表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第2章 永遠のライバル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/50

第48話 練人の誕生日

 リシアが去って行って次の日のことだった。


「……練人、今日も依頼はなしだ。

 訓練もしなくてもいい」

「え?

 何でなん?」

「……私も鋭い方ではないが、練人も少し鈍いな」

「に、鈍い?」

「……今日の日付は?」

「今日の日付?

 えっと、今日は確か四月の十ーー。

 ……あっ」


 今日は四月十四日。

 つまり、俺の誕生日だった。


「は、ハハッ……

 う、うっかり忘れてもうたわ」


 と言うのも正体バレたからと言って俺にそんな余裕はある筈がなかった。

 すぐにここの生活に馴染まないといけない上に……

 生きるだけの資金も手に入れないといけない。

 冒険者生活が楽しくて好奇心が刺激されるからも理由に入る。

 自分の誕生日をうっかり忘れてもおかしくはない。


 自分がいる世界で祝ってくれる家族もいない。

 だから誕生日を祝ってくれる人はいないと勝手に思っていた。


「……確かに練人の状況を考えれば忘れても仕方はないか。

 ……今日は練人の自由に行動してくれ」

「ええんか?」

「ああ……

 今日の夕食が練人が食べたい料理でもいい。

 希望はあるか?」

「……せやな。

 やったら今日は焼肉やな」

「……焼肉?」

「せや。

 俺んちは誕生日に焼肉で祝うのがいつもやってん」


 好きな焼肉屋があった。

 一生好きな焼肉店以外で焼肉を食べないと決めていた。

 だが、今いる世界に好きな焼肉店がある筈がない。


「……わかった。

 ……今日の夕食は焼肉だ」

「ありがとうな。

 確かサイレンの誕生日って六月二十二日やったんやな?」

「ああ……」

「サイレンの誕生日が来たら……

 今度はサイレンの好きなように動いて食いたいもん食ってええよ。

 今日のお返しとしてな。

 覚えてーや」

「……練人も忘れるなよ。

 ……期待しているからな」

「安心しーや。

 仲間の誕生日は忘れへんし受けた恩も忘れんからな」

「……行こうか」

「メリリ!」


 エアリーは俺に抱きついてきた。


「ハハッ!

 エアリーのプレゼントは一日抱きつき券か?

 エアリーがしたいことやんか!」


 エアリーに抱きつかれても拒まずに受け入れる。

 エアリーは可愛いし、撫でても反応してくれる。

 そして、俺達はイナミを歩き回るために外に出た。


「……イナミとも結構長くおるようになったな」

「ああ……

 ……リシアと戦った時の戦法、いつの間に編み出していたんだ?」

「まあ、サイレン相手には使えないわな。

 やり方バレてもうたし」

「……確かにな。

 ……私なら練人が手をかざした時点で警戒する。

 そして、木刀が飛んできたらフォールで叩き落とす」


 サイレンならできそうで怖い。


「練人の場合はフェイントも使ってくるだろうから……

 ……勘ではなく目で確認した方が良さそうだがな」

「げっ」


 サイレンが警戒しているのならフェイントも有効だと思った。

 だがわざわざ口に出されるってことは本当にやるってことだろう。

 本当にサイレンは相棒としては相性いいだろう。

 だが、戦うとなれば相性最悪だ。

 そして、相性最悪なのはリシアも同じ。

 また戦うことになれば今度はあっさりと負ける危険性もあるってことだ。


「よっ!

 練人とサイレンさん!」


 話し合っていると俺とサイレンに話しかけてくる男性と女性の冒険者がいた。


「デートですか?」

「……いや、今日は練人の誕生日だからな。

 練人に任せて出掛けているんだ」

「おっ、おめでとうな!」

「楽しんでくださいね」 

「デートを言ってきたお二人さんこそデートなんか?」

「あっ、やっぱりわかります?」

「ち、違いますよ!

 彼とは幼馴染なんですけど、デートじゃなくて……

 私達も練人くん達と同じ遊びに出掛けているだけなんですよ!」

「……?

 ならば、素直に言えばいいのではないのか?

 何故、慌てる必要がある?」

「……れ、練人くんが変な勘違いしているから……」

「……?

 ……ならば、余計に私と同じ態度で否定できるだろ?

 早口になって急いで否定することはない」

「サイレン、やめてやってくれ」


 俺もわかりやすい反応だなとか……

 顔真っ赤にして言うことでもないと思うがわざわざ口にはしない。

 だが、サイレンはいまいちわかっていないのか首を傾げている。


「ほ、ほら、そろそろ行かんと!」

「……?

