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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第3章 冒険者の交流

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第23話 メリボー

「……見えたで、松林や」

挿絵(By みてみん)

 村の観光地である松林に着いた。


「……確かに、結構綺麗だな」

「……そうだな。

 ……静かで日当たりも良い」


 そうなると、【テンタクル・フラワー】は、

 光合成でエネルギーを生成していると見ていいな。


「……確かに子どもや老人が好みそうな場所だ。

 ……読書するのにも向いている」


 サイレンは周囲をキョロキョロと興味深そうに見渡している。


「……まあ、松林には変な噂がつきものやけどな」

「……そうなのか?」

「俺が住んでいた故郷にも、

 近くに松林があったけど、

 故郷の松林でも怪談話とかあったよ」


 まあ、長いところ住んでいたら、

 勝手に怪談話は増えるだろうし、

 恐怖はそう悪いものではない。


「……例えば?」

「せやな。

 松林で戦って死んだ戦士の亡霊が出るとか、

 変な爺さんが出てきてーー

 って、そんな感じ」

「……ああ、私の近くにもあったな。

 ……神秘的だが怪しい場所にはギルドも目を光らせているものだ。

 ……危ないからと」

「せやせや。

 危険な場所にはそう言う恐怖も必要の場合もあるんや」

「……練人はそう言う話は信じないタイプか?」

「いや。

 世の中には不思議なもんあるし、

 多くの、

 会ったこともない無関係の人達が言っとるから、

 ありえないとは言わない」


 不思議を求めて探す人達もいる。

 冒険者の中にもそう言う怪奇を求める人はいても不思議じゃない。


「……そうか。

 ……墓場に行けばアンデットくらいはいると思うぞ」

「……ありそうやわ」


 一種のホラーになりかねない。


「……ん?」


 すると、何かしらの悲鳴を聞こえたような気がする。


「……サイレン、聞こえた?」

「ああ……

 しかし、人間の声じゃないな」

「行こう」


 俺は今も聞こえる悲鳴の方を走った。


「何や?」

「メリメリ!

 メリッ!」


 ふわふわと必死になって逃げているのは、

 白い綿毛のようなものだ。

挿絵(By みてみん)

「……ほんま、何や?」


 白い綿毛ではないが、

 抱き抱えるくらいの大きさで、

 他の魔獣と比べれば明らかに小さい。

 フワフワとした毛並み、

 頭部には短い角、

 そして、愛らしい目をした生物だった。


「……あれは【メリボー】だ」

「メリボー?」

「……魔獣の一体。

 練人にも教えたことのある、

 ペットとして人気の高い魔獣だ」

「……ペットとして人気のある魔獣」

「……危険性はなく、草食。

 小さい木の実でも好んで食べるから飼育はしやすい。

 力はないが、箒程度なら持ち運べる。

 フワフワな毛は冬に重宝され、

 手入れして毛を売れば高く売れることもある」

(……ペット化した羊のような魔獣やな)


 確かにあの毛はもふもふしてそうだし、

 子どもや女性が好みそうな見た目もしている。


「つまり、ペットの魔獣が襲われとるってことか?」

「……いや、私達が見ているメリボーは恐らく野生だ。

 ……魔獣を手元に置く場合は、

 ギルドは魔獣の踵部分に識別できるように、

 特殊な文様を入れるがあのメリボーにはない」

「へぇ~、そう言う見分け方法あるんか」

「メリメリ!」


 そして、メリボーを捕まえようとしているのは複数のツル。


「……そのツルの中心にいるのが」

「……ああ。

 ……【テンタクル・フラワー】だ」


 青い花びらをした不気味な顔をしている植物。

 【テンタクル・フラワー】。


「メリメリッ!」


 テンタクル・フラワーは、

 自分の縄張りに近付いたメリボーを追い払おうとしているのか、

 あるいは捕食しようとしているのか。


 さて、どうするか。

 自然の摂理を考えれば別に普通のことだ。

 如何に可愛らしい生き物でも、

 赤ちゃんでも自然界では容赦なく、

 捕食者は自分の命を繋ぐために捕食する。

 人間の目から見れば、

 残酷だと思う方法でも殺し、食らう。

 普通で食事を邪魔する理由はない。


「……邪魔する理由はあらへんな。

 ……冒険者以外なら」


 俺はすぐに飛び出した。


「……練人」

「メリッ!?」


 そう。

 一方を見れば確かに邪魔する理由はない。

 だが、【テンタクル・フラワー】は討伐対象でもある。

 そんな討伐対象が、

 無防備に他の獲物を狙って、

 全ての行動を攻撃に使っている。

 絶好のチャンスを逃す理由は俺にはない。


「シャアアア!」


 メリボーを捕まえようとするツルを切る。

 テンタクル・フラワーのツルは思ったよりも太くはなく、

 剣でも切ることはできる。


「くっ!」


 テンタクル・フラワーは、

 いつでも食えるメリボーから俺に攻撃対象を変えた。

 当然だろう。

 攻撃しない弱い魔獣よりも、

 攻撃してくる外敵の排除を優先する。

 ツルに絡まらないように動きながら剣で切る。


「おっと」


 ツルを剣で切っていくと、

 太いツルを叩きつけるように振り落とした。

 太いツルをジャンプして躱す。


「やっぱあったか」


 ツルは捕まえるためのもので、

 外敵を排除するための攻撃的なツル。

 頭部が当たれば撲殺されるだろう。


「はっ!

