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ウォーカー領②

区切りの都合で少し短めです。

摘み終わったブルーヘリーは綺麗に洗った後、おやつで食べる分を残して他は煮詰めてジャムにする事にした。

そうすれば子供達の親族が見つかり別れる時に持たせてやれる。

皆で鍋にブルーベリーを入れて、火に掛けぐるぐるとゆっくりかき混ぜていく。


「これがジャムになるの?すごいねぇ」

「マォ姉ちゃんは物知りだねぇ」


子供達は目をキラキラさせながら楽しそうである。



一方のルークとダルクは領主館に来ていた。

此処ウォーカー領を収めるのはルークの兄スカイラーだ。

事前に連絡はしていたのですんなりと会う事は出来た。


「兄上ご無沙汰しております」

「久しいなルーク。息災であったか。此度は大変であったようだな。

 あの王家の小倅め、もっと早くに対処しておればよかったものを」

「兄上、今後関わらねば良いだけです。それよりも」

「心配はいらぬ。出入りは一層厳しくチェックするようにしたし

 いずれは門も完全封鎖するつもりだ」

「封鎖してしまうとエルムとケイルが」

「ああ、あそこは迷惑料として貰い受けたから心配いらぬ。

 今塀の延長工事をしておるところだ」

「さすが兄上。ですがよくエルフィンが許可しましたね」

「アムリタ殿の一喝で決まったのだよ」

「妃殿下のですか」

「大層ご立腹の様子でな。

 離縁するか迷惑料を支払うか選ぶようにと迫ったそうだ」

「ぶっ・・・ゲホゲホッ。失礼」


スカイラーの話によれば、折角気心知れる相手が出来たと喜んでいたのに何をしでかしてくれたのだとアムリタは扇子を投げつけたのだとか。

エルフィンが考えを改め行動に出なければ離縁も考えると言い放ったそうだ。

アムリタは南の国境を守るトーレス公爵家の出である。

当然ながら亜人種との交流もあったので、此度の件はアムリタにも衝撃だった。

そして何も知らなかった自分にも腹を立てていたのである。


「離縁は困る、マォ殿を追って来そうではないか」

「アムリタ殿ならありえるだろうがこればかりはエルフィン自身が努力せねばな。

 ところでルーク。

 しばし此処でゆっくりとした後はあの森へいくのか」

「ええ、どの国にも属していない場所ですからね」

「そうか。ならばうちからも護衛を付けようと思うのだが」

「それは遠慮したいと思います。

 面識がなく気心がしれない者が増えるのは嫌がるかと」

「だがオーウェンとアルノーだけでは心元ないのでは?

 あの森だぞ?」


辺境の地はスタンピードの後復興が叶わず捨てられた地と呼ばれるようになり、集落があった場所には草木が生い茂り魔獣や魔物が数多く生息するようになってしまっているのだ。


