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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第1章 水と稲の町 イナミ

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36/50

第36話 桜舞い散る時 〜前編〜

 それは雨が降り止んでの次の日だった。

 外は久しぶりの快晴で晴れていた。

「おお、晴れとるで!」

「メリ!」

「……そうだな」

 だが、宿を出て一階に降りると何故か他の冒険者達はガヤガヤしていた。

「……何や?」

「メリ?」

「……割りの良い依頼が出たのか?」

「わからんのなら聞いてみるか……

 あの、すんません」

「ん?」

 俺は話しかけやすそうな表情が親切そうな僧侶風の衣装を着た人に話しかけた。

「何か他の人達落ち着きあらへんけど、特別な依頼とかあったりするんか?

 割りのええ依頼とか」

「ああ、違うよ。

 確かにそんな依頼があれば早く取ろうとしたいけど、今日はそんなんじゃないんだ」

「ほんなら、何や?」

「メリメリ?」

「今日は天気もいいし、桜も咲いているからね。

 今日は依頼を受けるのを止めて花見しようかとそれぞれのパーティーが相談しているんだよ」

 桜、この世界にも桜が咲いているのか。

 確かにもう四月だし、花見をする時期といえばそれはそうだ。

 この世界にも学校があるだろうから、親睦を深めるために学生が集まることもあるだろうし、大人も酒を飲む機会になりやすい。

 そうなれば当然の話として露店も出ることだろう。

「花見か」

「ああ、だから観にいこうかなって。

 もちろん、今日、依頼を受ける人もいるけどね」

 確かにたむろっている人を見ると、女性が多い。

 大人も「良いですな~!」と言っておじさん同士肩を組んでいるところから考えるにそこで酒を飲む約束もしているのだろう。

 あるいはカップルもデートするのかイチャイチャしている人も多い。

 ちなみに俺は目の前にカップルなどがいても「リア充爆発しろ!」というタイプの人間ではないので覚えておくように。

「ほんで花見をするとしてここで綺麗に咲くんは?」

「地図貸して」

「ああ……

 ほい」

「えっとね、この辺りなんだ」

 僧侶風の人は丁寧に場所を教えてくれた。

「これは神社?」

「ああ、【稲穂神社】。

 ここに咲いている桜は最高だよ」

 また驚きだ。

 この世界にも神社があるのか。

 異世界でよくある中世風世界だと思ったが、意外と日本要素もある。

「ありがとうな」

「いえいえ。

 あ、僕のパーティーメンバーが呼んでいるからこの辺りで」

「メリリ~」

「ーーのようやで、サイレン」

 そうサイレンに伝える。

「どないする?

 俺はどっちでもええで。

 これを機に依頼をこなすもよし、桜を見にいくもよしや」

 何せ、デラルに余裕はあるから、今日仕事をしなくても平気だ。

「……花見をしよう」

 即答だった。

「メリ!」

「お、持ちかけておいて何やが、意外やな。

 サイレンはそれよりも依頼をこなすと言いそうと思っとったわ」

 サイレンは真面目でクールな性格だからこういうことは参加せずに、「そんなことをやっている暇があるのならば依頼をこなした方がいい」と言うタイプだと思っていた。

「……私を何だと思っているんだ?

 ……私が冒険者になった理由は戦うためだけではない。

 だから、そういうことにも積極的に参加するぞ」

 確かにそう言っていたな。

 ならば、さっきのはとても言いそうにない。

 サイレンの目的と願いに反する。

「さよか。

 でも、どないするん?

