第56話 パーティーのリーダー任命
「か、確認しました。
確かにグラットン・イーグルの討伐を確認」
受付嬢が信じられないものを知ったかのように、
驚きを隠せないでいた。
そうだろう。
簡単なビッグ・モスの幼虫の駆除依頼だったのに、
グラットン・イーグルを倒したと聞かされたら、
驚くのも無理はない。
「ま、まずはビッグ・モスの幼虫を、
十六体を討伐したため合計で、
千二百デラルを受け取ってください」
「はい」
「そして、グラットン・イーグル討伐報酬である、
二千四百デラルです。
受け取ってください」
そして、また銀貨を受け取ることができた。
「ありがとうございます」
「加えてグラットン・イーグルはEランクの魔獣ですので、
素材を使う権利は貴方達にあります」
「……グラットン・イーグルの素材で何ができます?」
「まずは何と言ってもハンマーですよ」
「……ああ」
確かにあれだけ大きな嘴なら、
武器として使いたいだろうな。
「後は……
グラットン・イーグルは体表とか硬いんですよ」
「せやな。
蹴ったりとかしたけど、硬いと思ったし……」
「……まあ、オルド・ドラゴンと比べると、
硬くはないし耐性もありませんが」
「つまり、俺は防具を変える理由はないと?」
「……そうなりますね」
「サイレンは?」
「……聞けば魔術師として必要なものはなさそうだ。
魔術師から戦士に変える気もない。
色も白と青ではなさそうだし、私もいらないな」
「……そうなりますと、
ギルドに譲渡の形になりますがよろしいですか?」
「譲渡すればどうなりますか?」
「素材を使いたい冒険者に使われると思いますよ」
「ほんなら、構わへんやろ」
オルド・ドラゴンの防具はまだまだ使えるし、
サイレンも使う気がない以上、
他の人に使わせる方がいい。
「では、譲渡するとして八百デラルを支払います……
今回の報酬を加えて合計四千四百デラルになりますが、
銀貨四枚の方がいいですか?」
「銀貨四枚でええやろ」
硬貨は増えれば増えるほど重くなる。
軽くなればいい。
「ああ……」
「かしこまりました」
そして、銀貨四枚と銅貨四枚受け取る。
「ほんで、いつも通り二人で分けるんやろ?」
「ああ……」
俺達は銀貨と銅貨それぞれ二枚ずつ分ける。
「結構貯まってきたな」
贅沢な悩みではあるが、
俺達ぐらいだろう。
ゲームでは依頼を受けたら、
乱入イベントのような特殊なものでない限り、
そう言うイベントは下位ランクでは起きない。
だが、今いる世界はゲームのようなファンタジー世界だが、
現実と同じような展開も起きる。
魔獣は俺達の都合を考えない。
だから、低ランクの冒険者の前に、
強い魔獣と鉢合わせることがある。
普通は依頼が台無しになってゼロになるか、
挑んで負けて死ぬかのどちらかだ。
そう考えると儲ける代わりに、
命の危機に直結しやすい面が多い。
俺と同じ展開になって魔獣に殺される冒険者も多いだろう。
「……共有で使うお金も貯まりつつある。
……いっそのことギルドに預けるか」
「確か、ギルドも銀行みたいに、
預けることができるんやったな」
警察のような仕事、
銀行のような仕事もギルドの仕事の中にある。
ギルドでも機関は複数に分けられているのだろう。
「あっ……」
話している時に腹の虫が鳴いた。
「……腹減ったな」
「……まあ、予想外な強敵の連戦だからな。
……練人の魔力も減っているだろう。
……練人は小説を書くから、
他の人よりも魔力が減った状態で戦うことが多いしな」
「ほんなら、飯を食いに行こうか」
「ああ……」
そして、俺達はギルドを出て飯屋に入った。
「……ご注文何にしますか?」
「せやな……
豚のステーキにするか。
わらび餅もセットで」
「……よく食べるな」
「まあ、強敵倒したんやし、
ケチケチしない方がええんや」
金は使うためにあるものだ。
「……私はいつも通り川魚定食で」
「サイレンはほんまいつも通りやな」
サイレンは基本的には魚定食かになるパターンが多い。
変わったとしても、
朝食だけで納豆ご飯を食べるようになったぐらい。
日本食が多いイナミだからこそだろう。
前のコガワでは小麦料理が多かった。
コガワでもサイレンは魚料理を食べることが多い。
本当に好きなのだろうな。
「……幼少期から食べていれば、
誰でも好きになるだろう」
「逆に幼少期から大嫌いやったら、
例え食べられる、美味しいと言われても食わんようにな」
「……そうだな」
「……サイレン、ライト以外の生活魔法、
後何個か教えてくれへん?」
「……いいだろう。
生活魔法は便利な魔法が多い。
だが、“生活”である以上種類も豊富だ」
電気の代わりに魔力が発展した世界。
「……雷って起きるん?」
「……ん?