 あ、ああ……

 わかった」

「……ほんじゃあな」

「あ、ああ!

 楽しめよ?」


 そして、俺はサイレンを連れてその場を離れた。

 離れる間、彼女さんは顔をトマトのように赤くして俯いていた。

 サイレンってクール系キャラだけど、同時に天然で鈍感キャラでもあった。

 今でもわかっていなさそうだし、地でツンデレ殺しキャラだろうな。


「にしても最初に来た時は興味持たれてへんかったのに……

 今では見掛けたら声を掛けられるようになったのぅ」

「……私達の強さを認められたことになるだろ」

「サイレンだけやないの?

 サイレン、結構強いし」

「……練人だってリシア相手に善戦していただろ。

 私とリシアの戦いを見ていた冒険者は練人が瞬殺されると思っていた。

 だが、結果として練人は見事リシアに喰らい付いていたし戦い方も悪くなかった。

 ……決闘の場にいた冒険者が練人を評価するのは当然のことだ」

「ほんまかのぅ?」

「……本当だ」

「まあ、ええ」


 イナミは日本に馴染み深い料理がたくさん出る。

 だが、その分田舎寄りで娯楽も少ない。

 あるとすれば雑貨店でショーウィンドウするくらいだろう。


「ふむ」

「……欲しいものあるか?」

「いや~……

 めぼしい物あらへんわ」


 そもそも俺は物欲も少ない方で流行にも疎い方だ。

 みんなが面白いというゲームをやらなかった。

 兄に釣られてやるくらいだ。

 俺が好むゲームはキャラメイクとかができたり……

 想像力を働かせる余地があるゲームだ。

 だからRPGもTRPGも好きだし、クリエイト系のゲームも割と好みだ。

 筆記用具も《ライト》がある以上、俺にとっては不要だ。

 必要なのは紙くらいだ。


「水筒くらいかのぅ?」

「……水筒だな。

 しかし、練人はすでに持っているのではないか?」

「いや、元々持ってた奴はコーヒー用にしようと思ってな」

「……コーヒー用?」

「今持っとる水筒も元の世界のもんから変化したんや。

 今いる世界仕様にな。

 カメラや音楽プレイヤーと同じで機能は元の世界と同じや」

「……そうか。

 ……練人の言う機能とは?」

「いや、ちゃんと取手付きの蓋があったし魔法瓶やねん」

「……魔法瓶?

 魔力で作った瓶か?

 ……いや、練人がいたところには魔力がない話だが……」

「ちゃうちゃう。

 名前からして魔法のような瓶って聞こえるかも知れへん。

 せやけど、科学と技術で作られた水筒や。

 ほんで機能は熱々のコーヒーを淹れてもぬるくならへん。

 しばらく熱々のまんまなんや」


 水筒は買ってくれたものだ。

 ただ、欲しかった理由は熱々のコーヒーを自前で持って行くこと。

 コンビニや自動販売機からコーヒーを買わずに済む。

 つまり、節約のためのものだった。


「……熱々のままなのはいいな」

「せやから冷たい水用に買っておきたいんや」


 魔力が全快になる前に早めに水を水筒に入れておけば魔力の節約になる。

 飲み水の入手が容易になる。


「……そうか。

 ……なら、水筒を買おう」

「ええんか?」

「……金ならある。

 ……代わり、私にもコーヒーを飲ませてくれよ」

「もちろんや」


 そして、サイレンは水筒を買ってくれた。

 誕生日に水筒を買ってもらうのも変かも知れないが、別に構わないだろう。


「……ついでに買った」

「……ネックレスチェーン?」

「ああ……

 お洒落として付けるが、いずれは効果のある石とか手に入るかも知れない。

 石があれば装飾品に早変わりだ」

「さ、さよか。

 ありがとうな」


 意味合いとしては効果がある装飾品が見つかるかも知れない。

 だから、最初に付けられるもの持っておけだろう。

 サイレンがネックレスを送る意味を知る筈がないだろう。

 知らないのなら言わないのが吉だ。


「……どうした?」

「何でもあらへん。

 ほな、行くで!」


 俺は首にネックレスを掛けた。

 付けたことはないので多少手こずった。

 そして、俺達はしばらく散歩を続けて焼肉を食べた。

 今いる世界の焼肉も大変美味しかったと伝えておく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