第67話 北リーマハ冒険者ギルド
「着きましたよ、皆様」
リアーが丁寧に紹介した町は、
イナミよりも古い建物が多く、
遠くには五重塔まであった。
「へぇ〜!
五重塔まであるんかいな」
「はい!
五重塔ご存知ですか?」
「まあの!
五重塔は五大思想に関係があるからな」
「……五大思想のことを知っていたのか、練人」
「ご、ごだい?」
「五大思想っと言うんは簡単に言えば、
属性の考え方やな。
五重塔で例えると、
一番下が『地』、
地よりが上が『水』、
水より上が『火』、
火より上が『風』、
ほんで一番上が『空』なんや」
「……下にあるものが重いもの、上が軽いもので、
上にあるものが上等になる。
地は硬く変化しないもの。
変化に逆らい、何かを維持するもの」
「水は形のないもの、流れるもの。
変化を受け入れ、適応するもの。
ほんで、火は力ややる気。
変化を発生させ、成熟へと向かうものなんや」
「……風は自由、広大、成長。
全てを養うもの。
最後の空は、あらゆるものを邪魔しない。
全てを内包するもの。
空と空間、さらには無を意味する」
「凄いです、二人とも!
二人の知識は勉強してですか?」
「……私はそうだ。
魔法を扱うものとして、属性を気にかけるのは当然だ。
練人が知っていたのは驚きだが」
「さよか?
五大思想を教えてもらっておもろかったのもあるけど、
作家を目指しとる以上、知識として知っておいて損はないやろ」
知った機会は故郷で寺の住職から聞いた時からだ。
だが、作家を目指している以上、
属性の意味を調べるもの必須なのだ。
ファンタジー設定で使えそうな資料は結構買ったのだ。
「……そうか」
「ほんで、五重塔があるんなら宮大工もおるんやろ?」
「はい。
いますよ」
「み、みや大工?
練人殿、普通の大工とはどう違うんだ?」
「神社などの建築と補修に携わる、
大工の最高峰のことや。
冒険者で例えるとAランクってところやろ」
「ほぅ!
確かに最高峰だな!」
「っと、説明しすぎたな。
スマンスマン」
「む?
興味深かったぞ、練人殿」
ただ、説明もいい加減に止めないと教科書みたいになって、
読者が逃げてしまう恐れがある。
「実は北リーマハは宮大工達が建ててくれたもので、
私も気に入っているのですよ」
「ほんならギルドに行こうや」
「はい。
案内しますね」
北リーマハの冒険者ギルドはまるでお堂で、
イナミの冒険者ギルドは、
田舎の町民のような生活ができる場所に対して、
北リーマハは寺の住職や侍などがいそうな感じだ。
「すみません、よろしいですか?」
「リアーさん、こんにちは。
もちろん、大丈夫ですよ。
……リアーさんの後ろにいる方達は?」
リアーが話しかけた受付嬢は、
コガワ、イナミのギルドの制服とは違って、
受付嬢はみんな巫女服を着ている。
まるで、参拝に来たような気分になる。
「おおっ……
巫女服もいいな」
ベンガスは巫女服を着ている受付嬢を見て、
簡単したように呟く。
よく見ると、男性受付も作務衣を着ている。
「俺らも冒険者なんや。
ほれ、ベンガスもカードを提出するで」
「お、おう」
俺達は受付嬢にカードを提出した。
受付嬢も俺達のカードを確認する。
「確認終わりました。
北リーマハ冒険者ギルドへようこそ」
そして、受付嬢は地図を渡した。
北リーマハの地図だろう。
「実は私、彼らに助けられたのです。
グラットン・イーグルから」
「グラットン・イーグルから?
ああ、彼が背負っているものですね」
「そうだったのですね
では、グラットン・イーグルの討伐報酬である、
二千四百デラルをお受け取りください」
「……ありがとう」
グラットン・イーグルの討伐報酬である、
二千四百デラルを受け取った。
ついでベンガスが心配していたリアーが、
正真正銘の存在する人間であることがわかった。
「ちなみにやがーー」
「……ん?」
サイレン達に聞かれないようにコソコソ話。
「男性ギルド職員が着とる服、
買いたいんやったら売っとる場所は?」
「作務衣を買いたいのですか?
