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獣騎士団

さらさらになった2人分の遺灰をマォが両手で掬い上げ川へと流す。

宰相と騎士アルノーも真似て掬い上げるが粗熱を取ったとはいえまだ熱い。


「マォ殿この熱さでは手が焼けてしまうのでは」

「それがどうした。この親子はもっと痛い思いをしただろうよ」


そう言いマォは黙々と遺灰を流す作業を行う。


「自分がやります。宰相殿は仕事に支障が出ますので控えて下さい」

「すまぬ」


手が火傷を負えばペンを握れなくなってしまうので宰相は黙って見守る事にした。


何往復かして遺灰はすべて川に流し終わった。


「なぁルーク。

 すべての国民がそうだとは思わない。

 特に王都は酷いだけなのかもしれない。

 だがな、3代前に現れた招き人の思いはどこへ行ったんだろうな」

「これまで何度も視察に訪れていたのに気が付かなかったとは・・・

 まさかここまで酷い偏見と差別が残っているとは思いもしなかった。

 一体私は何を見てきたのだろうな、情けない・・・」

「仕方ありませんよ宰相殿。

 宰相殿や王子殿下が視察に出る時は根回しがされていたのでしょうから。

 自分達に都合の悪い事は目に触れない様にしていたのでしょう。

 今回は突発的だったので根回しも出来なかったのでしょうね。

 今頃あの狸共は大慌てではないでしょうか」

「陛下は何処まで知っちょんじゃろか」

「私が知らかったのだから、何も知らないと思いたい」


はぁ・・・と3人は溜息をついた。


「城に戻るか?」

「戻りたくねぇなぁ・・・」

「気持ちは分りますが・・・」


3人は木陰に腰掛けたまま遠くを眺める。

このまま町を散策する気にもなれず、かと言って城に戻るにも気が重い。



どのくらいそうしていただろうか。

空がオレンジ色に染まり始め、そろそろ城へと戻るかと重い腰を上げた。

すると対岸に人影が見える。

何やら大きな麻袋を肩に担いでおり、川岸まで来るとそれを川に投げ入れた。

辺りをきょろきょろと見回した後こちらには気付かなかった様で足早に立ち去っていった。


「何を投げ入れたんじゃろか」

「ごみの不法投棄だろうか」

「いや違いますね。微かに子供の鳴き声が聞こえます」


そう言うが早いか騎士アルノーは川へ飛び込み麻袋を回収してきた。

縛ってある縄を解いて中を覗けばまだ生まれて間もない赤ん坊のようだった。


「なんという事を・・・」

「・・・」


マォは絶句して言葉にならなかった。

騎士アルノーは自分のシャツを脱いで赤ん坊をくるんでやる。


「どうしますか」

「儂が育てる」

「え? マォ殿がですか」

「こう見えても3人の子供を育てたし4人の孫の世話だってしちょったん。

 子育てには慣れちょるよ」

「ですが城に連れ帰るのは難しいかと」

「なんで? この子が捨てられた子だから?」

「いえ、そうではなくてですね。

 先程くるんだ時に背中に突起があるのを見つけまして。

 この子は有翼人種もしくはそのハーフなのでしょう」

「なるほど、だから捨てられたのか。

 そして城勤めの連中も偏見と差別意識を持っていると・・・」

「宰相殿や私のように特に意識していない者もいるとは思いますが

 侍女やメイドの一部は貴族令嬢ですし」

「だからと言ってこのまま見なかったことには出来んよ」

「「 ・・・ 」」


皆どうしたものかと黙り込む。

しばらくして宰相が思いついたようで声を上げた。


「ではどうだろう。獣騎士団に預ければよいのでは」

「獣騎士団?」

「それは良いかもしれませんね。

 獣騎士団でしたら宰相殿のご子息もおられますし」

「その獣騎士団とは?ルークの息子さんが所属しちょるん?」

「マォ殿にはまだ紹介していなかったか。

 隣国に頼んで派遣してもらった騎士団でな。

 主に魔獣や妖獣の討伐をして貰っているのだ。

 その団長が義息子、養子でな」

「なるほど、隣国出身だから亜人種に偏見がないのか」


聞けば周辺諸国は色々な種族が混在していたり、亜人種が納めていたりしているのだそうだ。

つまりこの国だけが閉鎖的というか時代遅れなのだろうとマォは思った。

3代前の国王や招き人は意識改革を頑張ったんだろうになとも思う。


「でもその獣騎士団で赤ん坊の面倒見れる?」

「どうでしょう・・・」

「うむ、無理だろうな」

「ダメじゃん。

 じゃあ儂がそこに住んで赤ん坊育てる。

 なんなら儂が養子として迎えてもいいし」

「エルフィンやほかの貴族がなんと言うだろうな」

「ダメだとは言わせん。だって儂アレのやらかし行動の被害者じゃもん」

「まぁマォ殿に強く言えるものなど居ない気がしますしね」

「言うやつがおればそれは阿呆だろう」


このままここで話していても埒が明かないと判断し3人は場内にある獣騎士団の滞在場所へと向かった。

行き先を告げればモッフルはなるべく振動を抑えて移動した。

ちゃんと赤ん坊が居ると分かっているのだ。


(モッフルの方が偏見も持たずに赤ん坊に気使えてよっぽどいいじゃん。

 陛下にこの子くれって言ってみようかな)


