第29話 寿命
「……確認しましたけど、驚きですね。
まさか、オルド・ドラゴンを倒してしまうとはーー」
ゴブリンを討伐したついでにオルド・ドラゴンも倒したと報告すると当然だが、受付嬢は驚きを隠せないでいる。
「とりあえず、ゴブリン討伐報酬として合計八百デラルになります」
「ありがとうございます。
それでオルド・ドラゴンの方は?」
「オルド・ドラゴンは危険は少ないですが、それでも元Bランクに相当するほどの魔獣です。
練人さんも戦ったようにHランクでは普通太刀打ちできない相手なんです。
そして、オルド・ドラゴンと戦うことは名誉なこととしてされているのでその特別感も合わさって討伐報酬は三千二百デラルになります」
「おお、三千デラル台や!」
「それに加えてオルド・ドラゴンの素材を使って武具の生成を行う権利も発生します。
権利の破棄をすればさらに追加の報酬は得られます」
「……ゴブリンとか倒した時はなかったような?」
「Eランククラスの魔獣を倒した場合に発生する権利です」
「……練人、手に入れたいか?」
「手に入れたいけど……
サイレンが倒したんやからサイレン手に入れればええんとちゃう?」
「……ん?
……ああ。
……そういえば、言ってなかったな。
……宣言するのは思ったよりも早かったか」
「ん?
早かった?」
「……私は“魔術師”だ。
そして、私の魔術師の姿はとんがり帽子とローブ、杖のセットだ。
色は白と青。
……杖は気に入っているからこの杖を変えることもしない」
「……それで?」
「……例え、伝説級の武具が手に入るとしても、武器ならいらない。
防具だとしても魔術師に相応しいものでない限りはそれもいらない。
魔術師に相応しいものだとしても白と青でないといらない。
妥協として黒と赤でも構わないが、例外はそれだけだ」
「……割と条件厳しくないか?」
「……かもな。
……だからこそ、もし手に入ったら練人やいずれ増える仲間が決めてくれ。
どうするかは任せる」
「……つまり、いらなかったら売ってもええと?」
「……そういうことだ」
「それなら、俺は欲しいかな?
鎧装備はまだボロボロになってないけど、ドラゴンの方が頑丈そうだし」
俺としても早いかなと思いつつ、ドラゴン装備使えるなら使いたい。
「かしこまりました。
それでは、手配しておきますね」
「それにしても、お前らよくオルド・ドラゴンを倒したな」
そう言って俺達に絡んでくる冒険者達がいた。
「凄いですよね。
二人パーティーで、オルド・ドラゴンを倒すなんて!」
「……練人も頑張ったからな」
「主力はサイレンやったけどな」
「それにしても、オルド・ドラゴンか……
あれと戦うのは冒険者としてはロマンだよな~」
「ドラゴンと戦うのもそうだが、最期の相手として選んでくれたから冒険者としては誉よ」
「そのオルド・ドラゴンと戦うことも少ないから特別視するんだよな」
「俺も一度だけでいいからオルド・ドラゴンと戦ってみたいよ」
そう羨ましがる冒険者がちらほらといた。
「にしても結構歳いっとったな。
どのくらい生きたんやろ?
数百年くらいか?」
「……は?」
俺が呟くとみんなが何言ってんだという視線で向けていた。
「……何か変なこと言った?」
「……言ったな。
……練人、何を勘違いしているか知らないがあのドラゴンは大体三十代だ」
「……え?
三十?」
「……ドラゴンの寿命は大型でない限りは三十代なんだ。
人間換算すると百歳以上だから練人の言うこともある意味では間違いではないのだ……」
「……まじ?」
「……マジだ」
ドラゴンといえば設定で言えば普通は数百年も生きる長寿な生物だ。
それがまさかの三十代に少し驚きを隠せないでいる俺。
「ハハハっ!
勉強不足だぜ、兄ちゃん!」
「ちょ、ちょっと思い込んどったみたいやわ~
そこまでとは思わんかったわ、恥ずかしいわ~!」
魔獣図鑑、まだそこまで読み切れていないからな。
もっと読み込んでおこう。
ああ、でも知らない状況で解説されるのも小説としては入れておきたいしな。
説明し過ぎるのは小説としてはよくないが、何でもかんでも知り過ぎると言うのもつまらない。
「……そうか。
それで今回の報酬はどうする?」
「せやな。
山分けで千六百デラル分けるとして、千デラル貯金するつもりやが、サイレンは?」
「……私もそのつもりだ」
貯金し過ぎるのも問題だし、お金は使わないと損だ。
生活費もあるし、紙代も必要なのはわかるが、それでも限度があるもの。
貯めれば安泰なのも、それはその金がいつまでも使えることが前提になる。
下手をすれば全てが使えなくなってしまい、一文なし同然のような状態にもなりかねない。
今の使い道としては旅に使えるものを買い揃えていつでも旅に出ていいようにすること。
それがいいだろう。
「……それでは今日は帰ろう」
「せやな。
ほなな!」
「おう、またな!」
そして、俺達はギルドを出た。
今日もあの宿に泊まり、くつろいでいた。
宿のベットでゴロゴロしていた時だった。
「……練人」
「ん?」
「……ドラゴンの寿命を知らなかったのなら他の寿命も知らないんじゃないか?」
「というと?」
「……エルフ、ドワーフなど他の種族もいるが、何歳で寿命が尽きると思う?」
いきなりの質問だった。
「えっと、エルフは長寿でドワーフもエルフに遠く及ばないけど、長寿やないんか?」
俺が読んできた小説もエルフやドワーフが殆どそれで、人間との寿命差が物語の根幹になっている作品もある。
「……聞いて良かった。
もし、エルフにそれを言ったら怒られるところだ」
「……というと、まさかーー」
「……エルフもドワーフも百歳で死ぬぞ」
「……マジで?」
「……マジだ」
サイレンが聞いたから薄々察していたから驚きはしなかったが、それでも同じ百歳って、他の人が聞いたら何でと驚きでいっぱいだっただろう。
「……練人」
すると、サイレンは真剣な顔になって俺を見つめていた。
「何や?」
「……お前、何者なんだ?」
「……へ?」
サイレンからいきなりそう言われた。




