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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第4章 旅立つ準備

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第59話 挑発

「ーーで~~」

「確かにありますね。

 でーー」


 俺は今、受付嬢と話をしていた。

 世間話や、気を惹かせるための会話でもない。

 冒険者にとっては関係のない話だろう。

 でも、聞かざるを得なかった。

 簡単に言えば“取材”である。


「……なるほど」

「練人さんって不思議なことを聞くのですね」


 受付嬢は意外そうに呟いた。

 確かに俺が聞いたことは、

 普通の冒険者なら聞かないことである。


「ええ……

 でも、小説のために必要なことだったので」

「そうですか。

 また気になることがあれば、

 いつでも相談しに来てください。

 後よろしければ、私にも読ませてくだいさいね」

「はい。

 どうもありがとうございました」


 そして、俺はサイレンが座っている場所に戻った。


「……で、何だったんだ?

 受付の人に内緒で聞きたいことって」

「そりゃ、内緒や。

 せっかく書く決心したからな」

「……カナイチシリーズか?」

「せや。

 何か波に乗っとる気がするからな。

 今の流れを途切れさせるわけにもいかん。

 思い込みかも知れへんが……」

「……練人が言っては、弱気の言葉に引っ張られるぞ」

「せ、せやな」

「……では、いつも通り、

 何を書くのか期待しておこう」

「おおきに、サイレン」


 まあ、使えるネタと思ったのは二年前だけどな。

 ニュースで見て、ある映画を見て、

 やってみようと思っていた。

 ただ、元の世界だとやはり監視カメラとかもあるし、

 やろうと思えば電子機器も使える。

 橋とかを落としても空から救助ヘリとかが来てしまう。

 俺が書こうとしている作品だとどうしても穴が出てしまう。

 だが、サイレンの世界なら、

 そういう展開になったとしても制限をかけやすいものだ。

 サイレンやリシアのような凄い人は来ていないし、

 魔法で何でも解決するとは限らない。

 今回の設定はサイレンだけ聞くには、

 不確定要素が多い。

 だから、少し勇気を出して取材をしたのである。


「メリ?」


 エアリーは不思議そうに首を傾げた。


「……そういえば、エアリーのために絵本を買っとるんやが、

 絵本を読ませて大丈夫なんか?」

「ああ……

 メリボーは子供並みの知能がある。

 本を読むことに慣れれば賢い魔獣になれる可能性はあるさ」

「力を上げたい場合はトレーニング、

 持久力を上げたい場合はマラソンと言った具合か……

 ほんで、魔獣ごとに伸びやすいもんがある」

「そうだ……

 メリボーは力が弱く、

 フワフワと常に浮いているから走りもしない。

 基本的にはペットにするか、

 簡単な使い魔にする冒険者も多いんだ」


 ようやくゲームらしい要素が出てきた。

 確かに魔獣を鍛えようと思うのなら、ゲームっぽいと思う。


「なるほどのぅ」


 まあ、エアリーを戦わせるかどうかは、

 置いておくとしてだ。

 できることが増えるのは悪いことではない。

 できることが増えれば選択肢も増えることになるからだ。

 エアリーも嫌がっていないし、大丈夫だろう。


「ほんで、今回はどんな依頼を受けるんや?」

「……実は今日はめぼしい依頼がなくてな」

「そうなんか?」


 依頼書を見ると確かに、

 時期のために普段よりも報酬金が減っている依頼ばかりで、

 稼ぎになるような依頼は皆無だった。

「すまんな、俺が取材したせいか?」

「いや……

 私が確認した時点で、

 そうだったから今日はそういう日だろう」

「さよか……

 まあ、受けられなくても連泊はもうしとるし、

 食いぱっぐれることはあらへんわな。

 ……こういう時は他の冒険者は何しとるんや?」

「そうだな……

 基本的に他のパーティーと交流するか、

 特訓するかバイトをするかだろうな」

「バイトあるんか」

「ああ……

 何だったら趣味に時間を使う冒険者も珍しくない」

「……ほんなら、小説を書くのに使うか、

 特訓のどれかやろうな」

「……練人の予定だ。

 ……リーダーとしても、

 仲間の時間をきちんとしておきたい」

「ほんじゃ、ネタも確保したし、

 今のうちに書いておくとするかのぅ」

「……ならば、私は他の女性冒険者と交流しておこう」

「グループ?」

「ああ……

 話していて悪い感じはしないからな」


 グループというと、

 ツインテールしている女性冒険者と、

 ポニーテールしている女性冒険者と、

 短髪でのんびりとしている感じの女性冒険者の方だろう。


 ポニーテールをしている女性冒険者は魔術師で、

 リシアとも交流しているサイレンに尊敬の念を抱いている。

 もう一人のツインテールをしている女性冒険者は、

 強い女性を目指しているからか、

 強いサイレンに尊敬の念を抱いている。

 短髪はのんびりとしていて他の二人に可愛がられている。


「エアリーも行きたかったら、

 行ってもええで」

「メリ?

 メリ!」


 サイレンの後をエアリーはついて行く。


「……今日はフリーになった」

「え?

 ホント?

 いいの?」

「じゃあ、カフェで話さない?

 色々聞きたいし!」

「そうね!

 せっかくだし、今日は女子会しない?」

「私、いいお店知ってるの」

「……わかった。

 ……エアリーもいいか?」

「もちもち!

 エアリーちゃん、可愛いし!」

「彼氏はいいの?」

「……?

 ……彼氏?

 ……誰のことだ?」

「練人くんのことだよ」

「……?」


 ギルドを出たサイレンも含める女性冒険者達。


「……ほんなら、

 俺も宿に戻ってーー」

「はっ!

