表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第2章 永遠のライバル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/51

第47話 ライバル兼親友との別れ

「……そろそろ行くのか?」

「メリぃ……」

「ええ。

 前にも言ったように私も忙しくなったのよ。

 いつまでも貴方とお話ししてられないのよ」

「……そうか」

「……早く私のところに来なさいとは言わないわ。

 私には私の道、貴方には貴方の道があるもの。

 進むスピードも目標も違う」

「……ああ」

「……でも言えることは……

 まあ……

 私にとって貴方は永遠で最強のライバルってことよ。

 貴方のやりたかったことならちゃんとしなさいよ」


 そう言ったリシアの顔は赤く染まっていた。

 言った本人も恥ずかしいと思っているだろうが、言っておきたかったのだろう。


「……わかっている」

「……だから練人。

 私の親友をよろしく頼むわよ。

 サイレンにとって、最初の仲間は貴方なんだから……

 泣かせたら承知しないわよ」

「わかっとるわ」

「……じゃあね」


 その時、緑の葉が多くなった桜の木に僅かな花びらが舞い散る。


「あら?

 桜のおかげで別れが美しくなったわね。

 またね、サイレンと練人」

「メリリ!」

「エアリーもまたね」


 リシアは微笑み、そのまま高級馬車に乗った。

 そして、サイレンは馬車が見えなくなるまでリシアを見送った。


「メリ……」

「……寂しかったりするん?」

「……まさか。

 ……旅をしていればいずれ再会できる。

 ……リシアは強い。

 また会う時は突然、前振りもなく楽しげなイベントに誘われるさ」

「楽しげな?」

「メリ?」


 そういえば、昔はリシアに誘われてパーティーやプールに行ったと言っていたな。


「……これからはイベントに誘われても静かだと思うがな」

「静か?」

「ああ……

 リシアに誘われると高確率で何故か故郷の冒険者達がざわつくからな」

「……何でなん?」

「さあな……

 あいつら、みんな賑やかな連中だからな」


 そう言って、サイレンは懐かしそうに青空を仰ぐ。


「……帰りたいとか思うん?

