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ルーク②

翌朝、まずはアルノーとイザベルに招き人専属になってくれるように伝えた。

2人は快く承知してくれたので助かる。

古狸等の横槍が入らぬ内に王の政務室へと足を運べばそこに姿は見当たらず、扉の前の警備騎士に訪ねれば招き人の元へ向かったと言う。

何の用があって向かったのだろうか。

仕方なく私も招き人の元へと足を向ける。

早々に承認させねば困るのだ。


「大丈夫だ、不敬とはいわん。

 国王でなければ私とて怒鳴りたいくらいだ。

 して招き人殿、どつくとはいったい・・・」

「おふっ・・・」


到着早々に訳の分からぬ言葉が聞こえてきた。

どういった経緯なのかを扉前に立つアルノーに聞いてみる。


「招き人殿が第二王子に抗議なさりたい様で

 これから陛下と共に向かわれるようです」

「陛下と共にか?」

「妃殿下も合流なさるようですよ」

「妃殿下もか!」

「はい、招き人殿の仰るどつくが気になる御様子です」

「それは確かに私も気にはなるが。 よし、私も一緒に行こう」


そっと中に入り陛下の斜め後ろに位置を取る。


「いやそこは気にしないでいただきたく・・・」

「余計に気になるではないか」

「いえですからね・・・」


招き人が言い淀んでいるのだから察すれば良いものを興味が勝ってしつこく訪ねてどうする・・・

ここは私が止めた方がよいのであろうな。


「んんっ、陛下。招き人様が気にするなとおっしゃっているのです。

 気にしない方がよろしいかと。

 それに見ればどういったものなのか分るのでは」

「ふむ、それもそうか」


その言葉を聞き招き人がギョッとした顔になる。

見せる事も憚られるような事という事か・・・

だが撤回も出来ないので申し訳ないが招き人に耐えてもらうしかない。


「素で喋るのでかなり言葉使いが悪いですよ?

 見ない方がいいと思うのですが」

「素・・・なるほど。それはそれで一興ではないか」


なんとか諦めさせようとする招き人の発言は陛下の興味をさらに惹いてしまったようだ。

すまない招き人、ここは諦めてくれ・・・

その後招き人の呼び方を訪ねてスッと腕を差し出す陛下なのだが、まずは立たせて差し上げろと思う。

が、立ち上がろうにも力が入らないのか招き人はよろめいてしまった。


「どうした。まだ傷が痛むようなら抱えて・・・」

「ひぇっ、いえ大丈夫です。陛下のお手を煩わせるなど恐れ多い・・・」


自慢ではないが私も陛下も非力だ。とでも抱きかかえる事は出来ないと思うのだが陛下はその自覚がない。

だが私は違う。非力ではあるが補助魔法が扱える。

補助魔法は属性に関係なく習得する事が出来る。


「よいことルーク。貴方はスカイラーと違い腕力も体力も無いのだから

 いざという時の為に補助魔法を覚えなさい!もちろん無詠唱まで頑張るのよ!

 好いた女性くらい抱きかかえられるようになりなさい。

 好いた女性の前では格好良くありたいでしょう?詠唱なんで野暮よ野暮!」


姉上の特訓のお陰で無詠唱で補助魔法を発動できるようになったのだ。

好いた女性はさて置き、たまには恰好つけたいと思う。

今日ばかりは姉上に感謝だなと思いつつ、招き人を抱きかかえた。


「では失礼して私が」


陛下は不服そうな顔をしているが仕方があるまい。

抱えたところで落としでもしたらどうするのだ。

そもそも陛下が抱きかかえてみろ、古狸共がこれ幸いにと招き人を閉じ込めておくた為に側妃にと騒ぎ出すに決まっている。

そんなこと招き人が望むはずはないのだから少しは考えて行動してもらいたいものだ。


歩き始めれば招き人は顔を真っ赤にして体から距離をあけようとしている。

照れているのだろうか。

意識されるとこちらも困るし体が離れれば不安定になってしまう。


「しっかりと手を廻していただかないと逆に不安定になって危ないですよ」


そう促せば周囲の視線から隠れるようにピッタリとくっつき顔を埋めてしまった。

なんと愛らしい反応をするのか。

私の心臓がトクリと大きく脈打った。


その後は意識しない様に気を付けて第二王子の私室へと向かう。

到着すればそこにはすでに妃殿下が待機していた。

何やら意味ありげに微笑んでくるので私はそっと招き人を降ろし妃殿下へと挨拶した。

招き人も深々と頭を下げていた。

見張りの騎士へ扉を開けるように伝える。


「では招き人殿、存分にな」


陛下が中へ入るよう促し招き人が足を踏み入れると第二王子の叫び声が聞こえた。

なにやらババァと連呼しているようだが、まずいな妃殿下の眉間がピクピクとしている。

止めた方がよいだろうかと騎士と目を合わせたのだが、次の瞬間招き人が第二王子の胸倉を掴んでいるのが見えた。


「宰相閣下、自分不甲斐なくもあの間に割って入る自信がありません」

「うむ、私もだ・・・」

「あぁら、心配いりませんことよ。マォ殿に任せておけばよろしくてよ」

「そうは言いますけど妃殿下」


バンッ ドンッ


なにやら物騒な音が聞こえた。


「なんだと? 今なんつったよ、あぁん?

 どの口が言うか!

 努力もしない。他者を思いやる事もしない。

 他者をいたわる事も出来ないし家族すら大切に出来ない。

 あげくに自己都合の脳内変換で虚言妄想。

 どう考えても王になるとか無理だろ!

