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雷鳴轟く

獣騎士団を後にした3人はまず宰相の政務室へと向かう事にした。

ルークが辞表を書き上げる間にダルクに国王へ訪問を伝えて貰う為だ。

普段ならこのような突発的な事はしないのだが間を開けて対策を取られても困る。


「すんなりと事が運びますかね」

「オーウェンからも話が行ってるだろう、すぐ会えるとは思う」

「邪魔になりそうなんは誰がおるん?」

「外務大臣は良いとして、他の大臣共はどうであろうな。

 私が辞める事については喜びそうだがマォ殿が出て行くとなると」

「必死に食い下がってくるでしょうね」

「ふーん、まぁ黙らせるけど」


マォはにっこりと笑って手をパキポキと鳴らせる。


「マォ殿?」

「なるべく穏便にだな?」

「相手の出方によるじゃろ。

 そういやスキルに急所蹴りってあった、使ってみる?」

「「 やめろ! 」」

「誰か1人に犠牲になって貰えば他は大人しくなりそうじゃん」

「取り合えずだな、エルフィンの前では辞めておいてくれ」

「分かった。陛下から見えなければ・・・」

「やめい!」


ちぇっ、使ってみたかったのにと不満そうなマォである。


そうこうと話している間に政務室へと辿り着いた。


「ダルク、陛下にすぐに会いに行くと伝えろ」

「閣下無理です」

「何故に?」

「すでにいらっしゃってます」

「なんと・・・」


執務室のソファには国王が座っており、その後ろにはオーウェンが控えて立っていた。


「おや3人共おかえ・・・その赤ん坊は?」

「儂の孫だ」

「「 は? 」」


エルフィンとオーウェンは驚いて声を上げた。


「まさかあの愚息はそんな赤子まで・・・」

「いやいやそうじゃなくて、落ち着いてください陛下。

 オーウェン団長から王都での出来事は聞いておられますよね。

 実は団長と別れた後にですね・・・」


マォは河原での事を話した。


「そのような事が・・・

 マォ殿には嫌な思いをさせてしまい申し訳ない。

 このような事態を恐れていたのだ。

 だから後日にと・・・」

「待って? 今なんて言った?

 このような事態を恐れていたって事はさ。

 王都でこういった事が行われているって知ってたって事?」

「あ、いや、その・・・

 詳細な報告は上がってきておらぬ。

 だが差別や偏見が残っているのは知っておった」


プツンとマォの血管が切れる音がした。


「ざけんなよ?

 知ってて放置してたってか。

 儂に見られなきゃ今後もずっと放置するって事か。

 それとも見られても放置のままか?

 魔獣や妖獣の討伐を頼んでおきながら、彼らの同族をいとも簡単に殺すのか!

 よくもそんな事が出来るな!」

「私とてこのような偏見や差別は無くしたいと思っておる!

 だがその考えが根強く残っていてどうにもならぬのだ」

「3代前の苦労はよ?

 あんたは何か努力したのか?

 民に説明し理解を求めたか?

 理解してもらえるまで説明し続けろよ!

 思ってるだけじゃなんも変わらんわな!」

「よそ者に何が分かる!    あ・・・」


勢いでうかつな発言をしてしまう国王。

その言葉でマォの堪忍袋は切れてしまう。


「エルフィン!言葉を慎まぬか!」

「ぐっ・・・ 申し訳ない」

「別にええよルーク。

 よそ者か、ああ確かに儂はよそ者さ。

 国どころか世界が、次元が違うんだからな。

 どっかの阿呆に拉致られたんだからな。

 よそ者はこの国からさっさと退散するさ、じゃあな!」

(王妃との約束も知ったこっちゃぁない、恨むなら国王を恨んでくれ)


