第19話 相棒
「はい。
今回の報酬金になります」
ゴブリンとボスゴブリンを討伐したことによって、
三千デラルを受け取った。
「おおっ」
「……すまない。
千デラルは銅デラルに変えてくれ」
「わかりました」
そして、サイレンの要望によって、
大きい銅貨二枚と交換された。
「……練人がボスゴブリンを倒したからな。
今回は半分だ」
「サイレンがシャイニング・バーニングを使ってくれたから、
楽に倒せたんや」
「……練人の原初魔法もえげつなかったが合理的だった。
ボスゴブリンに一歩も引かずに戦っていた」
「まあ、互いに褒め合うのは照れくさいから、
終わりにするか」
「……ああ」
「……ちなみに馬っていくらなんや?」
「……競走馬で一頭百万デラル。
普通の馬でも数万デラルになるな」
「……自分達の馬車は現実やない?」
「……乗馬経験は?」
「あるわけない」
「……私も万能ではない」
「ですよね~」
やはり馬車での旅は現実的ではないか。
「……魔獣使いもいる。
魔獣使いを勧誘していて、
キャラバンなどを単品で買えば乗せて行ける」
「……魔獣が仲間になりたそうな目で、
見るってことはあるんか?」
「……あるが滅多にはない。
友好的な魔獣も存在するが、
基本的に群れで動く上に自然に慣れている。
よほど魔獣と信頼関係を結ばないと成功しないだろうな」
「さよか」
「……ついでに言えばギルドに許可を貰えないと、
所有することすらできない魔獣もいる」
「希少種とか?」
「……正解だ。
犬型、猫型、鳥型などはギルドに報告すれば、
簡単に許可は貰えるが、家畜種は資格がなければ所有もできない」
「なるほど。
ペットは報告すれば、
家畜は許可があればやな」
「……被害が出れば基本的には討伐だ」
「……金持ちの道楽で捕まえてこいって言う依頼はあるんか?」
「……ある」
「せやろうな……
ペット種がおるってことは売る店もあるんか?」
「……あるが、売るとなるとギルドの許可もいる。
定期的にギルド職員がランダムで監査しに来るから、
虐待だったり違法種を売っていれば逮捕されるな」
「しっかりしとるわ」
そうしないと乱獲されてしまうからしょうがない。
「ほんなら捕獲する道具あるんか?」
「……ある。
強力な麻酔薬を使って抵抗できないようにすることもある。
私の魔法にも魔獣を拘束させるの魔法がある」
「へぇ……
素材を手に入れるために、
魔獣を捕獲することもある?」
「……ある。
素材が手に入ることもあれば、
研究所から資金を優遇してもらえることもある」
「なるほどな」
「よっ!
お話はいいか?
お二人さん」
「ん?」
話が一通り終えると盗賊風の男が話しかけてきた。
「聞いたぜ、儲かってるじゃねえか!」
「初めまして?
俺は練人」
「……サイレン・マジャン」
「ギシシシ!
俺は《クリフ・スコーピオン》!
見ての通り盗賊だ。
安心しろ、俺が盗むのは魔獣くらいだからな」
「盗賊なんやな、よろしゅうお願いします」
「結構、礼儀正しいじゃねえか!
お前達、最近名を上げているからな!
色んな魔獣を倒しているし!」
「サイレンのおかげやわ、俺はまだまだ」
「まあ、向こうに来て話をしようぜ」
「……わかった」
サイレンはすんなりと席に座った。
俺もサイレンの隣に座る。
「んで何を頼む?
あっ、姉ちゃん!
俺は肉とエールね!」
「……私は川魚定食」
「……サイレンちゃん、渋いね」
「……?
そうか?」
「せやったら、
俺は魚の煮物で」
「まあいいか」
しばらくして俺達の前に料理が届けられた。
「「いただきます」」
「お二人さん、本当に行儀いいね」
クリフは注文した料理を食べる。
「そういえば、クリフさん、盗賊なんやな?」
「そうだぜ」
「盗賊って何の能力があるのか教えて欲しいんやが」.
「盗賊のか?
ただで教えるのはもったいねえな」
クリフは言ってからニヤニヤと俺を見て笑っている。
サイレンを見ていないから嫌な類のお願いではなさそうだ。
「エール一杯で教えてやろう」
「二杯で。
すんませーん、エール二杯追加で」
ウェイトレスに注文した。
まさか、すぐに躊躇いもなく注文するから、
クリフはもちろんサイレンもポカンとしていた。
「は、はええな……
んなに盗賊になりたかったとか?」
「そうやないけど、知りたかったからな。
俺にとっては願ったり叶ったりなんや」
「まあ、約束通り話してやるよ」
そして、クリフさんは盗賊について教えてくれた。
盗賊は密偵ともいい、
ダンジョン探索や罠解除、
鍵の解錠などを専門としている。
故にダンジョンでは重宝され、素早さと器用さも売りである。
ただし、戦闘は戦士や魔術師と比べると、
地味で対人なら問題なく戦えるが、
魔獣と戦うとなるとサポートに回りやすい。
だから、盗賊は基本、戦闘ができる者と組むことが多い。
「ふむふむ。
なるほどのぅ〜」
「……熱心にメモをするな〜。
メモは服から出したか?」
「……他に聞きたい奴はいないか?」
「はっ?」
「……せやな~。
防御が得意な奴や格闘で戦う奴にも聞きたいわ。
今後のために聞いておきたいわ」
「……のようだ。
……今日は練人が奢る日のようだ。
……練人の質問に答えれば奢ってもらえる。
ただし、調子に乗って限界まで飲むは禁止だ」
サイレンが宣言した。
「……練人の望みそうな展開にしたがいいか?」
「……おおきに、サイレン」
「……何。
練人の意図はわかったからな」
「……意図?
何だ?」
「おい、坊主!
本当だろうな?
酒を奢ってくれるのは?」
「わ、私も!」
手を上げた者は如何にも重厚装備をした戦士や、
稽古着を着た格闘家だった。
「……ああ、奢るから教えてくれへんか?」
すると、二人とも質問に答えてくれた。
俺は熱心にメモに書いた。
「……アンタの相棒、変な奴だな」
「……相棒……
……相棒か」
「ん?」
「……そうだな。
私の相棒は変な奴だが、面白い奴だ」
「……確かに面白いかもな。
他の冒険者のできることを、
熱心に、
真剣に楽しそうにメモする奴はな」
「……私と同じ、体験したい好奇心が強い奴だ」
サイレンの声は聞こえたが、
俺は構わずメモをした。




