表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

勇者様の幼馴染みと魔王様

幼馴染みの勇者なあのやろーの襲来を乗り越えること数回……そろそろアルリードさんの血管がぶちギレそうだよッ! な今日この頃。

勇者な幼馴染みも、沈静化しているみたいで、いまのところ会っていない。

できるなら、もう会いたくないよね、このまま。

そう思いながらも、リニューアルした魔王城の執務室で、わたしはマフィンをかじっていた。

チョコレート味のそれは、マリウスさんが作ってくれたもので、めちゃくちゃ美味しい。

紫のレースのついた魔女風のドレスのポケットには、可愛くラッピングされたバナナマフィンも入っている。

うん、なんか餌付けされてる感じがする。

まぁ、でもいいよね! 美味しいから。

ぷっくりふくれたポケットを見て笑っていたら、ジークがこちらを見てくすくすと笑っているのが見えた。

わぉ、相変わらずイケメンだね! ジークさん。


「嬉しそうだな、マリカ。今日はマフィンか?」

「うん。マリウスさんが作ってくれたの。ジークも食べるでしょ?」


書類整理をしている、ジークの口にマフィンを放り込む。

うん、満足。


「んん、相変わらず美味いな」


モゴモゴマフィンを食べるジークの姿に和む。

そのまま羽ペンをさらさら動かし始めたジークを見ながら、そばにあったソファに腰かけた。

新しいソファは、アルリードさんが購入して置いているらしい。ふかふかで、気持ちがいい。

お腹も一杯で、思わずうとうとしていたら、 しばらくして仕事が終わったらしいジークに抱えあげられた。

今日も安定感がはんぱないです。だって、ジークだもんね!


「眠たいのなら、寝室で寝ればいい。ソファだと体を痛めるぞ」

「…………うん、寝る。寝るよ……」


眠くて、頭が回らない。

けれど、ジークが苦笑したのはわかった。


「随分と、無防備だな」

「ジーク、だもん。大好きな、保護者様……」


そう、魔界にきて弱っていたわたしを助けてくれて、居場所までくれた、お父さんみたいな存在。

おまけに、幼馴染みの災害やろーまで撃退してくれる。やっぱり、あいつはわたしの鬼門だよ絶対!


「保護者で、お父さんか……」


そっと呟いたジークが、片手で器用に扉を開ける。

大きなベッドにそっと下ろされたのがわかった。

安心できる香りに包まれて、そのまま深い眠りにつこうとしたら、ぎゅうぎゅうに抱き締められた。

一気に目が覚める。

な、何事ですか?!


「マリカ、マリカ…………好きだ。愛してる」


低く囁かれた声に、目が点になった。


「え?」


というか、体痛いから!玲音以来だよ、こんなにぎゅうぎゅうに抱き締められたのはッ!

驚いて見上げた先には、余裕の無さそうなジークの顔がある。

でもさすが魔王、さすがイケメン。どんなセリフも言動もハマ って見えるよ!

うっかり、ときめきそう。


「保護者としか見てないのも知っている。だから気長に待とうとも思ったが、なりふり構っていられないようだからな。ちょくちょく邪魔も入るし……」


あぁ、はい。勇者な幼馴染みのあのやろーですね、わかります。


「だから、正式に申し込もう。マリカーーーー私と結婚してくれ。魔王妃となって、側にずっといてくれ。お前の側は、心地がいい。お前の側ならば、笑っていられる」


……どうしよう。キャパオーバーしそうだ。

現実逃避するくらいには、驚いている。そんな気持ち知らなかったし、その気持ちにどう返せばいいのかも知らない。

あぁ、そうだよ! 生まれてこのかた、一回も恋愛なんてしたことないし!

彼氏も、ゼロ。

身近にいたのは、アレだし、正直どうしたらいいかわからない。


「え、ぁ、ぁう…………うぉ」


ちょ、誰か助けて!

顔が熱いし、鼓動の音が心なしか早く聞こえる。


「嫌か?」


そんなこと聞かないで!イケメンずるい!!

手を取られて、手にキスをされる。


「嫌、じゃない、ケド……」

「けど?」

はずか

どうしよう、本当に駄目だ。

間近にある綺麗な顔を、直

できない。

もう、何もかもがこんがらがってなにが何やら、まったく理解できない。

自分じゃどうすることもできなくて、とりあえず叫んだ。


「わ、わかんない!」


あ、舌噛んだ。

叫んだら、舌噛んだあげくに笑われた。


「わからない、か。では、わからせてやろう。マリカ、愛してるーーーーもう、離さない。あの勇者にも、やらない。お前を守るのは、私だ」


そういって、ジークがわたしの頬を撫でる。

うわ、うわぁ……やばい、心臓の音がうるさい。

さっきまで、大好きな保護者様だったのに? どうしよう、本当にどうしよう。


「覚悟しておいてくれ」


ジークの長い指に、わたしの指が絡められ、すっと硬質で冷たい感触のものがはめられた。

ジークの瞳と同じ色の石がはめられたそれは、明らかに高価そうな指輪だ。


「必ず、保護者様から旦那様に昇格してみせよう」


囁かれる声に、クラクラする。

どことなく甘い痺れを感じつつ、身をよじってベッドに顔をうずめた。


「も、限界……」


どうすればいいのかわからないし、理解できないし、ドキドキするし、散々だ。

こんなことになるなんて、やっぱり前世でなにかしたのだろうか……

わけのわからないことを考えつつも、意識は闇にのまれていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