辺境②
ボア汁と炊き込みご飯は大好評だった。
オルガ親子も居るのだからとかなり多めに作っておいたはずなのに綺麗に無くなった。
それでも足りない訳ではないようなので一安心するマォ。
食後は其々のテントで休む。
オルガはすでに自分の家を建てていた。
どことなく竪穴式住居っぽく見えたのだが中を見せて貰えばロフトもあって意外と住みやすそうな作りになっていた。
「これはなかなか快適な空間ですね」
「うん。地面を掘り下げてあるから暑さ寒さに強い作りになってるんよね」
「マォ様は住んだことが?」
「いや、子供の頃に教えて貰っただけだよ」
「そうなのですね」
余り長居してもオルガ達が休めないだろうと思い自分達のテントヘと戻れば、子守りをしていたはずのジャックが寝落ちしていた。
肝心のガイアはジャックの背中をとんとんしている。
(お前が寝かし付けられてどうする・・・)
「いかがなさいますか、起こしますか?」
「いや、疲れもあるんじゃろうし寝かしちょいて」
「ではブランケットを掛けてきましょうか」
「うん、お願い。ほらガイアはこっちでねんねしようね」
ガイアを抱えてベッドへと移動する。
背中をトントンと叩いて寝かし付けるつもりがマォも寝落ちしてしまっていた。
それに気付いたイザベルはそっとマォにもブランケットを掛けてやりガイアを寝かし付けるのだった。
次の日、朝食を済ませて其々の仕事を始める。
マォはアシーナと共に山菜や木の実を採取しに出かけた。
「アシーナ、山菜やキノコ類の見分け方わかる?」
「イェスマム!子供の頃より採取しておりましたので解るであります!」
「えーっと、もう少し砕けて話してくれてもええんじゃけど・・・」
「敬愛する方に対しては無理であります!」
「いや、敬愛はいいんだけども喋り方を・・・」
「駄目でありますか」
「駄目ではないけども・・・うん、まぁいいや」
きっと慣れた喋り方の方がいいのだろうと思う事にするマォ。
そんなことよりも山菜採りが先だ。
山菜は茹でてあく抜きをした後に天日干ししておけば日持ちする。
それに木の実だって乾煎りしておけば日持ちするし果実も物によっては乾燥させることが出来る。
ガイアもそろそろ離乳が始まるだろうから出来るだけいろいろな物を採取しておきたいのだ。
ゼンマイ・ワラビ・コゴミ・ギョウジャニンニク・アマドコロ・ヤマブキ・ヤマウド・ヨモギ・カンゾウ・ノビル等々お馴染みの山菜が取れていくのだが・・・
(季節無視して色々な山菜があるんじゃねぇ・・・)
静かに驚くマォである。
だが頭の中では天婦羅でもいいしたまり漬けにしてもいいだろうし、ヨモギなんかは傷薬にもなるから多めに欲しいななどと考えていた。
「マムの国では山菜はどのようにして食べるでありますか」
「そうじゃねぇ、天婦羅こっちで言うフリッターみたいなのにしたり
それこそ炊き込みご飯でもいいしたまり漬けにしてもええねぇ。
後はヨモギなんかは餅でもいいしお茶にもなるよ」
「聞いた事が無いものばかりであります!」
「そのうち作っちゃげよう。
アシーナ達はどうやって食べちょるん?」
「大体はピクルスであります」
「なるほど、それもええかもしれんね」
会話をしながらも採取をしていく。
ピンクでハート柄のキノコがあったり口がある不気味なキノコがあったりもしたがどれも食べれるらしい。
「マム!ワライダケがあったであります!
