ウォーカー領⑦
「アルノー大丈夫?」
「おかん、これが大丈夫に見えるか?」
「あー、うん。あまり大丈夫には見えんよね」
屋敷に到着した時、アルノーは葉っぱや小枝にまみれていて擦り傷なんかも出来ていた。
だがそんなことにはお構い無しのもっちゃんともふりんはドランに勝ったと喜んでいるのだった。
「うちのドラリンに勝つとはなかなかやるな」
「ドラリン・・・」
「俺も人の事は言えぬが・・・」
結局浮かぶ名前なんぞ皆似たり寄ったりなのだろうと思う2人であった。
「戻ったのか、そちらの御仁は?」
「アレックスの叔母にあたるラーニャさんだよ」
「よかった、見つかったのか」
「うん、まぁ儂ちょっとあの世が見えたけど」
「ん?」
「まぁ気にせんで。アレックスは?」
「庭でジャックと遊んでらっしゃいますよ」
「分かった、ありがと」
ラーニャを連れて庭の方へ行くとジャックと一緒に素振りをしているアレックスが見えた。
「アレッ・・・」
マォが呼ぶ前にラーニャが駆け出す。
「待ってラーニャ・・・
ジャック危ないから避けて!」
「え?」
ドンッとはじき出されるジャックと、ぐえっと声を上げるアレックス。
「大丈夫かジャック・・・」
「アルノー殿、すみません。何が起きたのでありましょうか」
助け起こしながらアレックスの叔母ラーニャが全力で駆け寄り、それにあたって弾き飛ばされたのだとアルノーが説明した。
「なるほど。アレックスの叔母上殿でありますか。なんとも強烈な方ですね」
「うむ、おかんも白目をむいてな・・・」
「マォ殿がでありますか!大丈夫なので・・・」
「ジャック、怪我はないか。まぁ儂も無事だから心配いらんよ」
「よかったであります!
ところで、あれは止めなくてよいのですか?」
「ん?」
見ればアレックスが白目になっている。
「うわぁぁぁ、ラーニャ殿!手を緩めてくれ!」
「アレックス!大丈夫か!」
パコーンッ
マォがラーニャの頭をはたく。
「落ち着けつってんだろぉがよ!この馬鹿力!
アレックスが白目むいてんだろぉがよ!殺す気か!」
「はっ、アレックス!しっかりしろ!」
パコーンッ
「だから揺さぶってんじゃねぇ!脳震盪起こすだろうがよ!
はっ、もしかして儂もこんな感じじゃったんか!」
「今回復薬を・・・」
「やめーい!あんな苦いん飲んだらそれこそ昇天するわぃ!」
「回復薬が苦い訳ないだろ!
おや?麻痺解除薬が減っている・・・」
「・・・ しばくぞこらぁ!」
「おかん、おかん。先にアレックスをだな」
「あぁそうじゃった」
アレックスからラーニャを引き剥がし、イザベルが持ってきた回復薬を飲ませる。
少し咽た後にアレックスは目を覚ました。
「いったい何が・・・」
「アレックスーー!!」
ガシッ
アレックスに再び抱き着こうとしたラーニャの首根っこをマォが掴む。
「だ・か・ら・な?」
「すまぬ・・・」
「あれ、マォ姉ちゃんにラーニャ叔母さん」
「手を放してもらえんか・・・」
「力加減を考えろよ?」
「わかった・・・」
今度はゆっくりと近付きそっと抱き締めるラーニャ。
アレックスも抱き締め返す。
「よかった。行方不明の知らせを受けて肝が冷えたぞ」
「マォねえちゃん達が助けてくれたんだ。でも僕・・・」
「何も言わなくていい、無事にこうして会えたのだからな。
今までよく頑張った。これからは私が守ってやるから」
「うん・・・」
アレックスはラーニャに会ってほっとしたのだろう、泣き出してしまった。
マォ達は2人きりにする方がいいだろうと少し離れた場所に移動する。
「アレックスはこれまで我慢していたのでしょうか」
「だってまだ5~6歳だろ、親に甘えたい年頃じゃん。
それなにのあんな事になってさ・・・」
「何はともあれ、皆親族に会えて良かったではないか」
「そうだね。でもちょっと寂しくなるなぁ」