 大体な、クソババァとか言われる筋合いねぇんだよこのクソガキッ!」


そう言い放った招き人は第二王子をドサッと床に落とし蹴り上げていた。

なるほど、これがどつくの正体であろうか。

などと思っている間にも第二王子は何か喚いていたがことごとく招き人に論破されている。

いかに日ごろから勉強を怠けていたのかが分かる。

議論する場合は相手にどう攻め込みどう反論するかを習っていたはずなのだがなと溜息が漏れてしまう。

前世がどうのとおかしな妄言まで飛び出した挙句覚えていないとかありえぬだろう。


「それってさ、前世を覚えてるとは言わなくねぇか?」


まったくもってその通りである。

横に居る騎士と一緒に大きく頷いてしまった。


「くそぉぉぉ!

 お前が居るから!お前のせいで聖女が来れないんだ!!

 全部お前が悪いんだ!」


第二王子はジタバタともがき始め招き人から逃れようとするも、招き人から逃れる事が出来ないようだった。

陛下の側にいた騎士が取り押さえようと地数いたのがマズかった。

第二王子は騎士の短剣を抜き取り喚きながら振り下ろそうとした。


「「 マォ殿!! 」」


陛下と騎士が声を上げるが間に合わない。そう思った。

だが招き人はこちらを見て微笑んだかと思うと、ていっ!と声を上げて第二王子を背面から投げ飛ばした。

おぉぉと小さな圧巻の声があがる。

あの微笑は余裕のある強者の笑みだったか。

しかしあの細い体でどこから力が出てきたのだろうか。

第二王子はと言えば完全に白目をむいて伸びていた。


「陛下、コレ病んでますよ。頭も心も。

 専門医が居るならちゃんと診せた方がいいです。

 後体ももう少し鍛えさせた方がいいですよ、軟弱すぎます」

「お、おぅ。解った・・・」


軟弱・・・ 確かに軟弱ではあろうが人の事は言えぬ。

あの時補助魔法を使ってでも抱きかかえておいてよかったと思った。

私は軟弱と言われずに済むと思いたい・・・


第二王子の処遇は等への軟禁となった。

表向きには病気療養の為しばらくは離宮で過ごすという事にはなっている。

これからどうするのかは陛下次第で私が口を出すべきではないと思う。

一国の王子の問題と言う前に親子間の問題でもあるような気がしたからだ。

これでもまだ生ぬるい処遇で済ませるならば私も早々に職を辞してもよいかもしれぬ。

私が頑張ったところでどうにもならないからだ。


それから数日後、少しばかり手が空きそうなのでダルクが招き人と対面する算段を立ててくれた。

ダルクに連れられて招き人がやって来たのだが急ぎの書類が舞い込んで来てしまい、少し待たせてしまう事になった。

手早く片付けてみれば何やら2人が小声で話しているのでそっと近づいてみた。


「初日に私に状況説明をした無表情無感情無神経な人に似てるんですよ。

 声のトーンが・・・ それを思い出しまして・・・」

「あー・・・」

「失礼な。私は無表情無感情無神経ではないぞ」

「ごふっ  げほっげほっ」

「ちょっと閣下、行き成り背後に立たないでくださいよ。

 ほらもぉ咽てしまってるじゃないですか。

 招き人様大丈夫ですか」

「大丈夫か、招き人殿」


どうやら驚かせてしまったようなので落ち着くまで背中をさすってやる。

恨めしそうな涙目で見られてしまっては罪悪感が湧いてしまう。

落ち着いた頃合いを見計らい改めて話をさせてもらった。


「失礼しました。

 でも本当に似ていたんですよね。もしかして弟さんとかです?」

「いやアレ様の側近候補として勤めているのは甥だ。

 甥の話は聞いている。

 かなり失礼な態度だったとか。まことに申し訳ない」

「あー、甥御さんでしたか、なるほど声が似ていてもおかしくはないですよね。

 頭を上げてください、宰相閣下が謝罪する必要はないですよ。

 当本人とせいぜい親くらいでいいと思いますがね、謝罪なんて」


根に持つ女性はおおいものなのだが招き人はあっさりとしていた。

押し問答になりかけダルクが止めに入る。


「はいはい、お二人とももうよろしいですね?

 本題に入りましょうか」


そうであった。今日は招き人の今後について話し合うのであったな。

ダルクが大まかな説明をしていく内に招き人の眉間の皺が深くなっていく。


「申し訳ないんですが窓開けて外に向かって叫んでもいいですかね?」

「あー・・・さすがにそれはマズイかと」

「魔道具で防音の結界を張るから待たれよ」

「お手数をおかけします・・・」


叫びたくなる気持ちも分る。

私と手時折うっぷんを晴らす為に叫んでいるのだから。

その時に使う魔道具を手に取り室内に結界を張った。


「では失礼して。


 挨拶状はまぁまだ分かるとしてもだ!

 見知らぬ相手に行き成り招待状だの釣り書きだのと送り付けんじゃねぇわ!

 儂の何を知ってるつーんだ何も知らんじゃろがい!

 どうせ勝手に自分の都合のいい招き人像作り上げてんだろ。

 んで勝手な妄想しといて勝手に幻滅するんだろうがよ。

 どいつもこいつもよぉ、あのクソガキと同じじゃねぇか!

 こんなもん書く暇があるなら自分の仕事しやがれ!

 宰相の仕事増やしてんじゃねぇよボケがぁ!


 ふぅ、失礼しました」


同感だと思い思わず頷いてしまう私の横でダルクは目を真ん丸にして驚いていた。

我が国では女性が大声で叫ぶなどはしたないとされるから当然だろう。

招き人が再び落ち着いたところで話の続きを進める事にした。

読んで下さりありがとうございます。

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