第78話 そういうお年頃
「ふむ」
「メリリ」
俺はペラペラととある雑誌を読んでいた.
エアリーは俺の頭に乗っている。
「……練人、何を読んでいるんだ?」
「……エロい雑誌か?」
「そうなのですか!?」
「何でやねん!」
ベンガスの発言に思わずツッコミを入れた。
「違うのか?」
「ちゃうわ!
そんな雑誌買ってあらへんわ!」
「……練人がそんな雑誌を買うとは思えないからな」
「では、何を読んでいたのですか?」
「これやこれ」
俺が見せたのは、乗り物の絵が描かれている本だった。
尤も、冒険者登録の際に、
精巧な似顔絵を描いた魔道具を使ったのか、
その絵も精巧な出来だった。
「乗り物?
練人殿は興味あるのか?」
「俺もこういうのに興味があるお年頃やからな」
「メリ!」
実は俺は原付に乗ろうと思っていたのだ。
バイク型はアニメでもゲームでも様々な媒体で人気がある。
俺も男だ。
興味を持っていてもおかしくはない。
今や、俺の頭はエアリーの乗り物のように、
思うこともあるが、気にしないでおこう。
この世界にいるから原付などはご破産。
観たかった好きなアニメの映画も観れなくなって、
最後に見たのも、
メインヒロインの声優が交代したまでだから、
地味に気になっているのだ。
「……確か練人はオシャレの本も、
偶に読んでいたな」
「そうなのですか?
意外ですね。
練人様はてっきり興味はないかと」
「メリリ」
「せやな。
ほら、最近の流行に敏感な登場人物が、
流行りの服とか知らんのは変やろ?」
加えてクールに見える服も割と好きな方だ。
流行に流されないタイプなのは間違いない。
「……確かにおかしいな。
俺はそこまでオシャレに詳しくないが……
かっこいい服は好みだぞ」
ベンガスは顔的に、
アメリカ人が着るような服が似合うと思う。
加えて大きいバイクに乗れば、
イメージ的にピッタリだ。
「……私もオシャレなどは詳しくはないが……
練人はどのような乗り物に乗りたいんだ?」
「せやな。
大荷物を運べるもんやったら、ええんやけど……
小さくても速い乗り物やったら乗ってみたいわ」
頭に浮かんだのはバイクもそうだが、
人気アニメのスケボーも気にならないと言えば嘘になる。
かといってバイクだけではなく、
動画を観て軽トラにも興味がある。
安いし。
ただ、まだ冬を過ごしていないから何とも言えないが、
この世界はどうも燃料は例のものがなくて、
後のことを考えるとそっとしておきたい気持ちもあるが、
いずれ、見つかるだろうから、
見つかったらちゃんと注意してほしい気持ちもある。
わかる人はわかればいいが、
これに関しては、
わからないと思う人もわからないでいいと思う。
「……曖昧だな」
「そういえば、空飛ぶ箒とか空飛ぶ絨毯とかあるんか?」
「メリ?」
海外の映画などでは有名な乗り物だ。
特に空飛ぶ魔法の杖はいかにも魔術師らしいものだし。
常に浮いているメリボーがいるから、
箒や銃弾も飛びそうなものだ。
下手をすれば魔獣である可能性もあるかも知れない。
「ふむ、聞いたことはないな」
「古書ではあると思いますが、
……すみません。
私も詳しくはないのですよ」
「メリ?」
「さよか。
まあ、あるかも知れへんってだけでおもろいけどな」
バイクとかあればカナイチシリーズの幅も広がるが、
今は目の前のことに集中しよう。
「……ん?
どないしてん、サイレン」
「……空飛ぶ箒、絨毯か……
ふむ……」
「サイレンさん?」
「……これらの原理はもしかして、
あの魔法なのだろうか?
しかし、体重と箒や絨毯の重量も加えることになる。
それならアレの方が早いのはないのか?
いや、しかし、一度見せて売りつける詐欺もあるかも知れない。
それに魔力を補充する魔鉱石もある。
ないとは言い切れないな。
リシアと再会したらまた議論でもしてみるか?」
サイレンは楽しそうにぶつぶつとそう言っていた。
サイレンはアレとか言って濁した言い方をしているが
何か心当たりがあるようだ。
「……サイレン?」
「……ありがとう、練人。
練人の言った内容は、
私にとっても大変興味深いものだ。
機会があって時間があれば私も調べてみよう」
思いがけずにサイレンから感謝された。
心なしか楽しそうだ。
「サイレン様って、魔法好きなのですか?」
「メリリ」
「……ああ、大好きだ。
そうだな、愛していると言っても過言ではない。
だから、魔法に関するものは興味を持ちやすいんだ」
普段のサイレンから想像できないほど、
生き生きとした顔だった。
「確か、魔術師に見られやすいペットは何やと思って、
犬や猫、フクロウのどれがええか悩んどったって、
言っとったな」
「……今でも悩んでいる」
「ふむ。
私は猫派ですね」
「俺は……
せやな、見る分はええんやが、
積極的に飼おうとか思わんタイプやな」
「そうなのですか?」
「俺の性格上、そういうのは苦手やし」
小説のキャラや自分に関係のない人が飼うのは構わない。
だが、自分が飼うとなるとどうしても責任を持ってしまう。
テレビでもよく無責任な人がペットを飼って、
そのペットが不幸な目に遭うシーンばかりを見てきたから、
自分が救おうとか思うよりも、
下手に飼って自分がそういう人間になってしまうのなら、
いっそ飼わない選択肢もある感じで懸念してしまう。
まあ、エアリーを仲間にしている俺が言っても説得力はないが、
ペットを飼うのは本当に難しいことだ。
時間も金もかかるからな。
「そうなのですか」
「俺は犬だな!
