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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師の先輩との会合〜 第1章 先輩冒険者との再会

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第99話 突然の襲撃

「にしても、ほんまに早いわ」


 当然だが、乗り物に乗った方が早いのである。

 徒歩よりも自転車、自転車よりもバイクなど。

 徒歩も当然悪くないのだが、

 世界を回ろうと思ったら、徒歩では長くかかりすぎるのだ。


「……そうだな」

「あっ!」

「むっ!

 どうした、リアー殿!」

「左方向を見てください!」


 リアーの言う通りに左を見ると、

 赤黒い皮膚をした獣が走ってきている。


「あれは……

 【ボア・アンガス】」

「ボア・アンガス?

 猪みたいな魔獣かいな?」

「ああ……

 だが、ベンガスが倒した【タックル・ボア】よりも、

 凶暴な魔獣で、相手を殺すまで攻撃を止めないんだ」

「止めないって、めっちゃ危険やろ」

「ああ……

 行商人の被害もこいつの仕業なんだ。

 ……暴れる理由は力を見せて、

 メスの気を引くことが目的だ。

 ……何より、力があれば餌も手に入るし、

 自分の縄張りも主張できるからな」

「……この馬車を襲う理由も」

「……縄張りに入ったからだろう。

 ……馬車なら食料が入っていると思っても、

 おかしくないからな」

「れ、練人殿、サイレン殿!

 呑気に話している場合ではないぞ!

 あいつ、俺達を殺すつもりだ!」

「……どうする?」

「なあ、サイレン。

 一旦でもええからあいつの動きを止めてくれへん?」

「……止められるが、何をするつもりだ?」

「俺が戦う。

 ベンガスは他にも馬車を襲いかかる魔獣がおるかも知れへんから、

 サイレンと一緒になって守ってくれ」

「れ、練人殿だけでか!?

 大丈夫なのか!?」

「……俺かて、戦いたい時があるんや」

「……ヤバくなったら私がフォローをする」

「サイレン殿」

「……リアー、馬車を停めろ」

「は、はい!」


 リアーが馬車を停めると同時に俺は外に出た。


「……《シャイニング・リング》!」


 サイレンの杖から出た光の輪がボア・アンガスの動きを封じた。

 ボア・アンガスはイライラしながらリングを破壊しようとする。


「……長くは保てない」

「十分や!

 《ダブル・アップ》!」


 様子見で攻撃とスピードがバランスよく上がらせる。

 そして、ボア・アンガスの前に立ち、蹴りを入れる。


「ガアア!」

「はっ!」


 まずはボア・アンガスの動きを見るために一振り。

 すると、ボア・アンガスは腕を使って剣を止めた。


「っ!」

「ガアアア!」


 しかし、俺もそうだが、

 ボア・アンガスも予想にしていなかったのだろう。

 剣はボア・アンガスの皮膚を切り裂いて肉も切っている。


 痛みでボア・アンガスが暴れ、

 俺は後ろに下がるしかなかった。


「くっ!」

「ゴアアア!」


 ボア・アンガスはその太い腕を振り上げて、

 俺を潰そうと腕を振り落とした。


「ぐ!」


 俺は何とか避けて蹴るが、

 ボア・アンガスにダメージを入れることはできなかった。


「硬い!」


 だが、ボア・アンガスも剣が厄介だと判断したのか、

 剣の間合いになると警戒して離れてしまう。

 凶暴ではあるが、考えないバカではないようだ。


「ゴアアア!」


 その時に雄叫びが聞こえた。


「なっ!」


 振り返ると反対方向に[オーク】が近づいてきた。

 このままだと馬車が襲われる。


「オークやと!?

 こんな時にーー」


 そして、俺が怯んでいる間にタックルを仕掛ける。


「っ!

 ぐあっ!」


 咄嗟に後ろに跳んだから、

 威力を逃すことができて、吹き飛ばされる程度で済んだ。


「くっ!

 オークも何とかせえへんとーー」

「……練人、リーダー命令だ。

 ……ボア・アンガスに集中しろ。

 ……ベンガスも引き続き馬車の護衛。

 ……オークは私が始末する」

「なっ!?」

「しょ、正気か!?

 魔術師が一人でオークと!?

 お、俺も!」

「……問題ない。

 ……私を信じろ」


 そう言って、サイレンはオークと向き合う。


「……こいつに集中……

 どっちにしても」


 こいつ相手にダブル・アップでは力不足だ。


「なら、これだ!」


 俺は剣をしまい、び握り拳を額の前で交差し、一気に開く。


「《ダブル・パワード・アップ》!」


 ダブル・アップは解除されたが、

 全身に力が漲る。


「グアア!」


 俺が剣をしまったのを見て油断したボア・アンガスは、

 俺を殺すために近づく。


「たあ!」


 そのボア・アンガスに近づいてタックルをする。

 パワーが上がり、ボア・アンガスは後ろに下がる。


「!?」

「この!」


 怯んだボア・アンガスを掴み、持ち上げる。

 通常やダブル・アップでは持ち上げることはできなかった。

 全身に力が漲り、この魔獣も持てるようになった。


「はああ!」


 そして、そのままボア・アンガスを投げ飛ばした。


「ボア・アンガスを投げ飛ばした!?」


 倒れているボア・アンガスに近づく。

 ダブル・パワード・アップはスピードは犠牲になるが、

 それでも立ちあがろうとしている間に、

 近づくことができる。


「はっ!」


 立ち上がったと同時にボア・アンガスの両脇腹を蹴りまくる。


「てい!」


 そして、ふらふらになったボア・アンガスを前蹴りで倒す。


「これで終わりだ!

