表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師と戦士の讃歌〜 第3章 練人、新たなる力

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/103

第82話 パワーにはパワーで

「ここです……

ご武運を!」


 馭者はそう言い残し、

 この場を離れた。


「……ギルドの話では、

 この辺りでミノタウロスが来るんやけど……」

「少々お待ちを……

 《サーチ》」


 リアーの杖を軸にサークルが展開された。


「……魔獣は確かにいます……

 小型から……

 ミノタウロス以下の大きさの魔獣……

 少なくとも私達を狙う意図はありません」

「そんなことまでわかるもんか」

「……発見しました!

 この反応、ミノタウロスです!

 で、でも……

 これは……」

「これは?」

「……!

 ミノタウロスは一体ではありません!

 二体来ます!」

「に、二体やと!?

 どの辺りや!」

「えっと……!

 私の指す方角です!」


 リアーが指したので、

 俺はその方向に双眼鏡を使って、

 遠くから見た。


 すると、リアーが言った通り、

 二体のミノタウロスが接近している。


「ほんまや!

 一体は斧を持っていて、

 もう一体は武器持っておらへん!」


 しかし、武器を持っていなくても、

 ミノタウロスが強そうなことに変わりはない。


「……防衛網を突破したミノタウロスは二体いたようだな」

「に、二体って……」

「ミノタウロスは一体だけでも脅威なのですよ!

 それが二体なんて……」

「ああ……

 もし、一体でもミノタウロスが村に侵入したら……」

「被害が計り知れないぞ!」


 まずい。

 流石にこんな事態は予想外だ。

 何かいい策はあるのだろうか。

 そう考えていると、サイレンは顔を上げた。


「……ベンガス、練人、リアー……

 一体の……

 斧を持っているミノタウロスは任せる」

「ま、任せるってもう一体はどうするのですか!?」

「……私が倒す」

「そ、そんな無茶です!」


 リアーの叫びから考えて、

 本当に危険であり、強力な魔獣なのだろう。


「……いや、一体だけなら無茶でもない。

 ……《シャイニング・イリュージョン》」


 サイレンは光の分身を出した。


「……一体を片付けたら私も参戦する。

 ……それまで持ち堪えてくれ」

「持ち堪えてくれって」

「……行くぞ!」

「ああ……」

「さ、サイレン様!

 せ、せめて!

 風の恵みよ、我が友を救いたまえ!

 《ウィンド・スピード・アップ》!」


 リアーが瞬時に判断し、杖を起動させる。

 杖から涼やかな風が吹き荒ぶ。

 その風を受けて、自然と速くなった。

 それの加護は俺達だけじゃなく、

 サイレンと分身サイレンにも与えられた。


「……礼を言う!」


 二人のサイレンはそのままミノタウロスと戦い始めた。


「練人殿!

 しょうがない!

 我々は目の前の一体に集中しようぞ!」

「くそ!

 《ダブル・ マジック・ウェポン》!」


 俺はミノタウロスに目掛けて斬りかかった。

 しかし、ミノタウロスは斧を使うまでもないと言わんばかりに、

 腕を使って俺の剣を防ぐ。


「なっ!

 かすり傷一つおってないやと!」


 しかも、リアーのおかげで、

 素早くなったのに、

 ミノタウロスはチラリともこっちを見ない。


「練人殿!」


 ベンガスは急いでハルバードを振り回して、

 ミノタウロスを攻撃した。

 ミノタウロスも体を捻って俺を動かした後は、

 斧でハルバードを防ぐ。


「っ!」

「この!」


 俺は飛び蹴りでミノタウロスに攻撃する。

 しかし、ミノタウロスは動じず、

 ベンガスにだけ集中する。

 ミノタウロスは雄牛が二足歩行した魔獣。

 雄牛に対して半端な攻撃が効かないのと同じだ。


「なら!」


 俺はミノタウロスの目を狙ってた剣を投げ飛ばした。

 だが、ミノタウロスはあっさりと、

 ベンガスと戦いながら剣を弾き飛ばす。


「《ドロー》!」


 それをすることはわかっていたから、

 俺はすかさずドローで剣を引き寄せ、

 さらに投げた。


 だが、それでもミノタウロスは、

 剣をあっさりと剣を弾き飛ばす。


「っ!?」


 ミノタウロス的には厄介なのは、

 ベンガスと判断したようだ。


「ぐもおお!」

「おらあああ!」


 ガキィン!

 斧とハルバードのぶつかり合いは続く。


「俺を侮るな!」


 ベンガスのハルバードによる攻撃で、

 ミノタウロスの斧を吹き飛ばした。


「おらああ!」


 そのままハルバードを振り回し、

 ミノタウロスは咄嗟にハルバードを掴んで、

 押し合いになった。


「そこだ!

