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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第1章 水と稲の町 イナミ

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35/51

第35話 意外と悪くない食事

「おお、イナミも結構雰囲気あるやんけ」


 コガワは少し洋風でそういう食べ物が圧倒的に多かったが、ここはそうではない。

 部屋もそうだが、食堂も和風だった。

 カウンター席もあるが、座席の方が圧倒的に多い。


「……そうだな」

「メリ~」

「あっち空いとるわ」

「メリ!」


 俺はサイレンとエアリーを連れて座った。


「さて、メニューメニュー」


 メニューを確認すると、さらに驚いた。

 コガワにもお米を使った料理はあるが、

 基本的には小麦が主食でパンやパスタなどが主だった。

 だけど、イナミはお米が中心の料理が多い。

 お米だけではなく、

 豆を使った調味料、

 醤油や味噌を使った料理もあったのだ。


「へ~

 和食料理も充実しとるんやな」

「メリ~」

「……意外そうだが、

 練人は何の料理をイメージしていたんだ?」


 サイレンはエアリーを膝の上に置いて抱き締めていた。


「せやな。

 小麦が中心でお米や醤油、

 味噌は少数、

 てか、全然ないと思っとったわ。

 ほんで俺がいずれ、

 “ああ、和食懐かしい”

 と嘆くまでがセット」

「……練人の言葉から察するに、

 料理も近いということか。

 私としても意外とイメージしやすいものなんだな」

「……まだ歩き回ってへんし、

 雨降りそうやから確認する暇なかったんやけど、

 イナミは雰囲気的に田舎って感じやわ」


 田んぼあったし、

 施設も行ったことがある都市と、

 比べれば都市まで繁栄していない。

 今いる世界の都市はまだ見たことないけどな。


「……確かに私の杖を買った時の街と、

 比べると田舎であると認めざるを得ないな」

「メリメリ!」


 話をしながらサイレンはエアリーを撫で始めた。


「前に言っとったな。

 あんま見てへんやったんやろ?」

「ああ……

 だが、杖を探しに行く時に、

 歩く必要があったからな。

 街の雰囲気は見る機会はあったさ」

「なるほど」

「……料理決めたか?」

「あっ、せやな。

 ……マッカレルの味噌煮?」


 もしかして、鯖の味噌煮のことだろうか。

 マッカレルは確か鯖の英語読みだったし、

 今いる世界、英語読みが多いからな。


「……マッカレルが気になるのか?」

「……マッカレルの味噌煮を頼むわ」

「……私は川魚定食をーー」

「サイレンって魚料理好きよな」


 コガワにいた時もよく魚料理を食べていて、

 ああ、サイレン、魚好きなんだなと思っていた。


「ああ……

 思ったが、練人。

 練人は私がドローで魚を釣った時に驚いていたが、

 コガワにいた時に話したと思う。

 何故、驚いたんだ?

 忘れていたのか?」

「い、いや、一種の冗談やと思っとったし、

 ほら、今日の体験から読み始める読者もおるかも知れへんやん?

 読者にサイレンの人柄を教えなあかん時もあるんや」

「……キャラ説明というやつか。

 ……なるほど、そういうことにしておくか」


 納得してくれたみたいだ。


「あ、すんませーん!」

「はい」

「彼女に川魚定食、俺はさーーー。

 こほん。

 マッカレルの味噌煮と普通盛りのご飯、

 沢庵もつけてや」

「確認しますね。

 川魚定食が一つ、

 マッカレルの味噌煮が一つ、

 普通盛りのご飯が一つ、沢庵が一つ。

 よろしいでしょうか」

「頼むわ」

「かしこまりました。

 少々お待ちくださいね」


 俺は暇潰し兼、

 朝食候補を調べるためにメニューを読み続ける。


「……おっ、納豆もとろろもあるやん。

 オクラもあるみたいやし、朝飯でええか」

「……納豆とかを食べるのか?」

「ん?

 サイレンは食べたことないん?

 もしかして、ネバネバは嫌いやったりするん?」

「……食べたことはないな。

 納豆もとろろもオクラも……」

「なら、食べた方がええわ。

 めっちゃうまいし」

「……わかった」

「メリ?」


 けど、納豆とかもあるのなら、

 蕎麦やうどんもあるやろう。

 確認すると案の定あった。

 しかも、安い。

 そして、体感的に思っただけだが、

 一デラルは俺の世界やと百円と同じ価値だ。

 つまり、初期費用の八百デラルも、

 元の世界で換算すると八万円になる。


「……思えば親切やったな。

 合理的ではあるけど」

「……ん?」

「メリ?」


 そう。

 俺はそうするしかなかったとはいえ、

 冒険者登録の時に登録費用が掛かったり、

 初期費用がなかったら武具も買えなかった。

 初期費用があったから何とかなったと言える。

 もしかしたら、サイレンに借金する未来もあったのかも知れない。


「……説明はこの辺りで終わりにしよう」

「……説明?」

「メリ?」

「小説は何でもありの世界やけど、

 せやから暗黙のルールというのがあるんや。

 代表例が説明が多過ぎたらあかんって奴や。

 書き始めはやりがちやけどな」

「……説明が多過ぎてはいけないのか?」

「せや。

 ほら、サイレンも学生の時期があったらおったやろ?

 校長の話が長過ぎ、かつ興味なくて眠る奴とか」

「……ああ、いたな。

 ……なるほど。

 ……あまり長くし過ぎたら読者が飽きたりする。

 結果、話を閉じるということか」

「せやせや。

 せやから地の文でも話す時も、

 説明し過ぎてへんか注意せなあかんねん」

「……他には?」


 サイレンはエアリーの餌箱に、

 メリボー専用の餌を入れて、

 エアリーも嬉しそうに食べ始めた。

 俺もエアリーを撫でる。


「せやな……

 毎日書かなあかんとか?

