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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第4章 冒険者としての決意

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25/50

第25話 コガワ

「メリッ!」

「ぐはっ!

 ハハッ!

 顔面はやめろって!」


 ギルドから帰ってきたエアリーは俺にすりすりしてきた。

 よく見ると、エアリーの足裏に登録用の文様が見えた。


「文様って痛くはないの?」

「……痛ければエアリーは泣いて引っ付いているだろ」

「……ああ、そうか」

「ギルドとしてもメリボー、

 エアリーが街にいても大丈夫という許可を与えました。

 魔獣を育てる以上、

 責任を持ってお世話してくださいね」

「はい、わかりました」

「そういえば、

 お二人さんは今日は依頼を受けないのですか?」


 受付嬢は言った。

 受付嬢が言うのもそうだろう。

 サイレンは帽子を脱いで杖を宿に置いているし、

 俺に至っては日常で着るような服だ。


「……ああ、今日はオフの日だ」

「偶には戦いから離れて休みを満喫しないとな〜」


 加えて日常を書くのも大事だ。

 戦いや特訓ばかり書いていては読者も、

 作者である俺も飽きて嫌になってしまう。

 昔、戦闘だけの小説を書いたが、

 作業感が強くなり、結局、没になった。

 だから、サイレンに頼んで今日はオフにしてくれた。


「わかりました。

 しっかりと休んで英気をつけてくださいね」

「はい、では、また」

「またね、エアリーちゃん」

「メリリ~」


 女性冒険者達は、

 少し残念そうにしながらエアリーと別れた。


「……では行こうか」

「にしてもサイレンも付いて行くんか?」

「……ああ。

 ……私が冒険者になった理由も戦うためだけではない。

 色んな街を見て回りたいのも理由の一つだからな」

「確かに前も同じことも言ってたな。

 ほんなら行こうか」


 そして、俺達はギルドを出た。

挿絵(By みてみん)

「……ふぅ」

「……休みたかったのか?」

「メリ?」


 サイレンはエアリーを抱きしめて歩いていた。


「ちゃうんやけど、

 ほら、俺の体験を小説にするって言ったやんか」

「ああ……」

「体験を小説にするんやったら、

 日常の景色なども書かんとな」

「メリメリ?」


 確かに戦いは派手で迫力もある。

 実際に書けているかは作者視点ではわからないものだが、

 ファンタジー小説は戦いがメイン。

 けど、探索回も楽しいだろう。

 知らない場所を見て回るのも好奇心を刺激する。


「……そうか」

「サイレンもええんか?

 俺は目標もなしに適当にブラブラするだけやが、

 サイレンも付き合う必要あらへんで」

「……いや、私も適当に歩くのは嫌いじゃない。

 ……故郷ではよく歩き回ったものさ」

「何や?

 本を持ち歩いて止まったら読むとか、

 気になったら確認する流れかいな?」

「……よくわかったな」

「実は俺も同じことをしとったわ」


 調子に乗って、遠いところまで行って、

 帰るのに同じ距離を歩いて、

 足が筋肉痛になったことは記憶に新しい。


「……似た者同士ってことか」

「……サイレン、別の町まで歩いて行ったりした?」

「……いや、故郷だけだ。

 他の町を見て歩くのは仲間と一緒の方がいいと思って、

 学校行事以外はしていなかったな」

「へぇ」

「……この杖も故郷から馬車で、

 半日のところに魔法が有名な都市で、

 有名な杖の店で買ったのだが、

 観光はせずにすぐに帰った」

「……サイレンってほんま、

 夢に真っ直ぐやな。

 ちょっと観光するもんやろうに」

「……練人もだろ?

