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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第4章 冒険者としての決意

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30/52

第30話 気付かれた秘密

「ど、どういう意味?

 よぅわからへんな」

「……練人が怪しい点は四つある」


 とぼける俺にサイレンは指を立てて説明し始める。


「……今まで練人を観察してきたが、

 お前はただの小説家志望の冒険者にしては、

 おかしな点があるんだ。

 ……一つ目は常識知らずにしては地頭が良過ぎる。

 さっきもそうだが、

 常識で誰もが知っていることでもお前は知らなかった。

 常識知らない者、学校に通っていない者も確かにいるし、

 生活に困って冒険者になることもよくあることだ。

 だが、練人を生活に困っている者として見るには賢過ぎる。

 教養を受けているような人物だし、

 知識欲が豊富なのは過ごしていればよくわかる。

 勉強しなかった者が読書しているわけがない。

 なのに練人は読書好きな上に小説家を目指している。

 かと言って無茶な金の使い方もしない。

 コガワには娯楽施設は少ないが、

 でも、冒険者同士で賭けをすることもある。

 けど、お前は賭け事に参加することはなかった」


 俺はオルゴールを使って音を出す。

 今の状況に相応しいBGMだ。


「……二つ目、冒険者として素人だとしても、

 イメージはでき過ぎている。

 ……練人は確かに戦い方も魔法も素人だ。

 だが、素人にしては戦い方がおかしい。

 戦いから遠ざけて甘やかされていた者としては、

 ゴブリンの危険性によくわかっているし、

 魔獣との戦いも的確。

 戦い方も素人が我流で戦っているとは違って、

 記憶の中の戦いを引っ張り出しているようにも見える。

 魔法のイメージも、私の解説もすんなりと理解している」

「察しのいい地頭がええ人だという線は?

 ほら、金持ちが自分の夢のために投げ出すとかあるやろ」

「……確かに金持ちだと考えるとお前が持っている物に説明はつく。

 一見すればな」

「一見?」

「……三つ目、金持ちだと仮定しても、

 練人が金持ちにしてはおかしい点が多過ぎる。

 ……金持ちでも夢を投げ出す時に、

 家の金や物を持ち出したりする。

 無一文の恐怖はわかっているからな。

 仮にお前が家の物だけを持ってきたとしても、

 家の者の後も形もないのはおかしい。

 馬車なら居場所の把握は容易だろうし、

 徒歩圏内なら近くを探さない理由はない。

 遠くの街まで歩きで行くのは限界があるからな」

「っ……」

「……だが、私達を監視する目がなかった。

 ……私達を調べようとする者の動きもな。

 お前の動きも金持ちの動きと言うよりも一般人に近い。

 後のことを考えて貯金したり、

 貯金を削らずに使ってもいいお金の範囲で使ったり……

 金持ちの線はかなり怪しくなる。

 お望みならば金持ちに、

 練人という人物はいるか否かをギルドに調べてもらってもいい」


 サイレンが的確に俺を追い詰めている。

 ああ、マコさんが追い詰められている状況に、

 似ているのは気のせいだろうか。

 マコさんもこんな気持ちだったのだろうか。


「……四つ目、家族がいるという点を匂わせながら、

 影も形もない上に友達など探しに来る様子も微塵もない。

 ……普通に考えて、小説家になりたいから、

 故郷を出て冒険者になり体験を書き続ける。

 魔獣のことをよく知らず、

 学校にも行っておらず、

 常識も知らない、

 戦いも素人。

 普通に考えれば心配で止めようとするし、

 仮に了承したとしても故郷で冒険者をさせるだろう。

 家族など親しい人に黙って、

 故郷を出て冒険者をしているとすれば、

 心配で誰か一人、

 練人を探す動きがあってもおかしくはない。

 なのに、練人はコガワ出身じゃない上に、

 他の冒険者に注目されているのに、

 友達などの人物がお前に会いに来ることもない。

 さっきも言った通り、監視の動きもない。

 悪事などを働いて村から追い出された点も、

 練人の性格や性質を考えると、

 とてもそうには見えない。

 まあ、家族の目から解放されて、

 結構自由になっている部分もあるが、

 練人は傍若無人ではなく、むしろその逆。

 気遣いすらしている。

 後、練人の口調は独特だから、

 すぐにわかるだろうし」

「でも、決定的な証拠はないんやないかな?」

「……実は私は情報収集が得意な知り合いがいる。

 ……知り合いに頼んで調べて貰えばすぐにわかるーー。

 ……いや、私と組んだ時点でもう調べられているか。

 ……そして、不思議に思っているだろう。

 ……お前の痕跡が冒険者になって以降ないことに……

 ……練人の珍しい口調を考えれば、

 すぐに見つかる筈なのにだ」

「……そんな知り合いおるんか!?

 え、もう調べられとるん、俺!?」

「……ああ、間違いなくな。

 ……知り合いは私の過去も余さずに調べ切った。

 ギルドに隠してくれた私の秘密もな。

 だから、練人が昔、透明人間、

 あるいはいきなり生まれたとかじゃない限り、

 練人の秘密が調べ切れない訳がない。

 例え、ギルドに隠匿する必要のある人物だとしても、

 親類などが腫れ物として扱われ追い出されたとしても、

 草のような人生を送っていたとしても、

 生きている限り痕跡を完全に消し去ることは不可能だからな。

 隠す動きを練人がしておらず、

 慣れていない点を考慮すれば向こうは疑いが強くなるだろう。

 だから、私がお願いすれば答えてくれるはずだ。

 練人の痕跡が殆ど出てこないことが……

 納得ができる説明を聞かせてくれるのなら、

 練人の口から聞かせて欲しい」

「うん、いくら考えても無理やわ」


 俺は即座にお手上げした。

 サイレンの推理を聞いて、

 俺は内心初期の某名探偵を思い出していた。

 自分から脱いでいくスタイルって馬鹿にされがちだが、

 実際に体験してみるとわからなくなるものだ。

 秘密を隠してくれる協力者も皆無だとすると、

 むしろ今日まで持ち堪えたという気もする。

「……無理と言うのなら、

 つまり正直に話してくれるってことでいいんだな?

