第74話 ドラゴン種への挑戦
「ふぅ〜昨日はありがとうな、
俺のワガママ聞いてくれて」
「メリリ!」
昨日は依頼を休んで勉学に励んでいた。
と言うのも俺は元々高校生で、
異世界転移していなければ、
今頃も学校で勉強をしていた筈だった。
勘違いしては困るが、
別に俺はこの世界に来ることになって、
家に帰りたいとか、
もう戦いたくないとか思っていない。
確かにもう帰れない。
同じ出入り口が開くのは百五十年後だから、
帰るのは絶望的なのもあるのだろう。
それでも、この世界でも居心地良いと思うようになった。
「……何、別に構わないさ」
「メリ!」
「ほんで今日の依頼は何やねん?」
「うむ。
今日、俺達が受ける依頼はこれだ」
ベンガスが見せてきたのはドラゴンを倒す依頼だった。
〈レッサー・ドラゴン討伐依頼
湖でレッサー・ドラゴンの目撃情報あり。
ナワバリ争いに勝つために気性が荒くなっており、
動植物及び、人間への被害も懸念あり。
早急に退治せよ
成功報酬:二千デラル
レッサー・ドラゴン一体につき:千二百デラル〉
「レッサー・ドラゴン」
「おう。
練人殿やサイレン殿には久しぶりの、
ドラゴン族の討伐依頼だな」
「そう言えば、練人様の防具は、
オルド・ドラゴンの防具なのですね」
「せや。
コガワにいた時に偶然、
オルド・ドラゴンがサイレンに挑戦してきたんや」
「オルド・ドラゴンが……」
「サイレン殿に……」
「……私としてもドラゴン種は、
戦っておきたい相手だったからな」
「俺はサイレンの強さに便乗しただけさ」
「……そう言うな。
練人も立派に戦ったじゃないか」
「ありがとうな。
ほんで、気になったんやけど、
レッサー・ドラゴンは強いんか?」
「……長い間、生き続けたオルド・ドラゴンよりは、
若いレッサー・ドラゴンがまだ戦いに不慣れで、
まだ弱い方です」
「……ただ、冒険者にとっては、
初めて戦うことになるドラゴン種で、
冒険者の中には先生と呼ぶ者もいるそうだ」
「そう言う依頼って他の冒険者も人気なんか?」
「おう!
腕試ししたい冒険者がやりたがるものさ!
人によっては何回も戦ってドラゴンとの戦いの、
参考にしておきたいと考える人もいるぞ!」
なるほど。
ゲームでも種族のモンスターに慣れるために、
動きが似たモンスターを使って練習する人もいる。
それと似たようなものだろう。
「ベンガスもドラゴンと戦いたいのか?」
「おうとも!
俺だってドラゴンと戦いたいしな!」
「……レッサー・ドラゴンって、頭ええんか?」
「ふむ。
種類によっては賢い奴もいるだろうがーー」
「……賢いドラゴンは気性は荒くなく、大人しい。
下手に暴れれば人間などに討伐されるかも知れず、
他の魔獣、及びに別のドラゴンに喧嘩を売る可能性もあるからな」
「ん?
他のドラゴンに?
何でや?
ナワバリを荒らしとるからか?」
「……ナワバリを荒らしているし、
そのナワバリに人間も関与する可能性がゼロではないからだ。
狡猾なドラゴンは自分の罪を別のドラゴンに押し付ける、
そう言う話もある」
「……狡猾なドラゴンによる罪の押し付けってことか。
ドラゴンも人間のような感じなんやな」
「……面白いことを言うんだな。
そう考えればそうかも知れないな」
そういえば、オルド・ドラゴンも頭自体は悪くなかった。
最期の相手にサイレンを選んでいた。
戦う報酬として自分の素材を提供したような感じもする。
「メリ?」
俺はふとエアリー、メリボーを見た。
「……素材を提供……?
もしかして、
魔獣の中には人間に依頼する種族とかおるんか?」
「魔獣の中に?」
「金やのうて、素材や貴金属を渡すってこともあり得るんか?
