宰相との会談①
お菓子を作る事も決まったし、そろそろ引き上げようかと思った時だった。
「そういえばマォ殿はこのまま城で暮らしてくれるのでしょう?」
「そうですね。色々と知りたいこともまだありますし、
しばらくはお世話になろうかと思ってますがよろしいでしょうか?」
「勿論ですわ、しばらくと言わずにずっと滞在してくれていいのよ」
「いえ、そういう訳にもいかないかと。
現状私は収入がありませんので生活費は国が負担してくれているんですよね?
有難たくはあるのですが、それは国民からの税収で賄われている国費ですよね。
私に使うよりは困っている国民のために使う方がよいかと思うのですが」
「今一番困っているのはマォ殿だと思うのだけれど・・・」
「それはそうですけど・・・」
「恐れながら妃殿下、アレ様の予算から捻出してはいかがでございましょう」
「あらそれはいい考えね、さすが侍女長だわ。
さっそく陛下へご相談申し上げましょう」
確かにアレの予算とやらかだ捻出するのはありだと思う。
だがそれも結局出所は税金だ。
さっさと知りたいことを調べて城から出る方がいいなと思うマォだった。
お茶会がお開きになりサンルームを後にして部屋へと戻る途中、男性に呼び止めらる。
イザベルが宰相補佐官のダルクだと教えてくれた。
「失礼いたします招き人様、宰相閣下が今後についてお話ししたいとの事です。
少々お時間を頂けますでしょうか」
「分かりました、私も話したい事がありますし伺います」
王妃が国王に根回しをするならこちらは宰相に根回しを。
根回しというか要望を伝えておかなければと思うのだった。
こちらの意見を無視して城住まいが決定されても困るのだ。
ダルクの後ろに着いて宰相が居る部屋へと向かう。
長い廊下を右へ左へと曲がり、階段を上ったり下ったり。
場内の移動だけでも運動量半端ないんじゃないだろうか、だから皆スリムなのかと変なところで関心するマォだった。
(これ1人だったら迷子になる自信があるな儂)
そんな事を思っていると到着したようだった。
「閣下、お連れしましたよ」
「分かった、すぐにこれを終わらせる。
そちらのソファに座っていただいてくれ」
何やら書類に囲まれて忙しそうな宰相である。
(宰相に抱きかかえられて移動したんだっけ。
こっぱずかしさでお礼を言えてなかったな。
そういえばこの宰相のこの声、誰かに似てるんだよな)
ソファに座りだされたお茶を飲みながら考える。
「げ・・・」
「げ? お茶が渋かったですか?」
「いえ、失礼しました。ちょっと思い出したことがありまして」
「思い出した事ですか?差支え無ければ一体どのような事を思い出されたので?」
差支えはありまくるし、そこは突っ込んで聞いて欲しくなかったと思うがこのまま黙っておくのも変な方向に勘違いされそうだ。
ちらりと宰相の様子を窺えばまだ書類と向き合っている。
ダルクだけに聞こえるように小声で答える。
「初日に私に状況説明をした無表情無感情無神経な人に似てるんですよ。
声のトーンが・・・ それを思い出しまして・・・」
「あー・・・」
ダルクの目が遠くを見つめた。
「失礼な。私は無表情無感情無神経ではないぞ」
「ごふっ げほっげほっ」
「ちょっと閣下、行き成り背後に立たないでくださいよ。
ほらもぉ咽てしまってるじゃないですか。
招き人様大丈夫ですか」
「大丈夫か、招き人殿」
誰のせいだと思うんですかと言い返したかったが咽ているし背中をさすってくれているのは宰相なので文句も言えない。
しばらくしてやっと呼吸も落ち着いた。
「失礼しました。
でも本当に似ていたんですよね。もしかして弟さんとかです?」
「いやアレ様の側近候補として勤めているのは甥だ。
甥の話は聞いている。
かなり失礼な態度だったとか。まことに申し訳ない」
「あー、甥御さんでしたか、なるほど声が似ていてもおかしくはないですよね。
頭を上げてください、宰相閣下が謝罪する必要はないですよ。
当本人とせいぜい親くらいでいいと思いますがね、謝罪なんて」
「しかしだな、私の気がすまんのだ」
「んー・・・
あ、そうだ。先日は抱きかかえて移動して下さりありがとうございました。
すっかり動揺してしまいお礼の言葉も忘れてしまいました。
申し訳ありません。
なのでこれでおあいこという事でいかがでしょう」
「私の方こそすまなかった」
「はいはい、お二人とももうよろしいですね?