 練人」

「うーん、俺としてもええし、

 確信を持って疑われたら、

 どないしようもあらへんからな……

 せやけど、結構、現実離れしとる話やから、

 信じてくれへんと困るで?」


 物語ではよくある設定かも知れないけどな。


「……わかった。

 ……私から聞いておいて、

 練人を疑うようなことはしないと約束しよう」

「実はな、俺な、サイレン……

 今いる世界の人間やあらへんのや」

「……今いる世界の人間ではない?」

「せや。

 地球という星の日本人やねん。

 聞いたことは?」

「……ないな。

 星の名前も……」

「簡単に言えば科学が発展した世界。

 不思議なこと、解明できひん謎はあるやろうけど、

 魔法のような能力はないんや。

 魔力もあらへん」

「……魔法も魔力もない世界……

 ……魔法を愛している私としては嫌な世界だな」

「せやな。

 せやけど、結構便利なのは間違いあらへんで。

 美味しい食べもんも多いしな」

「……練人の口調はその日本人の特徴なのか?」

「いやぁ、この喋り方は関西弁、

 つまり日本という国の西方面の喋り方なんや。

 訛りや、訛り」

「……なるほど。

 ……その日本人が何故、

 如何なる方法を使って世界に来た」

「俺もわからへん……

 来た時のことは覚えとるけどな」

「……話してくれないか?」

「……二月二十八日にカメラを持って夜中に出たんや」

「……何のために?」

「星を撮るためなんや。

 二月二十八日は特別な日で、

 激レアな星の現象を撮れる日やったんや」

「……激レアな星の現象?」

「惑星直列って言うんや」

「……惑星直列?」

「要するに大きな惑星が一直線に並び立つ日で、

 当日は六つの星が並んで見えるんや。

 惑星直列を撮ろうと思って、

 お年玉貯金で買ったカメラを持って行ったんやけど……

 現象が起きた直後に星から強烈な光が出てな」

「……強烈な光?」

「眩しいと思って目を瞑って……

 あっ」

「……んっ?」


 オルゴールを使ってとあるBGMにした。


「俺は小説家志望の高校生、

 【静川練人(しずかわ れんと)】!

 二月二十八日に、

 惑星直列を撮るために出かけて行って、

 星を見とった。

 星を見る時に、

 星から眩い光が発した。

 余りの光の強さに、

 目が眩み俺は目を閉じてしまったんや。

 光が収まり、

 目を開いたら……

 ファンタジーの世界に来ていたんや!

 今いる世界が元の世界やあらへんと知った俺は、

 金がなくなり道具も変化、

 あるいは消滅したことにも気づいた。

 冒険者登録の時【練人】と名乗り、

 元の世界に帰る方法、

 そして生きる手段を手に入れるために、

 冒険者として戦うことにした!」

「……」

「消滅した道具もあるが、変化した道具もあるんやで。

 一つはこのオルゴール。

 俺が持っていた音楽プレイヤーやったんや。

 オルゴールを使えば元の世界の音楽が奏でることができる。

 魔力を込めれば俺だけに聞かせることもできる優れものや。

 もう一つは銀の箱。

 銀の箱は元の世界のカメラが変化したもんやけど、

 性能自体は変わらへん。

 遠くの星まで撮れる上に、

 容量もあるからたくさん写真を撮っても平気なんや!

 写真を撮るだけやのうて、

 動画も撮ることもできるんや。

 他にも双眼鏡とか持っとるけど、

 俺の荷物は今持っとる奴だけやな。

 戦闘はど素人!

 今いる世界で戦う小説家!

 目指すものはいつも一つ!」

「……色々言いたいことがある。

 ……まず、お前のフルネームは静川練人なのか」

「せや。

 まあ、練人静川があっとるかも知れへんが、

 省略しても問題あらへんやろ」

「……さっきの説明口調は?」

「お約束や、お約束!

 好きな話にさっきのような説明があってな、

 俺の今の状態に合うように変えさせたんや」

「……練人は元の世界に帰りたいのか?」

「行き帰りできるんやったらな。

 元の世界で友人や家族に、

 別れの言葉もなくいなくなったからな。

 時間経過が同じか知らへんが、

 今頃神隠し扱いになってもおかしくあらへんわ」

「……そうか」

「せやけど、あてはあらへんし、

 二度と帰ることはできひんとも思っとる。

 帰る方法あるか調べるんは俺の好奇心が強いわ」

「……?

 ……何故二度と帰れないと思う?

 入り口があるのだったら出口もーー」

「せやな。

 出口と入り口は表裏一体。

 せやけど、サイレンの言う出入り口が惑星直列なんや。

 また起こるんは百五十年ぐらいや」

「……寿命でアウトか」

「せや」

「……最初に言ったように信じる」

「おおきに、サイレン」

「……よろしく頼む、練人」

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