辺境⑥
「ねぇ、なんで南国フルーツの木が植わっちょるんじゃろか・・・」
「これはまたなんとも言えぬ庭に・・・」
「バナナは解りますは他は見た事がございませんね。
マォ様はご存じでしょうか」
「知っちょるけど、さすがにドリアンは食べた事がないや」
買い物から帰ったマォは庭を見て唖然とする。
バナナにパイナップル、パパイヤ・スターフルーツ・マンゴスチンそしてドリアン。
他にも果物ではないけれどココナッツまであるし、見た事も無い木もあった。
「これは何の木じゃろか」
『それコパンの木、実がパンのような味する』
「へぇ、それはちょっと楽しみじゃねぇ。
ところでオルガ、この木達はここでも育つの?」
『南の大陸でなければ育つ』
「なるほど、同じ木でも生育環境は違うんじゃねぇ」
(なんか儂の家の庭だけ一気に南国感が・・・
南国植物の庭に古民家・・・すっげぇ似合わんけどまぁええか)
「あ、そうじゃオルガ。パパさん達にさ、
1階部分が食堂で2階部分が居住区になる建物作って貰えんじゃろか」
『出来ると思う』
「料理人とお手伝いさんが5人くらい来るから頼めるじゃろか」
『伝えておく』
「ありがとう、よろしくね」
オルガに頼んだ後は各自で部屋の中に戻り買って来た物を整理する。
ヌイグルミ達はクッション代わりに寝室や居間へと置いた。
置いてみると違和感もなく可愛い。
(ヤバイ、これ千秋やゆっちゃんも欲しがりそう)
と思ったが娘達がこれを見る事も無いだろうと気付く。
が、それは間違いだった。
「ばぁば、ゆっちゃんこのモ〇ラの親子が欲しい!」
「ゆっちゃん、それモ〇ラの親子じゃなくてラージモスとモファームじゃね」
「おかん、私この蛇と変な尻尾の鶏」
「変な尻尾てあんたねぇ・・・
蛇はラッセルサーペントで尻尾がヘビなんがコカトリス。
尻尾が蜥蜴なんがバジリスク」
「そうなん、よぉわからんけどまぁええわ。
おかん、頂戴?」
「今度買っちょくけぇ今は我慢しんさい」
「「 えぇぇ、けちぃー 」」
夢の中でおねだりされたマォであった。
朝目を覚ましてカーテンを開ける。
このカーテンはチョコが作ってくれた物だ。
そしてここ最近はカーテンを開ける度に景色が少しづつ変わっている。
紅葉とかではない。
見知らぬ草花が増えていたり、魔獣であろう大型の蜂が飛んでいたり。
さぁ今日は何さと思えば、庭の片隅に鶏小屋が出来ていた。
(いやそりゃね?前の家でも鶏小屋はあったけども)
ここでは飼える様な鶏が居ないじゃないかと思うマォである。
『マォ、コケコ何羽要る?』
「おはよう、オルガ。コケコってなに?」
『コカトリスの突然変異種』
「突然変異・・・よくそんな言葉知ってるね。
コカトリスのって事は鶏系か」
『マォ、生卵食べたい言ってた。コケコの卵食べれる』
「マジで!それはぶち嬉しい。
多すぎても困るしどうせ生卵なんて儂以外は食べんじゃろうけぇなぁ。
5羽おればええかも。雄1の雌4で頼める?」
『分かった』
鶏が居れば卵は勿論、汚れた敷き藁や糞なども堆肥として使える。
そう考えるとご機嫌なマォである。
外へ出て顔を洗う為井戸へと迎えが空気が少しひんやりとする。
家の中でも顔を洗う事は出来るのだがマォは井戸で顔を能うのが好きだったりする。
祖母の家へ行くと井戸で顔を洗ったり野菜を洗ったりしていたのを思い出すからだ。
(井戸水だと一年中水温が同じだから夏場は冷たくて冬は温かくてええんよね)
そう思いながら顔を洗っているとタオルを持ってくるのを忘れた事に気付く。
(しまったぁ、忘れちょった・・・
まぁ手で水気切ればええか。まだ寒いって訳でもないし)
と思ったのだが濡れた部分に風が当たると冷たかった。
(思ったよりも寒い・・・)
急いで家へと戻るマォ。
そろそろ井戸はやめておこうかと思うのであった。
顔を拭いた後は完成した食堂へと向かう。
オーガパパに頼んで数日で完成したこの食堂で今は食事を摂る事にしている。
早速朝食の準備を始め、いつコルディ達が来ても大丈夫だと安心するマォである。
朝食はカリカリベーコンとソーセージにサラダ。野菜とベーコンのスープにパン。デザートにはブドウを付けた。
今はブドウが旬のようで森でたくさん採れるのだ。
ジャムやジュースにしておけば冬場も楽しめるだろうと考えるマォは食後にジャム作りをする予定だ。
採取はアシーナとイザベルに任せている。
ジャックは相変わらず子守りをしながらマォの手伝いをしている。
ガイアはこの終日の間にハイハイをすっ飛ばしてヨタヨタと伝い歩きをするようになっていた。
(子供の成長って早いよねぇ)
子供や孫の成長を懐かしく思う。
食事が出来上がる頃には皆が食堂へと集まり始める。
「おかん、早いな」
「おはようアルノー。
そりゃ朝ごはんの準備とか考えりゃ早起きにもなるさ」
「確かにそうか。何か手伝うか?」
「これ運んだら終わりじゃけぇ、運んでくれる?」
「分かった」
「おはよう、今日も上手そうだなマォ殿」
