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王都での出来事

少しばかり暴力的な場面があります。

また暴言も出てきます。

不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

苦手な方は飛ばしてくださいませ。

翌日、王弟もとい騎士団長と出かける事になったと聞いた国王が朝一番に部屋へとやって来た。


「マォ殿、町へ出るなとは言わぬがもう少し後からでもよいのでは」

「思い立ったら吉日という言葉がありましてですね。

 決めたらすぐ行動する方がよいと言われてるんですよ。

 後でなんて言ってたら用意周到に道順とか決められてそうじゃないですか。

 そんな状態ではありのままの町が見れませんよね?」

「だがな、警備面からしても用意は必要で」

「騎士団長が一緒なんですよ?

 それに自分の身くらいは守れますし」

「そうかもしれぬが万が一という事もあるだろう」


国王が言う事も一理あるかもしれないが、護衛引き連れてぞろぞろと歩きたくもないし根回しされた場所をみても意味がないのである。


「陛下、私が付いておりますので大丈夫ですよ」

「オ・・・団長が一緒にか。それはまたうらや・・・ゴホン」

(今うらやましいと言い掛けたじゃろ・・・)

「それに私もご一緒しますしね」

「へ?」

「ん?」

「待て宰相、何故そなたも行くのだ。」

「視察の時期ですからね」

「別に一緒でなくとも・・・」

「私でしたらおいしいスイーツ店にもご案内出来ますし」

「スイーツ!」


思わず反応してしまうマォ。


「む、でしたら私はおいしいパン屋を案内しましょう。

 招き人殿はパンがお好きだと伺いましたしね」

「パン!!」


少しばかりテンションがあがってしまったマォは騎士団長と宰相がバチバチと火花を散らしている事など気付く訳もなく。


(美味しいスイーツに美味しいパン、楽しみだ)


どんなスイーツやパンに巡り合えるのかとわくわくし過ぎて、「私も一緒に行きたかった」と少しへこんでいる国王にはまったく気づかないのであった。


結局はマォ、騎士団長、宰相の3人で出かける事になった。

どうせこっそり護衛が付くのだろうと思ったので、くれぐれも一定距離を保って目立たないよう念を押した。


「お話も纏まったようですし、皆様ご退室くださいませね。

 これより身支度を整えますので男性陣は邪魔でございますよ」


イザベルはそう言ってぐいぐいと押し出してしまった。


(王族相手に強いなイザベル)


「私はマォ様の専属侍女でございますからマォ様最優先で動くだけです。

 さてお衣装ですが、私がお忍びで町に出かける時の服をご用意しました。

 新品だと浮いてしまいますのでこれで我慢してくださいませ」

「貸してもらえるの? ありがとう。

 わざわざ新しいのを用意されても困るから

 いつもの服でいいかなと思ったんだけど」

「女性がズボンを着用していれば奇異の目で見られてしまいますよ」

「あ、そうなんだ・・・」


用意されていたのは丈の長いワンピース。

落ち着いた茶系の色合いでマォの好みにも合っていた。

身支度を整え終わると迎えがやって来た。


「準備はよろしいですか」

「おやマォ殿、お似合いですね」


騎士団長はラフなシャツにスボン、休日の騎士といった感じに見える。

宰相もラフなシャツにズボンなのだがこちらは商人風に見える。

マォもちょっと裕福な商家の娘に見えた。


「では参りましょうか」


いつもの護衛騎士が冒険者風の服装になっていたのでこっそりと着いてくるのだろう。

でもさ、それならバレないように他の人に立たせておけばよかったんじゃ?と思わなくもないマォである。





町までは例のモファームとやらに乗て行く。

(モファームってロン毛のモ〇ラじゃん・・・)

マォは心の中で呟いた。

馬車を用意されていたのだがモファームに乗ってみたいとマォが言い出したのだ。


「しかしマォ殿、本日はその・・・ズボンではなかろう」

「跨がなきゃいいだけじゃろ。横乗りすりゃええじゃん」

「しかし初めてであれば・・・」

「馬と同じようなもんじゃろ、大丈夫さ。ねぇもっちゃん」

「もっちゃん?」

「モファームのもっちゃん」

「いや騎獣に名前をつけたのか」

「名前がなきゃ困るじゃん」


この国では一般的に騎獣に名前を付けるという考えが無い。

驚く団長や宰相を他所眼にマォはモファームを撫でまわす。


「宰相、マォ殿がよいというならよいではないか」

「団長、外では宰相と呼ばぬように」

「では兄上と?」

「それもどうかと・・・ルークでかまわぬ」

「では僕の事もオーウェンと」


役職名で呼んでいたのではお忍びの意味がない。

呼び方も決まりモファームに乗って町へと繰り出す。


「馬よりも走り方が安定してるし乗り心地がいい。

 毛並みも馬みたいに触り心地がいいな」


マォはご機嫌だし褒められてモファームもご機嫌である。

そのせいか予定よりも早く到着した。

町の外には駐車場ならぬモファームの待機場があった。


「じゃあもっちゃん行ってくるね!」


モファームと別れて町の中へと入れば、マォは圧巻の声を上げた。


(童話に出てきそうな古いヨーロッパの街並みみたいだ。

 写真でしか見たことないけど、綺麗な街並みだな)


マォはお上りさんにならないように、目だけ動かして周囲を見渡す。


(娘や孫に見せたら喜びそうだ)