なら、地図を貸してくれませんか?」
地図を渡すと受付嬢は赤い丸を付け足した。
赤い丸の場所に売っているのだろう。
「ありがとうな……
ほんなら、討伐報酬を山分けしようや」
「よっ!
待ってました!」
「今回はわかりやすいな。
一人当たり八百デラルや」
「……ルールだ。
山分けする時、都合よく割り切れない時があるだろう。
割り切れない状況になった時は余りは共有資産に回す。
構わないか?」
「ええとちゃうん?
余りを求めて喧嘩するよりも早く済むし」
「俺達のリーダーはサイレン殿だろう。
練人殿が良いのならば、俺も文句はない」
今まではサイレンとエアリーの二人と一匹の旅だったから、
報酬金も二等分にするだけで済んだが、
ベンガスが加わったことで三等分に分ける必要になった。
「デラルもだいぶ貯まってきたで!」
ただ、俺のお金の使い道は割と多くない。
一つ目は小説を書き続けるための紙代、
買い食いなどの食事代、
興味持ったら買うくらいなものだ。
ジムの代わりに訓練場があるし、
依頼もカロリーを使う。
今いる世界にテレビゲームなんて存在する筈がないから、
ゲーム代にお金を使うことはない。
元の世界では作務衣を着ていたから、
後でギルド職員に聞いて買っておこう。
ついでにサイレンも使い道は多くない。
体作りのためのプロテインと牛乳代、
習慣になっている美容液代。
そして、興味深い本を買うくらいものだ。
共通としてエアリーの餌代は俺達で出しているが、
微々たるもので気にする出費ではない。
「さて、北リーマハに来るまでに結構歩いたし、
そろそろ飯にしようや。
ええ加減腹減ったわ」
「……確かにそうだな」
「みんなは何食いたいかリクエストあるん?
俺はご飯食えればええし、ご飯に合う料理がええわ」
「……私は魚料理だ」
俺とサイレンはいつも通りだとして、
ベンガス達はどうだろう…
「俺はステーキだな!
分厚いステーキをかぶりつくのが一番いいんだ!」
「ワイルドやな〜」
ベンガスはまるで外国人のように見える。
豪快で肉を被りつくのは想像に難くない。
「私、北リーマハに住んでいるので、
美味しい飲食店の場所知っていますよ」
「そうなんか。
せっかく会ったことやし、一緒に飯食わへんか?」
「え?
よろしいのですか?
ご迷惑では?」
「……飲食店を案内してくれるのだろ?
なら、一緒に食べよう。
資金も貯まっているしな」
「……私は自分の分は払います。
でも、よろしいのなら一緒に食べたいです」
「ほんなら、決定やな」
「うむ!
ただ、一つだけ謝罪を」
「はい?」
「実は以前の依頼で魔獣に騙されて、
危うく食われそうになってな……」
今いる世界に知っとる人はいないだろうが、書いておく。
膝に矢を受けてしまってな……
「だから、素直に信じることはできなかった。
今、証明してくれたから疑ったことに対する謝罪をしたい」
「い、いいえ、大丈夫ですよ。
でも、何があったのか雑談を込めて話しかけてくれれば、
嬉しいです」
「もちろん、話す。
いいだろ?
練人殿」
「構わへんで」
俺も今の体験を小説にする気だからな、
前の体験を語るのも問題はない。
「ほんで、食後は宿探しやな。
今回も一ヶ月くらい滞在するんやろ?」
「ああ……
練人の言う通りだ」
「……別々」
「……一緒でも構わない」
「「最初はグー!
じゃんけん、ほい!」」
今回はサイレンがグーで、
俺がパーだ。
「よっしゃ!
やっと勝てたでな!」
「……ふむ。
まあいい」
サイレンは負けたことに関して、
そういうこともあるかという感じで気にしていなかった。
「何のじゃんけんでしょうか?」
「ああ、うん。
リアー殿は気にしない方がいいですぞ」
流石にベンガスも三人一緒に同じ部屋は色々問題がある。
だから、今回ばかりは勝っておきたかった。
何げにサイレンに初めてじゃんけんに勝てた。
お前、何回負けているんだよと言うツッコミは無しの方向で。
「さて、ほんなら飯屋に行こうや」
「は、はい!
では、ついてきてくださいね」
一ヶ月間、北リーマハで過ごすことになった俺達。
俺は北リーマハで起こるであろう体験に胸を踊らされていた。




