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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第1章 水と稲の町 イナミ

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第40話 パーティーの課題

「お疲れ様です!

 報酬の四千デラルになります」


 受付嬢は銀貨四枚を俺達に渡してくれた。

 かなりの大金であり、

 しばらく食いっぱぐれることはないだろう。

 だが、同時に稼げると言うことは、

 ウサギが危険な魔獣なのかの示唆でもある。

 Hランクで調子に乗って、

 何の準備をしていなかったら呆気なくやられていた。

 下手をしたら殺されていた。

 確信できるほど恐ろしい魔獣だった。


「……金に見合った敵だったな」

「メリリ!」

「ぶはっ!」


 エアリーは俺の顔に抱きついてきた。


「……私としては十分予想外だったがな」

「予想外?」

「……最初、私は練人には一体だけ戦わせるつもりだった。

 練人はリップ・ラビット初見で戦ったこともないし、

 私との特訓があるとはいえ、まだ集団戦闘には不慣れだ。

 だから、数の暴力には、

 まだ対抗できないと思っていたが、

 まさか私抜きでも戦えるとは思わなかった」

「いや、俺の戦いは……

 うん」

「……何だ?」

「教材自体は色々あったしのぅ……」


 ゲームでも無双ゲーム以外でも敵に囲まれる状況があるし、

 特撮でもよくある事態だ。

 敵に囲まれた時、視界に入るようにするとか学んだ。


「ほぅ……」

「ウサギ達は早いから無意味だと判断したんやが、

 ウサギ達じゃなくて、

 一撃入れれば倒せる敵やったら、

 まず逃げ回っとったで」

「ブハハハ!」


 すると、話を聞いていた男性冒険者が、

 俺を見て笑い飛ばした。


「彼女の前だって言うのに、

 逃げるって言うなんて男らしくねえな~」

「……まあ、正確には逃げるふりをする、やな。

 他には洞窟内なら、

 あえて逃げて一人分剣を振るえるくらいの、

 狭い場所まで逃げるとか……」

「……練人、狙いは何だ?」


 男性冒険者とは違って、

 サイレンは俺の意図を勘付いたのか真剣な目で聞いてきた。

 よく見れば、如何にも実力者のような冒険者が、

 俺を測るように見ていた。


「……大事なんは如何に一対一に持ち込むことや」

「は?

 一対一?」

「複数人に囲まれて戦う状態やったら、

 目の前の敵を何とかしても死角からの攻撃されるわ。

 死角からの攻撃を気にしないとあかんし、

 普通に数で押されるわ。

 一対一なら何とかできるんやったら、

 自分で一対一の状況に持ち込まないとあかんわ。

 余程プライドが高い敵、

 誇り高い敵とも言うんやけど、

 敵やなかったら、

 複数人から一対一に持ち込ませなあかん」

「……そうだな。

 特にゴブリンは複数囲めば、

 囲んだまま獲物を袋叩きにする」

「せやろ。

 逃げたら敵は当然追いかけるもんや。

 ほんで同じ魔獣だとしても、

 個人差で速さはばらつきがあるものや」


 魔獣でも人間と変わらない筈だ。

 ばらつきがないのなら、機械と同じだ。


「自然と早い者順に追いついてくることになるわ。

 追いついてくる個体を狙って、

 振り返りざまに切り掛かる。

 ほんで、逃げる。

 逃げるのを繰り返せばいずれ敵は全滅、

 あるいは逃げ切ることができるやろ。

 狭い場所に逃げるのも同じ理由や。

 一人だけ剣が振るえるくらい狭い場所なら、

 敵はいくらおっても戦える人数は変わらん。

 もし無理にこっちを攻撃しようと二体で行っても、

 つっかえて逆に倒せる隙になる。

 一対一で勝てるんやったら取るべき手や」

「お、おう……」


 笑っていた冒険者は、

 俺の説明を聞いてポカーンと呆然としていた。


「複数が相手でも一対一で戦える、

 あるいは数の差が無意味になるように戦うことが大事なんや」

「……理にかなっている」

「まあ、今回の戦いは無駄にはならんやろ。

 俺達のパーティーの課題はわかったし、

 サイレンの弱点も見えたわ」

「……ほぅ、私の弱点?」

「まあ、俺やとまだまだ届かないだろうけどね」


 俺はまだ戦闘の素人だし、

 サイレンに至っては“戦う場所”が重要になる。

 今回の戦いはサイレンも、

 田畑に被害が出ないように上手に戦っていたが、

 戦いにくそうでもあった。

 サイレンは優しくて賢い。

 自分の攻撃が被害を出してしまうと、

 判断すれば少なくとも高威力の魔法は封じられる。

 突かれる可能性が出てきた。

 もし、誰かを仲間に入れるのなら、

 如何なる場所でも戦えるような人がいいかも知れないな。


「……そうか」

「にしても結構デラル手に入ったんやったら、

 連泊もできるやろ」


 イナミで泊まる場所に気にする必要は無くなった。

 食事も大丈夫になるだろう。

 イナミは和食が多いから、

 俺としてもストレスなく食べることができる。


「……思ったよりええ場所やな、イナミ」

「……そうだな」


 まあ、一章で書く内容に困ったのは事実。

 色々幸運や偶然が重ならなかったら、

 書き切れなかっただろう。

 やっぱり、書く上で必要なのは、

 外に出て観察すること、

 あるいは記憶しておくこと。

 ありがたいことに、

 俺には記憶することができる道具も魔法もある。

 大丈夫か否かは後になって初めてわかる筈だ。


「メリメリ!」


 すると、エアリーが鳴き始めた。


「おぉ、そろそろご飯食べるか?」

「メリ!」

「おい、お前」


 すると、こっちをじっと見ていた、

 如何にも実力がありそうな冒険者が話しかけてきた。


「ん?」

「……お前の名前は?」

「……練人」


 流石に静川の名は明かさない。

 今いる世界では俺の名は練人に固定させてもらう。

 静川を知っているのはサイレンと読者だけだ。


「そうか。

 どうやら、お前は馬鹿じゃないようだ」

「……」

「新人ども!

 練人の言葉を肝に銘じてしっかり覚えておけよ!

 練人が言ったことができずに、

 殺された冒険者を俺は何人も知っている。

 死にたくなかったら、きちんと身につけておけ」


 彼がまさかそう言うとは思わなかったのか、

 ポカーンとしている者。

 必死に書いてメモしようとする者もいた。


「……面白い奴だ。

 俺の名は【イワオ・ブロスト】だ。

 よろしくな」

「よろしゅうな」

「……またギルドで面白い話を聞かせてくれや」


 片手を振ってイワオはその場を去った。


「……気に入られたんか?」

「……ふっ、そのようだな。

 ……行こうか。

 エアリーの空腹もそろそろ限界のようだからな」

「せやな」

 サイレンの顔はどことなく嬉しそうに見えた。

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