起きるな。
……学校の帰りに雨が降ったから、
ギルドに寄った時に起きたが、
冒険者達が大慌てだったな」
サイレンは懐かしそうに語る。
つまり、雷がある以上、電気もある。
電気があるのならいずれ電化製品ができるのだろうか。
電化製品を使うためには、
何百年以上もの時間が経つだろうが。
「……練人?」
「いや、俺はつくづく小説家だなと思ってな」
今でも小説のネタを拾って話を構築している。
「……そうだな。
練人が書いたカナイチのゴミ屋敷の話は面白い。
まさか犯人がーー」
「ちょいと待て。
この会話も書くことになるんやから、
ネタバレはNGやで」
「……冗談だ。
わかっている」
「サイレンも冗談を言うんやな」
「……私でも冗談くらい言うさ。
冗談つもりはないのに、
何故か慌てさせることもあるが」
ああ、サイレンって若干天然で鈍感なところがあるからな。
発言一つで周囲を大慌てさせることくらいありそうだ。
「ご注文の豚のステーキ、わらび餅、魚定食になります」
「お、来た来た!」
「ああ……
……いただきます」
「いただきます」
豚肉のステーキをナイフで切ってフォークで食べる。
豚肉に塩味になっていて、ジューシで素材の味もよく出ていた。
付属のご飯にもよく合う。
サイレンも黙々と食べている。
「結構美味しいわ」
やっぱり、美味しい料理は小説的にも食べた方がいい。
食事シーンは作風でも人気はある。
「そうか……」
ただ、同時にどの作品でもあるが、
大食いキャラはいる。
いるが、少なくとも俺達はそうじゃない。
サイレンはヘルシーで健康的な料理をよく食べる。
故に無駄に多くの料理を食べることはしない。
多くの作品のようにたくさん食べることもないだろう。
たくさん食べないのは俺も同じだ。
「……サイレン、そろそろ、
パーティーのリーダー決めた方がええか?」
「……リーダー?
私は誰でもでもいいが……」
「んなこと言ったら俺もどっちでもええが、
仲間が増えるのならパーティーの中では俺達が長いんや。
んで、新人がパーティーのリーダーって言っても、
しっくりこんやろ?
まあ、リーダーでもキャプテンでも、
呼び名は何でもええけどな」
「……そうだな」
「ほんなら、今の内に決めた方がええ」
「……だが、私はリーダーの役割を詳しくは知らない」
「せやな。
リーダーってのはパーティーの舵取り役と方向性、
パーティーの目標を決めるんや」
「……お前は私達の小説を書いているのだろ?
ならば、練人がリーダーではないのか?」
「いや、他の人にとっては創作物かも知れんが、
俺にとってはリアルなんや。
台本もそうやけど、
書いた奴が主役になるのはそうそうない。
んなことになったら読者も作者も萎えるしな」
「……確かにな」
「同じでリアル世界やのに小説を書いとる奴が、
リーダーはあかんやろ?
せやから俺はリーダーをやらん方がええ」
「……そうなると消去法で、
私がパーティーのリーダーになるのか」
「せやせや。
俺が考えて、サイレンが決める。
サイレンが納得できんのやったら却下してもええわ」
「……いいのか?」
「ええで。
きちんと決めたら責任は分散するし、
俺もサイレンも責任が集中することもあらへん」
「……そうか。
……わかった、リーダーはやろう」
「よろしゅうな、リーダー」
「……ならば、私のパーティーの第一目標は海に行くことだ。
私の夢でもあるしな」
「了解やで、リーダー」