これすごく美味であります!」
「ワライダケ?こっちじゃと食べれるんじゃね。どんなんなん?」
「これであります!」
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
「 ・・・ 」
見た目は松茸に似ている。似ているが笑い声を発している。しかも「ウヒャヒャヒャ」である。
もっとほかの笑い方があるだろうと思うマォであるが、もしかしたら見た目通りの松茸味かもしれないと採取する事にした。
「うひゃひゃひゃ」「あひゃひゃひゃひゃ」「ウヒャーヒャヒャヒャ」
「ねぇアシーナ。これいつまで笑っちょるん?・・・」
「丸1日であります!これが聞こえなくなったら食べ時であります!」
塩焼きが美味であります!」
「なるほど、じゃあ明日にでも食べてみよう」
1回食べる分は採れたので他は残しておく事にし、場所を移動する。
そうして採取を続けていると「コッキョ クウグウ コォコ」とササミの声がした。
「あれ?今の声はササミよね?」
「イェスマム!」
「なんで聞こえたんじゃろ・・・」
「ご機嫌な声だったであります」
「クォークォーゴキョッ! ゴキョボェッ」
「ぶっ、何今の声」
「何かに驚いた声みたいであります!」
「驚いたって何に ぐえっ」
言い掛けたマォの後頭部にササミがぶつかってきた。
「いたた、首がグキッって。むち打ちになるけぇ止めてくれんかね」
「ホキョッ?」
「ホキョッじゃないんだわ・・・
可愛いく首傾げてもだめなんよ・・・
で、ササミどうしたん?」
「コキョッ? コキョキョックゥクゥドゥ」
「ん?さっぱりわからん・・・」
「自分も解りま・・・うわぁぁ」
「へ?」
アシーナの驚き声でササミの後ろを見ればサイクロプスがにょきりと顔を出している。
「うぉっ、サイコロ・・・じゃなくてサイクロプス!」
サイクロプスがササミを捕まえようとするがササミはヒョイとマォの後ろへと隠れる。
「痛い痛い、それ儂の頭だね!」
「ウガッ」
サイクロプスはすぐにマォの頭を放し再びササミへと手を伸ばす。
ササミはひょいと避けてしまう。
「ちょっと待って。ササミ!あんた一体何したん!」
「コッキョ」
マォの問いに対してササミが再現して見せる。
「こうやって革袋をつついてびろーんと引っ張って?」
限界まで引っ張った後にパチンッと放すゴムパッチンならぬ皮パッチン。
何をしてるんだかと思うのだがある事に気付いてしまった。
「もしかしてその革袋ってさ・・・」
サイクロプスを見れば頷いている。
「ササミー!サイクロプスの大事な袋は突いちゃいけません!
引っ張ってもいけません!分かった?」
頬を掴んでぐいぐい引っ張りながら説教をするマォである。
「サイクロプスさんもごめんね、ちゃんと叱っちょくけぇね。
痛かったよね、薬要る?」
「ウガウガッ」
サイクロプスは腰布をめくり見せようとしてくる。
「「見せなくていい!」」
慌てて止めるマォとアシーナであった。
どうやらまだ少し痛むものの大丈夫らしい。
マォは痛いの痛いのとんでいけで痛みをササミに移してみた。
「クォォ ホゲェェェ」
ササミが飛び跳ねているのでやっぱり少しの痛みじゃなかったじゃんと思った。
その様子を見ていたサイクロプスは満足したのか森の奥へと戻って行った。
「やれやれ、温厚なサイクロプスだったからよかったものの。
捻り殺されても文句言えない状況じゃったんじゃからね!
分かってる?ササミ。反省しなよ!」
「グォッケッ・・・」
「マム、戻ったらバックリーにも報告しておくであります!」
「うん、頼むね」
気を取り直して採取を続ける2人。
ササミは反省したのかしてないのか、居住区の方へと走り去っていった。
「マム、あそこにヘビイチゴが群生しているであります!」
「お、少し採っていこうか」
ヘビイチゴは特に甘い訳でもないがアルコールに着けておけば虫刺されの薬になる。
そう思い、少しばかり
採取しておこうと思ったのに、近づいてみてマォは吹いた。
「ぶっ そうきたかー!」
「何かおかしな点があるでありますか?」
「いや、ちょっと儂の知っちょるヘビイチゴと違ったけぇおどろいたん」
野イチゴのような見た目ではなく、デフォルメされた真ん丸な可愛いらしい蛇の形をしているのだ。
色は真っ赤なのでグミに見えなくも無いと思ったマォは1つ摘んで食べてみた。
「うはっ、なにこれめっちゃ濃いイチゴなんじゃけど! うまーっ!」
「森の奥にしか自生しておらず貴重ですが美味いのであります!」
「そうか、森の奥限定の貴重品かぁ。
ん? 今なんつった?森の奥?」
「イェスマム! 森の奥であります!」
「て事はここも森の奥?」
「そうなるであります!」
「駄目じゃん!奥まで来たら帰り道が・・・」
「大丈夫であります!居住区はまだ見える位置であります!」
アシーナに言われて周囲を見れば確かに遠くではあるが居住区が見える。
迷子にならずによかったと安心するマォである。
「んじゃ今日はこのヘビイチゴ収穫したら戻ろうか」
「イェスマム!」
群生している内の半分ほどを採取し、居住区へと戻る事にする。
思ったよりも種類が豊富で量も豊富だった事でマォはご機嫌である。
背負い籠の重みも今日の成果だと思えばなんのその。
この山菜達をどうやって食べようかと考えるマォなのであった。
読んで下さりありがとうございます。




