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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第3章 冒険者の交流

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第21話 基本魔法

「《ファイア》!」


 初めて原初魔法を使えるようになってから、

 一週間が経った。

 篝火から火を灯すことができた。

 マッチのイメージがなくても、

 小さい火の玉を飛ばすだけで良くなった。


「どや?

 どや?」

「……ああ、原初魔法はマスターしたと言ってもいい」

「よっしゃ!」

「他の人と比べれば遅いと、

 言ってもいいくらいかも知れませんけど……」

「……だが、マスターする期間は、

 魔法が苦手な人と比べると早い方だ」


 サイレンとダイヤナさんは褒めているのか微妙だが、

 褒めていると俺は思うことにした。


「……次だ、練人」

「次の魔法か?」

「……次は“基本魔法”だ」

「基本魔法」

「……今回のために持ってきた」


 サイレンが持ってきたのは鉄球だった。


「鉄球?」

「……今回練人が習得する魔法はーー。

 《フロート》だ」

「フロート……」

「……一番わかりやすいのはフロートだ。

 ……まずは見本を見せる」


 サイレンは鉄球を地面に置き、

 訓練用の杖を持った。


「……《フロート》」


 サイレンは杖を向けるとふわっと、

 鉄球が糸に吊されたように浮かび上がった。


「おおっ、すごいわ」

「本当に……

 サイレンさんのフロートはとてもスムーズです」


 そして、ゆっくりと丁寧に鉄球を下ろした。


「……フロートを練人がやるんだ」

「……できる?」

「……一回だけやってみてくれ」

「OK」


 確か魔法を使う時はイメージが大事。

 鉄球が浮かぶイメージをすれば大丈夫なはず。


「……《フロート》」


 しかし、鉄球はイメージ通りに浮かばず、

 コロコロと動くだけだった。

 動くと言うことは魔力の干渉があったってことだが、

 浮かんでいない。


「……練人、魔法を使うには、

 ただ綺麗にイメージをすればいい、

 ってわけではない」

「……イメージすればいいわけやない?」

「……まず一つ目、

 イメージができていても実力が伴っていない」

「実力が……」

「……例えイメージができたとしても、

 大きな岩を持てるわけではないだろ?

 持つためには持つために鍛える必要がある。

 鍛えていない者が岩を持ち上げようとしてもびくともしない」

「……理屈はわかるけど、

 やったら俺は実力を持ってへんってことになるんか?」

「……慌てるな。

 まだ一つ目だ。

 もう一つはイメージが完全にできていない、

 あるいは間違ったイメージをした結果だ」

「完全にできてない?

 間違ったイメージ?」

「……練人、フロートを使う際に何をイメージをした?」

「そりゃ、サイレンみたいに、

 鉄球が浮かぶイメージ……」

「……私みたいに?