マォは荒々しくドアを開けると足早に立ち去った。


「マォ殿待ってください!」


慌てて後を追うアルノーだがすぐに引き返し戻ってくる。


「陛下これまでお世話になりました。

 今を持ちまして職を辞することにいたします」

「待てアルノー。行き成りどうした」

「母がよそ者であるならば息子である私もよそ者でしょう。

 それに母を愚弄する人物に仕える気がありませんので、では失礼いたします」

「待て、マォ殿が母とはいったいどういう事だ。

 ルーク、説明してくれ」

「断る」

「なっ・・・」

「我がウォーカー領は国境が近い事もあり亜人種への偏見や差別は無い。

 領民も皆良好な関係を築いている。

 これも曾祖父殿の教えを皆が守り父がそうあるようにと努力してきたからだ。

 我がウォーカー領は今後独自に統治させてもらうぞ。

 言っておいたはずだ。

 何かあった時は独自に動くと。

 宰相職も辞させてもらう」

「待ってくれルーク。

 其方が居なくては政が回らぬではないか」

「陛下と同じ考えの者に任せればよろしいのでは?では御前失礼致します」


ルークは他人行儀な臣下の礼をとる。

エルフィンはルークに追い縋ろうとしたがそれを振り払うようにしてルークは部屋を出て行った。


「私はいったいどうすればよいのだ・・・」

「兄上、さすがにあの一言は言ってはなりませんでしたね。

 それよりも兄上はあのように亜人種が迫害されている事をご存じだったのですか」

「ああ・・・実際目にしたことはないが」

「そうですか、残念です。兄上との縁もこれまでですね。

 私も此処を去ります」

「な、其方までが私を捨てると言うのか」

「幼き頃暗殺者から守るために私を引き取り育ててくれたのは

 先代のウォーカー公ですよ。

 この様な状況に身を置いたと有ればウォーカー公に顔向け出来ません。

 それに、マォ殿はあくまでも被害者です。

 家族も知人もすべてを奪われておられるのですよ。

 そんなマォ殿によそ者だのとよくも言えたものです。

 兄上には失望いたしました。

 兄上も加害者の1人であること、どうぞお忘れなく」

「待て、待ってくれ・・・」


オーウェンも言いたい事を言って立ち去って行った。


「陛下、私はあくまでもルーク様の従者です。

 これにて失礼いたします」


放心状態のエルフィンを残し、ダルクもそっと退室していく。


ここで心機一転、3代前の資料などを読み返すでもして意識改革を頑張ればよかったものを。

結局エルフィンは現実を見る事も受け入れる事も出来ず自滅していく事になる。

すべてを失って初めて現実を直視する事になり考えを改めるのはまだまだ後のお話。





「マォ殿待ってくれ」


政務室を出た後アルノー・ルーク・オーウェン・ダルクの4人は小走りで追いかける。


「あのさ、儂一刻も早くここ出たいん。話は出てからにせん?

 さっさと荷造りしてあの河原に集合ね」

「これから出るのか? 外はすでに暗い、明日にしては?」

「オーウェン、そんな悠長な事言ってると監禁されてもしらんぞ」

「まさか、そんな。いやありえるのか・・・」

「マォ殿、私はこのまますぐにでも出れる。荷などどうでもよい」

「私もすぐに出立できます」

「私もです、マォ殿」

「儂は長靴と鎌回収したらすぐに出る」

「長靴と鎌?」

「大事な儂の私物なんだよ、元の世界から持ってこれた・・・」

「そうか、では先に出ておく。河原で会おう」


アルノーはマォと一緒に行動するといい、残りの3人はさっさと城から出る事にした。

マォはそのまま小走りを続けて自分に宛がわれた部屋の前まで来る。


「イザベル、悪いけど儂の長靴と鎌を持ってきてくれる?」

「マォ様、すでに用意出来ております。城を出るのですよね?」

「え?あ、うんそう。ちょっといろいろあって」

「概ねの事は存じております。雷鳴と共に声が響き渡りましたので」

「へ? 今なんて?・・・」

「雷鳴と共に声が響き渡りました」

「マジで? うそん・・・」


何故に雷鳴がとか、どうして声が響くんだとか聞きたかったが今はそれどころではない。

声が響き渡った事で狸貴族も動き出しているはずだ。


「では参りましょうか、マォ様」

「参りましょうかって、イザベルも来るの?」

「当たり前です。私は何があろうとマォ様が最優先です」

「・・・」

「さぁ呆けている場合ではありませんよ」


そう言うとイザベルは本棚をずらして隠し通路を開き、荷物を持ちマォの手を掴むと中へと入っていく。

その後ろをアルノーが着いていく。

3人が通路の中に入り終えると本棚は何事も無かったかの様に元の位置に戻っていた。

イザベルは魔法で小さな明かりを灯し、細い通路を上ったり下りたり右に曲がったり左に曲がったりと進んでいく。

どのくらい歩いたのだろうか、マォの足が疲れ始めたころにやっと外に出た。

出た場所は見覚えのある場所、あの河原だった。


「こんな隠し通路があったん・・・」

「いえ、待ち合わせ場所がこの河原だと聞きましたので掘り進めました」

「へ?!」

(掘り進めたってイザベルさんや、何気にハイスペック侍女なんじゃ・・・)

「ご安心ください、痕跡は残しておりませんので」

「そ、そう。すごいんじゃね・・・」


他の3人はすでに到着していた。

そして何故かモファームも4頭いたりする。


「あ、もっちゃん!」


マォはもっちゃんの姿を見つけて駆け寄った。


「マォ殿嬉しいのは分りますが、まず移動しましょう」

「あの雷鳴のせいで城は大騒ぎになってますよ」

「皆聞こえたの?! 儂聞こえんかったんじゃけど」

「あの轟音がなぜ聞こえん・・・」

「まぁそのことは置いておきましょう」

「すぐにでも追手が来そうですよね」

「うぇぇぇ・・・ めんどくさ」

「嘆くのも後です、さぁ行きますよ」


マォは赤ん坊を抱えてイザベルと共にもっちゃんに乗り、ルークはダルクと。

アルノーとオーウェンはそれぞれ自分のモファームに乗り移動を始めたのだった。

読んで下さりありがとうございます。

リアクションと誤字報告もありがとうございます。


エルフィンをポンコツ国王に仕立てるつもりがポンコツを通り越してしまいました・・・

でも後々頑張って立ち直すと思います。

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