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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第1章 水と稲の町 イナミ

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38/51

第38話 報酬金の事情

「よし!

 久しぶりに依頼をこなしに行こうや!」

「ああ……」

 俺達はようやくイナミ冒険者ギルドで依頼を受けることにした。

「どんな依頼があるんやろうな」

 俺は依頼書が貼り付けられた掲示板を確認する。

「おっ、カエルスライム討伐の依頼があるやん。

 一度戦ったことあるし、これにするしようや?」

「……ふっ」

 俺がそう言うとサイレンは分かってないなと言いたそうに不敵に笑って見せた。

「な、なんやねん?」

「……練人。

 もう一度、その依頼をよく見ておけ」

「よく見る?」

 サイレンの言う通りにその依頼をよく見てみた。

〈大喰らいガエル討伐依頼

 大きなカエルスライムがいれば討伐してください。

 報酬金:二百デラル。

 カエルスライム一体につき五十デラル〉

「ご、五十!?

 え!?

 前に見た時は百デラルやったよな!?

 討伐報酬減っとるし、報酬金も半額になってるやん!

 なんや知らんけど、依頼も“まあ、好きに討伐してもいいですけど”って感じで投げやりのように見えるし!」

 ゲームとかならば普通どんな時でも討伐報酬も報酬金も均一になっているものだ。

 だから、まさかそのどっちもが減っているとは思わなかった。

「……やはり、知らなかったようだな。

 その理由を説明しよう」

「た、頼むわ」

「……確かにカエルスライムは大きくなれば家畜を捕食することもあるし、最悪の場合は人も捕食しようとする」

「うん」

「……だが、それはあくまで大きな個体限定だ。

 それも冬眠から目覚めた個体は空腹を満たそうとするからその被害が大きくなりやすい。

 だから、ギルドも危険視して討伐報酬も高くする」

「……せやな。

 最初に討伐した時はそれやったわ」

「……だが、しばらくすればカエルスライムの危険性はガクッと減る。

 むしろ、一般人でも重要になることが多い」

「重要になること?」

「……練人、イナミ地方に近づいた時、どう思った?」

「へ?」

 今でも思い出すのは広い畑と田んぼだった。

 あそこで豆や米を育てているのだろうとすぐにわかるほどだった。

「せやな、思ったよりも田畑が多いなと思ったわ」

「……その認識で合っている。

 このイナミ地方は農業が盛んで米などを他の地方で売っていることも多い。

 また豆も育てていて大豆製品も流通している」

「せやな」

 大豆製品や米があるのは俺からしたらありがた過ぎる。

「……さて、練人。

 こういった農業にとって困ることはあるだろ?」

「困ること?

 せやな……

 まずは病気とかかな?

 そこは管理せな、一気にダメになって全滅することもあり得るわ」

 実際にそこの管理を疎かにしてしまい作物が全滅し大赤字を出したところも決して少なくない。

 そう言う話を聞いたことがある。

「……確かに作物の病気は問題だな。

 他には?」

「天気?

 雨ばっかも困るけど、晴れてばっかなのも問題や。

 水不足とかは農家にとっては頭痛の種やからな」

 雨の日は行動が制限されるし、場合によっては楽しい行事も流れてしまうから嫌がる人も多いが、農家からしたらまさに天の恵み。

 雨が降らなかったら作物が枯れてしまうからだ。

 だが、最近雨が降ったばかりだからサイレンの話とはずれてしまう。

 カエルスライムは雨も好きそうだが、それとはあまり関係ない筈だ。

「後は害虫……

 あっ」

 カエルと害虫の単語を思いついて、そしてカエルスライムがカエルの生態と同じことを思い出した。

「……つまり、カエルスライムは作物を荒らす害虫や害獣を捕食してくれるってこと?」

 カエルなら虫を食うのは自然だし、動くものに食いつくのならネズミを捕食するのも、それもまた自然だ。

「そうだ……

 しかも、カエルスライムはスライムだけあって水分も豊富……

 作物を踏んでも実はそこまでダメージはないんだ」

 例えるならナイロン袋に水を詰めた状態のようなもの。

 それで多少作物の上に乗っても変形して潰されないようになっているのか。

「でも、寝たりするやろ?

