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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第4章 旅立つ準備

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58/103

第58話 小説作家の苦労

「……今日も雨降ってんな」

「ああ……」


 サイレンも流石に雨降っている時に、

 依頼を受けるつもりはないためか本を読んでいる。


「……【ゴミ屋敷殺人事件】完結したわ」

「……次の話が楽しみだな」

「お、おう……」

「メリ~」


 エアリーはサイレンに抱かれたままのんびりしている。


「次の話はアドランが中心で書きたいわ」

「……カナイチの幼馴染のか?」

「せやな。

 グラットン・ベアもそうやったし、

 ゴミ屋敷もそうやったんやけど、

 俺としてはどことなくキャラが薄く思えてな」

「……確かにな。

 カナイチが探偵のような冒険者だからな。

 通常戦闘よりも推理が目立つ。

 普通の冒険小説と比べると活躍できる機会が減るさ」

「せやな」

「……練人が書いた話もそろそろ百を越えるだろ」

「後数話でな。

 まあ、成長しとる気はないんやけどな」


 百話書いているが、

 でも、まだまだ小説家としては未熟者だ。


「……私は悪くないと思うのだがな」

「そりゃ、サイレンに褒められるんは嬉しいんやがな。

 でも、感想欲しいのは作家として当たり前なんや」

「……そう言えば、私が練人の世界に行った時に、

 どうなるか考えていると言っただろ?

 実際にどうするつもりだったんだ?」

「せやな……

 考えることが多いんやけどな」

「……考えること?」

「まずは戸籍や」

「……戸籍……

 冒険者登録みたいなものか」

「せやせや。

 正直、戸籍ってどうやってやるんか、

 よくわかってへんねん」


 戸籍の時点でリアルがない。

 十六歳で戸籍を気にしても、

 どうやって調べればいいのかよくわからない。


「他の作品を利用するんやったら、

 人に混乱系統の魔法を書けて、

 無理矢理サイレンの戸籍を登録する方法もある」

「……混乱魔法か」

「せや。

 あれば、使うし、

 なければオリジナル魔法として入れる。

 次に問題は金や」

「……そうだな。

 練人も私の世界で無一文になって大変だと度々言っていたな」

「ほんで、俺が生きれたんはラッキーな部分が多いねん」

「……私の場合、

 練人が私の世界に来たように、

 私が持っていたものを練人がいた世界のものに、

 変換すればいいのではないのか?」

「サイレン、見た目も全部変えたいん?」

「……杖、ローブ、とんがり帽子は残しておきたい」

「せやろうな。

 まあ、サイレンの持っている金次第やけど、

 サイレンの世界の一デラルは俺の世界の百円になっとるから、

 俺の推測を基準にすればええ。

 いざとなればオリジナルとして変身魔法にしとくし」

「……変身魔法か」


 例えば杖を短くさせて今の服を収納。

 敵と戦う時に解除して元の姿に戻るなど。

 特撮やそういうアニメではよくあることだ。


「……んで、サイレンが戸籍、

 金を解決したとしても学校はどないするとか、

 行かへんのやったら仕事もするんとか色々考えなあかんねん」


 俺の時と同じように両親や友達といった類はいないだろう。

 サイレンの年齢で学校に行かないのは変だし、

 フリーの仕事をするとしても世間の目も気になるところだ。

 俺と行動して、

 俺は小説を書くことを目的にするだろうから、

 俺との繋がりも気にしないといけない。


 後は学校に行かないと言うことは、

 学校に起きるエピソードも実質カットだ。

 勿体ないと思う自分がいる。


「……サイレンと関わるような人物にも考えんといかんしな。

 日本におる時の名前は決めとるんやけどな」

「……名前?