「失礼ながらルーク殿。城の騎士では役に立たないかと。

 所詮お飾りの騎士ですし」


横槍を挟んだのはスカイラーの護衛を務める騎士団長だった。


「貴殿は騎士団長だったか。

 他の城勤め騎士は知らぬがオーウェンとアルノーの実力は確かだが。

 それにマォ殿自身も自分の身を守れるだけの力量はある。

 彼らの事を知りもせぬのに憶測で行って欲しくはないな」


ルークの言葉にフンッと鼻で笑う団長。

自分達はこの国境の守りであるウォーカー領で魔獣や妖獣と対峙してきたという自信があるのだろう。

自分の仕事に誇りを持ち自信があるのは良い事だ。

だが自信過剰になったり、知りもしない相手の事を憶測で見下すのはよろしくない。


「マォ殿・オーウェン・アルノーの3人とこちらの騎士団から3人。

 試合をさせてみればどうだろう。

 実力が分かれば私とて安心出来るし、この者も納得するだろう」

「いいでしょう兄上。

 私もこのままでは気が収まりませんから。

 では明日にでも3人を連れてまいります」


何故こうなったと頭を抱えるダルク。

今後についての話し合いをするのではなかったのかと眉間に皺が寄る。

だがルークの気持ちも分らなくはない。

仲間を見下されてはいい気がしないのも確かである。


「ルーク様、勝手に決めてマォ殿に怒られても知りませんからね」

「・・・ マォ殿ならあの騎士団長に対して怒るだけだと思うのだが」

「まぁそうかもしれませんが・・・」


屋敷に戻るもっふるの上で揺られながら2人はマォの怒りの矛先が自分達に向きませんようにと祈るのであった。



夕食を摂りながらそれぞれが今日の出来事について報告していく。

オーウェンはビックアントラーズとイビルディアを狩っていた。

ジャックは獲物のさばき方が上手かっただの毛皮でマォの防寒着も作れるだのと楽し気に報告をする。

しばらく肉の心配はいらないだろうと嬉し気にジャックも報告する。

アルノーは町で聞き込みをした結果、ニアとソニアの親族が隣町に居ると突き止めた。

残念ながらアレックスについての情報は得る事が出来なかったが後日また探してみると言った。

そしてルークとダルクが領主館での事を話すと案の定マォが怒りを露わにする。


「アルノーとオーウェンの実力も知らんくせに

 よくもまぁそんな事が言えたもんだ。

 アルノー、オーウェン。明日は足腰立たんこなるまで()()()()()()しまえ」

「任せろおかん」

「して、いてこますとは?」

「死なない程度にボッコボコにするって意味」

「お、おぅ・・・」

「マォ殿は大丈夫ですか?ルーク様はああいってしまいましたが」

「本気出すから大丈夫」

「本気ですか・・・」


子供達にはそんな姿を見せられないので、イザベルとジャックは子供達と留守番する事になった。


「マォ様の雄姿がみれないのはとても残念ではありますが」

「これからなんぼでも見れるんじゃないかな、なんとなくそんな気がする」

「それならばよいのです。

 くれぐれもお相手の方を殺さない様にして下さいませね」

「イザベル、マォの心配よりも相手の心配か」

「マォ様なら心配ありませんので」


イザベルはマォの身の回りの世話をしているので知っている。

手に剣だこの様なものがある事も、バランスのよい筋肉質な体をしている事も。

そして体中にある傷の事も知っているし、なによりもアレと対峙したときの威圧は見事な物だったと思うのであった。


「相手がどの武器を使うのかにもよるが私はいつも通り大剣で行こうと思う。

 アルノーはどうする」

「俺は剣は止めて相性のいい斧にしようと思う」

「マォ殿は何か扱える武器があるだろうか」

「うーん。レイピア、両手剣、弓ならなんとかなるかも?」


マォは学生時代部活動でフェンシングをやっており、全国大会での優勝経験もある。

また娘2人は剣道を、息子は弓道を部活でやっていたので練習にも付き合っていた。

多少なりは扱えるのである。


(両手剣としないじゃ違うだろうけどなんとかなんべ)


などとお気楽に考えるマォである。


「マォ殿の国では魔獣や妖獣はいないのでは・・・」

「何故武器が扱えるのだ・・・」


扱えるのかと聞かれたので答えただけである。

何故そこで怪訝な顔をされるのか、解せぬと思うマォであった。


「まぁ一番いいのは素手なんだけど拳痛めそうだからナックルがあればなぁ」

「素手?!」

「拳?!」

「確かに他の大陸には拳で戦う体術があるとは聞いた事がありますが」

「そんな体術とかたいそうなもんじゃないんじゃけど・・・」


何故なら喧嘩仕込みだからなどとは口が裂けても言えないマォであった。


「ところで明日の何時に出向きゃええん?」

「「 ・・・ 」」

「まさか時間は決めてこんかったん?」

「決めてはいないが騎士の訓練時間は午前なので午前中に出向けばよいかと」

「なるほど。アルノー、オーウェン。

 儂らは朝食は軽めにしておいて食い終わったらすぐ行こう」

「そうだな、手早く終わらせてしまおう」

「さくっと終わらせて午後は町ん中散策したい」

「ではその様に」


そうしてマォの言葉通りにサクッと終わるなどこの時誰も思っていなかった。

言った本人のマォでさえ思ってもみなかったのだ。


読んで下さりありがとうございます。

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