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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第4章 冒険者としての決意

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第27話 思わぬ強敵

「はっ!」


 俺達は今、ゴブリン討伐の依頼を受けていた。

 村近くでゴブリンの巣ができつつあるため、

 被害が出る前に討伐して欲しいとのことだ。

 エアリーは危険なのでギルドの受付嬢に預けた。

 なんだかんだ文句言いながらも受付嬢の方も満更ではない様子だった。

 ゴブリンなどの討伐依頼は割と人気がある。

 冒険者としての名が広まりやすい上に金にもなるからだ。


「グギャ!」


 ゴブリンが手に持った棍棒を俺に向かって振り落とすが、

 サイレンと比べれば鋭くもないし、遅い。


「せいりゃ!」


 隙を突いて一刀両断するのはわけがない。

 複数に囲まれたところでよく見れば動きは遅いし、

 サイレンの方が脅威だ。

 何せ、サイレンは戦いに冷静に捉えることができて、

 反撃も的確。

 遠距離だけでなく、近距離も強いという万能っぷり。

 サイレンと比べると、

 ゴブリンはどれも中途半端で強くないと言う印象が強い。

 当然だが、サイレンの方を心配する気もない。

 俺に勝てないゴブリンが彼女に勝てる可能性など皆無だ。


「……《シャイニング・バーニング》」


 今も彼女は体を回転させながらゴブリン達を一掃している。

 サイレンの表情は余裕で冷や汗の一つもかかない。

 負ける様子もない以上、心配する必要もない。

 だからこそ、俺は俺にできる目の前のことに集中することができる。

 かと言って冷たい人ではないと互いにわかっている。

 やばいと思えばいつでも援護してくれると信じられる。


「……《シャイニング・バレット》」


 杖から光の弾丸が八発飛び出す。

 音は牽制とは思えないほどに大きく、

 まるでコルト・パイソンのような音だった。

 一発ずつ正確に、

 弓矢を持っているゴブリンを撃ち抜き倒していく。

 サイレンは俺に矢を当てさせないように、

 先に遠距離攻撃できるゴブリンを始末してくれた。


「ほんま、心強いで!

 おっと!」


 ゴブリンの棍棒攻撃を躱して蹴り飛ばす。

 小説家だから手を傷つける拳は使いたくないが、

 武器だけに頼ったら武器を奪われた時に脆くなる。

 武器を奪われて脆くならないように。

 頭の中にある戦いのイメージに近づけるように足技も使う。


「せい!」


 剣をダーツのように飛ばしてゴブリンを突き刺す。

 心臓を貫かれたゴブリンはバタリと倒れて口から血を流した。


「グギャア!」


 武器を失った俺をチャンスだと思ったのか、

 ゴブリンは襲い掛かる。


「えい!」


 襲いかかってきたゴブリンの胴体を蹴る。

 蹴りだけでは終わらせずにさらに二回脇に蹴り、

 前蹴りで吹き飛ばす。

 連続で蹴られたゴブリンは動揺し、

 倒れてもすぐに立ち上がることはなかった。

 痛みが感じる部分を抑えて俺を睨んでいた。


「見えてんだよ!」


 背後から不意打ちしてくるゴブリンに向けて後ろ蹴りを一発。

 蹴ってくるとは思っていなかったゴブリンは、

 吹き飛ばされて倒れる。


「《ドロー》!

 はっ!