 今から花見の準備をしたらええ場所取られるで?」

「……問題ない。

 ……《シャイニング・イリュージョン》」

「メリ!?」

 そう言ってサイレンは杖を使って魔法を使った。

 その杖から出現したのはサイレンそのものーー。

 ではなかった。

「……何やこれ?」

「メリ?」

 サイレンが出したのは確かにサイレンと同じ格好、同じ杖を持っており、白いとんがり帽子を被っている。

 しかし、顔も体型も違っていた。

 体型はサイレンと比べると太っているし、胸もない。

 そして、顔も美人ではなく普通だ。

 サイレンと比べると月とスッポンだ。

 失礼だけど。

 そう書かざるを得ないくらいの見た目だ。

「……これはシートだ。

 これを使って良い場所を確保してくれ」

 サイレンは気にせずに持っていたシートを手渡をした。

 いつの間に持っていたのだろう。

 旅とかに使う時はありそうだが。

「……わかった」

「わっ、喋った」

 しかも、声もサイレンそっくりだ。

 ますます変な気分だ。

「ちょいと失礼」

「……構わない」

 俺は好奇心を抑えられずにポンっとその分身の肩に触れた。

「……おっ、触れられる」

「……それでは行ってくる」

「メリリ!」

 触覚的に人間に触れているようなものだ。

 その分身サイレンは気にせずにシートを持って宿を出た。

「……シャイニング・イリュージョンは私の分身を作り出す魔法だ。

 戦闘能力は私と同じで、倒してもダメージはフィードバックされず、消滅した分身が持っている情報は本体である私に共有される」

「メリ~……」

 言うなれば影分身と同じか。

「……戦闘能力を削れば最大八体まで出せる」

「それは強い……

 経験値も得られる?」

 思いついたのは某忍者漫画の影分身の使い方。

 あれは修行に使って時間の掛かる修行を分身の人数分増やして修行期間を短縮していた。

 同じことができるのならサイレンの習得スピードは八倍になることになる。

「……この魔法を使えるようになったのは最近だからな。

 ……その辺りはよくわからない」

「わからんか」

 まあ、今でもサイレンはかなり強いし、抜かりなく特訓を続けているからさらに強くなりそうだ。

「ほんで、見た目、全然サイレンやないけど、見た目は好きに変えられるん?」

 そうじゃないとさっきの分身サイレンの姿に説明がつかない。

 潜入の際には衣装も変えることができれば相手に気付かれずに情報を得られそうだ。

「ああ……

 私そっくりに作ることもできる。

 ……ただ今回、シャイニング・イリュージョンを使った理由は戦闘のためではなく、ただ花見の席の確保だ。

 ……知り合いの魔術師に聞いた時は日常でイリュージョン系を使うのなら分身の容姿も気にしておけと言われた」

「何でなん?」

「メリ?」

「……何でもそのままだとナンパされる可能性が高く、下手をすれば不要な揉め事になると言われたな」

「ああ……」

 確かにサイレンをそのまま再現して行かせたら絶対にナンパとかされるのが想像に難くない。

 そして、サイレンの分身は自分に与えられた役目をこなすためにやるだろう。

 で、ナンパもそんな美人を諦めるわけがないし、傍にいようとする。

 下手すれば無理に連れて行こうとして揉め事に発展する。

 戦闘能力はサイレンと同じなら負けることもないが無用な争いは避けるのが無難か。

「あの分身、魔法使えるん?」

「……最低消費でシャイニング・バーニング一発分と同じ魔力量だ」

「サイレン、シャイニング・バーニングをバンバン使うよな?」

 サイレンのあの感じでは連射しても平気という表情だった。

 バーニング系は属性攻撃魔法の基本的な必殺魔法の一種だから魔力消費はそこまでないのだろうか。

 まるで、某特撮のヒーローの必殺技のようだ。

「ああ……」

「その一発分だとしたらそこまで消費してへん?」

「……あの程度の分身なら平気だ」

「さ、さよか」

「……戦闘での分身の使い方は……

 練人の小説のために秘密にしておこう」

「……了解や」

「メリ!」

「……さて、分身が場所の確保してくれているから準備してから行こう」

 確かに場所の確保をしてくれているのなら準備はゆっくりでも大丈夫だろう。

「他の魔術師もイリュージョン系を使うってことでもあるんやない?

 ほんなら場所取りは大変そうやわ」

 サイレンが使うということは他の魔術師も使うことに繋がると考えても不思議じゃない。

「……その可能性もあり得なくはないが、その場合も分身が教えてくれるだろう」

「ほんなら準備しておくか」

「ああ……」

「メリリ!」

 花見ってっことは桜が咲いていることだろう。

 それならば、俺が持っている中で使えるのは元カメラだった銀の箱だ。

 桜は絶景やし、写真は必須だろう。

「何にしても楽しみやわ!」

「メリ!」

「ハハッ!

 エアリーもそう思うか!」

「……私も楽しみだ」

 それなら、今回の花見はいい思い出になるだろうと、そう俺は確信した。

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