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ウォーカー領⑧

タンジョンから戻った一行は疲れ果てており、昨夜のうちに仕込んでおいたシチューとパンで簡単に夕食を済ませた。

ドロップ品の確認は明日行う事にして皆早々に眠りについた。


翌日朝食を済ませて早速ドロップ品を確認していくのだが革袋からは調味料類が、箱からは野菜や果物と野菜の種が出てきた。


「ダンジョンって食材しかドロップせんのん?」

「今回のはたまたまでしょうね。

 鉱石類が出たりポーション類が出たりする事もありますよ」

「極稀に用途不明の物もでるそうです」

「そういった物はギルドや領主館で保管しているようだ」

「へぇ、用途不明の物か。どんなんじゃろね。見てみたい気がする」

「ギルドに魔石を売りに行った時にでも見せてもらうか?」

「見れるんなら見たい」

「もしかしたらマォ様がご存じの物もあるかもしれませんね」

「楽しみじゃね」


ギルドへはマォ・イザベル・アルノー・ジャックの4人で向かう事になった。

理由は勿論ほかの皆はキョロキョロとしながらはしゃぎそうだからである。



町に入り、中央の通りを進んで行けば左側にギルドの建物がある。

アルノーは慣れている様で受付へと向かい声を掛ける。


「魔石の買取を頼みたいのだが」

「はい。冒険者登録はお済でしょうか」

「冒険者以外は買取不可能か?」

「いえ、そうではありませんが手数料が掛かってしまいますので」

「あぁ、別に構わない」

「そうですか、ではこちらのトレーに乗せていただけますか」


そう言われたのでアルノーは袋の中の魔石をジャラジャラとトレーに移す。


「乗り切らんな・・・」

「ですね、もう1つお持ちしますね」


結局はトレー3枚分になり係員と周囲の冒険者からどよめきが起きた。


「この量ですので査定に少しお時間を頂く事になりますがよろしいでしょうか」

「まぁこの量だしな、仕方がないだろう。

 では待つ間に用途不明のドロップ品を見せて貰う事は可能だろうか」

「はい、可能です。そこの階段を上がっていただいて

 右側の扉が展示室になっております。

 査定が終わったらお声掛けさせていただきますね」

「ああ、頼む」


受付を離れたアルノーは3人に声を掛ける。


「2階に展示してあるそうだ」

「行ってみよう、何があるんじゃろ」


受付カウンターの横にある階段を上るとすぐに展示室と書かれた扉があった。

中へ入ってみる。


「なんだここは、拷問道具の展示部屋か?・・・」

「部屋を間違えたのでしょううか」

「いやいやいやいや、拷問道具じゃないと思うよ」

「だがこれなど指を潰す道具のようだぞ・・・」

「ん~・・・たぶんそれガーリックプレス。大蒜潰す道具じゃね」

「そうなのか?!」

「ですがマォ様、こちらなどは罪人を吊るす道具に見えますが・・・」

「あー、それはたぶん自在鉤。囲炉裏の上で鍋や薬缶吊るす道具じゃね」

「ではこれは何でありますか!」

「それは石臼。あれ、臼ってない?」

「あるでありますが、もっと大きな水車や風車で動かす大型のものであります!」

「なるほど・・・」

「ではこれは? 武器でしょうか」

「それはカラミボウ、豆の鞘なんかを叩いて中の豆を取り出す道具じゃね」

「さすがにこれは武器だろ?」

「いや、千歯漕ぎってゆう穀物を茎から取り外す道具じゃね。

 ちゅうかね? なんでこないなもんがドロップしちょんよ・・・」

「もしかしてここにあるのはおかんの世界の物か?」

「全部ではないけど知ってる物もあるね」


現代的な物ではないが祖母の家で見覚えがある物があるマォであった。


「マム!見て下さい!かっこいい物があるであります!」

「ほぉ、どれどれ。ぶぉっ・・・」

「なるほど、これは何と言う生き物だろうか。格好良いな」

「いや、あの、ね?

 これこそ拷問具だよ・・・」

「これがか?!」

「ファラリスの雄牛って言う名前が付いててね。

 中に人を入れて、腹部分からあぶるん・・・」

「あぶる・・・」

「まさかおかん使った事が」

「あってたまるか!大昔の道具じゃわい!

 まぁこれは使い方分からない方がいいと思う」

「悪趣味な貴族なんかは喜びそうだな・・・」


なんでこんな物までドロップしているんだ、せめて農工具とか調理道具系にしろよと思うマォなのである。

幸いな事に拷問具はこれ1つで、ほかのマォの知っている物は農工具や調理具などの古い時代の物だった。


「おかん、なにか欲しいものがあったか?

 あれば売って貰えないか交渉してみるが」

「いや別にええかな。そのうちドロップするかもだし」

「まぁな、ダンジョンに通えばいいだけだな」

「それでどうされます?職員に教えますか?」

「そうじゃねぇ、使われずにここで展示されてるだけなのもね・・・

 まぁあの牛は教えんけども、他のは教えちょこうか」


展示室を出て1階へ戻ると丁度査定が終わっていた。

金額はソコソコいい値段になっていた。

展示室にあった物の中で解る物(牛除く)を説明しようと思ったら、受付嬢ではなく専門の係員とやらがやってきた。

実演してみてくれと言われて、稲だの麦だの豆だのの束なんぞ無いだろと言ったのだが何処からか持ってきた。


(あるんかーいっ!)