残念ながらそれは叶わないのだが。


「まずは何処からいきましょうか」

「そうだなぁ、お昼食べなかったから何か食べたいかな」

「食べてないのですか」

「私も食べてないぞ、オーウェン。

 せっかく町へ来るのだから町で食べようと思ってな」

「えぇ・・・」

「だよねぇ、さすがさい・・・ルーク、分ってるぅ」

「えぇぇ、そんなぁ。それならそうと言ってくださいよ」

「騎士は体が資本、食ってなんぼなんだからまた食えばええじゃん」

「まぁまだ食べれはしますけど・・・」


何処で食べようかと歩いている時だった。

店が立ち並ぶ通りにある噴水前でなにやら騒がしい。


「なんだろうね」

「物取りとかでしょうか、騎士の連中もいるようですし」

「関わらない方がよいだろうな」

「なんだか物騒じゃね」


そこから離れようとしたマォの耳に叫び声が届く。


「私たちは不法移民ではありません、ちゃんと市民権も得てます!」


不法移民、その言葉にマォは反応した。


(市民権を得ているのに冤罪で捕まってる?)


気になりその集団へと足を向ける。


「あ、マォ殿!」


騎士団長が止めようとするが足早に移動する。

人垣から垣間見えたのは犬獣人の親子だった。


(念願の獣人! ってそうじゃない。

 まず話を聞いてみなきゃ、冤罪なら助けないと)


「この汚らわしい獣が! 目障りなんだよ!」


1人の男が母親の方を切りつけた。


(は?)


そう思った次の瞬間にはマォの足が動いており男に蹴りを食らわせていた。

ゲシッ


「てめぇ、なにしてやがんだ!

 寄ってたかって女子供に暴力振るいやがって!」

「な、なんだ貴様は。こんな獣が町を歩くなんぞ許されんのだ」

「は?獣はてめぇだろうが!

 理由なくこんな暴力振るいやがって!」

「理由なんぞ獣ってだけで十分だ」

「それがこの国の考え方か!」

「なんだと、それがどうした!」


遅れて到着した騎士団長と宰相は慌てて間に入る。


「落ち着けマォ殿」

「お前も落ち着つかないか、どこの所属だ」

「うっさいルーク、こいつら・・・

 あ、あの親子は!」

「邪魔をするなら貴様も捕縛するぞ、俺を誰だ・・・と。ひっ団長!」

「随分と威勢がいいな。

 ルーク、僕はこいつらを連れて先に戻るね。

 アルノー、どうせ居るのだろう。代わりに護衛に着け」

「・・・承知いたしました」


騎士団長は全員を魔法で拘束し、呼びつけたモファームに俵のごとくぽいぽいと積んでいった。

マォは倒れている獣人親子へと駆け寄る。


「大丈夫ですか、しっかりしてください」

「私よりも、子供を、この子をお願い、しま・・・」


手に握っていた市民証をマォに押し付けるようにして母親は事切れてしまった。


(もっと早く儂が動いていれば、ごめんね・・・)


せめて子供だけでも助けたいと思ったが、子供の方もすでに事切れていた。

なんとも言えない感情がぐるぐると頭の中を駆け巡る。


獣人というだけでいとも簡単に命を奪われてしまう。

こんな事が許されていいのか。

これがこの国の考え方なのか。

なにが3代前の国王が招き人に諭されて意識改革をしただよ。

偏見や差別がこうやって堂々と行われているじゃないか。

さっきのような一部の人間だけだと思いたかった。

だが遠巻きに見ていた人も通りかかった人も暴言を投げかけ、唾を吐くものまでいる。

石を投げてくる子供までもいた。

この親子に手を差し伸べるものは誰も居なかった。

騎士に怯えてとかならまだ分かるがそうではない。

明らかに嫌悪の目をしていた。


「マォ殿・・・」

「ルーク、この親子を埋葬したいんだけど」

「残念だが埋葬できる場所はこの町にはあるまいな・・・」

「なら、町を出てどこか河原に行きたいんだけど」

「わかった、マォ殿は子供の方を頼む。母親は私が抱えよう」

「いいの?」

「我が領地ではこのような偏見は無いからな、私とて気にせぬよ」

「ありがとう・・・」


そうして3人は親子を抱えて町を出る。

周囲からは奇異の目で見られていたが気にしない。

後ろを歩くアルノーはそんな周囲を睨みつけて暴言を浴びせられないように威嚇をしている。


「アルノーもごめんね、巻き込んで」

「気になさらないで下さい。

 自分は元々辺境の出身で亜人達とも暮らしていましたから気になりません」

「そっか、ありがとう」


町を出た後アルノーの案内で河原に向かい、流木を集めて積み上げた。

その上に親子をそっと横たえる。


「埋葬するのでは?」

「そう思ったけど場所もなさそうだし、荒らされても嫌だからさ。

 火葬にして遺灰は川へ流してあげようかと。

 川は海へ繋がってて、海はいろいろな国に繋がってるでしょ。

 魂は故郷に帰れるかもしれないじゃん・・・・」

「なるほどな。では私も手伝うとしよう。私は火属性だからな」

「なるべく高温でお願い」


マォは心を込めてこの親子の冥福を祈り、どこぞの部族が遺体を荼毘に付す様を思い浮かべた。

炎が親子を覆い燃やし尽くしていく。

3人はその炎を見守り、安らかな眠りについてほしいと願うのだった。

読んで下さりありがとうございます。

リアクション、本当にありがとうございます。

励みになります(*'ω'*)

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