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辺境④

居住区へと戻ってみれば、随分と様変わりした光景が広がっている。


「アシーナ、場所は此処で合ってるよね?」

「イェスマム!間違いなく此処であります!」

「寝ぼけてるとか一緒に夢見てるとかじゃないよね?」

「しかと起きていて現実であります!」

「じゃあさ、なんで儂の家があるんじゃろうか・・・」

「と言いますと? あの異国風の建屋でありますか」

「うん。あれ、儂が元の世界で住んじょった家と似ちょるん」

「そうなのでありますか」


そう、すでに家は3軒ほど完成していた。

たった1日で3軒もだ。

それだけでも驚く事なのに、その内の1軒はマォが元の世界で済んでいた古民家に類似しているのだ。

マォは中がどうなっているのか気になり、背負い籠を降ろすと家の中を見て回った。


玄関の引き戸を開けて中へと入れば、広い土間がある。

土間を挟んだ左右に部屋があり、そのまま土間を進めば昔ながらの台所がある。

流し台と調理台、そして竈が2つ。


「ぅわおっ、まんま儂の家の台所じゃん」


そして部屋の仕切りは襖らしき物と障子戸が使われている。

とは言え襖紙や和紙の障子紙などがある訳も無いので、似たような何かが使われている。


「素材は違うっぽいけど、よく襖の絵まで描けたもんじゃね。

 と言うかこんな古民家の間取りよく知っちょったね・・・」

『マォ、父が言うには夢の中でマォの家見て来たらしい』

「ほぇっ?! マジで?・・・」

『名前、ちぁきだったか。話もしたらしい』

「ぶっ、マジかぁぁぁ。

 うちの娘失礼な事しちょらんじゃろか」

『お茶とセンベイと言う菓子を頂いたと言っていた』

「センベイ・・・もちっとマシな茶菓子があっただろぉぉぉ!」


何故煎餅をチョイスした娘よ・・・と嘆くマォであった。


その後も家の中を見て回れば囲炉裏まであったが、さすがに畳はなくすべて板間だった。

そして寝室にはベッドまで置いてあり、トイレと風呂までもあった。

勿論土間の台所とは別に普通のキッチン、こちら風の物も作ってあった。


「風呂やトイレ、囲炉裏にベッドまで。

 しかもこっち風のキッチンもとか至れり尽くせりで感謝しかないな。

 見ただけで此処まで造れるなんて凄いね」

『父と兄達建築スキルある。母と姉達、木工スキル。

 オルガは工芸スキル』

「なるほど、職人一家て感じじゃね」

『細々したものはマォの希望聞いて作る』

「そこまでしてくれるの?!」

『大事な仲間、家族だから当たり前』

「オルガ~!ありがとう!」


思わずオルガに抱き着いてしまうマォ。

その様子を遠目に見ていたルークやオーウェンは少し羨ましく思うのだった。


他の2軒も見せて貰う。

こちらの2件はこの世界の一般的な家の作りになっている。


『あの町の家参考にした』

「中も見たの?」

『父のスキルで解るらしい』

「へぇ、凄いね」

『残りの家も後2日あれば大丈夫』

「はやっ! あ、アルノーは儂と一緒に住むんでもええと思う」

『聞いてみる』

「そうじゃね、聞いてみよう」


勿論アルノーは快く承諾した。

が、他からブーイングが起きた。


「なぜアルノーだけ。ずるいではないか」

「私は当然マォ様とご一緒ですよね?」

「私とてマォと一緒の方が安心できるのだが?」


などと言われても困るマォである。


「アルノーとは親子だからね」

「ではマォ様、私を娘にして下さいませ!」

「ならば私も息子に」

「ルーク様は年齢的にも無理があるでしょう!」


『マォ、これ等は老け顔の子供か』

「ぶっ・・・ まぁこの様子じゃそう思っても仕方がなかろうねぇ」


結局は悪天候の時でも行き来できるように渡り廊下で家を繋ぐという事で皆なんとか納得した。

そして案を出し皆を納得させたのはオルガである。


(オルガに諭されるとかホントおこちゃまかっ!)


やれやれと溜息を付くマォなのであった。


その夜、うとうとと眠りにつきかけた時にマォは思い出してしまった。


(あの大きさのオーガパパがあの家に入れたん?!

 ってか、千秋と会話出来たん?!えぇぇ、どないなっちょん・・・

 まぁ夢じゃったらなんでもありなんかも知れんね)


夢だからと自分を納得させて眠りについた。

そして案の定、夢を見る。



「おかん!おかんおかんおかん!

