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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第3章 冒険者の交流

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第18話 練人の想像力

「……今いる場所辺りだな」


 サイレンが地図を使って周囲を見渡す。


「……ゴブリンの反応ある?」

「……ないな」


 すると、茂みからゴブリン二体が現れた。


「ギィっ!」


 ゴブリンは不気味な緑色の皮膚をしており、顔は醜悪。

 口から涎を垂らし、凶暴性を隠さない目で俺達を見ている。


「……ゴブリン!」

「……練人、先に私が動く。

 練人はーー」


「《ウォーター》!」


 俺はサイレンが言い切る前にゴブリン二体に対して水をぶっかけた。

 杖の必要のない魔法だから手から発射された。


「グギャ!」


 いきなり水をぶっかけられるとは思ってもみなかったのか、

 ゴブリン二体は抵抗せずに水に濡れた。


「……いきなり何を」

「サイレン!

 一体だけでも倒すで!」

「ぐ、グギャ!」

「……遅い。

 ……《シャイニング・ライフル》」

 ゴブリンが怒って俺に向かって突進しようとする時、

 サイレンの杖が一瞬で輝く。

 杖から細い光が貫通弾のように飛び出し、ゴブリンの胸を貫く。


「ぐ、グギャ……?」


 何もわからず、

 自分の心臓を撃ち抜かれたことを気付きながら、

 ゴブリンはバタリと倒れた。


「グギャ?

 ぐ、グギャ!」


 隣で仲間がいきなりやられた場面を見て、

 最初は何が起きたのかわからずにいたゴブリンが悲鳴をあげた。

 そして、慌てて逃げ出した。

 敵討ちして来ずにすぐに後ろの森に逃げるということは、

 向かった先に巣があるかも知れない。


「……逃さん」

「ちょい待ち、サイレン」

「……早く来い。

 さっきのゴブリンの様子は自分の巣に戻って、

 仲間に知らせに行った。

 早く追わないと手遅れになる」

「焦んなや……

 例え見失っても追跡は可能や。

 ゴブリンが俺達が見失ったと、

 安堵して仲間に報告しとる間に殲滅するで」

「……何か考えがあるのか?」

「何のためにウォーターを使ったと思うねん」


 ゴブリンが逃げた草木を見ると、

 わかりやすく水滴が付いていた。


「……水滴」

「最近、雨は降っておらん。

 ってことは俺のウォーターの水滴が、

 まんま目印になっとるねん」

「……小説を書いているだけあって想像力豊かだな」

「水滴を追って不意打ちで行こうや!」

「……ならこれも使った方がいい。

 ……《サイレント》」


 すると、サイレンを中心として、

 下に魔法陣が浮かび上がる。


「……これは?」

「……《サイレント》の魔法陣の中に入っていれば、

 内外の音を遮断できる。

 私達の方に音は聞こえないが、

 私達から出す音も向こうから聞こえない」

「草木を踏んだ時のガサガサも?」

「……聞こえない」

「結構便利やな」

「……だが、話は後だ。

 ……ゴブリンを追うぞ」

「了解!」


 俺はサイレンに置いていかれないように走り始める。

 サイレンも草木に付いた水滴を見逃さないようにしながら、

 走って追いかける。

 追いつく機会は思ったよりも早く、

 森の広い場所が見えた。


「サイレン」


 一応、上も確認するが、

 ゴブリンの見張りはいないようだ。


「……ああ」


 こっそりと確認すると、

 濡れたゴブリンは息を荒くして、

 ボスと思わしきゴブリンに向かって叫んでいる。

 ゴブリンの気持ちから考えると、

 危険が近付いているとボスに報告しているのだろうか。

 そして、思った通り、

 俺達が見逃したと思い込んでいるようで、

 俺達が近付いていることに気付いていないようだ。


「サイレン」

「……耳を塞いでいろ」

「え?

 こ、こうか?」

「……サイレントを解除する。

 解除を合図に目もすぐに瞑れ」


 サイレンの顔は必死だ。

 何か考えがあるようだ。


「……わかった」

「……解除」


 サイレンがサイレントを解除したと同時に、

 俺は耳を塞ぎ、目も閉じた。


「《シャイニング・バーニング》……!」


 サイレンが発動したような声を聞く。

 すると、耳から何か破裂したような音が響き、

 目の中も少し明るく感じた。

 光はすぐに消えた。


「今か!」


 目を閉じて耳を開放すると、

 広場にいたゴブリンは目を抑えている個体もいれば、

 耳を抑えている個体もいる。

 中には木から落下したのだろうか、

 転げ回っている弓矢を持っているゴブリンもいた。


「……《シャイニング・バーニング》!」


 サイレンはとっくの昔、ゴブリンに接近し回転。

 胸を揺らしながら杖から放出された高威力の光魔法を薙ぎ払い、

 大勢のゴブリンを殲滅した。


「何かよくわからんが、楽勝やな!」


 俺はとにかく回復して立ち上がっているゴブリンを倒す。

 隙だらけなら切れない方がおかしい。


「っ!」


 すると、背後からの一撃を偶然回避できた。

 ゴブリンのボス個体だ。

 奴だけギリギリ回復できたようだ。


「サイレン、ボスは俺に任せておき!」

「……!