 《ドロー》!」


 ベンガスが抑えて、

 作ってくれたチャンスを無駄にさせないために、

 俺は剣を引き寄せてから振るう。


「でりゃああ!」


 渾身の力を加えて、

 ミノタウロスを攻撃する。


 剣自体に確かに威力はあるだろう。

 しかし、その剣を振るう俺の力が足りず、

 少ししかミノタウロスにダメージを与えることができなかった。


「なっ!

 何やと!?」

「グアア!」


 擦り傷しかダメージがないミノタウロスは、

 ベンガスの腹を思い切り蹴り飛ばした。

 その威力にベンガスは倒れる。


「ベンガス!

 くそ!」


 俺が剣を振るうと、

 ミノタウロスは邪魔だと言わんばかりに、

 斧を軽く振った。


「ぐあ!」


 本気で振っていない。

 それなのに、剣はあっさりと弾き飛ばされ、

 俺もゴロゴロと転がるように、

 吹き飛ばさた。


「れ、練人様!

 ベンガス様!」


 ダメだ……

 ドローによる奇襲も、

 ダブル・マジック・ウェポンで、

 強くなった俺の剣による渾身の一撃も、

 ミノタウロスの、

 あの分厚い筋肉のせいで、

 俺の剣が通らない。

 剣自体に威力があっても、

 振るう俺の力がないせいで、

 通用しない。


「くっ!」


 ズシン、ズシンと、

 ミノタウロスはベンガスに近づく。

 ミノタウロスは脅威になるベンガスを殺すつもりだ。


 もし、ベンガスが殺されたら、

 ミノタウロスはサイレンに襲いかかるだろう。

 サイレンを倒したら回復が使えるリアー。

 そんな最悪な状況が頭に浮かぶ。

 俺の実力がないせいで、

 俺が弱過ぎるせいで、

 仲間が殺されるかも知れない。


 そんな結末は嫌だ。

 仲間は生きて欲しい。

 本当にそう思っているんだ。


「はぁはぁ……」


 弱気になってしまう。

 ミノタウロスに勝てないのなら、

 これ以上の強敵相手に俺にできることは無くなってくる。

 いくら有効な策があっても、

 覆すことができない力の差が出始めている。


 だから、不安が過ってしまう。

 いつの日か実力不足でパーティーを、

 離れざるを得ないのか、

 俺のせいで皆が酷い目に遭ってしまわないか。


〜魔力はお前のイメージに付き合ってくれる〜

〜魔法に必要なのは“自分を信じる心”と、

 信じる心に見合った“実力”だ。

 欠けていては何も成功しない〜


 弱気になりそうになった時、

 脳裏にオルド・ドラゴンと戦っている時に、

 サイレンが言ってくれた言葉を思い出す。


「って、今、不安に負けとる場合やないよな!」


 体内にある魔力を総動員する。


 今の力では勝てないのなら、

 魔力を使ってでも倒せる方法を導きだせ。

 最悪な結末が嫌なら、

 俺の手で命懸けで変えるしかない。


 イメージするのはサイレンが、

 サイクロプスと戦った時に使った魔法。


 いや、俺程度の力で一回だけでは、

 どうせ足りない。

 ミノタウロスを倒すのなら、

 一回以上のパワーだ。


「《ダブル・パワード・アップ》!」

「……!?」

「たああ!」

「ぶも!?」


 全身に力が漲り、

 勢いのままミノタウロスに飛び蹴りをした。

 今まで攻撃が通じなかったミノタウロス相手に、

 始めて攻撃が通じた。


「練人様……」

「ここから先は第二ラウンドや!」

「グルアア!」

「ふるあ!」


 ミノタウロスが俺に向かって突進しかけたが、

 それを真正面から受け止める。

 少し後ろに下がるが、すぐに止まった。


 ミノタウロスの突進でも、

 受け止めるくらい力強くなった。


「はああ!」


 パンチを四発ほどミノタウロスの胴体に叩き込む。

 叩き込んだ後はミノタウロスは俺の首を掴むが、

 すぐに引き離す。


「ぐはっ!」


 腕を引き離されたミノタウロスは、

 今度は巴投げをしてきた。

 そのまま踏み潰そうとするが、

 俺はすぐに避ける。

 そして、膝に向けて蹴りを放ち、

 ミノタウロスの体勢を崩す。


「せい!」


 腕を使って攻撃するが、防がれ、

 俺の首を掴んで立ち上がらせる。


「ぐっ!

 はっ!

 せい!」


 その腕をすぐに引き離し、膝蹴りをお見舞いする。


「グア!」


 ミノタウロスもただではやられずに、

 俺を掴んで振り回して投げ飛ばす。


「俺も相手だと忘れるな!」

「っ!?」


 倒れている間、ベンガスはハルバードを振り回して、

 ミノタウロスを攻撃する。

 ミノタウロスの体から血が流れる。


「だあ!