 些細なことやありふれた内容でも、

 何でもええからとにかく毎日書かなあかんねん。

 書き続けていれば少しずつやが上達するやろうし、

 読者にも読んでくれるしな」


 まあ、俺も人間だから、

 毎日ギリギリになって書き続けて完成させることもある。

 当初は朝の八時まで書き終えようと決めていたのに、

 ズルズルとハードルを下げて、

 八時越えなければOKなんてこともある。

 ついでに修正しやすいと言うこともあって、

 時折、修正して文字数などを増やしている。

 まだ読んでくれる人が少ないからできることだ。


「……なるほど」

「後、あまり戦闘描写は得意やあらへん」

「……そうなのか?」

「せや。

 戦闘多いところやから自然と戦闘は多くなるし、

 書かなあかんけど、どうしてもアーー。

 劇と比べると見劣ってしまって」


 アニメや映画は動きを動画で見れて迫力もあるから、

 人気は高いが、小説だと一つ一つ文字にしないといけない。

 文字を並べるからアニメなどを比較すると迫力は落ちる。

 文字だらけのゲームもあるが、

 背景や人物画があってBGMも流れるから、

 読んでも気にならずに読めることもある。


「前に一度だけ戦闘が多い作品も書いたんやけど……

 モチベーション上がらず、

 虚しいというか嫌になって没にしたんや」


 使えると思った設定もいくつかあるが、

 書く内に投稿するために戦闘を書かないといけなくなり、

 まるでゲームのような感じになり、

 戦闘が作業感が強くなり、

 泣く泣く没にした経緯もある。

 何度も書くが、俺は決して完璧な人間ではない。

 むしろ、欠点が多いだろう。


「結構あるねんな、俺。

 設定だけ練ってよし、投稿!

 勢いに任せて説明多かったり、

 爪が甘くて没にすることも」

「……そうか」

「お待たせしました!」


 話し込んでいると注文した料理が出た。


「おっ、美味しそう!」

「……そうだな」

「いただきます!」

「……いただきます」


 そして、食べ始める。

 鯖の味噌煮、

 もといマッカレルの味噌煮はぷりぷりで、

 味噌も甘く美味しかった。


「美味しいわ!」

「……ああ、川魚料理も悪くない」

「メリ!」


 サイレンも黙々と食べ始める。

 コガワの時もそうだったが、

 俺達は食事中は喋るタイプではなく、

 食べる間は無口になることが多い。

 サイレンとは長い付き合いになりつつあるから、

 気にせずに、むしろ居心地が良いと思うことが多い。


「ご馳走さん!」

「……ご馳走様」

「メリ!」

「ほんなら戻るか」

「ああ……」


 食事を終えれば自分達の部屋に戻る。

 長居していれば、普通に迷惑だ。

 エアリーは普通に俺の頭の上に乗り始めた。

 ちょくちょくやるから俺も慣れ始めてた。

 可愛いし。

 癒されもする。


「意外と何とかなるもんやな」

「……何が?」

「メリ?」

「いや、俺が転移者であることは、

 サイレンや読者にバレたんやが、

 せやからこそ書けることもあるし……」

「……そうか」

「まあ、バレてもうた分、

 俺の伏線は殆どなくなったんやけどな!

 正体バレもいずれ来るだろうと思ったけど、

 思った以上に早かったし!」


 何度も言うが、

 正体バレシーンは他の作品でも感動したり、

 緊張したりするものだ。

 けど、

 俺の場合は感動したり緊張したりするシーンではなかったと思う。

 いや、別の意味で緊張したけど、

 俺の求めていた緊張ではなかった。


「本当はもっと感動的な場面で、

 告白するんやろうなと内心期待してたけど、

 あらへんかったわ……

 推理で追い詰められる犯人のような気持ちになって……

 いや、何でもあらへん」


 まだ、書き終えたのを、

 読ませていなかったの思い出し途中で切る。

 流石にネタバレ過ぎるだろう。


「メリ?」

「……途中で切ったな」

「まあ、俺が隠し事しとるのは、

 小説のためが多いってことで堪忍な!」


 普通はあまり公に言わない方がいいが、

 部屋にいるから多少は大丈夫だろう。


「メリ!」

「……わかった。

 ……さて、温泉に入りに行こう」


 サラッとサイレンはそう言った。

 今回の旅館には温泉があり、

 泊まっていればタダで入れる。

 朝風呂もいいらしい。


「せやな。

 俺も入るわ!

 いや~まるで温泉旅行に言った気分やわ~!」

「……そうだな。

 練人は温泉旅行に行ったことはあるのか?」

「あるで!

 最近では一人だけで行ったこともあるわ!」


 行った場所は豊臣秀吉に由来がある温泉地。

 “有馬温泉”だ。

 一人で行った時は緊張したものだ。

 何せ、今までは両親と一緒に行くしかなかったし、

 緊張もしたのだ。


「……意外とアグレシッブなんだな」

「まあな!」


 温泉地で坂道に躓いて足を怪我して、

 痛みながら足を引きずって帰ったこともある。

 間抜けな話だが、言うことではない。

「温泉に行った時の体験を元にして、

 小説書いて投稿したこともあったわ」

「……そうか」

「ほんなら行くわ。

 サイレン、急な坂道にご注意を」

「……?

 ああ、わかった。

 体験から得た忠告か?」

「さあね。

 エアリー留守番頼むで」

「メリ!」


 そして、俺達はそれぞれ温泉に入り、

 部屋に帰って寝た。

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