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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第4章 旅立つ準備

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60/103

第60話 美しき女性

 俺達が向かった場所は、

 薄暗い森の中にある洞窟だった。


「結構暗いな」


 そうポツリと感想を言ったが、

 返事はない。

 俺も返事してくれることを、

 期待していなかったため構わなかった。


(片目瞑って歩くか)


 暗い場所では灯りを付けたら、

 目印になって敵に襲われてしまう。

 加えて松明を持つことになる。

 つまり、片手を封じられるも同然だ。

 剣は片手でも振るうことはできるし、

 松明も武器になりえる。

 しかし、使い慣れた剣の方が安心できるし、

 戦いの腕やら見られているため不利になる理由はない。

 片目を瞑って暗闇に目を慣らしておいた方がいい。


「……」


 いつもはサイレンがいたから、

 会話に困ることはなく楽しかったが、今はない。

 敵意を向けなかったら俺も向く理由はない。

 だが、嫌われている相手に仲良くしてやる義理も理由もない。


「ん?」


 洞窟をしばらく行って別れ道らしき場所で、

 ヨシモリが見て止まった。

 俺達も止まって見てみる。

挿絵(By みてみん)

 いたのは黒髪ロングの女性だった。

 女性は町民を着ており、

 儚げな感じを出している。


「うわ……

 すげぇ美人」

「お、おう……」


 ベンガスが惚れたように、

 女性を見つめて他の二人もコクコクと頷いた。

 女性も俺達の方に気付いたようで見つめ返している。

 他の三人は誰から声を掛けるか揉めているようだが、

 同時に誰が最初に話してくれとも、

 思ってるような感じでもあった。

 黙ったままでは話が進まない。

 仕方がないので、

 俺から話すことにした。


「……あのぅ、すんません。

 洞窟に何か用あるんか?

 冒険者の方……

 やろ?」


 薄暗い洞窟に来るのは大体冒険者の筈だ。

 だが、妙なことに女性は武具などがなく、

 杖を持っている様子もなかった。

 ロープっぽいが杖やら短刀を、

 隠し持っていてもおかしくはない。

 鎧を着ずに防御ではなく…

 回避が中心のタイプの人もいる。

 少なくともサイレンは回避タイプだ。


「……私は洞窟から近い集落に住んでいるのです。

 冒険者ではありませんが、

 実は弟がいるのです」

「弟?」

「……はい。

 一週間前から行方知らずなのです」

「一週間前?」


 『小休止』ぐらいの時か。


「せやけど、

 行方不明者を捜して欲しいと言った感じの、

 依頼なかったと思うんやけどな?」

「……いなくなった時は雨が降っており、

 友達の家に泊まったと思っていたんです。

 けれど、いくら待てども弟は帰ってきておらず……

 洞窟まで捜しに来たのです」

「結構度胸あるな~」

「でも、危険ですよ。

 弟さんは僕達に任せてくれませんか?」

「でも……

 弟は私にとってたった一人の家族なのです。

 両親がいない私達にとって、

 互いにかけがえのない存在なのです。

 金がないのに私が作る貧しい料理を美味しいと言ってくれて……」

「……金はいりません。

 必ず弟さんを見つけますよ」

「……でも、家でジッとすることはできません。

 弟がいなくなって薬の作業も……」

「薬を作っとるんか?」

「はい……

 でも、せめて……

 洞窟の中を探させてください」

「ですが……

 危険なのでは……?」

「……もし、私を連れて弟を見つけてくだされば……

 私に差し上げられるものなら何でも差し上げます。

 お金でも、薬でも……

 何でも……」

「な、何でも?」

「はい……

 何でも……

 です」


 女性の綺麗な声を聞いて三人はゴクリと生唾を飲んだ。

 そして、明らかに女性のスタイルを舐めるように見ている。

 三人が何を考えているのは一目瞭然だった。


「わ、わかりました!

 道中の魔獣は俺達が蹴散らしますよ!」

「もし、魔獣に襲われそうになったらいつでも頼ってくださいよ!

 俺が絶対に守ってみせますから!」

「おい、練人も同行してもいいよな?」

(おいおい……)


 一見すれば意見を求められているように見えるが、

 実際は、

 “お前もさっさと同意しろ”

 と目で圧している。


「……わかった」


 目で圧している状態では、

 俺の答えも基本的に決まってしまう。


「さっさ、行きましょうか」

「……そういえば貴方様のお名前は何でしょうか?」

「私の名前は【クオン・ネースナ】……

 クオンとお呼びください」

「クオンさんですか、

 いい名前ですね」

「ささっ、足元に気をつけてください」


 三人はすっかりクオンさんの魅力にメロメロになっており、

 道中丁寧に扱っている。

 が、俺にあまり近づけさせようとしない。

 彼女を俺に取られないように処置しているのだろう。


「ベンガスさん、

 ヨシモリさん、

 クヨイチさんとおっしゃるのですね」

「さんって他人行儀な!

 さん付けなしで結構ですよ!」

「俺も俺も!」

「では、

 ベンガス、

 ヨシモリ、

 クヨイチと呼べばよろしいのですね?」

「はい!」

「……貴方は?」

「あいつ?

 ああ、彼のことは放ってもいいですよ」

「そう言うわけには行きません。

 貴方のお名前は?」

「……練人や。

 よろしゅうな」

「練人……

 良い名前ですね」

「そうですか?