 長時間踏まれた状態やったらダメージあるやろ?」

「……いや、カエルスライムは体の殆どが水分だからここならば寝る時はため池に潜むことが多い。

 そして、ただ害虫を食べてくれるだけではない」

「……だけじゃない?」

「……カエルスライムも鳥型の魔獣に捕食されることもある。

 例えば、鴨型の魔獣とかな……」

「……その鳥型魔獣がカエルスライムと一緒に害虫を食べてくれて、そしていずれ人間が鳥型魔獣を食べる」

 命のサイクルができていると言うことか。

「……こういうことはよくあることだ。

 ある時期、ある状況によっては魔獣の討伐報酬が増えたり、減ったりなどな。

 それのいずれも必ず理由はある。

 ただ、魔獣を倒すだけでは損になることが多い」

「なるほどね……

 ただ魔獣を倒すだけじゃなくて、こう言う報酬金などにも気をつけろってことね」

 いわゆる生活の知恵って奴か。

「……危険な魔獣の討伐は高額だがそういう依頼は命懸けだ。

 それにそう言う魔獣は人間だけでなく、他の魔獣を捕食することもあるし、パワーバランスを担っている場合もある」

「なるほどのぅ。

 ちなみに今回のカエルスライムのような大量に討伐してはよくない魔獣を大量に討伐したらどうなるんや?」

「……報酬金はもらえるがギルドからいい顔は見てもらえないな。

 あるいは学も観察力も足りない人物として他の冒険者にも見られる。

 よく見ればわかる内容なのにいつも通りだと勝手に判断していつも通り同じ依頼を受けるという思考停止とも見られるからな」

「……割と危なかった、俺?」

「……練人は知らなかっただけだ。

 仲間がいれば教えてもらえる」

「まあ、確かにパーティーやったら報酬金を確かめる奴おるか。

 ほんなら、依頼としてなら獣害を出しやすいこういった依頼の方がええんか?」

「……そう言うことだ。

 ……それならこう言う依頼の方が良いだろうな」

 そして、サイレンが見せてくれたのはこういった依頼だった。

〈切り裂きウサギ討伐依頼

 切り裂きウサギが増えつつある。

 このウサギを討伐してくれ!

 そうじゃないと被害が増える一方だ!

 報酬金:八百デラル。

 カエルスライム一体につき四百デラル〉

「……切り裂きウサギ、報酬金で初期費用に届くか」

 オルド・ドラゴンと比べると弱そうだが、切り裂いてくるということは考える以上に危険な魔獣なのかも知れない。

「……切り裂きウサギの名前は【リップ・ラビット】」

 切り裂くラビットの英語読みか。

 思ったが、この世界の名称は英語読みになりがちだ。

 だが、かといって風土や文化は日本由来のものも割と多い。

 世界の全てを知る必要はないが、それでもやはり気になるものだ。

「……やっぱり、人間を切り裂くん?」

「……確かに名前は物騒で一般人の服も容易に切り裂ける。

 だが、奴らは草食の魔獣なんだ。

 作物を食べることもあるし、爪も鋭利に生えているから育てている作物も傷つけてしまう」

「今のうちに始末しておきたいってわけか」

「……そして、ウサギだからその肉は食べることもできるし、毛皮も利用できる」

「ほんでゴブリンのように強い魔獣に捕食されるってわけか」

「……そう言うことだ。

 ……練人がドラゴンの鎧を着て良かった。

 その鎧ならウサギの引っ掻き攻撃も対応できるはずだ」

「サイレンは大丈夫なん?

 服引き裂かれたりするんやろ?

 作物を気にするんやったらシャイニング・バーニングも使いにくい筈やし」

「……そうだな。

 ……私としても初めて戦う魔獣だ。

 油断して殺されないように気をつけるとしよう」

「ほんなら依頼を受けるとするか。

 すんませーん!」

「はい、何でしょう?」

「この依頼を受けたいんやが、大丈夫か?」

「ええ、少々お待ちを」

 しばらくしてギルドの職員から許可をもらった。

「……さて、ほんなら初めてのイナミの地での戦いを頑張ろうか」

「……そうだな。

 この地方は私も初めてだからな。

 以前のコガワと違って苦戦するかも知れないが、負けないようにしよう」

 互いに武器などを点検し、大丈夫だと判断。

 特に買いたいものもないので、そのままイナミ地方に徒歩で向かった。

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