こっちでもであります!」


掻き込みすぎて喉を詰まらせるもの数名。なんとも騒がしい夕食となったのであった。

読んで下さりありがとうございます。

誤字報告、いつも助かっています。ありがとうございます!

ブックマークやリアクション、評価なども励みになっています。

本当にいつもありがとうございます!

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