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スカイラー②

部屋に戻り話を詰めていく為に、まずこちらの事を話しておく。


国境を守る我々4つの公爵家は独立と言う(てい)を取りつつも其々が隣接する国、我が領であればカレフ国の庇護下へ入る。

これによりウォール国側の門は完全に閉じる事となる。

其々の領とはこれまで通り連携を取り流通もそのままだ。


「ありがたい事に近隣諸国の方でもあの辺境については不干渉で居てくれるそうだ。

 だが必要な支援があれば喜んで手を貸すとも言っていただけたよ。

 まったく、この国はいつまで過去に固執するのか・・・」

「先代達の苦労が報われませんね」

「まったくだ。

 そういえばルーク。お前世界基準の地図を見た事があるか」

「地図はどの国でも同じなのでは?」

「そう思うであろう。だがな違ったのだよ」


地図を広げてルークに見せる。


「な、これが事実なのですか。嘘だろ・・・」


ルークはそう呟いて天を仰いでしまった。

ウォール国の地図ではウォール国がさも大国かのように描かれているのだが実際は違う。

カレフ国の五分の一にも満たない小国なのだ。

この事実を知られたくなくて、世界基準の地図を使ってこずにきたのだろう。

無駄な虚勢を張って何になると言うのか。


「この地図にしても

 曾祖父の代からは世界基準の地図を使うようにと通達があったはずだ。

 だが結局は事実を認める事が出来ない阿呆共は

 そのままの地図を使っていたのだろうな」

「平民は冒険者や旅人でない限り地図は使わぬしな。

 冒険者や旅人にしても国内の地図があれば間に合ったのだろうからな」

「エルフィンはこの事をしっておるのだろうか」

「私の知る限り城内でもこのドウォールの地図が世界基準だとされていたんだ」

「そうか。地図など城でも見れるであろうと

 出仕する前のお前に見せなかった私の失態だな。すまない」

「他の公爵家もこの地図を持っているのですか?」

「ああ、4家とも皆持っているよ」


繁々と地図を見てルークは考え込んでいる。


「なるほど、合点がいきました。

 広大な国土があるのに何故他国からの輸入量が多いのか。

 実際はこうも国土が少ないとは。

 この地図を見る限り山や森が周囲を取り囲んでおり

 農耕に適した土地はわずかではないですか。

 国境の門が閉ざされ、ウォール国はどうするつもりなのでしょうね」

「さぁな、我々が知る由もない事だ」

「確かに。では兄上も独立という事でよいのですね?」

「ああ」

「それならば安心しました。

 ところで、バッカスのあのバカ息子はどうなりました?」

「ふっ、バッカスが根性を叩き直して来いと姉上の所へ送り込んだ」

「なるほど、それはいい」


その後は辺境も独立区と承認するためにも書類が必要になるので、早々に名前を決めるように言っておいた。

さすがに『辺境独立区』では具合が悪かろうと思うのだ。

名前さえ決まってしまえば後はこちらでなんとか出来る。

当然末弟のバッカスを呼びつけて手伝わせるつもりでいる。

そもそのバッカスの息子をあの馬鹿の目付にと付かせたのに、一緒になって馬鹿をするとは情けない。

ではそろそろお開きにするかと思った時知らせが入った。


「閣下、森でオーガが狙われたと報告があがっております」

「どこの馬鹿者だ、そんな事をするのは!」

「すでに3名の冒険者が対応に向かったそうであります」

「この町の冒険者が森に入るなどと・・・あ、いや待てよ。

 ルーク、どう思う。私にはその冒険者達が彼等に思えるのだが」

「間違いなくあの3人でしょうね。

 任せておけば心配はいらぬと思いますが、一応様子を見に向かいますか」

「うむ、一応な・・・」


モファームのモフィーヌに乗せてもらい駆け付ける途中でオーウェンに遭遇した。

何やら気味の悪い物を乗せているのだが何だろうか。


「義兄上、コレが犯人だ。一応は貴族らしいのでな処分は頼む」

「待て、そのゴミをどうするつもりだ」

「ゴミではないぞ、まだ一応は息をしている」

「いやいやいや、ゴミではないか。まさか」

「犯罪者だからな、領主館に運ぶぞ」

「んがっぐっ・・・」


どう言えばよいのか言い淀んでしまい変な声が出てしまう。

その間にオーウェンは走り去ってしまう。

貴族と言うだけでおおよその察しはついた。

あれを箱詰めにして城へ送り付けたら嫌がらせになるだろうか。

少しエルフィンが気の毒になるが犯罪者は城へと送る決まりである。

館に置いておきたくはないしな、すまんなエルフィン。