マォはすっかりとモッフルが気に入ってしまった。


モッフルは城へ到着すると専用の門から中へ入りそのまままっすぐ獣騎士団へと向かう。

通行証の確認が無かったのはこのモッフルが王族専用の経路をしていたからである。

だがそんな事を知らないマォは(顔パスとかルークすげぇ)などと思うのだった。


獣騎士団に到着してマォは驚きと感動で固まってしまった。

獣騎士団と言うから騎獣騎士達だと思っていたのだ。

確かに騎獣も居る。

魔獣だか妖獣だか分からないが巨大な蛇だの巨大な蜘蛛だの巨大な蛾だとがもそもそと動いている。

だがそれらの周囲に居るのは獣人達だったのだ。


(まさかここで獣人に会えるなんて。

 それに騎獣って事は人馴れしちょんじゃろうから触れるじゃろうか)


モッフルから降りるのも忘れて赤ん坊を抱えながらじっと見つめる。


「マォ殿、大丈夫ですか」


騎士アルノーに声を掛けられてマォは我に返る。


「ごめんごめん、つい見惚れてもぉた」

「見惚れて、ですか?

 てっきり騎獣達に驚いたのかと」

「ん? あぁ、確かに実際に会えるとは思わなくて驚いたけど。

 ねぇアルノー、あの子達に触れるじゃろうか」

「本人達がいいと言えば触れると思いますよ。

 ほら、宰相殿なんかベタベタ撫でまわしてますし」

「おぉ、ほんまじゃぁ」

「触るのは後にしてまずは本題を彼らに話しましょう。

 宰相殿はすっかり忘れてサーペントに夢中の様ですから」


言われてみれば確かに宰相はサーペントを抱きついて撫でまわしている。

肝心な時に頼りにならない宰相であった。


「すみません、リオル団長はいらっしゃいますか」


騎士アルノーが声を掛けると宰相の隣に立っていた獣人がこちらへとやってくる。


「アルノーじゃないか、どうした」

「お久しぶりです、リオル団長。

 こちらアレ様の被害者の招き人様です。

 実は少々頼み事があってまいりました」

「初めまして、アレの被害者のマォと申します。

 そしてこの子は訳アリで私が保護しようと思う赤ん坊です」

「リオル・ハーウェイ・ウォーカーだ。

 こちらには派遣で来ているがカレフ国の騎士をしている。

 それで頼みというのは」

「この赤ん坊の事です」


騎士アルノーがこれまでの経緯を話すとリオルは愕然とした。


「頼まれてこちらに来たというのに我が同胞を殺しただと?」

「申し訳ないリオル団長。私がもっと早く行動していれば・・・」

「いや、マォ殿のせいではあるまい。

 各国境付近に住む者達は別として

 中央に近い町に来るほど嫌な視線は感じていたからな。

 その亡くなった者の名前は分るだろうか」

「市民証を預かっています」


マォは震える手で地に染まっている市民証を渡す。


「これは・・・部下の妻子だ。

 亡骸は・・・」

「埋葬して墓を作ってあげたかったんですけどね。

 場所が確保出来そうになくて荼毘に付して遺灰は川へ。

 一片でも故郷へ戻れればと・・・・」

「そうか、感謝する。

 それで赤子とマォ殿の受け入れという事だが、すまないそれは無理だ」

「理由をお聞きしても?」

「同胞を、部下の家族を殺したこの国の頼みだど聞く必要もないのでな。

 我らの耳に入らぬだけで、これまでも同じ様な事があったはずだ。

 そこまで毛嫌いしておいて魔獣や妖獣の討伐を頼んでくるとは。

 我々をバカにするのも大概にしてもらいたい。

 おい、親父殿クッキーと遊んでいる場合ではないだろう」

(なるほど、あのサーペントはクッキーと言うんじゃね。

 あ、いや今はそうじゃなくて)

「話はしかと聞いておる。カレフに戻るのだろう?」


ただ戯れているだけではなく話もきちんと聞いていた。さすが宰相である。

だがこの宰相、突拍子も無い事を言い出した。

読んで下さりありがとうございます。

うわぁぁ(;´Д`)ごめんなさい。

予約の日付間違えてたみたいで2話同時公開になってました。

おや、話がつながらないなと思われた方は1つ前の話を覗いてみてください(;´Д`)

お手数おかけします、すみません( ノД`)シクシク…

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