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夢②

少し短いです。

いつものように畑仕事をしていた。

山間の僻地なので獣が多く畑は一応金網で囲ってあるけど鹿は飛び越えるし猪は掘ってくぐるし、猿は乗り越えるしで余り意味がないような気がする。

それでも突進予防にはなっていると思いたかった。


ずっと中腰での作業だったので立ち上がって腰を伸ばせば金網越しに鹿と目が合った。

金網の外側の一角に間引いた野菜や雑草が積んであるのでたまにそれを食べに鹿が来る事もある。

たぶんこの鹿もそうなのであろう。


「やあ、君は誰かな?」


最近は虫だろうが獣だろうが第一声はこれである。

年を取ると独り言が多くなるというが、まさしくという感じだ。

繁殖期でなければ人を襲う事はまず無いらしいし、脅かさなければ大丈夫である。

マォ的にはまず声を掛けて認識させるといった感じであろうか。


(儂だって山菜とか採ってるんだから間引いた野菜ぐらいはどうぞって感じだ)


お互いに見つめ合う事しばし・・・

フンッ と鼻息だか溜息だかをついて鹿は立ち去った。

口からはみ出た若菜をプランプランとさせながら。


やれやれと腰に下げてある水筒で水分補給をしていると呼び声が聞こえる。


「おかーん」

「ばぁーばぁー」


2人が来るって事はもぉ週末なのかと考え、ふと気付く。


(なんだいつもと変わらん週末じゃん。

 きっと今まで夢でも見ちょったんじゃろ。

 ゲームじゃあるまいし魔法だのダンジョンだのと)


「おかん元気なん?お兄とは仲良うしちょん?」

(ん?お兄?アルノーの事か。

 うわぁやっぱこっちが夢じゃったんか。あ、今度こそ聞かなきゃ)

「元気元気。ちょっいムカつく事もあるけど。

 聞きたい事があったんよ、鶏はどうなった?」

「なんなんムカ付く事って。

 鶏も畑も心配しんさんな。うちあの家に引っ越したけぇ」

「は? マジで? あんだけ僻地は嫌じゃいいよったのに。

 引っ越したってあんた仕事はどうしたん、大丈夫なん?」

「3人で話し合って決めたん。

 おかんがせっかく叶えた夢じゃけぇ家も畑も残そうやって。

 うちの仕事は週3に変更して貰ってパート扱いにしてもろうたん。

 んで姉ちゃんと冬依が少し援助してくれよるんよ。

 後はおかんの保険金がおりたけぇそれも使いよる」

「そうなん。まぁ3人で相談して決めたんならええわ。

 保険金おりたんじゃ、って儂そっちで死因は何になっちょん?」

「それがさ、逃亡中の殺人犯と揉み合いになったて事になっちょんよね。

 しかもおかん、その犯人が逃げれんように虎バサミで足をぐちゃって・・・」

「えぇー・・・なんでそねぇな事になっちょんよ」

「私が知りたいんじゃけど」


逃亡中の殺人犯とか犯人の足を虎バサミでぐちゃっとかなんなのだと突っ込みたいマォである。


「おかん一躍時の人になっちょったよ」

「ばぁばゆうめいじーん」

「ゆっちゃんそれなんか違う・・・」

「くそ迷惑なんじゃけど」

「まぁこっちの事は心配しんさんな。

 こうやって時々夢で会えちょるし、おかんが元気そうで安心したわ。

 ぶち不思議じゃけどね」

「ほんまいーね、なんなんじゃろねこれ。会えんよりはええんじゃけどさ。

 まぁ安心したわ」


気が抜けたのかヘロヘロと休憩用の切り株に座り込むマォ。

何かが手に当たったので見てみれば寝る前に焼いたパウンドケーキがそこにあった。

何故ここにと不思議に思ったがある物はあるのだ。


「ゆっちゃんオヤツ食べる?」

「食べるー!」

「あ、ママのはー?」

「だめー、これゆっちゃんのってばぁばがゆうたもん。

 ママとばぁばには飴あげるー」


ゆっちゃんからチュッパ〇ップスを渡されたマォは自分の好きなチェリー味で喜ぶ。


「おかん。次来る時は私の分もよろしく」

「持ってこれたらね?・・・」

「私も持って来れるか試してみよう。何か欲しいものある?」

「粉末の鳥ガラスープとかブイヨンとかあれば嬉しいかも。

 こっち味付けがほぼ塩胡椒なんよ」

「そぉなん?ソースとかマヨは?」

「そのうち挑戦してみる」

「まぁなんか適当に試してみよう」

「それにしても夢で味まで分かるもんなんじゃろか」

「味するん?」

「うん」


チュッパ〇ップスをなめながら会話をしているマォは味が分かる事を不思議に思った。


「なんじゃろ、よぉわからんね」

「考えても分からんそうじゃし気にせん方がえかろうね」

「そうじゃね」

「ところでおかん。あのイケメンとはどうなん?」

「イケメン? アルノーの事?」

「違う違う、ほらおかんをお姫様抱っこしたインテリイケメン」

「ぐぇっ げほっ ごほっ」


突拍子の無い事を言われて咽返るマォ。


「おかん?! ちょ、何咽ちょん」

「あんたが行き成り変な事ゆうけぇじゃん」

「変な事でもなかろう。で?どうなん?」

「どうなんて別になんもないけど?」

「そうなん?じゃあもう1人のイケマッチョ?」

「ぶぇっ、ごほっぐほっ」


唾液が期間に入り咽て白目になりそうなマォと慌てるゆっちゃん。


「ばぁば大丈夫?ほらお水飲んで」


ゆっちゃんに渡された水を飲み少し落ち着くのであった。


「もぉママ、ばぁばが死んだらどうするん!」

「ゆっちゃん、ばぁはもぉ死んじょるけぇ大丈夫」

「いやまだ生きちょるし!世界は違うけども!」

「きゃはははは」

「イケマッチョって誰さ」

「ほらロン毛の金髪で碧眼の騎士っぽい人」

「ああ、オーウェンか。

 騎士っぽいんじゃなくて元騎士団長」

「おぉ、エリートじゃぁ。で?どうなん?」

「ぶほっ。どうなんじゃないん。

 普通に仲間だよ、オーウェンもルークも」

「ふぅーん、そうなんじゃ。つまらん」

「つまらんて、あんたねぇ・・・

 あんたはどうなん、ええ人おらんのん?」

「ママねぇ、こないだイケメンに告白されて断りよった」

「ちょ、ゆっちゃん!」

「へぇ、断ったんじゃ」

「今は仕事と子育てで精一杯じゃしイロコイはいらんかな」

「ほらね。そうじゃろ。おかんもそうなん。

 今の生活に慣れるのに精一杯なん」

「なるほど、こっちと色々違いそうじゃもんね」


と、ここで視界がぼやけてきた。


「ありゃ、時間切れっぽい?」

「そうみたいじゃね、おかん怪我とかせんようにね」

「あんたも無理せんようにしんさいよ」

「ばぁば、またね~」


またはあるのだろうかと思いながら意識が遠のくマォであった。



目が覚めたマォの手にはしっかりと未開封のチュッパ〇ップスが握られていた。


「マジかぁー!!」


思わず叫んだマォに全員から「五月蠅い!」と叫び声があがった。


(うぇぇぇ、セロハンとかプラスチックとかこっちにないやつじゃん。

 これは絶対なくしたらダメなやつ・・・うげぇぇ・・・)


次にあの夢がみれたらゴミを渡そうと心に誓うマォであった。

読んで下さりありがとうございます。

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