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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第4章 旅立つ準備

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第57話 瞑想

「ふぅ……」


 【ゴミ屋敷殺人事件】の方も、

 そろそろ完結まで行きそうだ。


「……次の話、どないするかのぅ」


 改めて俺が読んできた推理小説を書いてきた人や、

 推理漫画を書いてきた人が凄いと思った。

 二大推理漫画なんてほぼ毎週書いてきたし、

 続けるのは本当に大変だ。


「……一応、話のネタは完全に尽きてへんけど」


 そう。

 カナイチシリーズはもう一つだけ書ける話はあるし、

 【熊に喰われた男】並に長い。

 長いが書き終えたら完全に手詰まりになるし、

 話に入るには少し早いなと思わざるを得ない。


「……俺の小説とサイレンの過去話を中心に書けば、

 書かない日はないと思うが」


 だが、推理小説を途中で書かなくなったら、

 ずっと書かないままになりそうで怖いんだよな。


「……ふぅ」


 今の俺の立場はまだ無名の冒険者で無名の作家だ。

 書きまくる。

 そうでなければ多くの作家に届かない。

 今の小説も基本的には行き当たりばったり。


「サイレンをリーダーにさせたのはええが……

 俺ももっと強くならなあかんな」


 途中でいきなり強敵に遭うこともある。

 オルド・ドラゴンもグラットン・イーグルもそうだ。

 サイレンは言った。

 魔獣は俺達の都合で動いてはくれない。

 都合で動いてくれないのは依頼だけではない。

 長く生きていても小説の通りに動いてはくれない。

 ああいう敵は、

 少なくとも後半で出てくるような敵だ。

 なのに中盤でいきなり出てきた。

 しかも、珍しいことではないという情報付き。


「……そりゃ、強くなるわな」


 サイレンは俺より遥かに強い。

 当然だろう。

 ゲームでは誰もがレベル一か、

 戦いに向いていない人ばかりだ。

 小説も活躍するキャラ以外は基本的にモブ。

 下手に書けばかませ犬になりやすい。


 だが、今いる世界はそうじゃない。

 誰もがレベル一ではないし、

 戦える人は誰も普通に強い。

 幼い頃から鍛えていれば、相応に強くなれる。

 恐らく、俺が何かしらのチートを持っていても、

 素直に賞賛されないだろう。


 サイレンは冒険者になることを、

 小さい頃からずっと決めていた。

 そして、強くなりたかったし、

 仲間を守る気持ちも強い。

 彼女が依頼途中でいきなり強敵に遭うことは、

 よくあることを知っていた。

 だから、そうなっても大丈夫なように、

 サイレンは鍛え続けた。


「……俺はどうなんやろうな」


 不安はある。

 俺だって人間だ。

 完璧でもなければ恐怖や、

 不安が襲い掛かってしまうこともある。

 自信もあるわけではない。


「……舐めんなよ」


 でも、問われている。

 “お前はここで何を残すの?”と……

 俺は今までどちらかといえば一般キャラだ。

 モブもモブだ。

 小説家になりたい、

 ただの無名の人間だ。


 だからこそ、こう言う。

 多くの失敗をしてきた。

 没にした作品も少なくない。

 でも、進むのを止めたりしない。

 他人に言われて辞めることもしない。

 誰かが俺を見下して何も残せないと嘲笑うのなら、

 嘲笑われることに反抗すればいい。


「……戦え……

 戦え」


 言葉は誰かを戦いに強制するための言葉ではない。

 何かを貫きたいのなら、生き続きたいのなら、

 後悔したくないのなら……

 戦うしかない。


 魔獣がいようがいまいが関係ない。

 元の世界だろうが、

 そうじゃなかろうが関係ない。

 俺の目的、夢見ることは一つ。

 “小説作家になること”。

 小説作家になるために生き続けるだろう。

 戦い続けるだろう。


「不器用やな、俺は」

「……何がだ?」

「ん?