 お前から言ったからな!」


 サイレンは俺の言葉を信じて、

 残りのゴブリンを掃除している。

 サイレンならこいつは楽勝かも知れないが、

 ボスを倒せないとサイレンにおんぶに抱っこ状態のまま。

 俺も負けていないと証明しないとな。


「グギャルアアア!」

「おっと!」


 大振りの攻撃を回避する。

 だけど、回避だけでは終わらない。


「《ファイア》!」


 ボスゴブリンは他のゴブリンと違って服の面積が広かった。

 恐らく服の大きさで決めているのだろうが、

 服の大きさが仇になった。

 俺は回避したすれ違いざまに火属性の原初魔法を使う。

 ゴブリンの服に着火し、燃え始める。


「ぐ、グギャ!?」


 ゴブリンは慌てて武器を落としながら、

 服の火を叩いて消し始める。

 火属性の攻撃魔法ではない小火程度だからすぐに消せたが、

 隙だらけなのは変わりない。


「《ウォーター》!」


 ゴブリンの顔に向けてウォーターを放つ。

 ホースの水が勢いよく鼻に入ったら誰でも痛い。

 例えゴブリンだろうと変わりはしない。


「グギャアア!」

「デリャアア!」


 前蹴りでゴブリンの腹部を攻撃。

 腹に思いっきり蹴られたため、

 ボスゴブリンは前屈みになって腹を抑えた。


「見えてんだよ!」


 背後で復帰したゴブリンに後ろ蹴りをぶちかます。

 顔に蹴りが命中し、ゴブリンは後ろに倒れた。


「はっ!」


 俺は剣を思い切りぶん投げてゴブリンの頭部を突き刺す。


「グギャ!」


 チャンスだと思ったのか、

 ボスゴブリンは素手で俺に掴み掛かろうとする。


「よっと」


 俺は避けながら土を砂ごと拾う。

 ゴブリンはさらに攻撃をしようとする。


「《ウィンド》!」


 腕を降って風の原初魔法を使う。

 顔面に土が付いたゴブリン。

 目にも入ったのだろう、

 急いで目を擦り土を吐き出そうとぺっぺとしている。

 怯んでいる隙に剣を回収。


「せいっ!」


 俺は勢いよくジャンプ。

 重力と腕の力を使ってボスゴブリンを切り裂いた。


「ご、ゴブ……」


 俺の一撃が効いたのか、

 ゴブリンはバタリと倒れた。


「はぁはぁ……

 勝った……

 いや、次か!」


 俺はすぐに顔を向き、

 ゴブリンを見ようとした。


「……もう終わったぞ」

「……はやっ!」


 俺がボスゴブリンと配下のゴブリンを倒している間に、

 サイレンは残りの多くのゴブリンを片付けたようだ。


「……練人が想像力豊かなのは知っていたが、

 余裕で勝てるとは思ってもみなかった」


 ただ、サイレンも俺の戦いに対しては予想外だったのか、

 素直に褒めてくれた。


「おっ、結構いけた?」

「……少なくとも小説と同様にえげつないと思った。

 ファイアで服を燃やしたり、

 水を顔にぶっかけて鼻に入れたり、

 濡れている顔のまま土をぶっかけたり」


 聞けば聞くほど、

 隙だらけになるよなとか、

 ゴブリンにある意味同情するかもと感想が出てくる。


「……練人の戦い方は強力な魔獣には通用しないやつが多いが、

 小物なら通用するな」

「小物って……

 否定できひんけど」

「……馬鹿にしたものではない。

 実際に今のランクの魔獣には善戦できると思えるからな。

 ただし、調子に乗るとすぐに足元を掬われる。

 掬われるだけならまだしも最悪の場合、死に直結する」

「……何か、しみじみとした言い方やけど、

 似たような体験したんか?」


 サイレンの言い方は、

 偉そうな人が偉そうに上から目線で、

 押し付けるように言ってるとは違って、

 実感を込めて言っているように思えた。


「……した。

 ……体験はしたが今の状態で教えるのはーー」


 珍しくサイレンが渋っている言い方をしている。


「言いたないのやったら無理に言わんでもええで」

「……違う。

 練人は仲間だからな。

 事実を知るのは構わない。

 構わないが……」


 サイレン自身も何を伝えたらいいのか、

 迷っているようだ。


「絶対の秘密なんか?」

「……いや、《《あいつ》》は知っているから、

 練人が知っても構わないし、

 バレたところで大した秘密でもない」

「……サイレンも書いてみるか?」

「……なら、練人が書いてみるか?」

「……どうやって?」

「……私の過去をいずれ話す。

 だから、私の過去を小説として書いて欲しい」

「え、ええんか?」

「……小説を書くことに置いて私は素人だ。

 なら、練人に書いてもらった方がいい」

「……下手でも文句言わん?」

「……言わないと約束しよう」

「なら、書くけど」

「……頼む」

「まあ、とりあえずサイレンも苦戦した相手やと、

 俺の戦法はきついってことやな」

「……今の私なら楽勝と言ってもいいが、

 正解だと考えてくれた方がいい。

 かつて戦った敵ははっきり言えば、

 戦えるのが才能がある者と一緒に戦える資格のような魔獣だと、

 私は認識している」

「何の魔獣なんや?」

「……練人も知っている魔獣だ。

 ゴブリンのことを知っているならな」

「俺が知っとる魔獣?

 ……いや、せっかくサイレンが過去を話して、

 小説を書いてくれって頼んでるんや。

 聞くのは終わりにしようか。

 サイレンが話してくれる時が来るのを楽しみにしながら、

 書くとするわ」

「……助かる。

 ……しかし、つくづく思う」

「ん?」

「……私はラッキーだなと」

「ラッキー?

 俺のセリフとちゃうん?

 サイレンはほんまに強いし、ええ奴やし……」

「……しかし、練人には練人にしかできないことがあるだろ。

 練人の戦いは私の予想を超えるしな……

 一緒にいて楽しいと本当に思っている」

「さ、さよか。

 サイレンが褒めてくれると照れるわ」

「……練人が最初の仲間で私は本当に感謝している。

 ……さて、ギルド職員に知らせてから帰ろう」

「あ、ああ。

 わかったわ」

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