第84話 面白い世界
「……本当に痛かったな。
てか、ほんまに雑魚かったな、俺……」
サイレンの言う通り、
昨日の俺の肉体は悲鳴をあげていた。
今でも使っていない筋肉はないと思っていたが、
俺の考えの甘さをつくように、
俺の足から痛みが走った。
「……大丈夫か?」
「何とかな」
今では何とか戦えるほどには痛みは無くなったが、
それでも外に出る気にはなれなかったほどだ。
「……まあ、サイレンの言う通りやったら、
使い続ければ痛みも慣れるやろ。
それまでの辛抱や」
「……それはそうだ」
「……なあ、気になったんやけど」
「……ん?」
「ドラゴン種は三十年、
エルフやドワーフは百年が寿命と言ったやん?」
「……言ったな」
「で、牛の寿命は十五年から二十年やん」
「ああ……」
「せやったらミノタウロスの寿命はどないなるねん?
ほら、魔獣人族っておるって言ったやん?」
「……確かにいるな」
「……ミノタウロスの寿命ってどうなるねん?」
「……ああ、そういう研究チームはいて、
結果としては適切な環境下なら六五歳以上らしい」
「六十歳か……
ほんならドラゴンと人間と合わさった竜人族なら?」
「……いないこともない。
資料だと、その場合なら六十五歳と記載されていた。
ラミアも同じだろう」
魔獣と人間との混血なら人間の寿命と、
魔獣の形に近い生物の寿命が、
合わさって割った寿命になるのか。
「……よく調べとるわな」
「……冒険者だからな。
……誰も答えを出していないのなら、
それを探求する者がいても不思議ではない」
「そうなんか……」
ファンタジー小説やゲームだけしていては、
知ることがなかったこの世界の事実。
参考にしづらい面も確かにあるが、
それは同時に好奇心を満たすことにもなる。
チートもない。
元の世界が正しいとは限らない、
むしろ間違っているかも知れない。
中世ヨーロッパに似た世界観になりやすい、
異世界転移の物語で、
日本と同じ世界観、それも兵庫県に近い場所。
もしかすれば、旅をし続ければ、
大阪や東京に近い場所があるかも知れない。
そんな世界。
思い通りにはならないし、
元の世界の知識がどこまで通じるかわからない。
でも、だからこそ。
「……何をにやけている」
「いや……
オモロいなと思ってな」
「……そうか」
そう、面白い。
よく考えればそうだ。
広い世界の全てを見ることは難しい。
大抵は知った気になるのが大半だ。
実際に歩いたり、しなければわからないことだらけだ。
それが好奇心を満たして飽きることはない。
元の世界に帰れなくて落ち込むという暇がないくらいに。
「サイレン様!
見つけてきましたよ!」
「ああ……
どんな依頼だ?」
「こういう依頼があった」
〈ガーゴイル討伐依頼
廃棄された像からガーゴイルとして動き出した。
悪質な悪戯が頻発。
どうか倒してください。
報酬金:二千四百デラル。
ガーゴイル一体につき八百デラル〉
「……ガーゴイルって確かに石像が動くバケモンやけど」
そう、ファンタジーの世界ではガーゴイルは、
大抵は動く石像のモンスターだ。
だが、そう作られたのではなくて、
廃棄された像なのが気になる。
「……ああ、きちんと適切に像を捨てないと、
像が動き出してガーゴイルに変貌するんだ。
その大半は人型である場合が多い」
「何や?
人型やから魂が入りやすくて動くとかそう言う話かいな?」
動く人形や動く人体模型のような話だ。
「……そうともいう」
「……ほんで悪戯って?
どんな悪戯なん?」
「……初期の段階では暗闇に乗じて、
相手を脅かしたり、背中を軽く押す程度だ。
だが、段々とエスカレートしてしまう。
強く押したり、物を盗んだりな」
「……最終的にどないなるねん?」
「……さらに悪質になると人間を襲う。
まるで、魂を追い出せば自分がその中に入れると思ってな」
「マジもんの妖怪やんか」
いや。
妖怪が魔獣として分類していると考えた方がいいのか。
「放っといたらマズイよな」
「ああ……
人間の被害が出る」
「ただ、ガーゴイルの厄介なところは石像によって、
タイプが変わるんだ」
「タイプが変わる?」
「例えば、ガーゴイルが憑依して、
その像が力に溢れていると判断したらパワーが上がり、
速そうなら速くなるのですよ」
「……え?
テンションの問題?」
「さあな……
これに関してはまだ明確な答えは出ていない……
だが、期待もできる」
「期待?」
「……ガーゴイルの素材には魔力が豊富にある。
像を砕いた時に出る破片すら良質な魔石になることが多いんだ」
「……何でなん?」
「……魔力はイメージの世界だからな。
ガーゴイルの魔力が像に染み込んでいるかも知れない」
「染み込んでいる……」
「……私としては実際にガーゴイルを見てみたい」
「……せやけど、どないして会えるん?」
「……初期のガーゴイルなら目撃した暗闇を進めば、
驚かすために出てくるのではないか?
……私は候補から外れるがな」
「何でなん?」
「……ガーゴイルに魔力が豊富なら、
同じ魔力を見通す目を持っていても不思議ではない。
……私を脅かそうとして近づいたら、
私の魔力を探知されてしまう」
「否定し切れないのが悔しい……」
「……それに私が言うのも何だが、
ガーゴイルが喜ぶほどのリアクションもできない」
「確かにサイレン殿の冷静さなら、
期待できないな」
「……誰がやるねん?」
まるで、ホラー番組やドッキリ番組に出るような、
お笑い芸人のような感じだ。
「わ、私は怖いのはダメなのですが」
「お、俺は平気だぞ」
「……じゃんけんやな」
「わ、私、サーチありますし回復要因ですよ!」
「俺やて初動は大事や。
マジック・ウェポンとか使うで」
「……恨みっこなしで行こう」
「ううっ……」
「「「最初はグー!
じゃんけん、ポイ!」」」
そして、結果は……
「わ、私ですか!」
驚く役はリアーになった。
崩れ落ちるリアー。
「わ、わかりました……
し、しっかり私を守ってくださいね」
「……そこは信頼してくれ。
……大丈夫、リアーは守るから」
「……お願いします」
そして、驚く役が決まったので、
俺達はギルドを出た。




