表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第3章 冒険者の交流

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/53

第20話 雨の日の冒険者

 雨。

 生命には必要な時期で、天から水が降り注ぐ日。

 だが、同時に多くの人を建物の中に留まる日でもある。

 冒険者も同じで、

 特に低ランクの冒険者に与えられる依頼はなかった。


「ふっ、ふっ!」


 依頼がない日だから、

 今日は宿で一日中いることになった俺達。

 サイレンに言われて筋トレをしている。


「はぁ、疲れた~!」

「……毎日続けることは重要だ、練人」

「サイレンは回数少ないけど、毎日やっているの?」

「……ああ、前はもっとやりたかったが、

 今では少なくても毎日続ければいいと思っている」

「へぇ」


 サイレンは自分がやる回数を終わらせると、

 俺の小説を読んでいた。


「……この前の冒険者とのやり取りで、

 カナイチのキャラに矛盾はなくなっているな」

「それはおおきに」


 結構デラルを使ったが必要経費として割り切るしかない。


「にしても、雨やから暇やわ」

「……そうか?

 ……いつもは動き回るから、

 今日くらいは読書しても許される日だと私は思う」

「せやけど、俺の小説はまだ少ないで?」

「……もう一つの小説もあるし、

 故郷から持ってきた本も多少ある」

「……ゑ?

 もう一つって俺達の今までの読むんか?」

「……私も出るんだ。

 練人視点でもいいが、

 矛盾がないか確認する権利は私にもある。

 特に練人が書いた小説を秘密にするなら、

 私だけの特権と言っても過言ではない」

「マジか……」


 ちょっと恥ずかしい描写もあるが、

 サイレンに読まれるのか。


「……何を怖気付いている?

 いずれ世に出すのなら私程度に怯んでいたら、

 他の人に読ませられないぞ」

「せ、せやけど、やっぱ緊張すんねん。

 ほら、変な言葉遣いやし、

 小説家になりたいと言ってもまだまだ初心者やし」

「……千話くらい書けばある程度慣れるだろ?

 ……私はやっていないからわからないが、

 練人の苦労を考えると、

 他の作者も似たような苦労をしていることがわかる。

 ……興味のない話、

 嫌いな話があるのは事実だが、

 苦労しているのは認める」

「……興味のない話?

 嫌い話?

 何や?」

「……はっきり言えば私はあまり流行に関心を持たない。

 だから、流行に関する知識は魔法と比べると、

 圧倒的に足りていないんだ」

「ああ、サイレンって流行に乗らない感じがするわ」

「……練人はそうじゃないのか?」

「流行は俺もようわからん。

 わからんが、例えば衣装。

 キャラの衣装の参考にせんといかんからな」


 キャラの価値観やと、

 流行り物が好きなキャラは一向にできない。

 多くのキャラは出すつもりはないが、

 自分から作れるキャラを狭めるのはいかがなものかと思う。


「……確かにおしゃれなキャラが、

 流行りの服を一つも知らないのは矛盾だな」

「矛盾のない小説にするんは、結構むずいってことや」


 何でもかんでも興味をわかないといけない。

 好奇心を刺激されたら、調べないといけない。

 器用貧乏になりかねないもので、

 一つに特化した人には勝てないことを意味をする。


「……多芸は無芸という言葉もあるしな」


 だが、多芸は無芸言葉が、

 俺の戦闘スタイルに直結するかも知れない。

 剣での戦闘も蹴りでの戦闘も、

 魔法での戦闘もと何でも手を伸ばして、

 中途半端になりかねない。


「……私は魔法特化で魔法が中心だ。

 私の夢は冒険者だった以上、

 肉体も鍛えるのは不思議ではないからな」

「他の魔術師もそうなん?」

「……まだ体を鍛えていない魔術師の方が多いな」

「……まだ?

 引っかかる言い方やな」

「……小説で言うところの伏線だと思ってくれ」

「小説で嫌いな話は?」

「……例えば、最初から仲間なのに欲に任せて切り捨てるところ。

 切り捨てられた仲間が、

 途中でかなり強くなるのは都合が良過ぎるし、

 捨てた仲間に共感もできない。

 ……私は絶対にしないから読む気がないんだ」

「ほうほう」


 要するにサイレンは『ザマァ系』が嫌いなのだろう。

 『悪女系』も好きそうではない。


「……練人の顔はなんだ?」

「いや、俺も伏線として取っておくってことで」

「……よくわからないが、納得するしかない」


 まあ、多くの作品を書くと決めた以上、妥協はない。

 コナン・ドイルや横溝正史、

 アガサー・クリスティーではない。

 俺は俺。

 作者名は【才練人】。

 才練人の名を轟かせるしかない。

 書きすぎるのは良くないが、

 とりあえず書いてみる精神は大事だ。


「……何をする?