 ホームシックとか」


「……冒険の途中で里帰りするつもりだから、ホームシックはない。

 ……練人はあるのか?」

「あるで。

 何のお別れの挨拶できんと来てもうたし、友達とか家族とかおったからのぅ。

 寂しい気持ちや帰りたい気持ちも当然あるわ」


 来た原因が惑星直列である以上、来た道から帰るのは実質不可能だろう。

 正直に言えば、音楽がなかったらとっくの昔に早く帰りたいと思っていただろう。


「……そうか。

 ……来て後悔したことあるか?」

「せやな~……

 多少慌てたり、どうしてなんとか思ったけど……

 帰れへんと思ったら逆にええかと思うようになったわ。

 小説家になりたかったし、家族や友達に反対されてもやるつもりやったし」


 仮に両親に勘当され一人で生きていかないといけなくなったら……

 さらに覚悟を決めて一人で生きていくつもりだった。


「まあ、日本で結構早めの独り立ちって感じのつもりやわ。

 意外と生活できるしな」


 小説が好きなだけ書ける理想的な生活かも知れない。

 持ち家を持つつもりはなかった。

 拠点を転々として和食ばっかり食べて金を稼いで小説を書く。

 できれば小説で食っていけるようになりたい。

 なりたいが、歩き回ったり旅するのも嫌ではない。


「……ふっ」


 サイレンは少し笑った。


「ん?」

「いや、同じだなと思ってな……」

「同じ?」

「……私も魔法と旅が大好きだった。

 ……幼い頃、母の仕事のついでに冒険者ギルドに寄ったのが最初。

 ……その時、冒険者達が楽しそうに冒険の話を聞かせてくれてな。

 ……今でも覚えている。

 ……私が冒険者になって旅をすると決めた時のことをーー」

「へぇ~……」

「……故郷の冒険者達が私の相談相手にもなってくれた。

 ……いい先生でもあった。

 ……幼い頃から魔法を扱える私を特別視にせず……

 かと言って雑に扱うでも嫉妬剥き出しに見る訳でもない。

 ……私にとって心地良かった。

 ……娘や妹扱いされていた。

 ……見守り隊を結成された時は流石に唖然としていたが」

「み、見守り隊……

 ユニークな人達多いんやな」

「あぁ……

 静かな場所は好みだが……

 騒がしく賑やかな場所を嫌っていないのもそれが原因だろうな。

 とにかく、ギルドに通うのが楽しみになっていた。

 だから、学校に友達と言える人が少なくても平気だった」


 サイレンは楽しそうに語っていた。


「……でも、彼らに反対されても、両親に反対されても私は冒険者になりたかった。

 なって、世界を旅したいと思っていた。

 知らない景色、知らない魔法、知らない知識、知らない伝説……

 体験したかった」

「好奇心旺盛やな」

「……流石に転移者は予想外だったがな。

 ……私もお前も周囲から反対されても好きなことは決して辞めないタイプだ。

 だから、違う道に行っても“これは違うな”と思って、あっさりと手放せるだろう」

「かもな」

「……だから、私は一生魔術師で冒険者だろう。

 ……私と同じなら練人もきっと、一生小説家で冒険者だ」

「ハハッ、互いに頑固者やな」

「……好きなことに一生懸命なだけだ」

「せやな……

 今は?

 サイレンは今、冒険者やけど今後は何が望みなん?」


 ふと、気になったからサイレンに聞いてみた。

 俺は小説家として食って生きていくつもりだ。

 だが、サイレンの今後の姿は見えなかった。

 一生、魔術師で冒険者として生きていく。

 彼女の人生の果てはどうするのか気になった。

 すると、サイレンはピタッと止まった。


「……冒険者になったその後……」

「せや」

「……考えていなかったな。

 ……常に冒険者になることに意識を向けていたからな。

 ……先の道は考えていなかった。

 ……今は少なくとも練人の小説に恥じないように私らしくするようにしているが」


 サイレンも盲点だったのか腕を組んで考え始めた。


「……母はポーション屋に就いた。

 だが、母がポーション作りが好きだったからだ。

 私が魔法なら、母はポーション作りに魅了されていた。

 だから、多くのポーションを作った。

 私がしばしば使う美容ポーションも母が作ったものだ。

 リシアなんか母の美容ポーションのお得意様だ」

「そ、そうなん?」

「ああ……

 リシアと初めて決闘した後にいずれ再会するだろうと思っていた。

 だから、すぐに早く再会するとは思ってもいなかった。

 しかも、美容ポーションの箱買い」

「……リシアに口止めされては?」

「……いないな。

 リシアが私の家のポーションを愛用しているのは周知の事実さ」

「リシアも了承するんやったら、え、ええけどな」

「……まだ旅は始まったばかりだ。

 ……焦らなくても、いずれ見付けるさ。

 ……冒険者の先の道を」

「わかったわ。

 ……故郷の冒険者なら仲間になってくれる人おったんとちゃうん?」

「……確かに、私が頼めばすぐに仲間になってくれる冒険者はいた。

 ……だが、私は一人で冒険者になって自分だけの仲間を作りたかった」

「自分だけの」

「……加えて故郷の冒険者達にはもう自分だけの仲間がいた。

 ……私を加えると誰かがパーティーから外れることになる。

 ……私が原因で誰かが辛い思いをさせたくない。

 パーティーに亀裂を入れたくないし……

 仲間を傷付ける彼らの姿を見たくない」

「サイレン」

「……だから最初に冒険者達にきちん断った。

 ……傷付けたくないという理由ではダメかな?」

「……ええんとちゃうん?

 サイレンは正しいわ。

 間違ってへんし、優しい人やとよくわかる。

 サイレンの故郷の冒険者達よりも付き合い短い俺でもわかるんや。

 故郷の冒険者達なら俺以上によくわかっとるやろ」

「……そうだな。

 ……私が彼らをよく知っているから逆に彼らも私のことをよく知っている」

「サイレンが優しい人なんや。

 サイレンが困った時は全力で力貸してくれるやろ。

 もちろん、俺もや」

「……やはり、私は恵まれている。

 素晴らしい出会いで満ちている」

「俺もサイレンの故郷の冒険者達に会うの楽しみやわ」


 まあ、サイレンを妹や娘のように扱っている以上……

 変なことや嫌なことをしたら全力で潰しにくるのはわかる。

 ただ、誰に言われなくてもするつもりはない。


 社会正義から外れて成功できるはずがないからな。

 小説家として成功を目指す以上、最初から覚悟はある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