確か、魔獣図鑑ではドラゴンの種類の中には、
宝石類などを渡す種類もおるって書いとったし」
「……そう言う状況は滅多にない。
滅多にないが、ありえないことはない」
「ほんで、大人しいドラゴンは、
罪を押し付けられるのを、嫌うと」
今の事実はもしかしたら、
小説に使えるかも知れないな。
「……サイレン様、もしかして」
「ああ……
今の練人は小説のネタに使えないか考えている顔だ。
割とわかりやすいんだ」
「割とって……」
「……練人の秘密ごとは大体わかる」
いや、まあ、
俺の秘密をすぐに言い当てたのはサイレンだしな。
今でも隠していてもすぐにバレそうと思う。
「大体って、ほんまかいな」
「ああ……」
「ほんなら、俺の付き合った人の数は?」
「……ゼロ」
「ゼロだな」
サイレンだけではなく、
ベンガスまでも即答した。
「あっさり!?」
「え?
そうなんですの?」
「多くの女性と付き合っている割に、
サイレン殿に対する接し方がうぶ過ぎる」
「うぶ過ぎるって言うなや」
「……女性に慣れている冒険者もいる。
そう言う者と比べたら練人は慌て過ぎるからな」
確かに冒険者ともなれば女性好きの冒険者がいても、
不思議でも何でもない。
ただ、それでもあっさりと答えられるとは思わなかった。
「……リアー殿も練人殿と過ごしていればすぐにわかるさ」
「いや、俺とベンガスって、
そこまで長く過ごしてあらへんよな!?」
「……練人は一ヶ月イナミにいたからな。
練人がどう言う人物なのか観察する時間は十分にある。
噂好きの冒険者ならそういう噂を手に入れる機会も多いしな」
「せやから、サイレン堂々とし過ぎやねん!」
「……と言うよりも何故女性関係なんて聞いたのですか?」
「……練人の過去が知らない以上、
私が答えられないとたかを括ったのだろう。
……浅はかだな」
「浅はかって言うなや」
「ちなみに俺もゼロだ!
振られた回数の方が多い……」
ベンガスは自身の女性関係を明かしつつ、
振られた回数が多いという事実にショックを受けていた。
「何で胸を張って落ち込むねん」
「……そうだな」
まあ、振られた回数が多いのは、すぐにわかった。
俺とサイレンがコンビだった時にいちゃもんをつけていたし、
ラミアとの態度で自分を好いてくれる女性がいないのは明らか。
だからこそ、ラミアの誘惑に引っかかったともいう。
「……このパーティーって男女関係であまりにもありませんね」
「あっても困るやん。
女好き過ぎてあっちこっち手を出して恨まれて、
殺されるパターンは探偵小説で結構多いしな」
俺の中では有名なのはやはり金田一シリーズの、
あの話だろう。
何十年も経って、ドラマで何度もした話だから、
ネタバレも何もないけど、
ドラマだけではなく、原作も読んで欲しいので、
書かないでおこう。
「……そうだな。
さっき言った相手は浮気扱いで袋叩きされたと、
後日聞いたこともあるからな」
「あ、やっぱかいな」
「……私もそう言う関係はないな。
冒険者になるための訓練が第一だし、
劣等感で私に話しかけようとしない生徒も多いしな」
ただ、サイレンは懐かしそうに上の空になった。
「サイレン様?」
「……故郷の友達を思い出していた」
「故郷の友達?」
「……一人はギルド職員を目指している同級生。
……もう一人は今頃魔獣使いになっているだろうな」
「魔獣使いの知り合いおるんか。
メリボー?」
「メリ?」
「……いや、ドラゴン種」
「ドラゴン!?」
「……もちろん、ギルドから許可された一族のドラゴンだ」
「ああ、そう言う家系があっても不思議やあらへんわな」
何だったらドラゴン以外の魔獣を飼育している家があっても、
驚かない自信は俺にはある。
「……レッサー・ドラゴンと戦って大丈夫かいな?」
「……友人のドラゴンとは別の種類だ。
……大丈夫さ」
「それならええんやけど」
「……何、故郷で私も、
こういう話をしていたなと懐かしく思っていただけだ」
「そうなのですね。
私も、サイレン様の友人に会ってみたいです」
「俺もやな。
ドラゴン種の魔獣使いに会ってみたいわ」
「サイレン殿の友人は美人か?」
「……さあな。
……ただ、再び会う時は私のパーティーに入らせてくれと、
私に頼み込むかも知れないがな」
俺としてはドラゴン種の魔獣使いが、
仲間になってくれるのはありがたい。
管理が難しくなるが、旅は楽しい方がいいからな。
「……パーティーに入れるか、
サイレンの判断に任せるわ」