 くっ!」


 太いツルは容易に切れず、後退せざるを得ない。

 思った以上に固く切りにくいものだ。


「……」


 サイレンは手を出すことなく、

 回避に徹している。

 最初に言っていたことだ。


「……《ドロー》」


 最初に言っていたことだが、

 サイレンはメリボーをドローで引き寄せた。


「メリッ!?」


 そして、引き寄せたメリボーをしっかりと抱き留めた。

 つまり、助けたメリボーを守る意図だろう。


「勘違いするなよ、

 俺はメリボーを助けたわけやない!

 討伐対象が目の前にいたから攻撃しただけなんや!」

「……小説家志望だからと言って、

 ありふれたセリフは言うものじゃない」


 サイレンにはバレバレだったようだ。

 とりあえず、メリボーに対して心配はしなくても良さそうだ。


「……ふん!」


 剣をダーツのようにぶん投げて、

 テンタクル・フラワーの茎に突き刺した。


「……おりゃあ!」


 テンタクル・フラワーに向かって走り出す。

 当然、テンタクル・フラワーは、

 俺を追い払おうとツルを使って抵抗する。

 俺はジャンプなどして躱す。


「《プッシュ》!」


 太いツルに関しては俺に当たらないように、

 上方向にアッパーカットするように、

 プッシュで押し出して軌道を当たらない方に変えさせる。


「せい!」


 蹴りも使ってツルに絡まないように蹴って避ける。


「そこだ!」


 目指していた地点に辿り着いたら飛び出す。

 そして、テンタクル・フラワーに飛び蹴りを当てる。


「返させてもらう!」


 茎から剣を引っこ抜き、

 右方向のツルを根本から切り裂く。


「《プッシュ》!」


 太いツルに関しては、

 まるで薪を割るように剣を押し出して威力を上げて切る。


「もう一方のツルも!」


 ジャンプでツル攻撃を躱してから、

 左方向のツルを同じ方法で切り離す。

 テンタクル・フラワーは、

 笑い花のように花粉を使った攻撃はできないのか、

 完全に無防備になった。


「せいっ!」


 俺はテンタクル・フラワーの茎を、

 剣でノコギリのように動かして切った。


「お、終わったわ……」


 今回の戦いは、

 飛び回ったり、

 走り回ったりなどして、

 結構体力を使った。

 終わった頃にはもう汗が流れ始めていた。


「もう動けへんやろうけど、ええか?」

「ああ……

 もうテンタクル・フラワーはツルを使って、

 転ばすことはできなくなった。

 討伐としては達成した扱いになる」

「……根っこあるけど、放置するんか?」

「…………かなり掘らないと根っこまでは辿り着けないだろうし、

 また生えたら他の冒険者と戦うことになる」

「冒険者の練習相手として放置すべきだと?」

「……そういうことになる」


 つまり、魔獣による怪我人は、

 ある程度織り込み済みになる。

 まあ、ギルドの詳しい事情はわからないが、

 ある意味では合理的だろう。

 テンタクル・フラワーは確かに攻撃してくるが、

 殺すほどの威力はなかった。

 魔獣の被害も最小限で伝えられる。

 強くもないから練習相手としても最適。


「……まあ、ギルドの方針なら従うわ」

「メリッ!」

「うわっ!」


 納得しているところにメリボーが抱きついてきた。

 痛くはないどころか、モフモフしてる。


「な、何や?!」

「……練人に懐いたようだな」

「ま、魔獣が懐くことがーー

 あったな、もう聞いてたわ」

「……メリボーにとっては練人は命の恩人だからな」


 すりすりと擦ってきた。


「……ムゥ、確かに可愛えが、ええんか?

 野生やろ?」

「……メリボーは基本的に放任主義で、

 子がある程度育てばすぐに自立することになる。

 ……正直な話、メリボーは人に懐きやすく、

 人と一緒に行こうとする個体は多い」

「……ペットとして売りにくいんやない?」

「……冒険者としての話で、

 普通の人は出会いにくい。

 だから、メリボーを他の人に譲渡する冒険者も一定数いるんだ」

「へぇ〜」


 ただ、何かの縁だろう。

 人気のある魔獣なら、

 マスコットキャラとしても最適だし、

 女性冒険者との交流にも使える。

 俺のような可愛いものが好きな男性もいるだろう。

 旅を続けていれば癒しにもなる。

 デメリットとしては弱いから道中は、

 守らないといけないことと、

 餌である木の実を確保しないといけない点だ。


「……木の実高いん?」

「……木の実と言ったが、

 メリボーは何でも食べるから、

 一緒の食事でも問題ないぞ」

「さよか……

 ちなみにサイレンはどや?」

「……私か。

 ……悪くはない。

 ……私としてはフクロウか、

 犬か、

 猫をペットにしたいと思ったが、

 メリボーも悪くないな」

「……何でフクロウや犬や猫なんや?」


 すると、サイレンは何故そんなことを聞くのかと、

 不思議そうな表情をしていた。


「……何故って、魔術師には似合うだろ?

 魔術師として似合うペットは何だろうなと考えていた」


 ああ、サイレンは可愛さと言うよりも、

 如何に魔術師に似合うペットなのかを考えていたようだ。


「サイレンの返答は予想外やわ。

 ほんなら、もし、フクロウや犬、

 猫を飼いたいと思ったら言ってくれや。

 メリボーを仲間にする以上、

 サイレンが飼いたい時に許可しないと不公平やもん」

「……気にしなくてもいいが、そうだな……

 メリボーを抱きしめさせてくれないか?」

「ええで。

 ほんなら一緒に来るか?」

「メリッ!」

「……ギルドに査定とか接種とかしてもらうから、

 今回の報酬は減るが、構わないだろ」

「……了解や」


 マスコットキャラゲットだぜ。

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