事の始まり②
意識を取り戻した時はどこぞのベットの上だった。
あからさまに自分の家の天井や煎餅布団とは違うふかふかのベットだ。
(あれか、死後の世界で雲のベットとか?
無いな・・・儂そんなメルヘンじゃねぇしな)
取り敢えず状況を把握すべく周囲を見ようと体を動かせば腹部を激痛が襲った。
(いっ・・・たぁぁぁぁ 駄目だこれ 動かしたら駄目なヤツ)
涙目になりながら大人しくしておこうと思い、目を閉じて先程の出来事を思い返す。
(確か畑仕事の帰りに、地震か何かで地面が揺れてバランス崩して倒れて
鎌か何かが腹に刺さったんだっけ?)
だとするとここは病院だろうか。
そうだとするならば痛み止めとか欲しいのだけどもと思わなくもないが別の事が気になった。
(もよおしたらどうしよう、ナースコールは・・・無いよなぁ
まさか尿瓶? いやいやいや・・・)
目だけを動かして周囲を見ようとしたが見えなかった。
眼鏡がないのである。
なんとなくサイドテーブルっぽい物があるな程度しか分からなかった。
(しばらくは大丈夫そうだし後で考えるか)
怪我の状態やこの場所の確認がしたい。
が、ナースコールらしきものは見当たらなかったし、さてどうしたものかと考え始めた時扉の開く音が聞こえた。
「誰?」
と思っただけのはずが声に出てしまっていた。
その声が聞こえたのか人影が近づいて来るのが分かった。
だが眼鏡が無いのでぼんやりとしか分からず顔もさっぱりとわからない。
「お目覚めになられましたか?傷の具合は・・・よろしい訳ありませんよね」
感情の無い声が掛けられる。
そう思うのであれば痛み止めくらいくれと思うのだが医師ではなさそうだ。
医師であればバイタルチェックくらいするのではないかと思ったからだ。
視界がぼやけたままの目でその人物を見る。
声から若い男性だろうと思われる。
「声を出すのもまだ辛いと思いますのでそのまま聞くだけで大丈夫です。
まずはこの状況ですが。
ここは王城内にある貴賓室の一室となります」
「はぃ?」
(王城?! 貴賓室?! え? 何故そんな場所に儂がおるんかね?
というか日本じゃない?え?いつのまに外国に来たんじゃろか)
「貴方はこの国の諸事情に巻き込まれまして
異次元の国より強制的に招かれました。
いわゆる召喚というものによってですね。ここまではよろしいですか」
いやまったくよろしくない。
突拍子もなさ過ぎて言葉が出てこないだけである。
(異次元?強制的に招かれた?
強制的に招くってそれ言い換えれば拉致とか誘拐じゃんか)
こちらが無言なのを了ととらえたのか男性は続きを話し始めた。
「召喚したのは我が国の第二王子殿下でしたが、暗殺者が殿下を狙った瞬間と
あなたが具現した瞬間が重なり殿下の代わりに貴方が刺されてしまった
という結果になりました」
(という結果になりました。じゃねぇんだわ!
要するに異次元に拉致られて身代わりに刺されましたよと。
・・・・・
なんじゃそりゃぁぁぁぁ!)
叫びたい衝動をぐっと我慢する。
叫ぶ、つまりは腹筋に力が入る訳で傷口に響くからだ。
そう思うも口は金魚のようにハクハクと動いてしまう。
その様子をみて男性が浅い溜息をついた。
(溜息つきたいのはこっちだよ!)
心の中で叫んでおいた。
「いきなりの事でなかなか理解が追い付かないと思います、まぁご高齢ですしね。
ですが第二王子殿下の命を救う事が出来たのですからお手柄です。
幸い急所は外れておりますので命の別状はありません。
毒の検知のされませんでしたのでご安心を。
ですがしばらくは安静が必要となります。
回復にはしばらく時間がかかるでしょう。
回復するまではこの部屋をご利用ください。何か御用がある場合は
そこのベルを鳴らしていただければ手隙のメイドがやってまいりますので」
男性は言うだけ言うとさっさと立ち去ってしまった。
普通「何かご質問は」とかあるのではと思うが、言葉のニュアンスから歓迎されていないのだけは理解した。
あの男性は回復するまではと言った。回復すれば追い出されるという事だろうか。
用があればベルを鳴らせ?手隙のメイドが来る?
手隙のメイドが居なければ来ないと言う事だし体動かすと激痛が駆け巡る。
つまり動かせないし動かしたくないのにどうベルを鳴らせと、嫌がらせかよと思う。
(勝手に拉致っといて歓迎されてないとか意味判らん。
第二王子の命救ってお手柄とか言われてもな。
誘拐犯の身代わりなんぞなりたかねぇよ。
ところで儂、治療らしき事はされとるんかね?されてない気がするんじゃけど)
気のせいかなとゆくり手を動かし腹部を確認する。
(うん、包帯だかサラシだか何か撒かれてて分らん。そして痛かった)
少しでも触れると何とも言えない痛みが走るのだ。
痛み止めとか化膿止めとかくれよと思わなくもないが寝る事にした。
尿道結石の時も結局は寝て乗り越えたのだ。
正確には痛み止めも効かず意識を失っただけともいうが・・・
(病は寝て治す、病じゃないけど寝て治す・・・
というか現状じゃ寝て治すしかないんだよな。
少しでも治して自分で多少動けなければ何事も出来んからね)
そう思い目を閉じた。
だが実際は寝たと言うよりも意識を失っただけだった。
刺された場所は鳩尾の少し下あたり。
つまり呼吸する度に筋肉と同時に傷も動く訳で、痛みも走る。
それに加えて大量出血。おそらく輸血なんてものはしてないだろう。
そう、思い切り貧血状態だった。
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