依頼を受けるのに便利だしな」
ベンガス的には猟犬として扱うイメージが強い。
確かに狩猟で猟犬を使う人は多い。
大昔、犬と人間は狩猟で連携していたから、
そのイメージはより強い。
「……そういえば、リアーはどないなことが好きやねん?
思わずやってしまうこととか」
「そうですね……
家庭菜園は好きですよ。
美味しい野菜育てられますし、
ついでに花も育てられますし」
リアーはサラダなどの野菜が好きだから、
確かに家庭菜園はやっていそうなイメージはある。
「……薬草はどうだ?」
「大丈夫ですよ。
薬草の知識も回復士にとって大事な項目ですし」
「それってやっぱアレか?
回復も度が過ぎれば毒になるとかそんな感じかいな?」
「わあ、練人様、凄いですね!
回復士について勉強を?」
「いや、それはしてへえねん。
せやけど、回復と毒は表裏一体、
昔の医学を学んどる医者も、
毒殺や暗殺の知識に長けとるというしな」
これは俺が医者を目指して勉強したことはでなくて、
中古の安くなった本を買って手に入れた知識である。
「はい。
だから、私達回復士も毒などの勉強もしているのですよ」
「……私の母も毒についての知識は凄かった。
病気の知識もな。
私が冒険者となって外の世界を冒険する前に、
知識を叩き込まれた」
「……あの、申し訳ございません。
もう一度、サイレン様のフルネームを、
教えてくれませんでしょうか?」
「え?
どないしたん?」
サイレンも微妙そうな表情を浮かべる。
「……サイレン・マジャン」
「……お母様は回復士ですよね?
もしかして、お母様の名前はカレン・マジャン様でしょうか?」
「……そうだ」
「へぇ、サイレンのオカンの名前はカレンって言うんかいな」
「やっぱりカレン・マジャン様!」
リアーは興奮したように、サイレンに食いついた。
「ど、どないしてん、リアー」
「知りませんか!?
カレン・マジャン様はポーション界の神童!
今、私達が飲んでいるポーションは殆どは、
マジャン製品で回復士で、
カレン・マジャンの名を知らない人はいません!」
リアーが興奮するほどの凄い人物なのか。
だが、サイレンは微妙な表情になっている。
「……すまない、追加で頼みたいことがある」
「た、頼みたいこと?」
「……ポーションや薬で有名な町では、
私のマジャンの名は秘密にして欲しい」
「……理由は?」
「……見てわかるだろ?
私の……
マジャンの名が知られると、
面倒なことになりかねない……」
「メリ?」
「わかったわ。
ポーションとか有名な場所では、
サイレンのフルネームは秘密でええな?
……せやけど、ギルドはどないするねん?」
「……大丈夫だ。
……事前に申告すればギルド全体で、
秘密にしてくれる。
ギルド職員達から私のフルネームで呼ばれることはない」
「確かにギルドに申告すればできるな」
「なるほどのぅ。
気になったんやが、偽名とかできるん?」
俺の冒険者カードは偽名ではないものの、
フルネームではない。
静川練人から練人と呼ばせているに過ぎない。
だが、偽名ではない。
「……有名な冒険者になれば、
その知名度ですぐにバレることもある。
だから、依頼によって偽名で登録する冒険者はいる。
……当然あくまでサブ扱い。
今、練人が持っているカードがメイン。
偽名を登録する場合はメインの冒険者カードをギルドに提出、
そして、メインカードを元にサブが作られるんだ。
だから、先に登録してメインカードを手に入れなければならない。
それ以外で偽名を使えばギルドに逮捕されて、
実刑を喰らうことになる」
「……作者名も同じなんか?」
「……気になるのなら登録するのも手だな」
「……今のうちに登録するわ」
ついでに考えついた偽名も、
今のうちに登録した方がいいかも知れない。
時期尚早かも知れないが、ネタとしては悪くない筈だ。
「……偽名、作者名をギルドに登録するのならば、
しばらくは依頼を受けることはできない。
いいんだな?」
「どのくらいかかるねん?」
「……今日も含めて二日はかかるな」
「……せやったら今日と明日は依頼休みでええんとちゃうん?
いつも依頼を受けるのも退屈やし、
偶には休むのも必要やろ?」
「……私はいいが、構わないか?」
「私は構いませんよ」
「メリ!」
「俺も構わないぜ!
せっかくだ!
親睦を深めるためにも一緒に行動するのはどうだ?」
「……いいんじゃないか?
それなら、今日は明日の準備と予定を決めようじゃないか」
「流石サイレン殿だ!」
「私も楽しみです!」
ただ、乗り物を雑誌を読んでいる内に、
いつの間にか明日の予定が決まった。
だが、それも面白いと思った。
俺は早速、受付の元へ向かった。