 いいよな、勝ち組は」


 すると、声が聞こえた。


「どうせ、あの美人さんにおんぶに抱っこだろ?」

「かなり強い魔術師が一緒なんだ。

 そりゃ、飯に困らねえだろうな」


 典型的な陰口が聞こえる。

 他の冒険者は呆れた様子であり、

 “ああ、またか”

 と言った感じだ。

 俺としてもサイレンよりも遥かに弱いことは事実だし、

 怒る理由はない。

 気にせずに宿に戻ろうとした。


「へっ!

 どうせ、サイレンっていう魔術師と、

 毎晩よろしくやってんじゃねえの?」

「でなきゃ、玉無し、男じゃねえよな」


 気にしない気にしない。

 噂はだいぶ前にあったし、

 気にしては毎日喧嘩する羽目になる。


「てか、冒険者なのに小説書きたいって何だよ」

「どうせ、陰キャ、暗い性格だろうよ」

「読んでも大したことなさそうだな。

 小説を楽しみにしているサイレンも浅いよな」

「……何やと?」


 俺は鋭い目で男性冒険者を睨んだ。

 俺はともかくサイレンをバカにするのは、

 流石に我慢ならない。


「おっ、気に障ったか?」


 男達はニヤニヤとこちらを見ていた。


「気に障るに決まっとるやろ。

 俺はともかく仲間を侮辱しやがって、

 何様のつもりや」

「ふん、変な言葉遣いしやがって」

「どうせ、ドラゴンの鎧も今までの戦いもサイレンに抱っこだろ?」

「はっ、陰口を叩くってことは、

 そっくりそのまま、

 あんたらに効くってことやろ?

 何せ陰口ってのは自分が言われたら、

 怒ることを相手なら怒るやろうなと思って言うんやからな。

 つまり、陰キャも男らしくない玉無しも、

 弱いこともお前らに効くっつことや」

「何だと!」

「おっ、怒るんか?

 自分達は平気で相手を侮辱するのに、

 逆に言われたらプッツンとするんかいな。

 俺以上にガキっぽいのぅ」

「の野郎!」


 そう言って掴み掛かろうとするが、

 一人の男性冒険者は止めた。


「偉そう言うんだったら、受けるだろ」

「何やと?」

「今から俺達は洞窟の依頼を受けるからよ、

 合同で受けようじゃねえか。

 もちろん、魔術師抜きでだ。

 お前の実力を確かめてやるからよ」

「俺にメリットあらへんやろ」

「なんだ?

 逃げるのか?」

「もしくは、魔術師と一緒じゃないと受けないのか?

 坊や?」

「できらぁ!」


 ついに挑発に負けて受けてしまった。

 自分でも単純過ぎるでしょ、

 と思わざるを得ないと思う。


「なら、見せてもらおうか」

「へへ、精々無様な姿を晒すなよ」

「晒したら言いふらしてやる」


 彼らは明らかに、

 俺が無様に負けて泣き出すことを、

 決めつけている奴の言い分だ。

 だが、言われたら言い返す主義。


「はっ!

 要するにお前らは楽して金欲しいだけやんか」

「あ?」

「お前らだけやと金が多く手に入る依頼は怖くてできひん。

 せやから俺におんぶに抱っこしようと思っとるんやろ?」

「誰が、お前なんかにーー!」

「さっきの言い方やと戦う気ないんやろ?

 こっちはそう思っても不思議やないで。

 あんたらに信頼も信用もあらへん。

 そう疑惑を向けるのは当然やろ」


 三人が三人ともピクピクと筋を動かしていた。


「俺だけ活躍したらお前らは非難ばっかする腰抜けって言うだけや。

 やっとることは乞食のようなもん、

 金は恵んでやるから感謝しぃや、寄生虫!」

「このっ!」

「俺に偉そうに言ったんや。

 言われる覚悟しときぃや。

 頭悪そうやし本自体読まんやろ。

 読めるかどうかもわからへんわ」

「ちっ……」


 そう言って俺達は受付嬢のところに向かった。


「そういう訳だ。

 練人と一緒に依頼を受けるぜ。

 合同依頼って奴だ」

「……本当によろしいのですか?」


 ギルドとしても心配だろう。

 何せギスギスしていて、協調性も何もないのだから。

 依頼が失敗する可能性はもちろん、

 全滅して全員死ぬ事態も想定している。

 受理したらギルドとしても責任があるだろう。


「あいつも了承したんだ。

 問題ないだろ」

「……わかりました。

 ご武運を……」


 止めたい気持ちもあるように見えるけど、

 互いに合意した以上は死ぬ可能性は、

 各冒険者自己責任扱いになる。

 覚悟の上で俺も受けたんだ。

 つまり、今回の依頼において、

 俺はサイレンなどの力を借りることなく、

 一人で戦わないといけないことになった。


(あそこまでバカにされて黙っていられるかってんだ!)

「……【ベンガス】さん、

挿絵(By みてみん)

 【ヨシモリ】さん、

挿絵(By みてみん)

 【クヨイチ】さん、

挿絵(By みてみん)

 練人さんの合同依頼を受理しました。

 報酬金は四分割にするようにしておきますね」


 そして、俺達は良い印象を持てずに…

 依頼を受けることになった。

 とにかく、俺は警戒はしておく。

 よくあるパターンとして、

 事故に見せ掛けて俺を殺そうとすることだ。

 人はやる気になれば人を簡単に殺せる。


 ただ、俺も大声で彼らに言い返した。

 仮に俺が殺されて死体となって見つかっても、

 あるいは行方不明になってもすぐに問いただすだろうし、

 ギルド職員もすぐに調査する。


 サイレンも黙っていない。

 最悪なパターンに対する最低限の保険は取った。

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