 はっはっ!」


 ミノタウロスにタックルを仕掛けて、

 四発、パンチを再び叩き込む。


「攻撃はさせん!」


 俺を攻撃しようとするミノタウロスに、

 ベンガスはハルバードを使って封じ込む。


「《ドロー》!

 《ダブル・マジック・ウェポン》!」


 ドローで剣を引き寄せた後で、

 すかさず剣に二重に魔力を付与。

 流石に、魔力を使ったためか、

 少しだけ痛みが出てくる。


 恐らく、今日の魔力も枯れ始めているのだろう。

 つまり、今倒しきれと言うことだ。


「ふああ!」


 ミノタウロスの懐に踏み込み、

 横腹を切り裂く。

 最初と違い、今度は深い切り傷を残す。


「これなら押し切れる!

 おらああ!」


 ミノタウロスが痛みで動きが鈍くなった時を見逃さず、

 ベンガスはミノタウロスを押し出して倒れさせる。


「ベンガス!

 横を頼む!」


 俺は大振りで縦斬りをしようとする。


「その距離では届かーー。

 いや、練人殿を信じよう!」


 ベンガスは一瞬だけ戸惑ったが、

 俺を信じてハルバードを構える。


「おらああ!」

「せいやあ!」


 俺は剣を大振りに縦に振り落とす。

 すると、マジック・ウェポンの魔力が飛ばされ、

 飛ぶ斬撃となった。

 通常、あるいは一回だけの《パワード・アップ》では足りなかった。


 飛ぶ斬撃が縦にミノタウロスを切り裂き、

 横もベンガスのハルバードで切り裂いた。


 十字に切り裂かれたミノタウロスは、

 流石に耐え切れず、バタリと倒れた。


「サイレン!」

「「……《プッシュ》!」」


 俺はまだダブル・パワード・アップを切らずに、

 サイレンの方を向いた。

 サイレンが苦戦していたら、手を貸すためだ。


 だが、シャイニング・イリュージョンを使って、

 波状攻撃をしているサイレンは、

 表情と共に苦戦している様子が全くみられなかった。


 押し出す魔法を、

 交互に喰らっているミノタウロスは動揺している。


「……反対の腕を頼む」

「……わかった」


 ミノタウロスが抵抗しようと殴り掛かったら、

 サイレン二人は両腕を掴む。


「「……はっ!」」


 そして、分身と力を合わせて、

 ミノタウロスを投げ飛ばす。


「……私が行く」


 投げ飛ばされたミノタウロスは当然立ちあがろうとする。

 そのミノタウロスに分身が向かって、

 首にチョップを二発、

 反対の腕で喉に一発、

 顎に向けてパンチを二発叩き込んだ。

 叩き込まれたミノタウロスはふらつく。


「せい!」


 怯んだミノタウロスの首を掴んで、

 倒れさせる。


「……決めるぞ」

「ああ……」


 そして、サイレンの杖の先の光が強く輝いた。


「あれはまさか!」

「「……《《シャイニング・サンドイッチ・バーニング》》!」」


 最初、グラットン・イーグルを倒した、

 サイレンの二重のシャイニング・バーニング。

 ミノタウロスが耐え切れる筈もなく、

 両面焼きのハムエッグのようになり、

 バタリと倒れた。


 シャイニング・バーニングを使ったためか、

 分身は役目を終えたかのように消え去る。


「お、俺達が連携して……」

「新しい力を使って、

 ようやく倒せたミノタウロスを相手に、

 たった一人で……」

「強化イベントもなく、楽々と倒したな」

「……終わったぞ」

「お、おう凄いわ」

「……大丈夫か、練人?

 本来、パワード・アップは二重に掛けない。

 しかも、最初は一回が普通だ」

「せやろうな」


 重ね掛けはできることをしているから、

 二回連続で時間をかけて掛けるよりも、

 二回を一気にかけた方が早いと思っていた。


「どっちにしても、戦闘は終わったんや。

 解除するで」


 俺はダブル・パワード・アップも、

 ダブル・マジック・ウェポンも解除した。


「ぐっ!」


 すると、体中に痛みが走った。

 流石に一気に使用するのは負担が大きかったか。


「……大丈夫か?」

「な、何とかな」

「少し待ってください。

 今、癒します。

 《ヒール・ウィンド》!」


 リアーの杖が緑色に輝くと風が吹き荒ぶ。

 風は心地良くて体の痛みも和らいだ。


「痛みが消えていく」

「……完全回復まで時間はかかりますが、

 明日になれば痛みは消えますよ」

「……では、報告して帰ろうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