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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第4章 冒険者としての決意

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32/51

第32話 選んだ理由

「メリメリ!」


 俺の頭にエアリーが乗っかる。


「本当に行っちゃうんですね」

「世話になったわ。

 ありがとうな。

 また機会があったら来るわ」


 俺達は旅をする荷物を持っていた。

 今回は行商人の護衛依頼をしながら。

 次の拠点に行くことになった


「ほっほっ、よろしく頼みますぞ」

「……ああ、道中は私達が守るさ」

「サイレンさん、

 私、サイレンさんに言われたこと続いていきます。

 最近は体もついていって、

 迷惑になることも少なくなりましたし」

「そういえば、サイレン。

 魔術師も筋トレした方がええって話の伏線まだやろ?」

「……次に回すさ」


 そう言ってサイレンは微笑んだ。

 気になる言い方だな。


「さよか。

 楽しみやわ」

「坊主、新しい鎧の着心地はどうだ」

「問題ないわ。

 むしろ頑丈そうに見えるわ」

挿絵(By みてみん)

 ドラゴンの鎧だから当然といえば当然だ。

 多少の攻撃なら耐え切れそうだ。


「ドラゴンの鎧には熱にも耐性がある。

 いい贈り物をもらったな」

「せやな。

 オルド・ドラゴンに恥じひんように生きておくわ」

「ああ、その方がいい」

「剣を手入れしてくれてありがとうな」

「な〜に、安いもんさ。

 大事にしてやれよ」

「はい!」

「エアリーちゃん、

 今日でお別れなのね~」

「もっと、抱きたかったよ~」

「メリメリ!」


 泣きながらエアリーを、

 もふもふする女性冒険者達。


「俺達もいずれ旅に出掛けるからよ。

 また会おうぜ」

「美味かったぜ、

 お前が奢ってくれた酒。

 また飲もうや」

「ああ、また会おうな。

 カールイ!

 クラフさん!」

「……行くぞ」

「ああ、またな!

 みんな!」

「メリリ!」


 そして、俺達はコガワを離れて行った。

 エアリーもふわふわと俺達について行っている。


「……確か、次に行く町は【イナミ】やったな」

「ええ、そうです。

 そこは農業が盛んなので、

 こういった農具がとても売れるんですよ」

「はは、そうですか」

「もちろん、イナミのお酒も飲みやすくて美味しいのですよ。

 私は楽しみで楽しみで」

「お酒って何の酒なんや?」

「米で作ったお酒が多いですね」

「米か」

「お米も売れて、

 私のような行商人が運んで各地に売って行くのですよ」

「コガワも一つ?」

「ええ、そうです。

 現地に払わないといけない税もありますが、

 お米の人気を考えれば必要経費ですな」

「へぇ。

 地主とかおるん?」

「ええ、そうですそうです」

「……知っているんだな」

「よくあるからな」


 まあ、俺の年齢で地主は廃止になっているが、

 小説の中では地主の関係を中心とした話も多い。


「せやけど、楽しみやわ。

 イナミにもギルドあるんやろ?」

「……ああ。

 ……次の拠点はそこになるだろう」

「楽しみやな、サイレン」

「……そうだな」


 とは言っても話してばかりもいられない。

 護衛依頼ということは襲い掛かる敵がいるということ。

 敵がどんなのかわからない以上、油断はできない。


「……なあ、サイレン。

 聞きたいことがあるんやけど」

「……ん?」

「何で俺を選んでくれたんや」

「……何で?」

「サイレンなら他にも強い相手を見つけられるやろ?