皆心の中では寂しくなると思っていたが言わなかっただけで、マォの言葉で涙腺が緩むのであった。
「マォ殿、また会いに行けばよいのですよ」
「そうだね」
しばらくするとラーニャとアレックスはこちらにやって来た。
「皆さまには大変お世話になりありがとうございました。
アレックスは姉に代わり私が育てていこうと思います」
「そうか、よかったよ。
ただな、力加減を気を付けるようにな?」
「ええ、それはもう重々に気を付けたいと思います。
それでお願いがあるのですが・・・」
「なんじゃろうか」
「あのね、時々遊びにきてもいい?」
「いいけどさ、儂等数日後には別の場所に行くんだよ」
「知ってるよ、忘れられた地に行くんでしょ」
「うん、そうだよ。だから遠いと思うんよね」
「そこは心配いらぬよ、ドラリンが連れて行くと張り切っているよ」
「ドラリン道分かるん?」
『もっちゃんが教えたから大丈夫!』
『グルルッ』
「んじゃまぁいいか。安全運転で来いよ?」
『グルッ』
「よかったなアレックス。これで寂しくはないだろう?」
「うん、マォ姉ちゃん、ラーニャ叔母さんありがとう」
「では日が暮れる前に帰ろうか」
「わかった、お姉ちゃん達もお兄ちゃん達もまたね!
今までいっぱいありがとう!これからもよろしくね」
「気を付けて帰れよ」
ジャックは姿が見えなくなるまでずっとこちらを向いて手を振っていた。
名残惜しさを察していたのかドラリンはゆっくりと進んでくれていた。
「なんか孫思い出しちゃった・・・」
「おかん・・・」
「考えても仕方がないか、よぉし飯だ飯。飯の準備しよう!」
焼き系の肉には飽きたので今日はボア肉を使った冷しゃぶサラダにするつもりのマォ。
頂きものの中に胡麻もあったので胡麻ダレも作るつもりでいる。
寂しさを紛らわすために黙々と作業をしていたら、てんこ盛りになっていた。
「マォ様、量が多いのでは・・・」
「余ったら味変えて明日の朝サンドウィッチにすりゃええじゃろ・・・」
結果としては余らなかった。
マォとしては夏の定番メニューなのだが他の皆は初めて食べる。
「薄切りにしてボイルしてあるのか」
「このドレッシングがまたコク深くて旨いな」
「これなら野菜も美味しく食べられますね」
「延々と食べれる気がするであります!」
好評のようなので安心するマォ。
正直城で食べた料理はマズくはないのだが、味の変化が無くて常に塩か塩胡椒。
2~3回なら別にいいのだがそれが続くというか、その味しかないとなれば飽きるのである。
イザベルに飽きないのかと聞いた事があったのだが答えは「食事とは生きる為に食べる物ですから」と返って来たので愕然としたのだった。
夕食後、明日のダンジョンについて話をする。
行くのは町の西側の草原にあるダンジョンで比較的新しい物らしい。
新しいダンジョンだと見慣れぬドロップ品が落ちる事もあるから楽しみにしておけと笑うアルノー。
騎士の時よりも生き生きしている気がする。
「ダンジョンは毎回道が違っていて、1回外に出ればリセットされるんだ。
だから1度中に入ったら1人だけ先に外に出たりしないように。
中に人が残った状態でリセットされれば迷路になって出られなくなるぞ。
十分に気を付けてくれ」
「なるほど、それは恐ろしいな。気をつけねばならんな」
「じゃったらさ、1人出入口んとこに待機させちょけば?
もし誰かがパニックになって出そうになっても止めれるし。
延々彷徨ってダンジョン内でミイラになるとかやだよ儂」
「確かにそうなるのは避けたい。
これだけ人数も居るのだし、見張りを残すのも良いかもしれぬな」
「では自分が待機するであります!」
ジャックが名乗りを上げてくれたので任せる事になった。
(ゲームの様なダンジョンなんだろうか。ギミックとかるのかな)
ワクワクしながら眠りにつくマォだったのだがその期待は打ち砕かれることになる。
読んで下さりありがとうございます。