 《マジック・ウェポン》!」


 剣に魔力を付与する。

 前の剣よりも魔力が強く纏い、

 さらに切れ味が上がる。


 強化された剣を持って、ボア・アンガスに近づく。


「せいりゃあ!」


 起き上がったボア・アンガスに、攻撃する暇を与えずに切り裂く。


「ぐ、ぐが、あ」


 切り裂かれたボア・アンガスはバタリと倒れた。


 俺は拳をグニグニと握った。


「体や魔力が慣れとるのか、

 前みたいな疲れがあらへんわ」


 前までは使い慣れておらず、

 魔力消費も多かったが、

 使い続けることで、

 魔力消費も抑えられて辛くない。


「って、んなこと言っとる場合やなかった!」


 俺は急いで振り返り、サイレンを見た。

 まだダブル・パワード・アップは続いている。

 加勢ならいつでもいける。

 そう思ってました。


「……え?」


 サイレンは苦戦していなかった。

 オークの一撃一撃の攻撃を完全に見切っているのか、

 まるで、ダンスするように避けていた。


 その際に揺れてもいるが、

 気にする様子もない。


「……《シャイニング・ショット》!」


 至近距離でオークが回避できないタイミングで、

 シャイニング・ショットという、

 光属性の散弾をぶちかます。


 避け切れないオークの腹に無数の穴が開く。

 太っているから脂肪のおかげで死ぬことはなかったが、

 大ダメージなのは間違いない。


「オオオオ!」


 オークが大振りで横に薙ぎ払おうとするが、

 それもサイレンは見切って後ろに跳んで、

 届かない場所にいた。


「……《シャイニング・ライフル》」


 振り切った後、サイレンはすかさずにオークの右肩を、

 光の弾丸で貫通させる。

 右肩を潰されたオークはズシンと棍棒を地面に置く。


「ぐ、グルルル!」


 オークは恐怖からサイレンを睨みつけて威嚇する。


「……生憎だったな、オークよ。

 ……お前の復習は飽きているんだ」

「!?」


 サイレンの杖が強く輝く。

 オークは下がらずにサイレンを殴りかかろうとする。

 腕力に任せた最後の一撃。

 普通の魔術師なら、それだけで倒せただろう。


「……終わりだ。

 ……《シャイニング・バーニング・ゼロ》!」


 サイレンはオークの拳を簡単に躱し、

 カウンターで、オークの胴体に叩きつける。


 普通の魔術師なら暴発するという危険な行為、らしい。

 だが、サイレンは魔術師の常識なんて知らないと言うように、

 暴発も自滅もせずにシャイニング・バーニングを信じているように。


 強力なシャイニング・バーニングを喰らったオークは、

 バタリと倒れた。


「す、すげえ……」

「れ、練人殿も凄かったが、霞むレベルだな」

「お、オークは普通は複数で挑んで倒す魔獣なのに……

 サイレン様はまるで当然かのように倒しましたね」

「……終わった。

 早くギルドに提出する素材を剥ぎ取って去ろう」

「せ、せやな。

 他の魔獣が来ないって保証はあらへんしな」


 俺はボア・アンガス、

 サイレンはオークとそれぞれ剥ぎ取って、その場を離れた。


「……ボア・アンガスってどのくらいになるんや?」

「……そうだな。

 ……危険度からタックル・ボアの四倍は貰えるな」

「……タックル・ボアの値段は?」

「せ、千二百デラル」

「酒代としては十分か……

 その四倍ってことは四千八百デラル」


 結構いい値段。


「……オークは?」

「……六千四百デラルだ」

「ですよね」


 つまり、サイレン一人だけで六千四百デラルを、

 いつでも稼げることになる。


「この場合は?

 まとめてから分配?

 それとも倒した人が総取り?」

「……合計で一万二千四百デラルか……

 ……四百デラルを共有資産に回すとして……

 一人三千デラルか」

「わ、私、何もしていないので、心苦しいのですが」

「……だが、リアーは戦闘が苦手。

 ……総取りすればリアーが稼げないのでは?」

「ギルドの依頼で十分稼げますし……」

「ほんなら、総取りでええんか?」


 ギルドで稼げるのなら、貰えなかったからといって、

 貧乏になるとか貧富が広がるとかないだろうし。


「……私としては、パーティーの不和、

 魔獣の取り合いに発展する可能性があるから、

 分け合っても構わないと思っている。

 六千四百デラルを貰っても何に使えばいいのかわからないしな……

 ……欲しいものが後で見つかるのなら分配しても同じだ」


 ここは平行線になりやすい。

 しっかりと決めないと問題になってしまう。


「パーティーのリーダーはサイレンや。

 サイレンが決めてくれへんか?」

「……いいのか?」

「俺はええ」

「ふむ。

 異論はないぞ」

「私もです」

「……ならば、これから依頼外で魔獣を討伐したら、

 誰が倒しても討伐報酬は分配することにする。

 ただし、無駄遣いはしないように」

「デラル借りたらすぐに返すように。

 仲間と言ってもそこはキチンした方がええわ。

 金の切れ目は縁の切れ目って言うしな」

「……ならば、誰がどのくらい借りたのか、

 まとめる紙を用意してもいいかもな」

「おう!

 いいぞ!」

「わかりました」


 これで一通り決めることができた。


「ん?

 あそこが?」

「はい!

 『南リーマハ』です!」

「……近くに海があるからか、

 潮の香りがするな」

「せやな。

 風も気持ちいいわ」

「では、急ぎましょう!」


 今回の報酬はあまり使わないで、

 貯めた方がいいかも知れない。

 今月、六月には俺なりの目標あるしな。

 言わないし、書かないけどな。

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