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エルフィン①

足を運んでくださりありがとうございます。

この世界にある北の大陸、その北の大陸の中央より少し北に位置するウォール国。

そのウォール国の現国王がエルフィンである。


エルフィン・ド・ウォール 37歳 金髪碧眼

すらりとした見た目に反して実は【服を脱ぐと凄いんです】系の人物だ。

サラサラと伸ばした髪はよく似合っており、顔立ちも整っている。

数代前の王がエルフを伴侶として迎えたから王族には整った顔立ちの者が多いと言われている。

もっとも当の本人達はその自覚がない。

もれなくエルフィンもである。

見た目も若々しく本人としてもまだ若いつもりでは居るが最近頭頂部が涼し気になってきた気がしなくもない。


(家系的には禿るはずはないのだがな)


エルフィンは鏡を見る度そっと溜息をつく。


(気のせいか顔つきも少し老けたような。これもすべてあの愚か者のせいだ)


そう、すべては愚息である第二王子のせいではあるのだ。


数日前の事。

第二王子のやらかし報告を受け駆けつけてみればベッドに寝かされた血の気の無い顔色の女性が居た。

連れて来た侍女長に確認されれば治療とも呼べないような処置しか施されておらず、急いで侍従に治癒師を連れてこさせれば、治癒術が掛りにくいと言う。

ならばと医師も連れて来させ双方の治療を試みる。


(異界の者は治癒術がかかりにくい体質なのであろうか)


曾祖父の代で異界の者を召喚する術は禁術となり古い記録にも異界の者についての詳しい記録は残っておらず、まさか治癒術がかかりにくいとは思わなかった。

医師と治癒師が懸命に手を尽くし、ようやく一安心出来る状態までになった時にはエルフィンは力が抜けて腰から崩れ落てしまった。


(よかった。命まで奪ってしまったとなればこの者とて浮かばれまい)


エルフィンは安堵の溜息をついた。


(しまった、このような姿をさらしてしまえば母に叱咤されてしまうな)


『 王たる者いかなる時でも冷静に対処せよ 』


母の教えではあるが、この状態では無理ですよ母上と心の中でつぶやくエルフィンであった。


何処たるかも解らぬ世界に召喚された瞬間刺されて倒れる

それはいか程の恐怖だったろうか。

もしかしたら恐怖を感じる間もなかったかもしれない。

いったいどう償えばよいのやら。

はぁ・・・と深い溜息をつくもさすがに今は誰も咎めない。

皆この状況に困惑していたのだ。


先程魔導士長から上がった報告によれば次に召喚術が発動可能となるのは200年後になるだろうとの事。

長寿の種族であれば存命かもしれないが我々人族の寿命を考えるとその可能性は低いと考えていいだろう。

さて、今後の対応をどうしたらよいものか。

エルフィンはそう考えながら異界の女性、招き人が目を覚ますまで付き添う事にした。

もっとも不本意に招かれたのだから当事者としてはそう呼ばれたくはないだろう。

宰相や侍従長に止められはしたがこれは王としてではない父としてそうしたいのだと無理に納得して貰った。

子の不始末は親が責任を取らねばならん。が、一個人としてまずは詫びたいと思ったのだ。


しばらくして招き人が目を覚ましたので謝罪と説明を簡単にさせてもらった。

あまり詳しく説明したとてこちらの事情を理解は出来ても納得は出来まいと判断し、体力も落ちているであろう事も考慮し手短に済ませることにしたのだ。

招き人は混乱や怒号も無く静かに話を聞いた後に幾つかの質問があると言う。

その質問にも答えていく。

言い淀んだ部分もあったが本人に気になるので教えてくれと言われ、申し訳なさそうな声で答えていく。

ピリッと一瞬だけ殺気が走ったような気がした。

質問に答え終わった後頼みが1つあると言われたので可能な範囲でならばとエルフィンは了承した。


「目を閉じて両手で耳を塞いで100まで数えて下さいませ」


エルフィンは怪訝に思いながらも言われたと通りに目を閉じ耳を塞ぐ。

一応は体面もある為平静を装ってはいるが内心ビンタの1つ2つ飛んでくるのではないかとドキドキである。




『 っざけんじゃねぇぞこのクソガキがぁぁぁぁ! 』




ビクッと肩が揺れた。もしかしたら尻も少しは浮いたかもしれない。

しかも耳を塞いだところで丸聴こえなのだが。

人払いをしておいてよかったとエルフィンは思ったが、実際はドアの向こうには見張りの近衛騎士達が立っている。

鍛え抜かれた精鋭である近衛騎士達の尻がキュッとなったとか、ならなかったとか。


息継ぎもせずにアレコレを叫びきった招き人は肩で息を切らせながらニコリと微笑み


「ふぅ、少しだけスッキリしました。ケホッ ゴホゴホ」


吐血した・・・


その状況に慌てたのはエルフィンである。

まだ傷も完全には塞ぎきっていないのにとあたふたとする。


「だ、大丈夫か! 誰か! 医師を!治癒師を呼べ!!」

「大丈夫ですよこれくら・・・ ダバァー」

「うぉあっ・・・ タオル!タオルを!!」


(どう見ても大丈夫ではないだろう!

 落ち着いて下さい、でもないだろうよ招き人!

 あああ、待て!待ってくれ!そこに突っ伏すな!血だまりに顔をうずめるな!)


「誰か・・・誰か早く来てくれー!」


かつてないほどの大声でさけぶエルフィンであった。

その後駆けつけた治癒師と医師の診断で、乾燥した喉の状態で大声を上げ叫んだので喉の細い血管が切れたのだろうとの報告があった。


(これは私の失敗であろう。

 寝起きだから喉が渇いていてあたりまえだ。先に水を勧めるべきだった。

 次に目を覚ました時はまず水だな、次に温かい飲み物か軽い食事を勧めよう)


そう考えながら政務室へ戻り一息つく。


それにしてもあの第二王子はどうすべきか、処遇に頭を悩ませる。

アレはいつからあの様な分別の無いおかしな思考をするようになったのか。

兄弟姉妹皆同じように分け隔てなく育てたはずだが・・・


エルフィンはきょろきょろと周囲を見回し、気心の知れた宰相しかいないのを確認すると机にだらりと突っ伏した。

読んで頂きありがとうございます。

そしてリアクションもありがとうございます(人'▽`)

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