 いや、チョイっとな」


 温泉からあがったサイレンが聞いてきた。

 いつものローブではなく、寝巻きに着替えている。


「……《クリーン》」


 そして、自分のローブ、とんがり帽子、

 杖に魔法陣を使った魔法を使った。

 クリーンという名の通りにローブなどはみるみると綺麗になった。


「ほんま、便利やのぅ。

 クリーン魔法」

「ああ……

 だが、クリーンは加減が難しい。

 魔力量が少ないと中途半端にしか綺麗にならないし、

 過剰に使うと新品同然になってしまう」

「新品の方がええんとちゃうん?」

「……例えば学校の備品である机に使ったとしよう。

 ……他の生徒の机は普通なのに、

 自分だけの机が新品同然のピカピカな状態だ」

「……目立つな。

 目立つし、何か気になるな」

「……そう言うことだ」

「サイレンの言い方やと、

 学校の備品に使ったことがある言い方になるが」

「……使った。

 何故、使ったのかは……

 練人の小説のためにも今は内緒にしておこう」

「さよか」

「……では」

「ああ、俺もやるわ」

「……わかった。

 ……いつも通り、

 練人の好きなタイミングで止めてもいい」


 そして、俺達は瞑想をする。

 サイレン曰く、瞑想は幼い頃からやっていたようで、

 魔術師にとっては普通のことらしい。

 瞑想することで魔力が少しずつ上がる上に、

 魔術師に必要な集中力が上がるからだ。

 俺にとっても瞑想は悪いとは言わない。

 サイレンの言う通り、集中力は上がる効果はあるし、

 ストレス発散にもいい。


「……スゥー」


 当たり前だが、瞑想の間に会話らしい会話はできない。

 互いに呼吸を続ける。

 俺はまだ荒く、サイレンがやるからと言う、

 理由で喰らい付いているだけ。

 サイレンは気にせずに自分のペースを続けている。

 魔法と同じように洗練されていて、静かで慣れている。

 流石、小さい頃からやってきたことがある。


「ふぅ……」


 三十分経ってから堪え切れずに、

 俺は止めてしまった。

 三十分でも結構やった方だ。


「……」


 サイレンの方をチラリと見る。

 サイレンは目を瞑り集中して呼吸している。

 瞑想を続けている。

 サイレンの姿はどこか綺麗で、いつも凛々しかった。

 彼女がかなり強いのは知らない人からすると衝撃的だろう。

 俺だって未だサイレンの強さに驚きを隠せないでいる。

 ネーミングセンスがないのは自他共認めるほどだが、


 でも、グラットン・イーグルを倒せたのは、

 サイレンがいたからだ。

 シャイニング・サンドイッチ・バーニング。

 彼女の得意なシャイニング・バーニングを、

 分身とともに挟み撃ちの形にして放つ魔法。

 威力は絶大だ。

 けど、扱えるのは扱えるだけ彼女が鍛えたからだ。

 鍛えたのは夢を叶えたかっただろうし、

 仲間のことを思っていたのだろう。


「……スゥー」


 サイレンの呼吸が聞こえる。

 サイレンも完璧ではない。

 カメムシは逃げるほど嫌いで、

 ネーミングセンスがなくて、天然で鈍感だ。

 魔法や冒険者に関係のないことは、

 興味が持てずに知らないこともある。

 どこか達観していて、どこか子供らしいところもあり、

 子供らしいところがあるのに大人っぽくもある。

 俺の仲間であるサイレンだ。


「……少しは長く瞑想できるようになったな、練人」

「サイレンほどやないわ。

 サイレンは一時間もやったやんか」


 俺の二倍、瞑想を続けたサイレン。


「……瞑想は比較するものでない。

 褒めたのだから素直に受け取っておけ」

「はいよ」

「……そろそろ寝るか……

 ……いつも通り、少し待て」


 そして、サイレンはあるピンク色の瓶を取り出し、

 手に液体をかけた。


「美容ポーション?」

「母がよく寝る前にしろと言われてな……

 十歳の時からしていたから最早癖になってしまってな」

「さよか」


 サイレンは決まった行動をすることが多く、

 依頼後、宿に帰った時はプロテインを飲むこともある。

 美容ポーションを使うのも一つだろう。


「もしかして、リシアが好んで使うポーションもそれか?」

「……小さい頃はポーションの試作品を、

 私がよく使っていたものさ」

「し、試作品?」

「……母が作るものだから危険はないが、

 美容だけではなく、

 他のポーションも試しに飲まされたな」

「治験やんか、殆ど」

「……そうだな」

「サイレンの報酬の使い道って魚料理、

 本、

 プロテイン、

 美容ポーションなんやな」

「……本も借りるのは好きではない。

 返却日を気にして読むのはちょっとな」

「わかるわ~

 俺も本はじっくりと読みたいし」


 図書館に行くこともあるが、

 そう言う時は殆どめぼしい本を探して買う理由作りだ。


「……さて、ポーションを塗るのも終わった。

 おやすみ、練人」

「ああ、おやすみ、サイレン」


 しかし、俺もすっかり慣れたものだな。

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