などと考える間に現場へと到着した。

子連れのオーガであった事に少し驚いたが、すでに手当も済んでおり、顔色も良いようなので安堵する。

仲良くなったと言うマォ殿経由で「この時期は子育て中の魔獣も多い。気を付けて欲しい」とオーガに言われてしまった。

我が領では魔獣や魔物とも適度な距離を取り無駄な争いをせぬ共存関係を築いてきた。

それをどこからか潜り込んできた阿呆に壊される訳にはいかないのだ。

やはり早々に門を封鎖するとしよう。


「オーガの」

「オ・ル・ガ! 名前があるっちゅーたでしょ!」


マォ殿に叱られてしまった。


「すまぬ。オルガの無事も確認出来た事だし私は戻るとしよう。

 領民達にも育児期間は気を付けるよう伝えておく。ではな」


皆と別れて館へと戻る途中で町に立ち寄り注意喚起をしておいた。


「領主様、あの冒険者殿にお礼をしたいのだが」

「あー、彼らは特に気にせぬと思うが」

「あたしらの気持ちが収まらないんですよ」

「冒険者殿のお陰でこれからもオーガ達と争わずに済みますからな」

「まぁそうだな。惨事にならずに済んでよかった。

 わかった、であれば何か食料を届けてやるがよい。

 ルークの屋敷に滞在しているはずだ」



館に戻るとアレ等がゴロンと転がっていた。

早急に城へと送り付けるべく書状を書く。

『領内にて禁忌を犯した者達を送り返す。厳しく処罰されたし』


「アイザック、この書状と共に広場に転がっていたアレを城に送っておけ」

「はっ、畏まりました」


その後平穏だったのは2日だけだった。


「この愚か者めがぁ!!」


思わず机を強打してしまう。

珍しくアムリタから手紙が届いたと言うので読んでみればどう見てもエルフィンの文字なのだ。

しかも内容は泣き言ばかりで自分ではどうにもできぬから手を貸してほしい、マォ殿やルークに戻ってくるよう説得してほしいと言う物だった。

たった数日で音を上げるとは何事かと呆れてしまう。

自分でどうにも出来ぬと言うならば曾祖父が残した文献でも読めばよかろうものを。

まったく、そのような及び腰だから古狸共のいい様にあしらわれるのだ。

ルーク達にも一応は報告しておいた方がよいのだろうと重い腰を上げて出向く事にした。


屋敷を訪れればルークは居たがマォ殿は留守だった。

そろそろ戻る頃だと言うので待つ事にする。

どうせならば纏めて話してしまいたい。

少ししてマォ殿が戻って来たので挨拶を済ませると用向きを聞かれたぼで答えた。


「うぇっ・・・」


名前が出ただけでこう言われるエルフィンが少し気の毒にも思えたが自業自得であろうから仕方がない。


「戻ってきてくれ、手伝ってくれって知るかよ!

 なぁに他力本願な事言ってんのさ!

 自分等の国の事だろうがよ!自分等で考えろよ!

 手助け希望するなら自分の身内頼りやがれ!儂に頼るな!

 儂、助言する義理はねぇぞ!」

「「「 ごもっとも・・・ 」」」


マォ殿の怒号にそれ以外の答えがあるだろうか。

マォ殿は腹の虫が収まらぬのかルークの腕を掴み外へと連れ出した。

何が起きるのかと皆後ろを着いて行くので私も着いて行ってみる。

ある程度距離を開けているので何を喋っているのかまでは聞こえなかった。

ルークが王都の方角を指さすとマォ殿はそちらを睨みつけた。

次の瞬間、遥か遠くにある王都へと稲妻が走るのが見えた。


( ・・・ )

「おかん、今のは・・・」

「アルノー、気にしたら駄目だ・・・」

(なるほど、あれはマォ殿がという事か)


ルークがマォ殿は底知れぬと言っていたが、まさに今それを目の当たりにした気分だ。

けして怒らせてはならない人物だと把握した。


室内に戻って来たマォ殿は明日ここを立つと決めたようだった。

もう少し話をしてみたいと思うのだがいかんせんルークが邪魔をしてくる。

皆が荷造りをする間にマォ殿が料理をするようだ。

どのような物を作るのか気になる。


「領主殿も食べていく?」

「それはありが」モガモガフガッ

「兄上は忙しい身ですからね、すぐに(いとま)するそうですよ」


折角誘って頂いたのにルークが勝手に断りを入れてしまった上に追い出されてしまった。

我が弟ながら狭量な・・・

まあよい、落ち着いた頃合いを見て遊びに行けばよいだろう。



そう思いながら帰路に着くスカイラーなのであった。

読んで下さりありがとうございます。

ブックマークやリアクション、いつもありがとうございます、励みになってます(*'ω'*)

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