 勝手に鉄球が浮かぶか?」

「……せや」

「……練人、魔法を使わずに、

 鉄球を持ち上げてみろ」

「え?」


 サイレンの言っていることがわからないが、

 言う通りに魔法を使わずに鉄球の前に立って普通に持ち上げる。

 鉄球だが、重さは大したことはなく楽々持ち上げた。


「持ち上げたけどーー」

「……鉄球を地面に置いてフロートの準備を」

「は、はい」


 鉄球を置いて魔法を使う準備をする。

 体内の魔力を流して、

 さっきのようにイメージをする。


「……」


 すると、サイレンの手のひらが俺の背中に触れる。


「さ、サイレン!?」

「……目を閉じろ。

 集中するんだ」


 サイレンの言う通りに、

 目を閉じてイメージに集中する。


「……さっき鉄球を持ち上げた。

 持ち上げた感触を、

 筋肉の動きを、

 腕の動きをイメージしろ」

「ーー」

「……難しく考える必要はない。

 さっきのように楽々と、

 そして、当たり前のことを当たり前のように……

 ーー今だ」

「……《フロート》」


 サイレンの言葉に従って、

 さっきのように、

 何事もなく腕で鉄球を持ち上げるイメージをした。


「……目を開けろ」


 目を開けると、

 鉄球は浮かび上がっていた。


「……浮かんだ」


 さっきまで一切反応がなかった鉄球が、

 持ち上がるのが当然のように普通に浮かび上がっていた。


「……基本魔法の大事な考え方だ」

「基本魔法の大事な考え方……」

「……基本魔法は四種類。

 浮かせる魔法フロート……

 落とす魔法フォール……

 引き寄せる魔法ドロー……

 引き離す、あるいは単に押す魔法プッシュ……

 基本魔法は動作を模倣した魔法であり、

 イメージとしては見えない、

 “自分の魔力の腕”で物体を操作している」

「……“自分の魔力の腕”」

「……《フロート》ができた以上、

 他の基本魔法もできる。

 考え方は同じだからな」

「……せ、せやな。

 押すも、

 落とすも、

 引き寄せるも、

 言葉にすれば簡単や」


 そして、魔力がなくなった鉄球はボトっと落ちた。


「……原初魔法をマスターした練人なら、

 すぐに使えるようになるだろう」

「やってみるわ!」

「でもサイレンさんの説明、

 わかりやすいですね!

 普通の先生だと、

 丁寧にわかりやすく教えてくれませんし、

 だから、魔法に苦手意識を持つ人が多くなりがちなんですよね」

「……私は同級生に教えることもあったが、

 今のやり方は最も早くできたからな」

「へぇ、優しいところあるやん」

「……教えることは私にとっても意味があったからな」

「意味?」

「……仲間ができた時、

 仲間が魔法を使いたいと思ったら教えてやろうとな」

「サイレンさん、

 本当に優しいんですね。

 他の人はそんなことを考えないのに、

 仲間に教えるかも知れないと思っただけで、

 教え方を学ぶなんて」

「……ただ、私に聞いてもわからないことはたくさんあるからな。

 頼り過ぎらないようにしてくれ」

「……確かにサイレンさんも練人くんも、

 興味がないと私でも知っている有名人のことを、

 不思議そうな顔で聞いてましたもんね」

「も、元々有名人の顔とかを覚えるのが苦手であってーー」

「……私も苦手だ。

 知らなくても生きていけるしな」

「せ、せやな。

 人生に関わりがある人やったらともかく、

 何人も覚えてられへんって。

 瞬間記憶のようなもんあらへん」

「……とりあえず、練人。

 他の基本魔法を使ってみろ。

 訓練場ならば的もある。

 鉄球でもいい」

「わかったわ!

 ……ほんなら、まず《フロート》」


 さっきと同じように鉄球は浮かび上がる。


「……そっから《フォール》!」


 魔力の腕と聞いて、

 フロートで持ち上がったものを掴むようにして、

 勢いよく地面に叩きつけるイメージをした。

 フロートで浮かんだ鉄球は、

 勢いよく音を響かせて地面に落下し、反射した。

 そして、コロコロと転がっていく。


「《ドロー》!」


 転がった鉄球を手で掴んで引き寄せるように、

 魔力の腕を使って俺の方に引き寄せた。

 すると、鉄球は向きを急に変えて俺の方に転がる。


「……《プッシュ》」


 俺の方に転がる鉄球を押して止めるように、

 魔力の腕で押した。

 押したからか、鉄球はピタッと止まった。


「……プッシュは……

 目の前の的でもええか。

 《プッシュ》!」


 今度のプッシュは的をサウンドバックを殴るように、

 あるいは掌底を叩き込むような感じで使うと、

 ゴッと言う音と共に的が軋んだ。


「……本当にすぐにできましたね」

「……使うだけならな」

「ん?

 使うだけなら?」

「……練人、基本魔法は、

 ただ使って覚えて終わりにするには、

 もったいない魔法だ」

「え」

「……多くの魔術師は基礎である原初魔法、

 基本魔法を覚えて属性攻撃ができるようになれば、

 日常に役立つものとしか使わなくなるが戦闘にも使える。

 原初魔法を巧みに使って、

 ゴブリンを翻弄してみせた練人ならわかるだろ?」

「……応用次第では、

 いくらでも戦いに組み込めるってことか?」

「そうだ……

 そして、基本魔法も使い続ければ効率よく、

 正確に発動することもできる」


 魔力の腕。

 確かに腕も使い続けることで器用になるし、

 すぐに引き寄せたり押したりできるようになる。


「……そして、私の特訓を続ければ基本魔法はさらに面白くなる」

「おっ、また伏線か?」

「……ああ、すぐに話すのはもったいないくらいには」

「……サイレンさんって本当に魔法が好きなんですね」

「……愛していると言っても過言ではない」

「魔法を愛しとるサイレンの言うことやから、

 信頼性はバッチリやわ」

「……よし、サイレンさんが言うなら、

 もう少し筋トレ頑張ってみよう!」

「せやな。

 俺ももっと基本魔法を使って筋トレしていくわ」

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