 仲間なんて選び放題や。

 戦闘も素人な俺を何で選んでくれたんやって思っとって」

「……最初からそういう予定だ」

「予定?」

「……幼い頃から、

 冒険者になりたかったという話を練人にしたな」

「ああ、したな」

「……その時に決めていたんだ。

 最初の仲間は私が登録した日に、

 同じ場所、

 同じ時間に、

 私と同じように登録した者を仲間にしようと」

「サイレンと同じ日に、

 同じ場所で、

 同じ時間に登録した人物……

 決めた人物が俺やったと?」

「……そうだ。

 登録した時点で誰だろうと声をかけようと、

 仲間にしようと決めていた」

「つまり、複雑な理由とか裏でもなくて、

 ただ単に運が良かったってだけか」

「……ああ。

 深い事情なんてなかった。

 練人の秘密にも当然知らなかった。

 運が良かったと認めるのなら私としても光栄だ」

「……サイレンは俺を仲間にして後悔してへん?」

「してないな……

 むしろ、後悔する点はどこにある?」

「え?」

「……私が決めたことが、

 私にとっても賭けなのはわかるな」

「まあな」


 都合よく条件に合った人物はいないかも知れない。

 誰も冒険者登録をしない日だってもちろんある。

 そうなれば、サイレンは一人になることだってある。

 上記の問題は臨機応変で切り替えて募集すればいい。

 問題なのは、誰も良い人ではないことだ。

 サイレンの言葉を要約すると、

 相手が下心を持っていたら、

 大変なことになりかねない。

 今までのサイレンの行動を考えれば、

 サイレンが誘ったと言われても捉えてしまう。


「……自衛手段を持っているし、

 登録した者が私以外いなかった場合の対策もある。

 けど、一緒に旅をしてくれる仲間が欲しいと願っていた」

「……」

「……そして、練人が仲間になってくれた。

 練人が良い人なのは疑いようのないことだ。

 先輩に言われた男性冒険者に、

 気をつけなければいけないことも、

 練人なら大丈夫だと安心もしていた。

 私と同じ趣味を持っていて、

 私ではできないこともできる、

 一緒にいて楽しいと思える。

 ……幸運と言わずに何だと言うんだ?」

「……サイレン」


 サイレンは手を広げた。


「メリ!」


 エアリーはサイレンの方に寄って行き、

 抱き締められた。


「……私にとってその仲間が戦えるかなんて……

 どうでも良かった」

「どうでも良かった?」

「……私は別に最強のパーティーにしたかった訳でも、

 効率のいいパーティーにしたかった訳でもない。

 ……私は知っているんだ。

 ……いや、幼い頃に知ったんだ。

 ……全ての人がみんな、

 私のように強くないことを」


 そして、サイレンは青空を見上げた。


「……私のようになりたくて、

 冒険者になった者は少なくはないけど、

 様々な事情があって冒険者になることもある」


 確かにサイレンの説明から、

 別の仕事に就きたくて有利になることを願って、

 冒険者になった人もいる。

 好奇心に任せてなる人もいる。

 俺のように、

 ただ生きたくて冒険者になるしかない人もいる。


「例え、私よりも……

 いや、他の冒険者よりも遥かに弱い人も、

 冒険者になることがある」

「……せやな」

「……弱い人物が私の仲間になることもある。

 ……私なら私が一緒にいたいと思える人物を、

 仲間にするだろう。

 ……仲間が誘ったとしても私は許可する。

 ……仲間が誘うほどの気が合うのなら、

 私にとっても気が合うだろうから……

 ……だから、私は強くなると決めた」

「強くなると?」

「……弱くても、一緒にいたい仲間を守るために。

 仲間が自分の弱さを気にすることなく、

 自分のやりたいことをやれるように。

 安心するように」

「サイレン……」

「……私は最初から魔法が得意だった。

 ……周囲も魔法の才能があると認めた。

 ……なら、私の才能を私のために使おうと決めた。

 ……私は冒険者になる。

 ……そして、仲間と一緒に世界を回る。

 ……私の仲間を守りたい。

 ……私の仲間のために使おう、

 鍛えようと」

「……ほんま、サイレンはええ人や。

 サイレンが仲間になってくれてほんま幸運やわ」

「……なら、お互い様だ。

 ……練人は練人が思うほど弱くない。

 ……私が保証する」

「ありがとうな」

「ほっほっほ、素敵ですな。

 お嬢さん」


 行商人に言われると、

 サイレンは恥ずかしそうになっていた。


「……私は練人を捨てないからな」

「メリリ?」

「……もちろんエアリーも私の仲間で大切な存在だ。

 ……だから、大丈夫。

 ……私が守るし、見捨てない」


 ぎゅっとエアリーを安心させるように抱き締めた。


「メリリ!」


 サイレンを見て、俺も強くなりたいと思った。

 サイレンばかり負担を掛けたくなかった。


「……私は運に自信がある」

「そうなんか?」

「ああ……

 私には魔法があって、

 仲間がいて、そして……」


 そして、サイレンは黙ってしまった。

 けど、その表情は暗くなく、

 隠し事をする子どものようだった。


「そして?」

「……いや、取っておこう。

 練人の小説家の道のためにも、

 黙ったの方がいいと思うから」


 サイレンは微笑んだ。


「っ……

 さよか」


 俺はサイレンの顔を見て、

 そっぽ向くしかなかった。

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