 こないだ緑のでっかいオークのおっちゃんに出会った!」


行き成りハイテンションな千秋である。


「あんたねぇ、彼はオークじゃなくてオーガ!」

「そうなん?オークとオーガって何が違うん?」

「オークは豚系の魔物で低知能。

 オーガは巨人族の魔物で知能はオークよりも上」

「ふーん、よぉ分からん」


千秋はマォと違いMMOやRPG系のゲームはやらないのでいまいちピンと来ていない。


「まさかとは思うけど本人にオークとか言ってないじゃろうね」

「大丈夫、そこはちゃんと緑のお兄さんってゆうちょいた!」


それはそれでどうなのかと思うマォである。


「そうそう、そんでからね。

 おかんの家作るから参考にこの家見せてくれちゅうけぇ見せちゃげたんよ」

「よぉあの巨体が入ったね・・・」

「巨体なん? うちが見たんは2mくらいの身長じゃったよ」

「マジか! 夢じゃけぇ身長もそれなりに合わせたんじゃろか・・・

 実際は5~6mあるよ」

「えぇぇ、マジか。見たかったぁ。

 あ、ほんで囲炉裏とか竈とかぶち熱心に見よったけど無事作れたんじゃろか」

「器用に作っちょったよ。

 襖も再現されてて絵も描いてあったんよ」

「は?あの襖絵描いたん?」


この古民家の襖絵は松の木と白鷺のような鳥が描かれている。

墨の濃淡だけで繊細に描かれているのだがよくも再現出来たものだと改めて感心する。


「そう言やぁさ、なんで茶菓子が煎餅じゃったん?

 もちぃとなんかええのがなかったん?」

「たまたま他に無かったんよねぇ。

 あ、でもちょうどお昼ご飯でおむすび作っちょったけぇそれも出したよ。

 なんか梅が気に入っちょったよ」

「梅?! 酸っぱくなかったんじゃろか」

「おかんの作った梅じゃゆうたら喜んじょったけぇ、作っちゃげたら?」

「青梅とかシソが手に入ったら作っちゃげようか・・・」

「無くなる前に私も漬けちょこうかなぁ。作り方教えて?」


簡単な梅干しの作り方を教えておき、梅の実は傷をつけない様に、入れ物や使う道具は殺菌する事を忘れない様にと念を押すマォ。

千秋はスマホでメモを取っているのだが、起きた時にそれが残っているのかは謎である。


「次は誰に会えるんかね?楽しみじゃぁ」

「いやそないあれこれと会えんのじゃないん?」

「でも結構会っちょるよ?

 お兄とかジャックくんとか。あ、イザベルさんにも会ったわぁ。

 それにオーガのお兄さんじゃろ。ほら意外と会っちょるじゃん」

「ん?ジャックは聞いたけどイザベルとも会っちょるん?」

「私がじゃなくてゆっちゃんがじゃけど」

「へ? ゆっちゃんが単身でイザベルと? 嘘じゃーん。

 それなら儂んとこに来てよゆっちゃーん!」

「まぁその内また会えるんじゃないんかね」

「まぁそうじゃねぇ」


ここで視界がぼやけてくる。

目覚めの兆候だ。


「んじゃおかん、またねー!」

「うん、またね」


こうなってくると、確実に()()があると思う2人であった。




もそもそとテントから出て来て伸びをするマォ。

なぜ家が出来たのに家で寝なかったのか。

それは出来たてなので2~3日は風を通して乾燥させるようにと言われたからだ。

竈なんかも1度空焚きするほうがいい。

お風呂は薪風呂ではなくリオル達が持ってきた魔道具を使った風呂だったので空焚きの必要はない。

その為今日は採取に出かけず、家の換気と竈の空焚きをするつもりだ。

余裕があれば庭を造ろうとも思っている。


「おはようございます、マォ様」

「おはようイザベル」

「あーよ」

「ガイアもおはよう」


ガイアはやっと離乳食を始めたばかりだと言うのに喃語を話すようになった。

はいはいも出来るので人間の成長よりは少し早いようだ。


「今日は家の事やるしガイアは一緒に居ようか」

「ぅあぃ」

「では私も」

「自分が一緒に居るであります!」


イザベルの言葉に被せるように言ったのはジャックだ。

ジャックはすっかり子守りが板についている。


「ジャックはいつもガイアと一緒ではありませんか!」

「イザベル殿とて同じであります!」

「はいはい、喧嘩しないで。

 んじゃ午前中はイザベルで午後からはジャックに頼むよ」

「承知いたしました」

「イェスマム!」


午前中はイザベルが子守りをし、ジャックは薪割りをする事になった。

午後からはジャックが子守りをし、イザベルはマォと一緒に竈の空焚きをしながら洗濯をする事になった。

皆忘れていたのだが洗濯物が溜まっているのである。

移動の間は仕方が無いとしても何故領地に居る間にやらなかったのか。

城には洗濯係が居た為その存在を綺麗さっぱりと忘れていたからである。

そして昨日、アルノーに言われて思い出したのだ。


「おかん、洗濯物を干す場所は井戸の近くがいいか?」

「あー、そうだね。

 そうか、洗い桶や洗濯板も買ってこなきゃ」

「おかん、いままでどうしてたんだ?」

「城に居る時は洗濯係のメイドがやってくれちょったね。

 城を出て来てからは・・・

 あれ、どうしちょるんじゃろう」

「まさか・・・」

「溜まっておりますね・・・」

「まーじかぁ。あかん、明日やろう」

「そういえば僕も溜まっているね・・・」

「私も忘れていたな・・・」

「私もですね・・・」


結局洗濯も皆経験が無かったのでマォが一手に引き受ける事にしたのだった。

読んで下さりありがとうございます。

ブックマークやリアクション、誤字報告等もありがとうございます!

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