 今、書いている話も面白い」

「それはおおきに」


 さて、会話も終わりにして町を見る。

 さもないと、探索回なのに、

 結局会話回にすり替わってそうで、矛盾する。

 説明し過ぎると、

 読者が飽きて閉じてしまうから、

 バランスが大事だが、わかっていても書きたい。


「……思ったんやけど、コガワって地方都市なん?」


 コガワに住んでそこそこ日数が経っているが、

 コガワは畑や田んぼ、牧場が近くにある。

 だが、農業しかないのかと言われたらそうではなく、

 店も多く出てたり公園や露店もあった。


「……そうだな。

 ……私の故郷に近いようで違うな」

「例えば?」

「……一番はギルド周辺だ」

「周辺?」

「……私の故郷のギルドは近くに飲食店や酒場、

 大浴場があったがコガワは飲食店も、

 酒場も一つで大浴場も宿にあったりする」

「ほうほう」

「……訓練場も違うな。

 道具は同じく充実しているが、

 広さは私の故郷の方が広い」

「サイレンは故郷の方が良かった?」

「……早計だ。

 まだコガワだけだ。

 コガワだけで故郷が良かったと言うのは違うだろ?」

「せやな。

 今のサイレンの目標は?」

「……今は海に行きたいかな」

「海?」

「……仲間と一緒に海まで行って、

 海鮮料理を食べたい」

「仲間と一緒に海鮮料理を食べるのが目標なんか?」


 クールなサイレントしては意外な目標だった。

 てっきり、もっと強くなりたいとか、

 魔獣を倒したいとか、

 未知の魔法を見たいとか思っていた。


「……そうだ。

 海での海鮮料理は美味しいと聞いたからな」

「……そういえば、サイレンって魚ばっかり食うよな?」


 宿の料理も肉ではなく、基本的に魚ばかりだ。


「……実は懐に塩もある」

「あんのかいな!?」

「……いつ、魚が手に入るかわからないし、

 焼き魚にした時に、

 塩があればさらに美味しくなるだろ?」

「さ、さよか」


 正直に言えば、

 ギルド周辺はよく歩いているので、

 馬車停やパン屋などの場所はよくわかる。

 だから、コガワで有名な川に向かう。

 川の長さはそこそこで大体百メートルぐらいだった。


「そこそこやな」

「……そうなのか?」

「ああ、俺の故郷は結構長くてなこれの三倍くらいやで」

「……不便じゃないのか?」

「せやから、昔は橋がよぅあったし、

 小舟もあるんやで」

「……小舟か」

「川辺をよく歩いたもんや」


 懐かしみながら歩く。


「……人も多いな」


 子どもたちが遊んでいたり、

 老人が歩いていたり、

 男性がランニングをしてたりしてる。


「おっ、釣りしとる人もおるで」

「……そうだな」

「……サイレンって釣りするん?

 さっき、川魚を食べるから塩を持っとると言っとったし」

「……いや」

「いや?」

「……私の場合は魚が跳ねた瞬間に、

 ドローで引き寄せて手に入れたり、

 シャイニング・ワークス・バーニングの練習の時に、

 威力と加減調整をミスって、

 ぷかぷかと浮かんだ魚を回収したりなどな」

「……サイレンもそういうミスするんや」


 そして、浮かんだ魚を食べていたのも少し驚きだ。


「……生きていればあるミスだ。

 他の冒険者達が一緒に食べて魚パーティーをしたり、

 母に喜んだりしてくれたから致命的なミスでもないさ」

「ええ人達やな」

「……ああ、いずれ練人にも……

 エアリーにも紹介しよう」


 川辺を離れて適当に歩くと、壁に辿り着く。

 壁で魔獣の侵入を防ぎ門番達が守ってくれている。


「お疲れ様です」


 頭を下げると門番達は嬉しそうに軽く手を振った。


「……練人は疲れていないのか?」

「平気平気。

 サイレンこそ大丈夫なん?」

「……今までの戦闘を見れば」

「平気やろうな〜

 戦いを見れば当然の帰結や」

「……ん?」


 サイレンが見た場所は古書店だった。


「行こうか?」

「……ああ、行こう」


 古書店に入った。

 古書店だけあって多くの本が置いてあった。


「小説もあるんやな。

 サイレンは何買うん?

 魔術書?」

「……魔術書はすでに読み尽くした。

 私としては好奇心がくすぐられる本がいいな」

「なるほどね」


 サイレンの知識を考えると、

 確かな説得力はあるだろう。


「……俺も古書は好きやで。

 中古やと安く帰るしな」


 安く買って高く売る。

 商売の基本だが、

 商売の基本は人生にも言える基本のことだ。

 本を読めば知識がつくし、

 集中力や忍耐力もつく。

 中古の本を安く買って、

 自分の価値を高くして売る。


「……サイレンは何買うん?」


 サイレンが手に持ったのは“読書の歴史”。

 結構分厚い。


「……歴史書だ」

「け、結構真面目な本を買うんやな」

「……面白そうだからな」

「……確かに気になるな、

 読み終えたら貸してくれへん?」

「……いいだろう」

「俺はこれや」


 俺は“覚悟のすすめ”。


「……練人も男が読みそうな本を読むんだな」

「男らしい本も嫌いやないわ」

「……買うか」


 そして、俺達は本を買った。


「そろそろ飯にする?」

「……地図では向こうにコガワ名物の川魚料理が出る店があるぞ」

「ほな、行こうか」

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