本題に入りましょうか」
放っておけばいつまでも本題に入れないと思ったダルクが話を戻した。
まずは大まかな説明をとダルクが話す。
「どの大陸の国でも招き人と言うのは保護対象となっております。
なので生活面などは全面的にサポートするのでご心配なく。
どこに住むのかもご本人様の希望を優先的に考える事になっております。
ですが現状ですとしばらくは城に滞在する方がよいでしょうね」
「質問、希望する場所が他国でもいいんです?」
「勿論です、例えば旅をしながら定住地を探すのでもよいのですよ」
「現状では城滞在がよい理由はなんでしょうか」
「どうやら守秘義務を忘れた口軽な者が幾ばくかいたようで。
まぁその者達はすでに解雇済みですが。
近隣諸国にすでに招き人様の存在が知れてしまいました。
国内の貴族達にも知れ渡ってしまっています。
招き人様に近づこうとしてくる者がさらに増えるでしょうね」
「さらに増えるという事はすでにそういう人がいるという事です?」
「ああ、あの書類の山全部が招き人殿への挨拶状と招待状だ」
「何を考えているのか釣り書きを送ってきた阿呆もおりましたね」
「 ・・・ 」
なんで見も知らぬ人から挨拶状だの招待状だの届くのだろう。
釣り書きってなんだよ釣り書きって、お見合いとかの身上書の事だったっけ。
いやいや挨拶状よりもっと意味分からんと呆れてしまうマォ。
「申し訳ないんですが窓開けて外に向かって叫んでもいいですかね?」
「あー・・・さすがにそれはマズイかと」
「魔道具で防音の結界を張るから待たれよ」
「お手数をおかけします・・・」
さすがに窓から叫ぶのはダメだった。
それもそうか、外にいる人達に丸聞こえになるもんな。
別に「ド阿呆」くらい聞こえても構わないんだけど、とは思うが城側からすれば外聞が悪いのかと納得する。
「待たせたな、これで叫んでも大丈夫だ」
「ささ、招き人様存分にどうぞ」
テーブルの上に置かれたスノードームの様な物がキラキラと輝いている。
なるほどこれが魔道具なのだろうか。
綺麗だな、1つ欲しいなと思うが高そうな気がした。
そして存分にと言われて気後れしそうになるが、ここで飲み込んでもなと意を決して叫ぶ。
「では失礼して。
挨拶状はまぁまだ分かるとしてもだ!
見知らぬ相手に行き成り招待状だの釣り書きだのと送り付けんじゃねぇわ!
儂の何を知ってるつーんだ何も知らんじゃろがい!
どうせ勝手に自分の都合のいい招き人像作り上げてんだろ。
んで勝手な妄想しといて勝手に幻滅するんだろうがよ。
どいつもこいつもよぉ、あのクソガキと同じじゃねぇか!
こんなもん書く暇があるなら自分の仕事しやがれ!
宰相の仕事増やしてんじゃねぇよボケがぁ!
ふぅ、失礼しました」
ダルク驚きで固まっている。
宰相は前回も見ているのでうんうんと頷くだけである。
「教えて欲しいのですが、こういった考え方というのはお国柄ですか」
「お国柄・・・ですか?」
「あー、国民性というか、国全体的にこういった考えなのかという事です」
「そうですね、昔の貴族ならばそうだったでしょう。
選民思想も相まって自分の都合よくというのが当たり前でした。
ですがここ数年は意識改革が進んでいたと思っていたのですが・・・」
「なるほど、それは貴族だけ? 一般人平民も?」
「貴族だけだと思うのだがな」
「なるほど・・・」
現代社会、日本のみならずいまだに世界には人種差別は残っている。
選民思想や白人至上主義なんかも残っている。
昔から根強く残っているのだからいくら人類皆平等なんてどこぞのお偉いさんが言ってもすぐになくなる訳でもない。
この国もそうなのだろう。3代前の国王が招き人に諭されたと聞いたけど、だからと言って人々の意識なんてすぐ変わる訳でもない。
「後は招き人様にとってははた迷惑な言い伝えも残っているせいでしょうか」
「はた迷惑な言い伝えとは?」
「招き人を迎え入れれば繁栄と安寧がもたらされる」
「は? んな特殊能力なんぞある訳ねぇじゃん!
っと、失礼しました」
「招き人殿、素で話して貰ってもかまわぬよ」
「いやでも素だと口が悪いですし」
「招き人様、今更な気がいたします・・・」
「それもそうか・・・」
先ぼ度からちょいちょいと素が出てしまっている。
今更取り繕っても仕方がないかと思うのであった。
読んで下さりありがとうございます。




