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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師と戦士の讃歌〜 第1章 新たなる仲間リアー

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第70話 パーティーの会話

「いや、ほんま凄かったわ、生活魔法」

「……そうか」


 一昨日はサイレンから生活魔法を徹底的に教えられた。

 そして、教えられた成果を発揮した。


「ほんまにベンガスはライトを使っている音、

 聞こえてへんかったようや。

 俺の方もベンガスの欠伸も聞こえへんかったし」


 サイレンから教えてもらった《サイレント》を早速使った。

 サイレントの効力は発揮されており、

 ベンガスはぐっすりと気持ちよさそうに眠っていた。

 俺も気にせずに安心して小説を書いている。


 やはり、起こすかも知れないと思って書くのと、

 自由に書けるのでは気持ち的に違う。

 ライトとサイレントのどっちも使っているから、

 前よりも使う魔力量が多くなるが、

 魔法はサイレンがいるし、別にいいだろう。


「……練人の役に立てて良かった。

 ただ、練人は最初からライトを積極的に使っていた。

 苦手意識だけが先行して、

 使えないと思い込んでいただけだ。

 きっと、他の便利な生活魔法も使える筈だ」

「でも、助かったわ」


 ちなみに何故、一昨日だったのか。

 理由は単純で昨日は雨が降っていたからだ。


 雨が降っていれば休む。

 休むのは俺達のいつもであり、

 サイレンも冒険者にとっては普通だと言っていた。


「……にしても、今日は四人パーティー結成で、

 初めての依頼だからと、

 ベンガスとリアーさんが依頼を決めに行ったんやけど、

 遅いな〜」

「メリ?」

「エアリーは今日も留守番や。

 受付嬢の相手しといてや」

「メリ!」


 まるで園児を預けているように思うが、

 メリボーは弱く下手に戦闘に参加させられない。


 別に死んで欲しいとも戦って欲しいとも思ってもいない。

 いるだけで癒されるものだ。


「練人殿!

 見つけてきたぞ!」

「お、やっとかいな」

「今、見せますね」


 リアーが見せた依頼は……


〈サイクロプス討伐依頼

 最近、近くの森でサイクロプス同士の喧嘩が多発している。

 ナワバリ争いか、メスを手に入れようと争っているのか。

 いずれにせよ、今のままでは住民に被害が出る。

 早急に退治せよ

 成功報酬:二千デラル

 サイクロプス一体につき:千デラル〉


「……一気に千デラル代やな」


 加えて、サイクロプスはファンタジーでは出るモンスターだ。

 力強い魔人で、一つ目が特徴だ。

 だけど、接近戦特化で遠くの敵を攻撃するのに向いていない。


「……少なくともラミアや、

 オルド・ドラゴンより弱いから大丈夫だ」

「……せやな、二つ、結構きつかったからな」

「あっ、やっぱり練人さんの鎧って、

 オルド・ドラゴンの鎧なんですね」

「せやで。

 サイレンが倒したんやけど、

 結構頑丈な鎧で何べんも助けてくれてるんや」

「……何を言っている。

 オルド・ドラゴンと戦っている時、

 練人も勇敢に立ち向かったさ。

 ……そして、ラミアは練人単独で倒した」

「そうだな!

 ラミアの時の練人殿はかっこよかったぞ!」

「練人さんってラミアを単独で倒したのですね……

 そういえば、

 私のギルドでもラミアが討伐されたという噂を聞きました。

 練人様が倒したのですね」

「ラミアの時は、彼女が俺を雑魚だと舐めてかかったからや。

 途中で雑魚やないと判断されてピンチになったんやけどな」


 サイレンが戦っていれば、ラミアは隙を見せずに、

 積極的にベンガス達を人質に使っていただろう。


「なら、大丈夫だ!

 サイクロプスはパワーは強いが、

 はっきり言えば頭の方は俺よりも馬鹿だ!」

(おいおい……

 俺よりも、ってはっきり言うのかよ)

「私はちょっと怖いですけど……」

「……大丈夫さ。

 いざとなれば私が守る」


 サイレンはリアーを安心させるように笑う。


「サイレンの言う通りや。

 サイレン、めっちゃ強いで……

 長い間、一緒に戦った俺が保証するわ。

 きっと、驚くで!

 加えて、俺も戦うわ」

「おいおい!

 俺も忘れて貰っては困るぜ!

 何せ、俺は守護者!

 仲間の盾になるのが俺の役目だ!