「おはようリオル、そんでもって殿はいらん。
ええ加減慣れて?」
「そうだったな、すまん」
リオルは狼系の獣人だ。
だから尻尾や耳の動きで割と感情が判り易い。
ジャックは猫系の獣人なのだがやはり尻尾や耳の動きで判り易い。
言葉よりも体で感情が出てしまう分、獣人達は裏表が無くマォにとっては付き合いやすくて好きだ。
今も耳とシッポがしょぼくれている。
そして全員が揃ったところで食事を始める。
「「「 いただきます 」」」
このいただきますもこの世界には無い。
マォが常に言っていたので興味を示し、意味を教えて貰い皆もマネするようになったのだ。
頂きますとは、肉や魚と言った命に感謝する意味合いと、農作物に携わった人糸や調理してくれる人への感謝の意味合いがある。
それまで何も考えずにいた皆は感謝を忘れてはならないと考えを改めたのであった。
「「「 ごちそうさまでした 」」」
このごちそうさまも同じような意味合いがある。
【いただきます】と【ごちそうさま】が定着するとお残しをする人も居なくなった。
最初は苦手な物を残す人も居たのだが、マォが作物を作る大変さを説いてからはアレルギーではない限り残さないようになったのだ。
後片付けの洗い物は獣人達が交代で手伝ってくれている。
他の皆も手伝いを申し出てくれたのだが、貴族出身のルーク達は食器を割りそうで怖いので断った。
この世界では木の食器も勿論あるけれど、ドロップからも陶器の食器がでたりするようでそこまで高価な物ではない。
マォは陶器の方が慣れているので陶器の食器を揃えたのだった。
ジャム作りは午前中には終わったので午後からは町へ買い物に行こうと思う。
その為アシーナとイザベルも採取作業を午前中で止めて戻ってきている。
「石鹸類や化粧水でしたら私のお勧めのお店がございます」
なんでもイザベルが愛用しているお店はスェイキョウ商会と同じくどの町にでもある大きな店らしい。
そしてその店も王妃付き侍女の実家だそうで安心出来るのだそうだ。
という事はきっとスェイキョウ商会と同じで王都などの町からは撤退しているんだろうとマォは考える。
品物の品質さえしっかりしているのであれば別に関係ないのだ。
もっっちゃんとモルトに乗って町まで移動するのだがその姿を見て「やっぱりモ〇ラ成体とモ〇ラ幼体にしか見えん」と思うマォであった。
町に到着して目的の店まで歩きながら道中の店なども覗いてみる。
掌サイズのヌイグルミを見つけてマォの足が止まった。
(渡せるんかは謎じゃけど、一応用意はした方がええよねぇ)
そう千秋とゆっちゃん用だ。
「すみません、全種類3つづつ下さい」
「毎度あり!ギフト用に包みますか?」
「そうですね、全種類1個づつを1組で2組ほどは包んで貰えますか。
1組は自分用なのでそのままで」
「はい、少々お待ちくださいね」
おかみさんらしき人が店の奥で梱包をしている間に旦那さんへと支払いを済ませる。
「あっしらの娘達がこしらえてるんでさぁ。
こんなに売れたと知ったら喜ぶでしょうねぇ、ありがとうございます」
旦那さんもニコニコと嬉しそうだ。
たくさん買ってもらったからと旦那さんが作っている木彫りのコースターを3つオマケに着けてもらった。
「わぁ、いいんですか?可愛い。ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ」
そうして梱包が終わったヌイグルミを渡された。
籠の中にちまっと並べられており半透明の布で覆われていて上部にリボンが付けられている。
そのまま飾ってもよさそうなくらいに可愛く仕上がっていた。
「「またのお越しを」」
買った荷物はイザベルが収納鞄へと収めてくれたので目的の店へと移動する。
店の中へ入ればいろいろなハーブの匂いが漂っている。
「マォ様あまり安価な物は買わない方がよろしいかと思います」
イゼベルが小声で言う。
「と言うと?」
「庶民向けの安価な物は、その・・・グァマと言う魔獣の脂を使っているのです」
「グァマ?なんじゃろそれ」
「言葉では説明しにくいのですが・・・」
「ご説明いたしましょうか?」
店員の1人が声を掛けて来たのでお願いする事にした。
店員は紙を取り出し絵を描き始める。
「これがグァマと言う魔獣になります」
「えーっと・・・」
潰れたドラ〇もんと思ったがドラ〇もんがこの世界に居る訳も無いので言葉を飲み込むマォ。
「申し訳ありません、まさが自分がこの様に絵の才能がないとは・・・」
店員さんはほかの店員さんを呼んで絵を描いて貰うのだがどれも皆何とも言えない仕上がり具合だ。
(こっちは何さ、事故った車? 潰れた饅頭? いや破裂した餅?)
「グァマを描けばいいのか?俺が描こう」
冒険者らしい男性が描いてくれてやっと何なのか解った。
「なるほど、ガマか!」
そう、グァマはガマガエルに似ていたのである。
名前から連想すればよかったと思ったマォは店員や冒険者に礼を言い、買い物を始めるのだった。
読んで下さりありがとうございます。