 練人の世界での私の名前はどうなんだ?」

矢島 彩蓮(やじま さいれん)とかな」

「……ふむ。

 練人と似たような名前だな」


 キラキラネームもあることだし、

 名前でも十分平気だ。


「……後はサイレンが魔法を使うための理由付けや、

 辻褄が合う設定も考えなあかん」

「……考えることが多いな」

「せやな。

 今までの話は逆異世界転移と呼ばれるんやけど、

 難しい点でもあるんや」


 メリットならサイレンが町を散策する話や、

 ゲームをやる話、

 サイレンの世界では味わえない、

 俺の世界のことなどネタが豊富である。

 だが、矛盾がないようにするための設定、

 (衣食住や戸籍、お金など)、

 移動手段、

 戦闘など気にしないといけない部分も多くある。


「……小説家も大変だな」

「ネタは自分で集めんといかんしな」


 まあ、サイレンが俺の世界で、

 ゲーム実況やる展開なども考えてはいた。


「……サイレン、もしこの世界がレベル制で、

 才能があろうが最初からレベル一やったらどうするん?」

「……最初からか……

 そうなれば一緒に成長はしたいな。

 最初から弱いが戦い、経験を得て仲間と一緒に強くなる。

 楽しいと私は思う」

「サイレンらしいわ。

 リシアも加えるん?」

「……そうだな。

 私もライバルであり、

 親友でもあるリシアがいないと退屈だ」


 何だろう、逆異世界でも、

 リシアが金持ち設定になりそうだ。


「……リシアは怒るだろうが、

 仲間として加えるかもな」


 リシアの場合は怒っても、

 ツンデレ要素が多いだろうな。


「……練人はレベルとやらが良かったのか?」

「まあ、俺の世界に転移物語や転生物語が多いから、

 最初は驚いたけどな。

 何一つチートなかったんやし……」

「……ちーと?」

「せやな。

 最初弱い自分をサイレンの世界で、

 何とかするためにめっちゃ強い武器とか、

 スキルとか得ることや。

 かなり強い竜でも一発で倒せる武器とか」

「……だが、ちーと?

 を奪われれば脆いのではないのか?」

「めっちゃ脆いな。

 まあ、おもろい作品も多いけどな。

 後はザマア系や悪役令嬢とか多いな」

「……ああ、逆転劇ってことか。

 ……私はあまり読まないな」

「俺も内容は知っとるけどな。

 詳しいのかと聞かれたら詳しくあらへんわ」


 何で大変なリアルな世界で暗くなりやすいのに、

 わざわざ本を読んで嫌な気持ちにならないといけないのか、

 と思うとどうしてもな。

 加えて数が多いから、

 流行に乗りそうで気乗りはしない。


「とは言っても設定が酷い物語を書くことにも意義はある」

「……意義?」

「せやなぁ……

 一つ目は書いてもあくまで創作物や。

 リアルではないからいくらキャラが酷い目に遭っても、

 リアルまでは影響はない。

 影響が完全にないとは言えんのが悲しいけどな」

「……一つ目と言うことは他にもあるのか?」

「せや。

 他には、

 “何故こんな悲劇になってしまったんだ”

 と読者に考えてくれればその作品は無駄やない。

 俺も嫌いな言葉があるんやけど、

 嫌な気持ちは今までの作品とか、

 アニメを見て読んで構築されたんやし」

「……嫌いな言葉?」

「諺で言うんやったら……

 狡兎死して走狗煮らる」

「…… 狡兎死して走狗煮らるの意味は?」

「すばしっこいウサギが死ねば、

 猟犬は不要になる。

 せやから煮て食われる。

 このことから、価値がある時は大事にされて、

 なくなれば簡単に捨てられる。

 犬だけやのうて人にも適用されてな……

 ある時は助けてくれと泣いて頼み込むんやけど、

 危機が過ぎればあっさりと捨て去って疎む奴がおってしまう。

 そう言うのが大嫌いなんや」

「……そうか」

「まあ、俺やったら、

 んなふざけたことはせぇへんし、

 やられたらさっさと去るわ。

 んなことをする奴の近くにいてやる気もあらへん。

 ずっといても不利益被るし、

 義理は果たしたから文句言われる筋合いはあらへんわ」


 俺は本当にそう言う性質も持っており、

 いたくないと思えばあっさりと手を切る。

 手を切ることをワガママと言われても気にしない。

 俺の道は俺が決めて進む。


「……私も一つの場所に留まりたくはないな。

 留まるのなら故郷がいい」

「……まあ、そう教訓できる作品があったら、

 教訓が自分の道筋になるわ」

「……ならば、練人が書く小説は、

 いずれ誰かの道になるかも知れないな」

「そう言われると責任重大やな。

 書くのは好きやから辞める気はあらへんけどな」

「……そうだな。

 パーティーの注意事項にもしておくか?」

「せんでもええ。

 類は友を呼ぶ。

 俺達が何も言わへんでも、

 俺らが一緒にいたいと思う奴やったら、

 自然とそう言う人やろうし」

「……そうかもな」


 まあ、今までの会話で今日の話は書ける。

 カットされるかも知れないが、

 カットされることを気にして書かないのも、

 もったいない話だ。

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