 せいりゃああ!」


 突き刺された自分の剣を、

 ドローで回収し立ち上がったゴブリンを切り伏せる。


「お前もや!」


 背後に悶えているゴブリンにもトドメを刺す。

 そして、ゴブリンとの戦いは呆気なく終わりを告げた。


「……依頼達成やんな?」

「ああ……」


 あまりにもあっさりで恐怖も感じなかった。

 俺も魔獣との戦いに慣れ始めているのだろう。

 戦いの素人だが、着実に前に進んでいると自覚ができて、

 俺は剣を強く握る。


「俺、結構戦えるようになってきたやろ?」

「……そうだな。

 練人も慣れつつある。

 Hランクの魔獣相手なら遅れを取ることもないだろう」

「さよか。

 サイレンが褒めてくれるんやったら嬉しいわ」


 サイレンは偽りを言う人ではないと、

 そろそろ分かっている。

 つまり、一緒にいた時間が長くなっているのだろう。

 まあ、サイレンが一緒の部屋に泊まっても、

 慣れてしまった俺も如何なものかとは思う。


「……どうやったら旅してもええことになるん?」


 ふと、俺はそう聞いた。

 俺の目的のためにも拠点を作る華は置いといて、

 旅ができるようにしておきたい。

 サイレンの夢も考えると彼女も旅する気だろう。


「……短い距離だったり、

 馬車に乗るのなら大丈夫だが、

 遠い場所の町に向かうのならギルドの許可証が必要になる。

 少なくともHランクでは許可は降りないだろう」


 短い距離はわかる。

 だからこそ、俺達冒険者は、

 危険を知りながら魔獣を討伐している。

 馬車もサイレンの話を聞けば納得もする。

 遠い場所に行くということは、

 魔獣と遭遇することが多くなるということだ。

 弱い者や戦えない者がやるのは死にに行くようなもの。

 相当の覚悟がない限りは、

 基本は町に留まった方が利口だろう。


「……夜中はもっと厳しい。

 許可されるランクでないのなら、

 低ランク者は町に泊まるしかない。

 旅をするなら基本的に、

 ギルドは目指す中継地点を教えてくれるから、

 中継地点を目指す旅になる」

「……なるほど。

 ……一般人も同じなん?」

「……同じだ。

 行商人は他の町に行くたびに、

 冒険者に護衛依頼を頼む必要がある。

 馬車も遠出するなら、

 多くの冒険者がいないといけないから、

 戦えない者は基本的に取る。

 元冒険者で戦える者はランクによって、

 免除される場合もあるが、

 怪我などで引退すれば権利も失われる」

「サイレンが乗っ取った馬車も同じ感じなん?」

「ああ……

 そうだ」


 理由は単純でそうじゃないと危ないから。

 確かに魔獣は襲い掛からない種類もいるが、

 でも人を襲う魔獣は少なくない。

 いないのなら町に壁は作らないから、

 そういう危険な魔獣がいるという証拠になる。

 襲い掛かる魔獣に襲われて死んだら物資は届かない上に、

 余計な被害が増えかねない。

 合理的と言えば合理的だ。


「普通の人はそこそこ資金を獲得してランクを一定数上げて引退。

 別の仕事に転勤するって流れなんかな?」

「……そうなる。

 ランクの上げ方は前にも言ったように、

 戦う以外にもあるから戦いが不得意でも大丈夫だしな。

 ただし、戦いの記録は取られるから、

 ランクがあるからと無条件で誰も彼も許可が下るとは限らないがな」

「……なるほどのぅ。

 ほんなら俺らが旅をするんやったら、

 ギルドが指定した中継地点に向けて行くか、

 行商人の護衛依頼のついでになるんか」

「……そうなるな」


 費用が欲しいのだったら行商人の護衛依頼、

 気楽に行きたいのやったら中継地点に行くか。

 そのどちらかになるだろう。


「……まあ、旅に出るんやったら護衛か中継地点になるか、

 臨機応変って奴やな。

 ほんで許可証を手に入る方法は?」

「……Gランクになれば、

 地方を旅することができるようになる。

 ……護衛依頼を受注できるのもGランクからだ」

「……なるほどのぅ。

 ……旅のためにも指定の魔獣を倒さんといかんってわけか」


 少し緊張もする。

 今までのサイレンの戦いを見れば、

 楽勝なのは理解できる。

 けど、俺にとっては初見の敵だから緊張してしまう。


「……心配しなくても今の練人なら十分通用する」

「……ありがとうな」


 ゴブリンを倒して雑談をしている時だった。

 ズシン、ズシンとゆっくりと歩く音が響いた。


「……っ!

 な、何や!?」

「……っ!」


 音の方はサイレンにとっても予想外だったのだろう。

 目つきが鋭くなって、杖を構え出す。

 俺も自然と緊張し、剣を構えた。

 音は段々と近づいてくる。

 木々が薙ぎ倒される音、

 枝を折り地面を踏み締める音、

 そして、雑魚とは思えないほどの息遣い。


「……サイレン」


 音と息だけでも敵が小型ではないのがよくわかる。

 大型、少なくとも俺が戦ってきた魔獣よりも遥かに強いのは確かだ。


「……オーク?

 ……いや、違う。

 ……オークよりももっとーー」


 サイレンは冷静でぶつぶつと自分の推測を呟いていた。

 俺もオークの単語を聞いて身構えたが、

 彼女の言葉ではそうじゃないと確信しているような感じだった。


「お、オークやないって……

 ほんなら、何やねーー」


 だが、聞く時間はなかった。

 茂みから現れたのは四足歩行で動くドラゴンだった。

「……ドラゴン」

「ど、ドラゴンやと!?」


 予想外の強敵に俺は大声を上げて目を見開いた。

 ジリっと足が後ろに下がり、額から汗が流れる。

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