 変な喋り方だし」

「まあ、そう言うことじゃないわ」

「はい、気をつけます」


 とクオンは柔らかく注意するが、

 強く注意する感じではない。

 三人も本気で反省しているわけではなく、

 クオンさんが言われたから仕方がなくが強く、

 クオンさんがいなくなれば元に戻っているだろう。


「ん?」


 話している時に地面に蠢く影が見えた。

 しかも、影は明らかに俺達の方を向いて動いていた。


(目で見るタイプやないな。

 せやけど影的にゴブリンのようなタイプの魔獣やない)


 そうなると、

 灯りが目印になるからしないと言うのは悪手になる。


「《ファイア》!」


 火の原初魔法を使うと、

 蠢いていた影の正体がわかった。

 蠢いていたのは蛇だった。

 しかも、ただの蛇ではない。

 全長が普通の蛇よりも明らかに長く、太かった。

 そして、蛇は一体だけではなく八体いた。


「……大人しく道を通してくれるわけやないか」


 いくら見ても蛇は俺達を恐れる訳ではなく、

 餌にする気満々と言ったところだ。


「《マジック・ウェポン》!」


 剣にいつも通りの魔法をかける。


「せいや!」


 先に動いたのはヨシモリだった。

 ヨシモリは身軽ためだったのか動きは素早く、

 サーベルも薄く鋭かった。

 サーベルを一閃、蛇の体に傷を入れる。


「うおおお!」

 ベンガスもハルバートを振り回して、

 一撃で蛇の頭部を両断する。


「はっ!」


 クヨイチは弓矢を放ち、

 正確に蛇の頭部を射ち抜く。


「よっと」


 俺も蛇が攻撃したところを反撃して頭を剣で貫く。

 言うだけあって戦闘自体は問題はない。


「ふん!」


 蛇がベンガスに一撃叩くが、

 ベンガスは気にすることはなくピンピンとしていた。

 ベンガスは典型的な重量戦士で攻撃と防御を担っている。

 ヨシモリが素早い動きで魔獣を翻弄し、弱らせる。

 クヨイチは弓矢を正確に射つことで、

 遠くや中距離から魔獣を射ち抜いて攻撃する。

 ベンガスは彼らを、特にクヨイチを守り、

 カウンターや二人の攻撃で弱った魔獣を倒す。

 今のが彼らの基本的な戦法だろう。


「喰らえ!」

「おら!」

「はっ!」


 連携自体は長く積み上げてきたのだろう。

 だからこそ、俺達二人だけのパーティーが、

 怪しく思い、侮辱を言ってきたのだろう。

 つまり、サイレンがかなり強いから、

 俺が戦闘を任せて楽をしていると。


「《プッシュ》!」


 押す魔法で蛇の頭部を殴打。


「せい!」


 少し怯んだ隙に剣で切り裂く。

 ただ、前評判に引っ張られる理由はない。


「逃げるな!

 《ドロー》!」


 剣で突く体勢を取った後に、

 ドローで逃げようとする蛇を引き寄せる。

 前のめりに倒れようとする蛇に剣で貫く。

 マジック・ウェポンで強化されているため、

 剣でもあっさりと貫き倒すことができた。


「ふぅ……」


 他にも人がいるからか、

 戦闘自体はあっさりと終わることができた。

 戦闘が終わったことをわかっているためか、

 他の人も一息を吐く。


「危ない!」


 そう言ってクオンはヨシモリを突き飛ばした。


「うわっ!」


 突き飛ばされたと同時に、

 蛇がヨシモリに噛み付こうとしたらしい。

 すんでのところでクオンが助けたことになる。


「まだいたか!」


 ベンガスは急いで蛇をハルバートで倒す。


「大丈夫か?」

「あ、ああ……

 ありがとう、クオンさん」

「い、いえ……

 つぅ……」


 すると、クオンは顔を歪ませた。


「け、怪我でもしたのですか?」

「い、いえ……

 ちょっと足を捻ってしまったようで」

「だ、大丈夫ですか!?」

「は、はい……」

「一旦ギルドに戻って怪我の手当てを見てもらうか?」


 そうすれば、他にも人員は確保できるし、

 彼女の安全は万全になる。


「い、いえ……

 もし、弟が洞窟にいるとすれば、

 一刻も早く見つけ出さないと……」

「そうですけど……」

「……ご迷惑でなければ誰かおぶって運んでくれませんでしょうか?」

「「「おぶる!?」」」


 うん。

 そうなるだろうなと思っていた。


「はい!

 はい!

 俺がおぶる!」

「いいや!

 俺がおぶる!」

「私でしょう!」

「「「がるるる!」」」


 ナチュラルに俺を省き、

 じゃんけんで誰がおぶるのか決める人達。


「よっしゃー!」


 そして、じゃんけんに勝ち、

 喜びで雄叫びを上げたのはベンガスだった。


「で、では、クオンさん。

 お、俺の背中に乗ってください!」

「はい。

 ……大きな背中」

「っ!」


 ベンガスは幸せそうに顔を綻び、

 他の二人は明らかに悔しそうにしている。

 ベンガスの顔的に彼女の肉体を背中越しに堪能しているだろう。

 わかりやすい奴だ。


「おい、何やってんだ?」

「ちょいとな。

 蛇の種類が何なのか確かめたんや」

「けっ、素材が目的か?

 現金なやつめ」


 明らかにヨシモリは、

 八つ当たりとして俺に小言を言う。


「皆さん……

 もし、よろしければこの薬をどうぞ」


 そう言って、クオンが取り出したのは黄色い液体だった。


「薬?」

「皆さん、多少疲れたでしょ?

 ちょっとした飲み物です……」


 エナジードリンクのような飲み物だろうか。


「ありがとうございます、では!」


 そう言って三人は言われたまま、

 疑いもせずに瓶の中を飲んだ。


「……」


 俺も同じ行動をする。


「いや~、甘くて美味しい!

 はちみつでも入っているの?」

「はい、元気が出ましたか?」

「はい!」

「では、洞窟の奥へ行きましょう!」


 ベンガスは完全にゆるゆるで、

 クオンを背負って洞窟の奥へ進む。

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