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旅路①

夜が明けるまで走り続けて、空が白み始めた頃に森の中で休憩する事になった。

どこをどう走ったのかなど土地勘の無いマォはさっぱり分からない。

モファーム任せで走ったので森は勿論の事、山に登ったり滝にダイビングしたりもした。

森や山はまだしもまさか滝にダイブするとは思っていなかったので、ルーク・ダルク・オーウェンは白目になりかけ、下腹部がヒュンッとなったのは内緒である。


「さて皆様、軽食の用意がありますので腹ごしらえしておきましょう」


そう言ってシート代わりにブランケットを敷き、ピクニックさながらバケットサンドなどの軽食を並べていくイザベル。

マォは先に赤ん坊のおむつを替えてミルクを飲ませた。

このおむつやミルクもイザベルが用意したものである。


「随分と用意がいいな」

「時間がありませんでしたので簡単な物になってしまいましたが

 マォ様が部屋に戻って来られるまでに間に用意いたしました」

「さすがと言うべきか」

「マォ様の性格は概ね把握しておりますので抜け出す準備をいたしました」

「マジか、そない儂解りやすいじゃろか。

 いやでも子供達にも解りやすいって言われた気がする・・・」


などと会話をしながら食事を摂って行く。

皆敬語はやめて普通に話そうとマォが提案したのだが、イザベルとダルクは敬語の方が楽だと譲らなかった。


「んでもそのうち、慣れて欲しいんじゃけど」

「努力はいたします」

「いつかそのうち、頑張ります」


とは言ったものの慣れる日が来るのかどうかは謎である。


食べ終わった後は地図を広げて場所の確認をする。


「この森を抜ければキエルの町があるな。

 そこで少し食料などの買い出しをするか」

「すでにキエル付近にまで来ているのか」

「道ならぬ道を走ってますからね・・・」

「あれはさすがに儂もたまげた」

「キエルならまだ城の出来事も知られてはおるまい。

 とは言え、この服装では目立ちそうだな」


マォ、ルーク、アルノーはお忍び服のままとは言え少し裕福な商家に見えるし、オーウェンは騎士服に着替えてしまっていた。

ダルクとイザベルにいたってはお仕着せである。


「抜かりはございません。

 冒険者パーティという事にすればよいかと思い、服も用意してございます」

「すごいねイザベル」

「お褒め頂き光栄にございます。ささっと着替えてしまいましょう」


イザベルが用意した服に皆着替える。


「ルーク、魔導士っぽくて似合うね」

「マォ殿のそれは・・・」

「なんか近接っぽくて格好良いよね」

「武器が鎌のようでしたので」

「確かに武器にもなるけども、一応これ草刈用・・・」

「左様でございましたか、失礼をいたしました」


着替え終わり互いの姿を確認する。

動きやすいしデザインも好みだと満足するマォ。

アルノーは元ハンターと言うだけありしっくりきている。

オーウェンとイザベルも元騎士だけあり似合っている。

だがダルクだけは少々似合わない気がしなくもなかった。


「ダルク、落ち着いたら少し体を鍛えようか・・・」

「そうですね、精進いたします。

 こんなに貧相に見えるとは自分でも驚きでした」


買い出しをするにあたり金貨等の高額硬貨は使わずに中銀貨以下の硬貨を使う事に決めた。

金貨等はよほどの事がない限り一般民は持ち歩かないからだ。

カード決済だと履歴が残るからダメだろうと気が付いたのはマォである。


「だが私は常にタグで支払っていたから硬貨には不慣れだ」

「マォ様とアルノー以外は自分で購入する機会などめったにないのでは?」

「あー、貴族だからか。

 んじゃ買い出しは儂とアルノーで行って来るよ。

 イザベル、赤ん坊のお守り頼める?」

「お任せくださいませ」

「しかし危険ではないか」

「アルノーも居るんだし大丈夫じゃろ。

 そもそも物珍しがって君達が騒ぐ方が危ないと思うんじゃがね?」

「う・・・」

「ぐ・・・」


否定出来ないルークとオーウェンだったりする。

イザベルから鞄を受け取りさっそく町へと向かうマォとアルノー。

森の端まではモファームで移動する。


到着するとモファームにはそのまま森の中で待機してもらい、2人は町の中に入る。

小さめの町ではあるが活気は溢れている。

2人はまず店が並ぶ通りを歩いてみた。


「マォ殿買い出しはどの店で?」

「アルノー。おかん、そう呼んでくれる?