心の中で叫ぶマォである。

仕方がないのでカラミボウや千歯漕ぎ唐蓑、石臼の使い方を教える。

何故使えるのか、幼い頃に祖母に教えて貰ったからである。


「後これ、ただの藁束に見えるかもだけど蓑って名前の雨具だよ。

 農作業するときには便利だよ」

「これがですか!

 なるほど藁であれば農民等も手に入りますから喜ばれそうですね」

「作り方は分らんけど、頑張って試行錯誤してみて」

「ありがとうございます。

 少々お待ちいただけますか、マスターに報告してまいりますので」

「ん?別に待つ必要いと思うんじゃけど」

「情報料が出ると思いますので」

「んなもんいらんよ・・・」

「おかん、もらっとけ。おかんがもらっておかないと

 もしも他の誰かが何か情報を渡した時にももらえなくなるぞ」

「あー、悪しき前例になるんか。わかった」


面倒臭いと思いつつも、他の人が情報料を貰えなくなると困るので我慢するマォ。

少しするとガタイの良い強面の男が現れた。


「当ギルドのマスターをしているバズと言う。

 この度は大量の魔石と貴重な情報を感謝する。

 冒険者登録はしないとの事だが・・・

 ん? もしかしてお前、アルノーか?」

「ああ、アルノーだがそれが何か」

「俺だよ俺!最後に会ったのは20年以上も前だからな、分からないか」

「20年以上前・・・」

「ほら僻地の集落で一緒に遊んでいただろう」

「集落で一緒に・・・

 まさか、お前あのバズか!」

「思い出したか! よくお前のお袋さんに2人してしごかれてたよなぁ」


どうやらアルノーの昔馴染みだったようだ。

何やら盛り上がっている様なのでマォ達は後の事はアルノーに任せて先に帰る事にした。


「あ、ちょっと待ってくれ。

 情報料なんかはアルノーに渡すが先にこれを受け取ってくれ」


渡されたのはガーリックプレスと下ろし金だ。

大量にあるから持って行ってくれと渡してくれた。

そんなに大量にあるのならばと有難く受け取っておく。

この2つは色々と使う事も多そうだし、手も大蒜臭くならずに済むなと思いならがギルドを後にした。


「マォ様この後はどうされますか」

「そろそろ移動したいし、パンを買っておきたいかな」

「パンは作らないのでありますか?」

「作れるけどさ、結構手間かかるから気が向いたらって感じじゃね」

「なるほどであります!」


パンを買う為に店へと向かう。

この国にはクロワッサンや菓子パンなどの凝った物は無いが、バケットやロールパンのような物がある。

高級店のような感じではないがそこそこに美味しかったりする。

バケットがあるならブールやバタールもあってよさそうなんだけどなと思うマォであるが、そのうち作ればいいかとも思うのであった。


パンを購入した後は屋台も覗いていく。

以前とは異なり今回は串焼き以外の物も売っている。

中国のネギパンみたいな物や花巻みたいな物、焼きトウモロコシに蒸かし芋、ジュースのような物やお茶なんかも売っていた。


「なんでこないだは串焼きばっかじゃったんじゃろ」

「おや、この町には初めて来たのかい?」


近くにいた女性が声を掛けてきた。

マォ達がそうだと答えれば、月に1度は串焼きの日と言うのがあり日頃よりも肉がお手頃価格で売られる日があるのだそうだ。


「私らのような商人はまだいいけど

 農民の中には普段肉を買うのが厳しい人もいるからね。

 月に1度はそういった人達にも買いやすい様にって領主様が考えてくれたのさ」

「なるほど、たまたまその日じゃったけぇ串焼きばかりだったんじゃ」

「今日は色々あるから楽しんで行っておくれ」

「教えて頂きありがとうございます」


色々と見て回りマォは焼きトウモロコシとネギパンを、イザベルは花巻とオレンジのサラダを。

ジャックはやっぱり肉の串焼きを買っていた。

公園のベンチに腰掛けて食べていると大きな荷物を抱えたアルノーがやってくる。


「どしたんその大荷物・・・」

「いや断ったのだがバズが持って行けと聞かなくてな・・・」

「何貰ったん」

「おかんなら分かるだろうと言われたんだが分かるか?」


袋を覗き込めば羽釜と七輪が入っていた。


「こねぇな重いもんよこさんでも・・・」

「やっぱり分かるのか」

「まぁね・・・

 でも似たようなものはあるんじゃないん?」

「いや、見た覚えはないな」

「私もございませんね」

「自分もないであります!」

「そうか、んじゃまぁ持って帰ろうか」

「で、おかん。俺のは?」

「何が?」

「飯・・・」

「「「 あ・・・ 」」」


すっかりアルノーの分を忘れていた3人であった。

いつも読んで下さりありがとうございます。

ブックマークや評価、リアクションに誤字報告もありがとうございます。


子猫の方は保護当時100gだった体重が250gまで増えました。

このまま順調に育ってくれればと思います。

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