 そうじゃないと、

 練人殿に助けてくれた恩を返せないからな!」

「……気にせんでもええのに」


 だが、今の状態がパーティーと言えるのだろう。

 今まではサイレンと二人で戦っていたから、

 本来のRPGのように思えて、

 新鮮と言うよりも久しぶりに思えてしまう。


「私も練人様達に救われました。

 精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」

「……リアーは私にできないことができるだろ。

 自分を信じろ、リアー」

「サイレン様……

 はい」

「俺も初めて回復魔法を見るから少し楽しみや」

「ふふ、小説に使うのですか?」

「もちろんや。

 解毒魔法とか興味あるし」


 例えばフグ毒のような即効性の毒にも解毒できるのか、

 蛇毒のような血清が必要な場合はどうなるのか、

 色々気になることがある。


「練人様の小説も意外と面白かったですよ」

「……ちなみにリアーは【熊に喰われた男】を読み終えた」

「さよか」

「練人様って意外と想像力があるのですね」

「面白がってくれたんやったらよかったわ」

「……お、俺も小説を書こうかな?」

「……書くのは自由やが、そう甘くあらへんで?

 話の構成もしっかりせんといかんし、

 毎日何とかしてでも投稿せんといかんし」

「……旅や移動中でも練人は度々書いているからな」

「お、おう」

「何でもそうやけど、口で言うのは簡単に思えて、

 実際やると結構難しいもんや。

 加えて小説内で矛盾が起きると読者は一気に離れるんや」

「例えば?」

「例えば一途な主人公の筈やのに、

 ハーレムを受け入れたり、

 人を殺さないと言った主人公はあっさりと人殺したり」

「た、確かにおかしな話だな」

「後はアンチの存在は基本的に受け入れるべきや」

「何故です?」

「どんなオモロい作品でも、

 人によってはつまらないと思うこともあるし、

 全ての人が好きと言える作品はあらへん。

 全知全能の筈の神様にも嫌う人はおるんや。

 神様よりも下な人間が嫌われないはずはないんや」

「ああ、確かにそうかもな。

 馬が合わない、一生分かり合えるとは思えない人間はいるな」

「俺も一生分かり合えないと判断した人とは、

 一緒にやっていくつもりはあらへん。

 お互い分かり合えないと分かれば無駄な時間も使わずに済むからな」

「……そうだな。

 私も故郷では私のことが嫌いなままな人間もいる。

 私も積極的にわかり合おうとは思えなかったから、

 練人の言っていることは納得できる」


 基本的に全ての人と分かり合えるのは、

 悲しいことに幻想。

 分かり合えないし、嫌いなままな人間関係は普通に存在する。

 小説でも同じだ。

 何を頑張っても好きになれない作品、テーマはいくらでもある。


「せやから、俺も俺の作品が嫌いな人がおるのは受け入れとるんや。

 嫌っておる人間に振り向かせるよりも、

 好きでいてくれる奴らの期待を背かない方が大事やからな」

「練人様って結構現実的なんですね。

 勝手にですけど、

 人間は皆分かり合えるとか言うようなタイプだと思いました」

「まあ、自己犠牲をして守ろうとする人間は好きやし、

 かっこええと思う。

 分かり合えると言う理想を信じて必死に頑張る奴を、

 応援したい気持ちもある。

 せやけど、現実も見ないといかんからな」


 俺の目的は小説作家となって有名になること。

 別に全ての人間に好かれたい訳ではない。


「……そうだな。

 私も別に同級生全て友達になろうという気持ちはなかったし、

 嫌われていても気にしなかった。

 だが、不幸な人生だったとは言わない」

「何故です?」

「……故郷では私は冒険者ギルドに入り浸っていた。

 ……故郷の冒険者達が私の先生であり、

 友達であり、信頼できる人達だ。

 孤独と同級生に言われることもあったが、

 私自身がそういう交流があったからこそ、

 彼らの言い分を信じる気にはなれない。

 だから、何を言われても平気だった」

「……サイレンのそう言うところはほんま強いわ」

「……練人も同じだろ」

「何だか、練人様とサイレン様は似た者同士ですね」

「……そうか?

 ……まあ、今の私にはリアー達がいる。

 ……仲間を守るのは冒険者として当たり前だ」


 そう言ってサイレンは笑った。


「サイレン様……」

「……では、そろそろ依頼を受けに行こうか」

「はい!

 私も精一杯頑張ります!」

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