 親子なのにマォ殿じゃおかしいべ」

「おかん、ですか?」

「おかんってのは方言でおかあさんの事だよ。

 うちの子供達もおかんて呼びよったし」

「なるほど、分かりました」

「敬語も無しで」

「わかった」

「まずは通りを歩いて値段の確認だよ。

 同じ商品でも店によって値段が違ったりもするからね」

「なるほど」

 

店が立ち並ぶ通りを歩いてみてマォは思う。


(なるほど、出入り口に近い店はちょっと高めなのか。

 露天商だと見た目が悪くても少し安めだな、露天でいいかな)


「アルノー、あそこに並んでる露天商で買おう」

「露天商で?」

「うん、ダメなん?」

「露天商は貧しい農家の者が多くて嫌煙される事があるんだが」

「アルノーは気にするん?」

「まったく気にはしない」

「じゃあいいじゃん。

 農家の直売なんて新鮮じゃないか」


そういってマォはスタスタと露天に近づき買い物を始める。

ちょっと傷が入って店に降ろせないような物を扱っているのだと露天商は説明する。


「味に変わりがないなら傷くらい気にせんよ」


そういって幾つかの日持ちしそうな果物や野菜を購入していく。

たくさん買ってくれたからとリンゴジュースを1本おまけしてくれた。

他の露天ではナッツ類やドライフルーツも売ってあったのでそれも購入する。

店で売っている値段より2割も安かったのでマォは上機嫌だ。

戻りながら露天で買えなかったパンも購入した。

前日の売れ残りのパンが半額になっていたので、それらを全部と焼き立てのバケットを2本。

ここでも大量買いになってしまったのでお店の人に大丈夫かと聞かれたのだが


「大食漢の息子が4人いるんです」


と答えれば、それは大変だろうねとバケットを1本おまけしてくれたのだった。

なんだこの町の人は優しい人が多いじゃないかと思いながら買い出しを終わらせて皆の元へと戻る2人だった。



「戻ったよ」

「只今戻りました」

「お帰り、どうだった」


2人は町の様子を話して聞かせる。

人々は割と穏やかで活気が溢れる町だった事。

城での出来事についてはまだ噂になっていなかった事。

隣の町は領主が違い、3か月前から旅人が立ち寄る際は旅人税なんて変なものを取るようになったから気を付けるようにと教えて貰った事。


「隣の町と言うとガメッツィ男爵領だったか」

「ねぇ、名前からしていかにもって感じなんじゃが」

「と言うと?」

「儂の国の言葉で強欲な事をがめついと言うん」

「「「 ・・・ 」」」

「そのままだな」

「でしょ?」


もっともこのガメッツィ男爵領は1つの町と2つの村と小さく立ち寄る予定はないので安心したマォだった。


荷物を詰め直して移動を再開する。

夜通し走っているので皆眠いのだが、今眠ると夜に眠れなくなり悪循環になりそうなので我慢している。


「そう言えばさ

 もっちゃんがこの先に温泉があるから夜はそこで休まないかって言ってた」

「ほう、温泉か。いいな」

「疲れをいやすにはやはり温泉ですよね」

「だよね、もっちゃんに案内してって伝えとく」

「ああ、頼んだ」

「いやいや頼んだじゃないですよ、ルーク様」

「何故だ」

「マォ殿モファームと会話してるんですよ?」

「ああそうらしいな」

「マォ殿、モファームと会話が?」

「会話つーか、なんとなく話が通じてる感じ?」

「なんとなくではなくてですね!普通はそんな事出来ませんからね!」

「そういうけどさダルク。じゃぁ皆どうやってモファームと意思疎通してんのさ」

「なんとなくだな」

「うむ、なんとなくゼスチャーを交えてだな」

「ほら、皆なんとなくじゃん!」

「えぇぇ・・・」


そんな会話をしながら一行は今夜の野営地である暗線へと向かう。

モファーム達はマォに頼まれたので滝に飛び込む事は止めた。

但し滝に飛び込まないだけである。


「ぬあぁぁぁ」


皆の叫び声がこだまする。

山奥の温泉地に向かうのである。

町へ向かう時に飛び懲りた滝を今度は登って行く。

さながら鮭の遡上のような光景だ。


「ま、待ってもっちゃん、水圧が・・・息が・・・」

『口閉じないと水飲んで溺れるよ?』

「そうは言うけども!もっちゃ・・・ごぼごぼ げほっ」


このままではダメだと思い、大人しく口を閉じる。

温泉に着いたらよくよくもっちゃんと話し合おうと思うマォであった。

皆は大丈夫だろうかと後ろを振り返る。


ぐきっ


水圧に押されてむち打ちになったマォ。


『だから大人しく前見て座ってて言ったのに・・・』


こんな事なら赤ちゃんみたいに毛で包めばよかたっと思うもっちゃんである。

そして温泉に着いたらもっと注意しておこうとも思うもっちゃんであった。

読んで下さりありがとうございます。

リアクションもありがとうございます。

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