 練人」

「……困るな」


 すると、ノックする音が聞こえた。


「ん?」


 ドアを開けると、

 やってきたのはカールイパーティーだった。


「よっ、暇か?」

「暇やけど、カールイはどないやねん?」

「俺達も暇だ。

 暇だから、ちょっと親睦を深めようと思ってな。

 邪魔だったか?」

「邪魔やないけど、

 ちょいと待ってや」


 俺は扉を一旦閉めた。


「サイレン、二つの小説隠しといてくれ」


 まだ、他の冒険者に読ませる勇気はない。

 二つ目は特に。


「……わかった」


 サイレンは引き出しの中にしまい、鍵をかけた。


「ええで」

「お邪魔しまーす!」

「すみません、ゾロゾロと入ってしまって」


 カールイは遠慮なく入り、

 ダイヤナさんは少し申し訳なさそうに入ってきた。

 ルビィズさんも入ってくる。


「おお、二人だけだから広く感じるな」

「逆に六人やから狭くなるってことやけどな。

 ほんで、親睦を深めるって言ったんやけど、

 どないすんねん?

 いきなり言われたから何も用意してへんで」

「まぁまぁ!

 ダイヤナがクッキー焼いてくれたから」

「ど、どうぞ」

「ダイヤナさんってお菓子作れるんか?」

「は、はい」

「我が娘は母から料理を仕込まれていてな。

 母と同じように料理はうまい」

「もう、お父さん」


 ダイヤナさんが少し照れて頬を赤くした。

 俺は和やかな空気のままサイレンを見た。


「……何だ?」

「聞きたいんやけど、

 サイレンって料理の腕はどないやねん?」

「……得意料理は焼き魚」

「グリルで?」

「……いや。

 串に刺して焼くタイプだ。

 他となるとスープ系や鍋系になる」


 魚に関しては意外とワイルドと思ってしまう。

 冒険者としては正しいのかも知れない。

 スープ系も鍋系も食材を煮込むから簡単料理でもあり、

 古風と言えば古風。


「お菓子作りは?」

「……料理本を読めばいい」

「さ、さよか」


 少なくとも激マズ料理はないと安心すべきだろう。

 わからないのなら、

 無理したり、

 思った通りに好き放題入れたりせず、

 料理本を忠実守る。


「……練人は?」

「俺も簡単な料理は……

 興味ないかと言われたら嘘になるわ」


 最近では料理をする小説や漫画も増えてきているし、

 作ることは嫌いではない。

 食材を切ったりなど簡単な調理はできるが、それまで。

 後はサイレンと似た感じになる。


「……つまり、

 今のところ激マズ料理を食う可能性は、

 今のところないってことやな」


 頭に思い浮かんだのは様々な激マズ料理。

 リアルにあってたまるかと思う反面、

 リアルでも驚きの方法で調理して地獄を見せる人はいるからな。

 油断大敵だ。


「俺達のパーティーじゃ、

 調理はもっぱらダイヤナで、

 ルビィズさんはテントなどの準備。

 俺はルビィズさんの手伝い」


 今のところは宿に泊まる生活だが、

 旅をするとなると意識もしないといけないだろう。


「練人達は?」

「……まだわからないな。

 私は大丈夫だが……」


 俺もテントの張り方とか勉強しないといけないだろうな。


「気になったけど、

 昨日、練人、俺達に結構奢ってくれたけど、

 何でなんだ?」

「そうですね。

 クラフさんはとても喜んでいましたけど、

 普通はしませんもんね」

「奢りたい気分ってことで」

「奢りたい気分?

 メモして取材っぽいことしたのに?」

「俺もまだまだ初心者やからな。

 先輩達の話を聞いて色々勉強したいねん」

「真面目だな、練人は」


 ルビィズはうんうんと頷いた。


「練人達はずっと二人で冒険者やるのか?」

「うーん、どないやろ。

 俺は冒険者になって色々やりたいと思ったけど、

 はっきり言えばノープランや」

「サイレンさんは?」

「……同じくノープランだ。

 あてもない」

「……案外、二人とも似た者同士だな」

「……でも、だからこそコンビとしては、

 悪くないかも知れませんね」


 ダイヤナは少し笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